96/100!!
クルミ誕生日おめでとう!
~クルミ編~
ツムギは真昼間の百鬼夜行の田舎道を歩きながら、自身を呼んだ存在を探していた。
「提示された集合ポイントはもうそろそろですね……」
提示されたポイントといっても、ただのコンビニである。もっとも、この辺りは碌に目印もないためコンビニでの集合が一番いいということでコンビニ集合になったのだが、これでは友人と遊びに行く学生である。
「せっかく極秘任務なんですから、何かこう……秘密基地とかに集合したかったですけどね。まぁ、あったとしても私が呼ばれるわけありませんけど」
今回の極秘任務というのは、以前知り合ったFOX小隊から、そのオカルト知識を貸して欲しいと頼まれたことである。
コンビニに到着したツムギは、コンビニの軒下に大きな盾を持って佇む生徒を発見する。狐耳もついており事前に聞いていた情報と合致する。
「すみません、クルミさんですか?」
「あ、あんたがツムギ?時間より早くに来る辺り、ちゃんとしてそうな奴で安心した」
「別にコンビニの中で待っててくれてもよかったんですよ?」
「いやそりゃ暑いしそうしたい気持ちは山々だったけど、何も買わないのにずっといるのはあれじゃない」
「なるほど、聞いていた通り真面目な方ですね」
「ニコから私のことは聞いてるんでしょ?じゃ、歩きながら今回の件の話をしましょうか」
クルミの先導で歩き出す二人。周囲にはまるで人がいなく、寂しい田舎道が続くのみだ。だからこそ、周囲に気にすることなく今回の件について話すことができる。
「それで、私がここに呼ばれた理由ですが……ぴしゃがつくに関してですね?」
「話が早いじゃない。作戦の内容については……ニコが教えてるわけないわよね。記録から作戦が流出する可能性もあるんだもの」
「ええ、教えてもらっていません。ですが、以前私もここでぴしゃがつくを調べている際にニコさんと知り合いましたので」
「なるほど。まぁあんたの知ってる通り私たちもぴしゃがつくを調べてるわけなんだけど、中々その、問題の解決法が見つからなくてね。だから、オカルトに詳しくてここで調査もしてたあんたの知恵を借りたいってことで呼ばせてもらったの。本当は守るべき一般市民を巻き込むなんて絶対にしたくないんだけど……」
「気にしないでください。私は市民の中でも不良側なので」
「私たちは特殊部隊よ。たとえ不良側であっても市民である以上守る義務があるわ。だから、今回危険な目には極力合わせないつもりだから」
そう語るクルミの口調ははっきりとしており、自身の発言への責任と絶対に護るという自信を感じさせた。
「ところで、ぴしゃがつくが出るのは夜道ですが昼間のうちに何をしておきますかね?」
「現場を見に行くわよ。私たちがいる間も被害が出てるのよね……悔しいことに」
現場に到着すると、確かに誰かが転んだような跡があった。
「ふむ、ここが最新の怪我人が出たという場所ですか?」
「ええ、この辺りを歩いていたお爺さんが足音が聞こえたと思ったら見えない何かに突き飛ばされたって。それで、足をくじいたそうよ」
「ふむ、改めてこの辺りのぴしゃがつくについて確認したいですが大丈夫ですか?」
「ええ、お願いするわ」
ツムギは以前作ったメモを開き、内容を読み上げる。
「夜中、道を歩いている人の後ろでぴしゃ……ぴしゃ……と気味の悪い足音を出しながら、ずっと後ろをついて歩いてくる……本来はそれだけの怪異。後ろを向いても誰も何もいない。しかし、この辺りはぴしゃがつくに襲われたという証言をする人、実際に怪我を負った人などが出ている。それも、謎の音に驚いて足を踏み外しただけにしては多すぎるほどに」
「ええ、間違いないわ」
「それで、ずっと夜間に歩いて探してるんだけど……なんで私たちの前……というか後ろには現れないの?」
「それは、あくまでも私の予想ではありますが、怪異のパターンから当てはまる事例があります」
「え!?もう予想ついてるの!?それは一体?」
クルミは凄い勢いで食いついて来る。それだけ、今回の一件に不甲斐なさを感じていたのだろう。
「あなたたちが恐れないからです。特殊部隊として今まで強力な怪異ばかりを相手にしてきたのでしょうが、ぴしゃがつくは元来人に危害を加えない脅威度の低い怪異です。今回出てる怪我人も大した怪我をしていなく、道から追い出されて田んぼに転がり落ちたとかその程度です」
「……つまり、強い人には突っかからないと?そんなレベルの低いヤンキーみたいなことあるの?」
「それがあるんですよ。恐らく、特殊部隊なら夜間の行動も慣れていて夜目も利くでしょう?」
「まぁ、私は夜目が利くし、暗闇も怖くないわね」
「そんな相手にぴしゃがつくは現れません。元々、夜に出歩くのは危ないということを言い聞かせるために生まれた怪異なんですから。夜に出歩くのに危ないような人の前にしか現れないのは何も不自然じゃないんですよ」
「怪異の……存在意義」
以前のくねくねが暑い日にずっと外にいる人にのみ見える存在だったことを思い出し、少し納得するクルミであった。
「そもそも、怪異に好かれる人間好かれない人間といますからね……怪異に出会いやすい人間というか」
「あんたは怪異に好かれやすいタイプなの?」
「いえ?多分この手の怪異は追いかけるタイプは嫌うので」
クルミはずっこけそうになり、とっさにツムギの肩を掴み、そのままの流れで肩を揺する。
「じゃあどうしようもないじゃない!?外を歩くおじいちゃんとかの後を追跡するとでも言うの!?」
「落ち着いてください。それも一つの案ではありますが……もっといい案があります」
「そ、それは?」
「クルミさん。百物語ってご存知ですか?」
「……はぁ?いやまぁ……なんとなくは知ってるけど。怖い話をたくさん聞くやつでしょ?」
「話が早くて助かります。クルミさん、あなたには百物語を聞いてもらいます」
「え?な、なんでよ!?」
「だって、夜道を怖がる人がいないなら怖がる人を作ればいいじゃないですか。いくらあなたが気丈な方でも、オカルト研究会選考の百物語を聞けば、夜道が怖くなるはずです」
「い、嫌よそんな作戦!?」
「丁度夜まで時間がありますし、さぁ、お話しましょうよ~~」
「いやぁぁぁぁぁ!!!??」
その夜、クルミは憔悴しきった様子で一人夜道を歩いていた。ツムギは危険なため待機しておくように言っておいたのだ。
「な、なによ!あんな話!嘘ばっかり!怖くなんて……なんて……」
そうは言っても、現に今怪異と対峙しようとしているのだから、ツムギに聞かされた話もないとは言い切れない。あんな恐ろしい怪異がいないとも言い切れない……そんな恐怖が、今までまるで怖くなかったぴしゃがつく退治に向かう足をすくませる。
「で、出てくるんなら早く出てきなさい!」
口では強がるが、今日もいつもみたいに出てこなければいいのにと思う気持ちも正直ある。そんな心の弱みに付け込むのが怪異なわけで……ぴしゃ……ぴしゃ……と気味の悪い足音が聞こえてきた。
「……今、何か聞こえた?」
クルミの耳がぴくぴく動く。少し早足で移動してみれば、明らかに足音が後ろをついてくる。
(で、ででで!?出ちゃった!?こ、これどうするんだっけ!?確か!確か!ツムギが言うにはえーっと!?)
「クルミさん!フラッシュシールドです!」
宵闇を切り裂くようなはっきりとした声が響き、クルミは何をするべきか思い出した。
「りょ、了解!フラッシュシールド!展開!!」
クルミは背後を振り向き、フラッシュシールドを展開すると、光に照らされた不気味な影は塵となって消えていった。
「こ、これで終わり……?こんなあっさり?」
「ええ、これで祓えたでしょう。そもそも夜道で音でビビらせようとする怪異です。大きな音や光は苦手なのは当然でしょう」
「そ、そっか。じゃなくて!?なんであんたがここにいるのよ!?」
「だって、怪異を怖くなった状態のクルミさんを一人だけで行かせるわけにはいかないじゃないですか。まぁ、怖がらせるために一人だけだということにしておきましたが」
「う、うう~~まぁ、今回は助かったけど!あんたは一般人なんだから普通はついてきちゃダメだからね!?」
「ふふっ、本当に気丈な方ですね。あんなに今にも泣きそうなぐらいさっきまで怖がってたのに」
「そ、そんなことないもん!!いいから!早く帰るわよ!明るい所に!」
「はいはい。懐中電灯があるので、それで照らして帰りましょう」
駅に帰る間、ツムギにぴったりくっついて移動したクルミ。本来は隊のポイントマンとして常に人を先導する彼女を、逆にエスコートできる状況にツムギはご満悦だった。
その後、ぴしゃがつくによる被害報告はなくなったようで、ツムギは改めて礼を言われたのだった。
気が向いたら評価お願いします!