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~ナツ編~
「ナツ隊員、この森の奥に伝説の木の実【イマウクゴンス】の群生地があるとは本当ですか?」
「ああ。伝説によれば食べたものを魅了し、その地に縛り付ける禁断の果実だという」
ナツが持ってきた伝説の木の実の話。しかし、スイーツ部の仲間は誘っても誰も来てくれなかった。結果、ナツはツムギを誘い、二人は探検隊となって森の奥まで調査しに来たのだ。
「それにしても、ツムギ隊員はなんというか……手慣れているね?」
「ホラースポットやパワースポットは、森の奥や洞窟。廃墟に山頂など人の訪れないところが基本ですからね。精霊の泉が人里の真ん中にあったら、嫌でしょう?」
「なるほど……たしかに……浪漫に欠けるね……ふぅふぅ」
細かく息をしながらナツは返答する。実質体育会系のツムギと普段運動不足のお嬢様であるナツでは体力が違いすぎるのだ。
「……ナツ隊員。背負いましょうか?」
「す、すまないツムギ隊員。よろしくお願いするよ」
青ざめた顔をしているナツをツムギが背負う。もちっとしたナツの体がツムギと密着する。
「……ナツ隊員ってサイズ感の割に重たいですね」
「乙女になんてこと言うんだい!?噛みつくぞ!?」
「乙女ならもっと可愛らしい抵抗の仕方してくださいよ……」
初対面はナツ側のイメージこそ最悪だったか、今ではすっかり馬の合う友人となった二人。このように楽しく軽口を叩き合っている間に、目標地点に到着した。
「ナツさんの見つけた地図によればこの辺りにあるんですよね?」
「ああ……そのはずだが……これだぁ!!」
目に星空を浮かべながらナツが指差した先には真っ赤に熟れた真ん丸の木の実があった。手のひらサイズのソレを早速二人は一粒ずつもいで、口に含む。
「「いただきまーす!!」」
果たしてその味は────────
「まずっ!?ぺっぺっ!!」
「にっが!?うえぇ!?」
「伝説はしょせん伝説だった……ということでしょうか」
「だが、我々は伝説の真実を確かめたのだ。これは価値のあることだと思わんかね。ツムギ隊員」
「!!……なるほど────『経験』、こそ宝だというのですね。確かに今回の苦難は我々に新たなインスピレーションを与えてくれました。」
二人はニヤッと笑って拳を打ち付け合う。要するに、気の合う友人とならば何をしたって楽しいのだ。
「そういえばこの木の実、持ち帰りますか?」
「美味しくなかったし、別にいいんじゃないかな」
「そうですね。私たち二人だけの秘密の経験としましょう」
なお、イマウクゴンスの実は実は種をちょいと加工すると危ないお薬になる植物であり、持ち帰ったらもれなく矯正局のお世話になること確定だったのは、二人は知る由もない。みなさんも、不確かな噂・伝説にはご注意を。
~カンナ編~
満月が星空のてっぺんに昇ったころ、カンナは今日も今日とて疲れ果てていた。昨日の夜に強盗犯が出て、その足跡を昼まで追い続け確保して、そしてつい先ほどまで後処理に追われていたのだ。こんな日、カンナは決まっていく屋台がある。
「大将、いつもの」
暖簾をめくって椅子に座る。公安局局長の行きつけの屋台【すずちゃん】。焼き鳥におでん、ラーメンが揃えてある知る人ぞ知る名店だ。
ここはカンナにとって公安局局長の鎧が脱げる数少ない場所。誰にも気にせずにゆっくりできる場所。しかし、そんな場所にも屋台なのだから当然他に客は来る。上着を抜いだカンナがいつも通り焼き鳥盛り合わせと特製ウーロン茶を注文して待っている間に、その女は来た。
「横、失礼しますね」
「ええ、どうぞ……って、あ!ツムギさん!」
「おや、これは朝ぶりですねカンナさん」
互いに顔を突き合わせたまま驚く。なにせこの二人は朝に顔を合わせたばかりなのだから
「朝はご協力感謝します。ツムギさんの目撃証言のおかげで、犯人の確保に成功しました」
「いえいえ。まさか犯人も犯行現場近くの夜の公園で誰かが眠ろうとしているなど思いもよらなかったのでしょう」
「今宵は私が奢りましょう。その程度でお礼になるかはわかりませんが……」
「奢りはいいですよ。昼にライブがあって今は懐に余裕があるので。それより────『カンナさん』、のことを知りたいですね。おススメの品とか教えてください。一緒に話しましょう」
その言葉には暗に、公安局局長ではない尾刃カンナについて知りたいという意図が含まれていたことに気づかないカンナでは無かった。そうしてカンナはツムギにこのお店のおススメのこと。狂犬でいなくてもいい場所であること。最近のプライベートでの趣味など教えていくうちに、すっかり力が抜けたようだった。
「不思議だな……ツムギと話していると、自然と肩肘張らなくて済むと思ってしまう。これも先ほど話していたオカルトの効果か?」
「ふふっ。強いて言うならば、実践音楽の作曲家としての強み……かもしれませんね」
「実践音楽?」
「実践音楽が大半の芸術と違うのは、私は観客(オーディエンス)のスタイルだと思うのです。肩肘張らず、自分をさらけ出せる場所こそ、実践音楽が提供できるものではないのか。私はそう考えているんですよ。その作曲をしている私は、相手の心の中をさらけ出させるような言葉選びが得意……だったりするのかもしれませんね」
冗談めかしながら、ツムギはコップを揺らす。
「なるほど……私には公安局局長ではなくカンナについて知りたいとか言ったくせに、自分はここでも音楽家気取りか?」
「むむ、さすが鋭い着眼点ですね。わかりましたよ……次は私のことについて話しましょう」
特製ウーロン茶を傾けながら、二人はまた別の話題に花を咲かせる。