12/100!!
~ハナコ編~
椎名ツムギはオカルト研究会副会長である。当然、オカルトの噂に満ちた夜の学校は好物だ。今宵はトリニティ校舎に不法侵入して、噂のオカルト【徘徊するハナコさん】の真実を確かめようとしたのだが────
「さて……見つけることはできましたが……」
「うふふ~」
「水着姿や裸で徘徊するハナコさん……ってあなたで間違いありませんか?」
「はい。私がハナコです♡」
残念ながらただの露出徘徊する生徒だったのだ。普通なら悲鳴の一つでもあげそうなものだが、そもそももっと怖いものを見に来たツムギは肩を落とし、残念そうな顔をする。
「ひどいですねぇ……人の水着姿を見てそんなため息つくなんて、傷つきますよ?私の姿を見て、ほら、何か思わないんですかぁ?例えば、■■させて■■して■■を見せてもらいたいとか♡」
「確かに■■で■■させて■■で■■■■■■している姿には少し興味がありますが」
「ひゃっ!?」
自分より更に過激な言葉を平然と言い放つツムギに驚かすはずだったハナコは逆に若干引いた。ツムギは人前で過激な言葉をいうのには慣れっこであるが、トリニティにはそんな人はいない。いやそんな人物キヴォトス広しといってもそんなにいるはずもないのだが。
「……いえ、少々お待ちください。逆にこれは貴重な出会いなのでは?」
「は、はい?」
ぶつぶつ呟いたツムギは目の色を変え、ハナコの両肩をガシっと掴む
「ハナコさん。あなたのその肉体美は至高の領域に達しています。ぜひワイルドハントで露出徘徊していただけませんか!?」
「ほへぇ~~!!?」
「ワイルドハントでは芸術活動の一環として露出徘徊も認められます。あなたほどの肉体美があれば、それは多くの人の芸術の手助けとなってくれるでしょう!」
「い、いえ私はそういうのでは」
「あなたの露出徘徊の才能をこんな場所で失うのは惜しい!要望次第ではヌードデッサンに■■に、■■■■までも許可されるでしょう!」
「何を言ってるんですか!?」
「さぁ、あなたも────『芸術』、の世界に身を投じませんか!!」
「え、えっとぉ……そのぉ。お、お断りさせていただきます!!」
「……オカルトを探しに来たはずなのに、逆に怖がらせてしまいましたね」
~リオ編~
ワイルドハントの展示貝。本日は外部の生徒が作った芸術作品を飾るイベントである。ロールケーキの絵に、百鬼夜行の手作りこけし。他にも個性的な作品が並ぶ中でも、一際異質を放っている作品があった。それは、四本腕のロボットにメイド服を着せた【メイドロボアバンギャルド君】である。
(以前先生には否定されたけれど、芸術の本場であるワイルドハントではどのように評価されるのかしら)
大人数の前に姿を出すのは今の自身の立場から言って合理的ではない、という理由でドローンを使って人々の評価を観察しているのはこの作品を出展した張本人。調月リオであった。本人としては自信作であるこの家事用メイドロボアバンギャルド君。デザインが酷評されることが多いリオとしては、世間的な評価を確かめたかったのだ。
作品のあまりの異質さに、一部の人々は食い入るように見た後、様々な感想をもらした。
「こんなのメイドロボとは言えない!作者はなぜこの見た目に?」
「メイドロボとしては見た目がねぇ……作者の意図が知りたいわ」
「メイド服を着ている家事手伝いロボならばメイドロボかという問いか……興味深いアートだ」
「性能は完璧なのか……家事全般できてしまうとは。これはメイドロボの定義を変えうるレベルの性能ではあるのではないか?」
「普通にロボット展とかに出展すれば高評価貰えただろうに……いやだからこそここに出して人々に問う高レベルのアートなのか?」
道行く観察者たちは、様々な評価をするが、その中にリオの満足する答えはなかった。
(……やはり、私の判断は合理的ではなかったのかしら)
最大多数の最大幸福。それこそ合理。つまり、デザインについて評価が芳しくない今、リオの判断は間違っていたことになる。
そんな折予想外の言葉がドローンの音声通信越しに飛び込んで来た。
「この子、可愛らしいロボットですね」
(!!)
「なんというか、4本の腕を一生懸命に動かしていて、合理的なのに愛嬌に溢れているというか。メイドロボとして一生懸命デザインしたであろう作者の人間性が見えてきて私は好きなデザインですね。作者さんのことに興味が湧いてきました」
(あの生徒……今)
その生徒がしばらくの間メイドロボアバンギャルド君を見て、去ろうとしたところでリオのドローンは物陰から顔を出した。
「わっ……これも作品(アート)の一部ですかね?」
「いえ、そうではないわ。この場に顔を出せない作者の代わりのドローン……と思ってちょうだい。」
「あなたがこの作品(アート)の製作者様ですか」
生徒はわざわざドローンに大して深くお辞儀をした。製作者に敬意を払っているいるからだ。
「ありがとう。誰も、私が本心から私があれが最高のデザインだと思って作ったとは思ってくれなかったの。あなた、よければ名前を教えてくれないかしら?」
「椎名ツムギ、と申すものです」
「訳あって私の名前は明かせないけど、椎名ツムギさん、礼を言うわ」
「名前は気にしないでください。芸術家(アーティスト)にとっては謎さえも────『魅力』の一つですから」
「芸術家(アーティスト)……。なんだか胸が温かくなる言葉ね」
そういうと、ドローンはいそいそとまた作品の影に隠れるのだった。