ようやく原作キャラだせた!
それではどうぞ!
《オーパーツの捜索へ移行します》
「……随分急だな、今日オーパーツの日だったりする?」
《オーパーツの日は存在しますが、本日ではありません》
「ホントにあるんだオーパーツの日」
日課になった朝の体力訓練も終わり、一息ついているところに、いつもと違う提案をしてくるアイギス。ここ一か月は、その日の訓練内容をつらつら並べられるのがお決まりだっただけに、どういう風の吹き回しだろうか。
「オーパーツ探すったって何処に行くんだ?というかその間訓練はどうするんだよ」
《オーパーツ捜索中は現在実施している防御訓練を一時中断し、基礎体力維持を目的とした最低限のトレーニングのみ継続していただきます》
「……マジ?」
《肯定》
つまりあのクソほどハードな訓練をしなくて済むのか……?
普通に嬉しいんだが!オーパーツ探しマジでグッジョブ!
そんな俺の内心など知る由もなく、アイギスは淡々と話を続ける。
《マスターの戦闘技術・防御テクニック・身体機能が最低限のラインまで向上したため、オーパーツ捜索に移行しても問題ないと判断しました》
「今めっちゃ褒められてる気がする……デレた?アイギス今デレた?」
《そのような機能は存在しません》
「素直になれよ~、私のマスターは優秀ですって言えよ~」
《ではより優秀なマスターを目指すため、今後の訓練負荷を二段階ほど上げて――》
「すいません、調子に乗りました」
即座に土下座で対応する。冗談なのか本気なのかは正直分からんが、後者でないことを切に祈る。
それにしても――
「…………」
目の前に浮かぶ巨大な盾を眺めながら、ふと、こいつとも随分話すようになったなと思う。
一か月前、目覚めたばかりの俺に突然マスターだの世界の滅亡だのと言い出した時には、どうなることかと思ったものだ。話しかけても必要最低限の返答ばかりで、冗談を言ったところで真面目に返される。
今も大して変わっていない気もするけど。それでも最近は、こうして軽口を叩くのもすっかり当たり前になっていた。
この世界に転生して、今日で大体一か月経っただろうか。
この一か月の大半は訓練に費やしており、それ以外はブラックマーケットで買い物したり、アイギスが用意してくれた簡易キッチンで自炊したり、疲れているときはあの定食屋にお世話になったりしていた。
それからスケバンやら別のヘルメット団やらに難癖をつけられたり、騒ぎを聞きつけたマーケットガードに追われかけたりもした。巨大な盾を背負った見慣れない男というのは、あの街では思った以上に目立つらしく、そのたびに訓練の成果を実戦で試す羽目になり、倒したら倒したで相手を放っておくのも後味が悪くて、倒してはあの病院へ運ぶ、なんてことを繰り返していた。
おかげであのフクロウの医者とは定食屋のロボ店主の次に顔馴染みになってしまった。
そしてもう一つ、あの五人――ぴょんぴょんヘルメット団とも、意外な形で再会することになった。
あれは確か、初めての実戦から一週間くらい経った頃だったと思う。訓練を終えた俺は、いつもの定食屋で遅めの昼飯を食べていた。
「いやぁ……染みる」
目の前に置かれた唐揚げ定食を頬張りながら、思わずそんな声が漏れる。身体を動かした後の飯は、どうしてこうも美味いのか。訓練自体は今でも大嫌いだが、その後に食う飯だけは別だった。前世ではろくに運動もしなかった俺にとって、この美味さはちょっとした発見だった。
そんな平和な時間を満喫していた、その時だった。
店の扉が開く。特に気にも留めず飯を口へ運びながら、何となくそちらへ目を向け――箸が止まった。
「…………」
「…………」
見覚えのあるヘルメットが五つ。忘れるはずもない。俺の初実戦の相手――ぴょんぴょんヘルメット団だった。しかも向こうも俺を見つけた瞬間、明らかに反応した。五人揃って入口で足を止め、その視線が俺へ集中する。
「…………マジか」
まさか仕返しに来たんじゃないだろうな。 反射的に身構えながらアイギスに手を伸ばす。店の中で暴れられたらたまったものじゃない。そんな俺の警戒をよそに、隊長がこちらへ一歩踏み出した。
「やっと見つけ――」
ぐぅぅぅぅぅ……。
静かな店内に、やたら長い腹の音が響き渡った。
「…………」
「…………」
五人のうち一人が、恥ずかしそうに腹を押さえる……めっちゃ気まずいんだけど、どうすんのこの空気。
「……飯」
隊長がぽつりと呟いた。
「え?」
「飯……奢ってくれるんだよな」
「…………あ」
『金なくて飯食えない時は奢ってやるから!』
確かにそんな伝言をフクロウ医師に頼んだな、まさか本当に来るとは思ってなかったけど……
「……あぁ、言ったな」
「じゃあ……」
「……好きなの頼めよ」
その一言で五人の顔が露骨に明るくなった。
ロボ店主に相談して広めのテーブル席に案内してもらい、俺たちは同じテーブルを囲む。最初こそ何とも言えない空気が流れていたが、腹が減っていたのは本当らしく、運ばれてきた料理を五人とも凄い勢いで食べている。というか食事中もヘルメット取らないのなんなの?口元だけ開いて食ってるけど、外せばいいのでは……
「そんな急いで食わなくても逃げないぞ」
「うるさいッ……」
そう言いながらも全員の箸は止まらず、あっという間に皿は空になっていく。俺も自分の飯へ戻ろうとしたところで、食事を終えた隊長が箸を置き、不意に口を開いた。
「……ねえ」
「ん?」
「なんでアタシ達を助けたの?」
「なんでって……」
隊長のほうを向けば、バイザー越しに真剣な視線とかち合う。
「アタシ達、アンタ襲ったんだぞ?」
「そうだな、めちゃくちゃ撃たれたし」
「だったら……」
「そのまま君たちを転がして帰るのも寝覚め悪いだろ」
俺の返答を聞いて、理解できないものを見るような目で見てくる隊長。他の団員も食べ終わったのか手を止めて俺の話を聞いており、気づけば視線でハチの巣になるんじゃないかってくらい注目されていた。恥ずかしいからあんまり見ないでほしい……
「…………それだけ?」
「それだけだ、それ以上でもそれ以下でもないよ」
視線から逃れるようにぶっきらぼうに返して、唐揚げを口に運ぶ。あのまま放置したところで、別に俺が責められるようなことではなかったと思う。それでも、後になって「あいつらどうなったかな」と考えるくらいなら、病院に放り込んでおいた方がよっぽど気が楽だった。
隊長は納得できないような顔をしていたが、今度は別の団員が尋ねてきた。
「じゃあなんでご飯奢ってくれるの?」
「ああ、それは医者から聞いたから」
「……何を?」
「お前らがまともに飯食えてないって」
五人の空気が、一瞬だけ固まった。
あのフクロウ医師から聞いた話では、ブラックマーケットには学校にいられなくなった生徒も多く、金に困って犯罪に手を出すなんて珍しくもないらしい。フクロウ医師の診断によると五人とも軽度の栄養失調だったようだし。
事情があるからってカツアゲしていい理由にはならない。そこは実際に襲われた俺としても譲れない。ただまともに飯も食えてないと聞いた時は、さすがに少し同情した。俺が毎日当たり前に食ってる飯すら、こいつらには当たり前じゃないらしい。それを聞いたらなんとなく放っておけなくなって、勢いであの医者に伝言を頼んでしまった。まさか本当に飯を食いに来るとは思ってなかったけど。
「まあ……そんな感じ。深い意味はないよ」
なんとなく気恥ずかしくなって、残っていた飯を口へ放り込む。これ以上こちらから聞くこともないし、そのまま食事に戻ろうとしたところで――。
「……アタシ達さ」
「ん?」
隊長は真剣な雰囲気で、静かに語りだす。
「元々同じ学校に通ってたんだ」
「………」
「だけど学費払えなくなってさ、結局みんな学校にいられなくなったんだ」
なんか急に始まったんだが?
飯冷めちゃうから食べ終わってからで……なんて言える雰囲気じゃないんだけど、こういう時って箸置いた方がいいのか?分からんからとりあえず口の中の飯を飲み込んで続きを待つ。
話をまとめると、五人とも学校を追われた後にブラックマーケットへ流れ着き、そこで一緒に行動するようになったらしい。この辺りにはスケバンやらヘルメット団やら、いくつもの不良グループがたむろしている。一人で生きていくには何かと危険だし、少しでも弱みを見せれば、金目の物を狙われる。だから他の連中から簡単に舐められないよう、自分たちも一つのグループを名乗ることにしたらしい。
それがぴょんぴょんヘルメット団。
……名前の可愛さと結成理由のギャップが凄いな。
「それからは、カツアゲしたり、盗んだり……そんなことして何とか食いつないできたんだ」
隊長はそう言って、空になった皿へ視線を落とした。
「……情けないよな」
「………」
「学校にもいられなくなって、バイトしようにも学校に通ってないヤツらなんて雇えないって断られて……結局こんなことして……」
自嘲するように笑う。その声には諦めに近いものが滲んでいた。
「挙げ句、カツアゲしようとした相手に負けて、病院まで運んでもらって、治療費まで払ってもらってさ」
空になった皿を見つめたまま、ぽつりと続ける。
「……今はその相手に飯まで奢ってもらってる」
「…………」
「惨めだよ。自分でもそう思う」
他の四人も何も言わない。さっきまであれだけ勢いよく飯を食べていたのが嘘みたいに、気まずそうに空になった皿を見つめている。
「でも……だからって、アンタを襲ったことの言い訳にはならない」
隊長は一度息を吐くと、こちらへ向き直った。
「……悪かった。アンタを襲って」
そう言って頭を下げる隊長。
少し遅れて、残る四人もそれに続いた。
「……ごめん」
「悪かった……」
「……ごめんなさい」
「私も……ごめん」
「…………お、おう」
……いやどうすんのこの空気、さっきまであんな勢い良く飯食ってたじゃん!箸置くタイミングすら見失って間抜けな感じになってる俺なんかまだ食べてる途中だよ!なんかもう完全にお通夜みたいな空気になってるんだけど!
別にもう怒ってないし、そう伝えれば済む話なんだろうけど、この空気の中で改まって口にするのは妙に気恥ずかしい。
……よし話題を変えよう、そうしよう!
「あー……そうだ! バイト!」
唐突に出た言葉に、五人が揃って顔を上げる。
「……バイト?」
「ほら、さっき働こうにも雇ってもらえないって言ってただろ?」
「言ったけど……」
返事を待たずに逃げるように視線を隣のアイギスへ向ける。
「アイギス、学校に通ってなくても雇ってくれるところって探せる?」
《検索可能です》
「さすがアイギス!頼もしい!」
というか本当何でもできるなアイギス。ダメもとで頼んでみるものだな。
「ちょ、ちょっと待って!なんでそうなるの?」
「いや、働きたいけど雇ってもらえないんだろ?」
「そうだけど……」
「じゃあ雇ってくれるところ探せばいいじゃん、まあ見つかるかは分かんないけど――」
《複数の求人情報が該当しました》
「見つかったみたい」
『えぇッ!?』
さっきのお通夜空気から一変、騒がしくなるヘルメット団。我ながら露骨な話題転換だったが、なんとか上手くいったようだ。
「とりあえず求人見てみたら?合わなかったら別の探せばいいし」
「…………アンタさ」
「ん?」
「やっぱ変だよ」
「………解せぬ」
そんなことがあってから、五人はアイギスが見つけた店でそれぞれ働くようになった。
全員同じ店というわけではなく、条件や本人たちの希望に合わせてバラバラになったが、少なくとも以前よりはまともに飯を食えるようになったらしい。
ちなみに隊長が働き始めたのは、なんと俺が通っているあの定食屋だった。もちろんウサギのヘルメットは着用しておらず、忙しそうにロボ店主にこき使われながら働いている。てんやわんやしていたが、どこか生き生きとしていたのが印象的だった。
――とまあ、この一か月でそんなこともあった。
「…………」
改めて目の前のアイギスを見る。
とりあえずぴょんぴょんヘルメット団は、それぞれ自分で働いて金を稼いでいる。なんだかんだ、収まるところに収まったようで何よりだ。
「……あれ?」
働いている彼女たちに比べて俺はといえば、住む場所はアイギスが用意した拠点、生活に必要な設備もアイギス頼り。よく考えたら俺、無職じゃん。隊長たちに偉そうに働けばいいじゃんなんて言える立場じゃないじゃん……
《マスター、どうかなさいましたか?》
「いや……なんでもない」
なんか急に情けなくなってきた。次、隊長たちに会った時どんな顔すればいいんだ……これ以上考えるのはやめよう。考えれば考えるほど自分が惨めになってくる。
「……で、結局オーパーツはどこに探しに行くんだ?」
よし、この話は終わり。これ以上考えるのは精神衛生上よろしくない。そんなことより、今はオーパーツだ。
《捜索候補地域を表示します》
アイギスの表面から淡い光が伸び、目の前の空間に立体映像が浮かび上がる。
「おお……」
表示されたのは、どこかの地図らしい。その中央に大きく浮かんでいる文字を読み上げる。
「……アビドス?」
《アビドス自治区です》
地図がゆっくりと拡大されていく。アビドスはかなり広く、その全域にいくつもの光点が散らばっていた。それも十や二十どころではない。
「この光ってるところ全部?」
《オーパーツが存在する可能性のある地点です》
「……多くない?」
《現時点では反応を完全に特定できません。順次捜索する必要があります》
「ですよねー……」
一瞬、楽になったはずの訓練が別の形で帰ってきた気がする。これ、何日かかるんだ……ちょっと気が滅入ってきた。
「それで最初はどこから?」
俺の問いに合わせるように、散らばっていた光点の一つが強調される。地図の大部分を占める、広大な砂地。
《第一捜索地点――アビドス砂漠》
「砂漠かぁ……」
照りつける太陽と延々続く砂の大地が頭に浮かぶ。
「……水、多めに持ってこうな」
《既に必要物資の算出を開始しています》
「流石アイギス、準備が早くて助かる」
目の前に浮かぶ地図を眺めながら、何も知らないアビドスに思いを馳せる。
この時の俺は、まだ知る由もなかった。
このアビドスという場所で待つ出会いが、目的もなく流されるまま始まった二度目の人生に、大きな転機をもたらすことを。
そして――自分がどれほど無力なのかを、思い知らされることも。
「ほらほら
「こんなところにお宝なんてあるわけないじゃないですか、無いお宝はとられませんよ……って、引っ張らないでください
広大な砂漠に、二人の少女の声が響いていた。
一人は緑がかった薄い水色の長い髪を靡かせ、足を取られる砂地もお構いなしに先へ進んでいた。これから始まる宝探しが楽しみで仕方ないのか、後ろを歩く少女の手を引きながら軽い足取りで砂を踏み越えていく。対するもう一人は、短く切り揃えられたピンク色の髪を揺らしながら引っ張られている。見るからに乗り気ではなく、鋭い目をさらに細めて辺り一面の砂を眺めていた。
「ユメ先輩何度も言いますけど、その話どう考えても怪しいですからね」
「大丈夫だよホシノちゃん!こういうのは信じるところから始めないと!」
「大丈夫な根拠が全然無いんですけど……」
呆れた声と楽しげな声。
正反対な二人のやり取りは、誰もいない砂漠の中へ吸い込まれていく。
――彼らが出会うまで、あと少し。
ここまで読んでいただいたありがとうございます!
原作キャラ出したとは言ったが、絡ませるとは言ってない…
今度こそ絡ませていきたいです!
ご意見・ご感想あれば、是非お待ちしています!