どうやら私は学園のマドンナを口説き落としたらしいけど記憶にないんですけど!? 作:ステラ@毎日更新中
もしくはあなたが大切な人との記憶を失ってしまったとしたら?
その時のあなたはいったい、何を考え、どう思うのだろうか。
退院しました〜!(パチパチ☆
紗良様に連れられて何かすっごい豪華な車に乗せられ寮まで送って頂いた。入院費とかも全額出してくれてたらしい、何でさ? いや、そりゃ私たちがここここ恋人同士だからなんだろうけど。
いやだから何でさ? しかも私が口説いたとか、いや私はノンケの筈では?
うごごごごご……あ、頭が……痛いっ(ガチ)
「た、ただいまー」
「あら2人とも、お帰りなさい」
それはそうとてただいま我が家ただいま寮母さん、3日くらいしか住んでた記憶が無いのになんかすっごい癒される気がするのは身体が覚えてるって事なのかな。
ところで紗良様? 何時まで私と腕を組んで着いて来られるんでしょうか? いや全然イヤとかじゃないんですけど。
その……お、おぱーいとか滅茶苦茶当たってるんですけど? え、気になるなら触ってみるかですか?
イエ、ダイジョウブデス。
「まだ貴女は安静にしていなくてはならないのよ。私がこうして支えるから。…………ええ、二度と離さない(小声)」
「あっ! スゥー……ザッス!」
「フフフ、こんな貴女の反応も久しぶりで何だか楽しいわね」
二度寝して起きた後、ネグリジェ姿の紗良様は何処にも居なくてピシッと制服を着込んだお姿で私の荷物を纏めていらした。やはりアレは幻覚だったらしい。
推しのあられもないネグリジェ姿を妄想するとか罪深すぎるでしょう……流石にオタクとしてライン越えだわ。ギルティ!
え? もっと凄いラインを踏み越えてるだろって? ハハハ、それは記憶喪失になる前の橘ありさって奴の仕業なのさ。
だからノーカンです、私がそう判断した(震え声)
「あれ、同居人も居るんだ」
一人部屋気分で過ごしやすかったけど流石に2年も経てばそりゃ誰か入って来てるよね、どうしよう仲良かったら記憶ないから気まずいし悪かったら更に気まずい。
なんて名前の人なんだろう、紗良様は知ってるのかな?
「あのあの、す、すすみません紗良様、私の相部屋の方ってどなたかご存知ですかしょうか?」
まだ緊張してドモってしまう私にニッコリと微笑みながら(美しすぎて滅)紗良様は反対側のベッドに腰を掛けると、その長くて細い御御足をゆったりと妖艶に交差させながら(……黒ッ!)首肯された。
「ええ、もちろん“知って”いるわ」
「そ、それは良かったです。お名前はなんて言うのでしょうか?」
「フフフ……知りたい?」
あ、やめて! そのいたずらっ子な表情堪りません! 癖です、私の癖ど真ん中です!!
……ふぅ、眼福です。
今分かりました宇宙の心は紗良様だったんですね。
「私よ」
「あー紗良様かー。あー、そっかー?」
「そうよ」
「あ、あははー……ハイぃ?」
え? ええええええええ!?
いやその理屈はおかしい。紗良様は既に実家の事業にも携わっており多忙を極める方(公式情報)だから寮生活はしておられない筈!
百歩譲って寮生活をしておられていたとしても、こんな外部生しか使わない寮じゃなくて内部生専用の方(通称:御殿)に住まわれる筈では!?
え、まさか思うけどこれって……私か?
いや自意識過剰過ぎるかもだけど。
「そ、その〜? も、ももしかして私と一緒に住みたかったからですか〜? な、なーんちゃって。冗談です、何か考えが「うん、そうよ」あ、あははは! え?」
「少しでも長く貴女と居たくて、無理を通してお願いしたのよ。ここで一緒に勉強したり、貴女の家の料理の味を教わって、なんでもないお喋りで夜更かしして……凄く、幸せだったわ」
なんっ……なんなのよこれ!
おい橘ありさ、お前なんでこんなに推しに好かれてんの!? 好かれてるのになんで記憶なんか失っちゃってんの!?
そんな場合じゃないでしょ、恋も勉強も万事順調で幸せでーす(≧⩌≦꒢* )キャハッ
みたいな私が入学するまでに何万回妄想したか分かんないぐらい最っ高の学生ライフを送ってた癖に!
自分への情けなさで涙ぐんでしまった私を見て、なにか誤解されたのか慌てて立ち上がった紗良様は私の頬を優しく撫でて下さった。
「あ、ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったの、ただ……貴女のお陰で私は今こんなにも幸せなんだって伝えたかっただけで」
「……ち、ちが」
記憶喪失になって、こんな……推しにこんな寂しそうな顔をさせてるなんて最低だよ橘ありさ。
申し訳なさ過ぎる、こんなパンピーの何が良かったのか全く持ってサッパリ分かんないけどさぁ、未だに現実感ないんだけどさ!?
それでも今の私にだって分かる事だってあるんだよ! ……紗良様が私の事を、本当に好きなんだっていうのは痛いほど伝わって来るもん。
こんなにも誰かの事を好きになれる人なんだ。それが私なんだ……。
(ああ……なんでなんにも思い出せないんだろ、最低だよバカ)
「……ほら、泣かないで? 私のお姫様」
「うぅ、ううぅううう! な、泣いてません」
「泣いてるわよ、ほら……そんな泣き顔じゃなくて私にはお日様ピーカンノンデリ笑顔を見せて? ね?」
「うっ……うぅう! それ、それって絶対私が言ったことある言い回しじゃないですかぁ……! うぇぇぇぇ〜ん!!」
ぐじゅぐじゅになった顔を見られたくないから顔を伏せてたら紗良様の腕の中に優しく包まれて泣きじゃくってしまった、すっごい私の扱いに慣れてるんだな……って。
こんな優しさを受けた記憶も私の中には一切残っていないのに。
紗良様の中には確かに私と一緒に過ごした時間がしっかりと刻まれていて、それは初めて会った時の氷の様な紗良様を今の朗らかな紗良様に変えてしまうほど素敵な出会いだったって事で。
私は今になってようやく、茶化さず真剣に記憶喪失になってしまった現実を受け入れられた気がする。
(胸がザワザワする……私は覚えてないのに、私の体は覚えてるのかな)
どうにか思い出したい。
こんなにも私を好きでいてくれる人と過ごした2年間を、絶対に取り戻したい。今は本気でそう思ってる。ううん、そうじゃないといけないんだよ。
だって紗良様が好きな人は、あくまでも2年間を一緒に過ごした私の事で───今の私じゃないんだから。
(私どんな人だったんだろう……)
ありさが泣き疲れて眠って暫くして、私は彼女の現状をもう一度だけ確かめる為に改めて話を聞いていた。
求めていた答えは無かったけれど。
「もう結構よ、話は理解したわ」
『これは気休めですが……時間が解決してくれるかも知れません。あまり思い詰めませんように』
「ええ、分かってる。分かってるわよ……そんなこと。じゃあね」
医師との通話を終え、バルコニーで月を見上げながら一度だけため息を吐く。思っていたよりショックを受けていないのは、きっと最悪の事態を想定していたからだろう。
だから大した事ではないのだ、こんなトラブル。強がりではなくて。
あの日、私がほんの少し目を離してしまったせいで“突き落とされて”しまったありさが意識なく血溜まりに倒れている光景を生涯忘れる事はないだろう。瞼を閉じれば今でも鮮明に思い出せる。
手が震えて吐き気が込み上げてくる。
(弱みは作らないように生きてきたのにね。いいえ、私なら貴女を守れると思い込んでいた。その心の弱さがあんな目に合わせた)
幼い頃から完璧を求められてきた、もうその事に思う事はない。これ迄の積み重ねがあったから、私はありさと出会えたのだから。
両親からの期待に応えて何事にも動じない精神力を養ってきた自覚と自信があったというのに……あの瞬間全てが頭から吹き飛んでしまった。
『いや、いやよ! 目を開けてありさ!』
『起きて、ねえ起きて……私を、ひとりぼっちにしないで!』
感情的に声を荒らげみっともなく縋り付くんじゃなくて、もっと手早く行動出来ていたら───あの子は記憶を失わずに済んだのだろうか。
だとしたらコレは私の責任でもある。
首謀者は必ず特定する。
実行犯は既に償わせた、絶対に見付け出して生きている事を後悔させてやる。
「ありさ……私のありさ」
今日までの2年間の記憶が存在しない私の愛しい子、どうしてそこだけ忘れてしまったの? そう思わない訳ではない。
でも不安はない。だってあの子は生きているんだもの、ちゃんと息をして此方を見て、時々変な悲鳴を上げて、私の名前を呼んでくれたのだもの。
『愛してるよ紗良! この世が滅んでも私たちの愛だけは残る、それが運命! 私たちのデスティニー!!』
『もうっ、それどっちも同じ意味でしょ? ほんと気の利いた事が言えないんだから』
『ええー? これでもロマンチック全集を読み込んで勉強したんだよ、紗良のイジワル!』
紗良“様”だなんて、久しぶりに呼ばれた。
貴女と初めて会った時もそう言えばそんな風に呼んでくれていたわね、とても懐かしい気持ちになる。あの時の貴方は、きっと私の事なんか好きじゃなかったし私も好きじゃなかった。
入学式に遅刻してきた新入生、変な言葉でしどろもどろになる変わった子、一年生の中心でみんなに好かれるお調子者。
それが何時から変わったのだろうか───私にとって誰よりも大切な存在へと。
泣き疲れて眠っているありさを起こさないようにそっと部屋に戻る、可愛い顔が涙の痕で台無しだわ。起きたら顔を洗ってあげよう、ゼロ距離サービスで顔が真っ赤になってしまうかもだけど。
「生きてるのが嬉しくてついキスしちゃったけど、早まっちゃったかしら。でも私を意識して貰うには、アレで良かったのよね?」
貴女が深く堅く閉ざして傷付いていても見て見ぬフリをして来た私の心を癒してくれた様に、私の心に温もりをくれた様に。今度は私が貴女の傷付いた心を癒してあげたい。
貴女が流す涙は全て嬉し泣きであって欲しい。その理由が全て私ならば……それはとても幸福なことだ。
「キスぐらいで初心な反応しちゃって……」
記憶が無いことを申し訳なく思って泣いた事ぐらい直ぐに分かった、ありさの事で私に分からない事はないのだから。何時だって私は単純バカですから! なんだものね?
どうせ記憶喪失の今の自分は私に相応しくないとかおバカな事を考えて勝手に落ち込んでしまったんでしょ。そういうの分かるから。
「髪が傷んでる……明日からはちゃんと手入れしてあげるね」
今日一日、非常に短い時間とはいえ一緒に過ごしたのだから貴女にもこの想いが伝わって欲しかったけれど、まあ記憶が無いから仕方ないのかもね。
基本的に全力ポジティブなのにどうでもいいとこでネガティブになる所もチャームポイントだし。ほんとバ可愛い。
「貴女は記憶がなくったって貴女なんだから、黙って私に堕とされてればいいの。だって私は貴女の推しなんだから」
記憶が戻るなら祝杯をあげよう。
記憶が戻らないなら、これ迄の2年間分の愛も込めて貴女の心を満たしてあげよう。
だから早く気付いてね?
私が好きなのは、愛してるのは、橘ありさという存在そのものだという事に。
覚悟してね?
明日から容赦なく告白するから。
今はゆっくりおやすみなさい。
愛しのありさ。
私の全て。
・橘ありさ その2
茶化してないと正気で居られそうになかったが記憶喪失という現実にやっと真正面から向き合う事を決めた。
何でこんなに素敵な人が私なんかを好きになっているのかと過去の自分に対しネガっているが、あくまでも口説いたのは“橘ありさ”という女である(ここ重要)
翌朝にはネグリジェ姿の推しが待っており(夢だけど夢じゃなかった!)ゼロ距離サービスで尽くされてしどろもどろになる運命。
今のところは記憶が戻る様子はない、今後次第か。
・枢木紗良 その2
貴女に記憶があろうが無かろうが好きなんだから私の気持ちは永遠に変わらない系ヒロイン、たぶん自分が記憶喪失になっても5分ぐらいで無理矢理戻してくるタイプ。
過去にありさから熱烈に口説かれて(救われて)おり、記憶喪失のありさを支える為に気を張っているが本当は甘えていたい。
実行犯の処理(比喩)と身辺警護の強化や実家への協力要請(脅し)等の雑務をしていたのでありさが起きた時に間に合わなかった。
ありさのオタク語録を気に入っており、積極的に混ぜて会話をする様にしている。