【完結】どうやら私は学園のマドンナを口説き落としたらしいけど記憶にないんですけど!? 作:ステラ
最後までお付き合いください。
よく考えたらこれチャンスなんじゃない?
途方もない練習量と勉強量にぺちゃんこに押し潰されていた哀れな羽虫こと橘ありさは、やっと今この状況が自分の想いを伝える絶好のチャンスである事に気付いた。
2人きりで放課後に残る。
これ自体は今まで結構してきたけど図書室だったから厳密には2人きりじゃ無かったワケで。
誰も来ない教室で2人きりという特別さは、寧ろなんで今まで感じていなかったのか分からないくらい特別感があった。
俄然やる気が湧いてくる。
ここまでお膳立てされているような状況なのだ、何も起きないはずがなく……という完璧な理論付け。
少しだけ希望的観測が混じってるのはご愛嬌というもの。
「このままハッキリしない関係で卒業まで過ごしても良い、ていうかそっちの方が私的には良いはず。でもそうしたら卒業したら会えなくなっちゃう……それは、ヤダよ」
自分の気持ちを正直に伝える。
ありさが無理を通してこの学園に通っている理由の半分以上を締めていたのが、実は恋愛である事を今更語る必要性もない。
その相手が女子で、先輩で、推しであるという事は予想外であったが……過ぎたことだ。
ここで決める。
決めてみせると誓った。
「よしっ! 今日の放課後、早速告白する! うおおおおあお!」
「おー! ありさってば大胆だねー」
「というかまだ告白してなかったのね?」
「意外とビビりだよね〜」
「だーっ! あんた達はもう少し、こう、人の事を応援するっていう気持ちはないの!?」
「だって人の恋バナとか楽しいじゃん」
「これがありさちゃんの話なら尚更だよねぇ〜」
わいのわいのとクラスメイト達に揶揄われながら決意を固めたありさは放課後、鼻息を荒くしながら急いで待ち合わせ場所へと向かったのだ。
ニヤニヤと恋の結末で賭けをされている事にも気付かず。
勢いよく飛び出したは良いものの、そこにはまだ紗良は居なかった。
HR終了と共に急いで飛び出して着いたので最短でもあと5分は現れないだろう、急に手持ち無沙汰になってしまった。
何をするでもなくウロウロと教室内を動き続けた、覚悟を固めて来たとは到底思えない程の情けない姿ではあるが幸運なことに誰にも見られては居ない。
想い人である少女にも。
「あら早いのね今日は」
「はい! 早いんです、私ってば!」
きっかり5分後に現れた紗良に妙なテンションで挨拶を交わす。
その様子に紗良も少し頭を傾げこそしたが、結局は何時も通りか……と内心で納得した事はおくびにも出さない。
良くも悪くもありさの奇行に慣れきっていた。
「いい心掛けね、それじゃあ早速始めるわよ」
「しましょしましょ!」
ふんす! ふんがー!
互いに似ている様で似ていない気合いを入れ、先ずは普段通りに練習を優先する。
無論そこで軽いジャブを打つ程度には強かでもあった。
「騎士様、あなたのことを好きです。ずっと前から……っ!」
「うん。感情をかなり載せられてて良い感じね、でも言い方が違うわ。もう少し台本をちゃんと読みなさい」
「アッ、ハイ……」
2人が近づき見つめ合う芝居の時は普段より少しだけ顔を寄せた、恥ずかしさで顔が赤くなる程に近付いたというのに当の相手は涼し気な表情で淡々と演技を続けていた。
少しだけ悲しみが勝った。
何度もチャンスを狙ってさり気なくアピールするものの、暖簾に腕押しと言ったところか全く手応えが無かった。
そもそもタイミングが悪かったのかもしれない。
バカ真面目な紗良を相手に、演技の練習途中でアピールするのが間違っていた可能性に気付いた頃には既に日が暮れ始めていた。
門限まであと30分もない。
(うう、このままじゃ告白出来ない……どうしよう、どうしよう……っ!)
今日はありさが意欲的でとても練習が捗ったとご満悦な紗良の横顔を、机に突っ伏しながら眺める。とても美しい顔だと思う。
こんな風にじっくり見ていると余計にそう感じる。この美しさは元々の顔の良さだけではなく、紗良という少女が持つ意志の強さを反映した、その表情こそが美しいのだ。
何時までだって眺めていられる。
大好きな横顔。
こうしてじっとそばで眺めて居られるだけで満足して……ううん、違う。
違うでしょうありさ。
そうじゃない。
「あの、紗良……様。大事な話があるんです」
「? ええ、何かしら」
凛々しくも、何処か自分にだけは柔らかく感じられる眼差しがありさの瞳に映し出される。
思い上がりかもしれないけれど、それだけで満足な気持ちになる。
だけど、きっと本当はそれだけじゃ物足らない。もっと欲しい。もっと特別な存在で居たい。
あなたの特別になりたい。
「私橘ありさは、枢木紗良さん。あなたの事を好きです。愛しています」
「…………え?」
だから言った。
というか、もう思ってること全部この際だからぶつけてみることにした。
分かりやすく言うとテンパっていた。
「初めてあなたを知ったのは入学前でした、話した事あるかもしれませんけど私ここを卒業したら良い感じの会社に就職して将来は楽をしたくって。だから学生の内にそういう人たちと仲良くなっておきたくって」
「う、うん」
「でもでも初めて紗良様の御姿を見た時は「やばっ! こんなに綺麗な人が居るんだ!」ってすっごく驚いて、同時に会ってお話出来たら嬉しいなって凄くミーハーな気持ちでした。そんなだから初日に遅刻した時に紗良様に叱られた時は、嬉しさとか申し訳なさとか、そんな事を思いながら実は見蕩れてたんです。」
「そ、そうなの……」
「最悪の出会い方だったけど、逆に言うともうこれ以上下がることは無いかな? って開き直ってそれからはめちゃくちゃ積極的に話しかけにいきました。仲良くなりたかったんです、今思うと迷惑でしたよね本当にごめんなさい。でも幸いなことに紗良様は優しくってこんな私なんかとも良くしてくれて、それが凄く嬉しかったんです」
「……うん……」
一息にそこまで告げてから大きく息を吸い込む、目の前で聞いている紗良は呆気に取られながらその主張を一言一句聞き逃さないように耳を傾け相槌をしてくれていた。
その顔は夕日に紛れてほんのり朱に色付いている。
「図書室で勉強会をするようになった時は、実はデート気分で毎日浮かれてました。すいません不純ですよね、だって仕方ないじゃないですか紗良様は何時だってカッコよかったんだからそりゃ見つめちゃうでしょ!」
「か、かっこ……いい?」
「街に遊びに誘って、正直ワンチャンないかなって思ってたら本当に来てくれた時なんて私ベッドの上で飛び跳ね回って大喜びしたんです! そうそうこの前映画を観に行ったじゃないですか、あれ実は恋人と行く映画はこれ! って謳い文句だったから誘ったんです、でも思ったより面白かったから内容に夢中で上手くいきませんでした!」
「あ……そう……なんだ」
だんだんと支離滅裂になっていくのを実感するが止まらない、その後もあれがあったやこんな事をしましたねとか散々っぱら捲し立てる。
適度に相槌を打つ紗良の顔が段々と真っ赤に染まっていく事に気付くことなく、無意識に口説きながら。
そんな折、無情な放課後を告げたチャイムの音でようやく冷静に戻れた。
「だから……その……」
「…………」
「わ、私と! 恋人になってください!!」
やっと言えた。
こんな簡単なことを伝える為に無駄に時間を掛けて、わけのわからない説明ばかりで、きっと呆れてるよね……そう思いながらありさは右腕をピンと伸ばした姿勢で固まった。
顔を上げられない。
怖い。やっぱり言わなければ良かった。
あぁでも言えて良かった。
この気持ちに嘘はないから。
うん。やっぱり怖いけど。
これで良かったんだ。
「あのね、お返事する前に……私の話も聞いてくれる?」
(>▽<)