どうやら私は学園のマドンナを口説き落としたらしいけど記憶にないんですけど!? 作:ステラ@毎日更新中
わたくしの心もあなたには分からないのよ
それでも通じ合えているって信じれば
それが以心伝心というものなのですよ
じゃあまた新学期にお会いしましょうね?
散々っぱら紗良にマウントを取って大満足な桜花様はニッコニコの表情で風の如く去られた。春の嵐の様な方だったな。
そして恐らくだけど私と似て異なるタイプの……オタクだ!
それも推しをイジメるのが好きな屈折したタイプ、狙いは間違いなく紗良。
あの目を見れば誰でも分かる……だってあまりにも同類なんだもの。オタク同士多くは語らないって言うし、私たちに言葉は要らなかった。
でも推しを虐めるのは良くないと思います。
「ところで、桜花様って私といつ何処で知り合ったのか分かる?」
「それは、その……言いたくない」
「どうしても……ダメぇ?」←首コテン
「……っ、その言い方は、卑怯よ!」
なんだろう記憶は全然戻ってないのに凄く自然に紗良と喋れてる。相変わらず心臓はバクバク煩いし、今も弱って照れてる姿を見てキュンキュンしてるんだけど……それがとても自然な事の様に思えてしまう。
ああ、涙目の紗良は可愛すぎでしょ。これじゃ桜花様のことをどうこう言えない。
私の推しが今日も最高すぎて……しゅき。
「……というかありさ、もしかして記憶戻ったの?」
「ううん、それがぜーんぜん! でもこうやって話すのもう平気になりましたっ☆分かんないけど今の私、昔の私っぽくない?」
「……うん、そうね。そうだね……っ」
探していた人にやっと会えた、そんな感じで花開いていく紗良の笑顔に……もう心は苦しくならなかった。ほんの少しだけでも記憶が戻ったから、それだけで無駄に自信が持てた。
きっと私たちはこれからも一緒に生きていけるんだって思える。
今はそう心から信じられるから。
「ありさ久しぶり! 倒れたって聞いたけど元気そうじゃん」
「橘さん、後で皆からのお見舞いの品を纏めてお渡ししていいですか?」
「ありさー次の課題あたしと組むよね、ねっ!」
「ありさ様……お元気そうで……何よりです……」
「ありさ!」
「ありささん」
「ありさ様」
「「「「「ありさ(さん)(ちゃん)(
っち)!!」」」」」
「……お、おぅふ」
時は瞬く間に過ぎて新学期初日。
見知らぬ同級生や下級生たちに囲まれて目が回っております。
なにこれ……私ってば実は人気者だったりするの? 紗良が頑なに私の周囲の人の話をしなかったのってもしかして、私の自惚れじゃなかったら私を取られたくないから……とか?
なんだよもうー!
紗良ってば(˶ᐢᗜᐢ˶)嫉妬かな?
私の恋人めちゃくちゃ可愛いんですけどー!
(それはそうとして記憶喪失のこと説明しなきゃ……)
「実はかくかくしかじかで……」
「それ本当に言う人いるんだ」
「何にもわかんないんだけど」
「真面目にしなよこっちは真剣に心配してんのにさ」
「ぺっ! 田舎に帰りな」
「…………みんな酷くない?」
この後めちゃくちゃ説明した。
説 明 中 に つ き 省 略
「とまあ、そんな訳で今は一年の勉強からやり直してるんだよ」
「そうなんだ……」
「それはキツイよね」
「私たちのことも思い出せないの?」
「平気?」
凄い良い子達ばかりで正直めっちゃ安心してる、記憶を無くす前の私はかなり交友を広げるのを頑張っていたらしいしその成果か。
悠々自適な将来の為に人脈作りは大事だもんね、良かった良かった。
となれば安心させてあげるのが〜人気者の定めって事で、仕方ないから私の推しとの幸せを分けてあげよう!
「それがさ〜そうでもないんだなぁ♪
この休みの間に基本的な事とかはぜ〜んぶ紗良に手とり足とり教えて貰ったから♡
ここ分かんないの。あら、ここはこうすればいいのよ? そっか、こんなに簡単だったんだ、あ……意図せず触れた手と手に顔が赤く染まっていく2人、いつしかペンを手放し互いの顔と顔が近付いていく
(中略)
きゃー! 顔も良くて性格も良くて頭も良いとか私の推し最っ高ーっ過ぎてさ、毎日幸せだった〜!」
おっと拙者つい推しの良さを聞いて欲しくて語りすぎてしまいましたぞwフォカヌポゥwww
まあ反応は見なくても分かる。
紗良は学園一のマドンナなんだし、みんなもプライベートな姿を知れて嬉しかったでしょ?
「本当に記憶失ってるのこの子?」
「言ってること何にも変わんないんだけど」
「えへへ、お姉様元気そう……」
「はいはい惚気けるのはもうやめない?」
「心配して損した、帰ろ帰ろ〜」
「明日のリーダーだれだっけ?」
私の予想と違ってめちゃくちゃドライな反応ばかりだった。どうして……どうして(困惑)
私ほんとにこの学園生活やっていけるのかな……?
そんな復帰初日でした。
余計な心配をしている暇もなく訳も分からない授業の内容や板書をそのままノートに書き写していく地獄の作業が待ち受けていた。
先生方は私の事情を鑑みてか分かりやすく噛み砕いて説明してくれたけど、何言ってるのか分かりません。
日本語でお願いします。
紗良が付きっきりでお勉強見てくれなかったら耐えられなかった……まあドキドキしてそれどころじゃなかった時も多かったけど。
ってな感じで迎えた金曜日の昼休み中、唐突に桜花様が教室へ来られた。
「ごきげんよう皆さま、橘様をお借りしますね」
「あっハーイ」
「桜花様!」
「バイバイあーちゃん」
「へ?」
ヒュッ、ヒョイ。
めちゃくちゃ雑に首根っこ掴まれた私を優雅な足取りで連行される桜花様。
すれ違う方達と気さくな挨拶を交わしながら迷わず歩き続ける姿は凛とした佇まいも相まって非常に美しい。その手に持ってる余計な荷物どうにかした方がいいですよ(小声)
それにしても華のある方だ。
めちゃくちゃフレンドリーで根は凄く優しい方なんだなって改めて感じる、紗良にだけ塩対応なのかも。
好きな子に意地悪する感じかな。可愛い。
あまりにも長く歩かれるので道順をもう覚えてない、何処へ向かうのやらと戦々恐々としていると【異文化交流倶楽部】と書かれている部屋の前へと連れてこられた。
何このセンスのない倶楽部名。
付けた奴の顔を見てみたいよ←鏡を見ろ
「少し失礼しますわ」
「……? わ、わひゃっ! 何をされるんですか!?」
「失礼と言いましたわ」
胸元のポケットをまさぐられ手が胸に当たって赤面する私を意に介する事なく、そこから取り出した鍵を扉へと差し込みサッサと入室されて私は取り残されてしまった。
いや、あの……そういう事なら言って貰えれば自分で出しましたよ鍵ぐらい。
そういう気ないんでしょうけどやめてくれません?
しかし正直何の為の鍵か分からなかったけど、何が必要となるか分からないから事故の時の持ち物をそのまま持ち歩くことにしていて良かった。
そうじゃなかったら胸揉まれただけになるところだった。
恋人が居るのでそういうのNGです、同性でも。むしろ今は同性の方がダメ、私の体は紗良にしか触らせない。
身持ちが固いんですよ( *¯ ꒳¯*)
「お好きな所にお掛けになって待っていてくださいね」
中に入ると慣れた手つきで電気ケトルでお湯を沸かし粉末でお茶を入れ、スーパーで買えそうなお菓子を大量に入れた籠をセッティングされているお姿があった。
見た目に反してすごく……庶民的でございますのね。
もっとこう国宝茶器バーン! なんかすっごい茶葉ズドーン! 高級菓子ドーン!
ってのを想像していたのに。
「橘様とはこうして定期的にお会いしては親交を深めてましたのよ、わたくし庶民の娯楽に疎いものですから」
「あ〜なるほど、そうなんですね」
好きに座れと言うぐらいだから、まあ一番日当たりの良さそうな所……は譲るとして、折角だからお顔がよく見える向かい側の席にしようかな。
私が座ると同時か少し早くカップが差し出され向かい側へと桜花様が座られた、その表情は前にお会いした時よりも格段に柔らかく感心した様にこちらを見つめていた。
「記憶が無くとも座られる場所はやはり変わらないのですね」
「そうだったんですか?」
「ええ、“良い席は推しに譲って私はそれを眺めていたい”と……以前仰られてましたから」
「そんな事まで言ってたんですか……?」
「そんな事まで言ってたんですのよ」
くすくす。
上品に口元を扇子で隠して笑う姿は本当に絵になる方で素敵だ、さすが私の推しNo.2。不動のトップの紗良とのイチャイチャ経験がなければ危なかったかもね。
「橘様は随分と枢木様にお熱でしたのでそういう事にはならなかったと思いますよ」
「今さらっと心を読まれました?」
「顔に書いておりましたので」
ムニッムニッと頬を揉んで表情を隠そうとしたけど、どこまで効果があるやら。
前に会った時もそうだったけど、さっきの事も含めて人の感情を推測されるのが特別上手な方なのだろうな。
やっぱ良い所のお嬢様はこういうスキルあるのかな、紗良も私の好みをそれこそ今の私より知ってる感じだし。
凄いなお嬢様、別世界だ。
「本日は記憶喪失の橘様の為に、特別に良いものをお持ちしましたのよ」
「これは丁寧にどう……も……!!」
オッホ!
このスクラッチブックの中身は紗良の見切れ写真や学園内広報誌の切り抜きで溢れていた。おおおおお! 遂に私が知らない推しの2年間を直接知る事が出来るのか!!
んんんんんん゛っ! ありがとうございます桜花さま、いいえ同志桜花!!
我ら産まれた所とか何とかいろいろ違うけど死する時は同じ!
義姉妹の契りを結びましょうぞ!!
「もう結んでますわよそれ」
「また読まれたー! でも良い、推しの供給あざますです!!」
わっわっわっ!
やっぱり成績優秀者の表彰とか出ずっぱりなんだなぁ紗良は、全学年通して不動の一位! 剣道大会でも卒なく優勝! 凄い、文武両道とは紗良の為に生まれた言葉だったのね!!
ふにゃぁああああ!
カメラを鬱陶しそうにしてる表情きゃわいいっ、こんな迷惑そうな目で見られたら私……ウッ(即死)
ぷはぁ! ご馳走様です(蘇生)
「本日はあまり時間もありませんので、映像集の方はまたの機会にゆっくりと観ましょうね? さあ、持って帰ってもらって結構ですよ。但し枢木様には見付からないように、捨てられてしまいますから」
「ありがとうございます桜花様! 私、あなたとお友達になれて良かったです!!」
「(˶ᐢ ᵕ ᐢ˶)」
「(˶ᐢωᐢ˶)」
竹馬の友を得た一日でした。
「記憶喪失でもお元気そうで何より、と言ったところかしら」
片付けをするからと先に送り出してから気付いたけれど、そう言えば帰り道は大丈夫だったでしょうか。いけないこと、つい話が弾むものだからその事を失念していた。
今度あった時に謝らないと……まあ、会いに行く機会が増えたと今は喜んでおきましょう。
「それにしても無念ね、あの時に知っていたらあんな風に言わなかったのに」
あれは本当に失敗だった。
“あの女”の情けない姿があまりにも滑稽で、腹立たしかったものだからつい余計な事を言い過ぎて和解の手助けをしてしまった。
あのまま放っておけば不安に満ちたあの子の傍に今よりもぐっ……と近づけていた筈なのに。
本当に気に食わない女。
「ああ……いけない子、残してるなんて」
久しぶりに楽しいひと時を過ごせて嬉しかった、あんな事があってから何も手につかずされど枢木家に過干渉する訳にもいかずもどかしい日々を送っていた。
気晴らしにショッピングに行った先で出会った時は運命だと思ったけど……この手を伸ばすタイミングを逸してしまうだなんて。
西園寺の名が泣くわね。
残されたカップの縁、あの子が口を付けた場所へそっと重ねる。
これが今の私とあの子の距離、あの女は気軽に越えられる私にとってどうしようもない距離。こんなカップ越しにしかあなたを感じられず、その蕾に触れる事も許されないだなんて。
「次はどうやって遊んでさしあげましょうね……枢木紗良」
私が大切にしようとした宝物を横から掻っ攫っていった女
私が手に入れたかった宝物を手にした女
私より後に好きになったくせに
私がどれだけ……
パキッ
「あら、カップが……」
安物だったから寿命かしら。
薄らと切れた指から血が流れていくのをジッと眺める、確か前に貰った絆創膏が残っていた筈よね。
「あった」
あの子に貰った特別でもなんでもないごく普通の絆創膏、血が滲まないように確りと付けてから割れたカップを片付けた。
もうすぐ午後の授業が始まる。
つまらない時間の始まり、このままサボっちゃおうかしら……。
無意識に手を擦り合わせ、カサリとした感触にハッとする。
「……ふふ」
やっぱりサボるのやーめた。
午後からの授業はなんだか楽しく受けれそう、絆創膏の感触を確かめながら私は預かった鍵で扉をしっかりと施錠し教室へと戻った。
・西園寺桜花 その2
大切な人が幸せなら身を引くけれど、それはそうとして隙あらば自分のモノにしたいタイプ。
この世で最も嫌いな人間を敢えて一人挙げなければならないのなら、そんなつもりはないけれど枢木紗良と言わなければならないわね(本人談)
最近よく物が壊れることが悩み。
握力54kg。
・ありさの友人たち
内部、外部関係なく積極的に仲良くなって今では互いに遠慮の無い関係である。遠慮が無さすぎる気もする。
日頃からありさの惚気けに付き合わされており、記憶喪失になって心配していたのに何も変わっていなくて少し……いやかなりイラッとした。