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~フィーナ編~
ツムギは三度お祭り委員会に呼ばれて、百鬼夜行を訪れた。ツムギは他のメンバーが集まる予定時間よりも早く来て、今回の依頼主である綺麗なブロンズヘアーが特徴的な生徒と打ち合わせをしていた。
「事前に電話であいさつしましたが、こうして顔を合わせるのは初めましてですね。椎名ツムギと申します」
「え~っと、こういうトキハ。HEY!おひけぇなすって!フィーナ、ここにあらためてご挨拶申し上げマス!!『お祭り運営委員会』組にようこそ!!」
フィーナは手は膝の上。腰を曲げてまるで任侠の挨拶のような姿勢で仁義を切る。
「……え~っと?これは私も答えたほうがいいやつでしょうか」
そう言いながらもツムギは既に同じような姿勢をとり、仁義を切る準備をする。
「OH!気にしないでくだサイ!コレが朝比奈フィーナの『任侠』デース!!」
「任侠……ですか?」
さすがのツムギも動きを停止し、頭上にクエスチョンマークを浮かべる。任侠についてあまり詳しいと言えないツムギも言葉を使うタイミングなり色々とずれているのがわかる。
「YES!任侠映画とか見たことありマスカ!?」
「インスピレーションを得るために数回見たことある程度ですが……」
「GREAT!任侠映画は素晴らしいものデス!ワタシもかっこいい任侠になるために日々勉強していマス!」
「任侠映画……ですか。フィーナさんの目指す任侠とはどういうものなのですか?」
「むむ、難しい質問デス」
フィーナは少し困り眉になりながらも、真剣な顔つきで答える。
「みんなには避けられてしまうけど、やらなきゃいけないことをやる人たち、デス。『仁義』を重んじて行動する……違いマスか?」
「ふむふむ……ではそんなフィーナさんは今日はなんのために私たちバンドメンバーを呼んだのでしょうか」
「OK!よくぞ聞いてくれマシタ!委員長は今日誕生日なんデス!!」
フィーナは済んだ瞳を輝かせながら、真っすぐと返答する。
「委員長のための誕生日会!フィーナはその準備をすることを申し出マシタ!それこそ、フィーナの『任侠』ですから!」
そして、可愛らしい任侠はツムギの両手を掴み、笑顔でお願いをしてきた。
「委員長は騒がしいお祭りが大好きデスカラ!そのためにツムギさんたちを呼んだんデス!とびっきり派手な誕生日パーティーにしましょう!!」
ツムギはそんなフィーナを見て、思わず噴き出してしまった。フィーナはおろおろしながら、ツムギに尋ねる。
「ワタシ、何か変な事言ってしまいマシタカ!?まだまだ勉強中の身ゆえに……」
ツムギは口元を抑えながら、この可愛い可愛い任侠の用意したであろう誕生日ケーキを見て決意に満たされる。
「ふふ……確かにお頭に対する────『仁義』、は大切ですからね。そうと分かればこの椎名ツムギ、一肌脱がせていただきましょう。朝比奈フィーナの任侠道を見せてもらった以上、この椎名ツムギも任侠道を見せないのは失礼ですからね」
~イロハ編~
これはツムギがゲヘナに初めて訪れた時の話である。
「さ……て。どこから回りますかね」
ゲヘナは非常に広く、それゆえ観光名所も多い。どこから回るべきか、正直悩んでいるというのが現状だ。
「というか、現時点で私はどこにいるのでしょうか……?」
「この辺りは最近温泉開発部による開発が行われたせいで、地図は当てになりませんよ」
ツムギが振り返ると、目の前にいたのは小さな体に大量に蓄えたモフモフの赤い髪の毛が特徴的な生徒であった。
「こんにちは。どうやら制服を見るに、他の学校から来た観光客ですかね?気を付けたほうがいいですよ。よそ者は絡まれることも多いですから」
「おやこれはご親切にどうも」
「親切ついでに、ゲヘナを案内しましょうか?」
「いえさすがにそこまでしてもらうわけには……」
赤髪の生徒はため息を吐くと、頭をぽりぽり掻きながら小声で語る。
「……面倒ですが、確かにここまで親切にされたら警戒されて当然ですね。まぁ、端的に言うとサボりたいんですよ。でも、ただその辺を散歩していたら、後で怒られるでしょう?でも、今あなたを案内すれば、私はのんびり散歩しながら、後で困っていた観光客を助けていたという言い訳ができるんです。どちらにも利がある素敵な提案だと思いませんか?」
ツムギはあまりにも直球な言い分に、つい吹き出してしまいそうになり、口元を抑える。
「それは……素敵な提案ですね、ふふっ。私は椎名ツムギ。ワイルドハントから来ました」
「私は棗イロハ。趣味は読書とサボりです。よろしくお願いします」
そうしてツムギはイロハの案内で近場のおすすめスポットを回り始めた。イロハのセンスは抜群であり、ツムギは多くのインスピレーションを観光地から得ることに成功した。途中では温泉にも入り、心ゆくまでゆったり過ごした。
(さすがにサボりにしては堂々としすぎているような……)
ツムギは途中で突っ込みたくなったが、イロハは満足しているようだし、助けられている観光客というのは事実なので何も言わないことにした。
「風呂上りは木陰でゆっくりしましょう。それが一番リラックスできるんですよ」
先に木陰でゆっくりし読書し始めたイロハに言われた通りツムギは木にもたれかかり芝生に座る。
「確かにこれは……イイ……ですね」
「でしょう?最高のサボりですよ」
ツムギはベースを取り出し、リラックスに最適なクラシックを奏で始める。イロハは特に何も言わないが、ツムギに微笑み、また読書に戻る。
「ツムギさん……またゲヘナに来たときは、サボりの手伝いしてくださいますか?」
本から目を離さずイロハが質問する。
「ええ、また来たときはもう一度イロハさんに頼ることにしましょう」
ツムギも目を瞑り演奏をしながら、返事をするのだった。