攫われた。お嬢様と一緒に運ばれたのは薄汚い倉庫の中。
今回はお嬢様が保護者兼護衛であるギレーヌが目を離した隙に街中に繰り出してそれに俺だけが気づき追いかけるが二人共にグレイラットの暗部に攫われる。というストーリー。だったのだが……
明らかに暗部の仕事じゃないな。体中痛えもん。
さぁて、どうしようか。今回の事を無しにして全部ぶち壊して脱出も出来るが……それじゃこの子の為にならないな。この状況も利用するか。暇つぶしに見えないようにしながら人形作ろう。
しばらくすると、お嬢様が起きた。バッと身を上げて俺をキッと睨む。そんなに睨まなくていいのに。ただ連日の奇襲の全てを対処してあげただけだろ。
「何よこれ!」
おー起きたばっかりなのに凄い声。さて人攫い達はどう動くかな。
「ふざけるんじゃないわよ!私を誰だと思ってるのよ!ほどきなさいよ!」
彼女は声を抑えるということをしない。あの広すぎる館で、声一発で端まで届くようにという配慮なのかと思ったことがあったが……何も考えていない。
サウロスはひたすらに大声を出して相手を威圧するタイプ。大好きなおじいちゃんの駄目なところを見て覚えたんだろ。
そういうところも今回矯正できたらいいんだが……
「うっせぇぞクソガキ!」
お嬢様が喚いていると、乱暴に扉が開いて、一人の男が入ってくる。
粗末な服装、全身から立ち上る臭気。禿げた頭。無精髭。ビンゴだな。こんな奴に可愛い娘をどうこうさせようとは思わないだろ。
「なっ! 臭い! 近寄らないでよね! 臭いのよあなた!
私を誰だと思ってるの! いまにギレーヌがきてあんたなんか真っぷた「きゃーーー!怖い怖い怖ーーいーーー!!!!!」へ?」
「助けてよーーー!!!おかあーさーん!!!おとうーーさーーん!!!こわいーよーへぶっ
うん、黙らせる為には恐怖は大事だがやりすぎじゃないか?俺壁までぶっ飛んだよ?
「クソが! 何調子乗ってんだ、アァ!?てめぇらが領主の孫なのはわかってんだよ!」
ら?どっちが領主の孫なのかは分かってないのか……じゃあ暴力振るうなよ。アホか?どうせ、別の貴族に売るんだから商品価値下げるようなことするなよな。
男は容赦なくストンピングする。
やりすぎだわ。これだから学の無いやつは……
「いた、痛……やめ……ぐっ……やめ、あぐっ……やめて………お願いします……」
「ペッ」
うわっきったね。コレは食らいたくないから反らしておこ。
男は結構長い時間、俺を蹴り続けた。お嬢様はどうかな?と見てみたら……怯えてやんの。自分の力よりも上の暴力ってのにこうゆうのはどうしょうもないんだ。なんていっても心が弱いからな。
「ケッ! 幸せそうな顔しやがってよ……!」
だから何だよ。
男が倉庫から出ていって扉越しに、会話が聞こえる。声でけえな。
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「おとなしくなったか?」
「ああ」
「殺してねえだろうな……あんまり傷つけると値が下がるぜ?」
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ふーん。もう一人はさっきの奴よりは学があるみたいだな。
お嬢様はまだ怯えてるな。まあ床一面俺の血が飛び散ってるからしかたない。
けどもうちょい恐怖心煽るか、
「たーすーけーてー!!!」
バァーン!
中々劇的な登場したかと思えば蹴りすぎだろ。見てよ?ガードしようとした腕。変な方向に曲がっちゃってるよ。内臓もいかれたのか?口の中に血が溜まってる。
「ゲホゲホ」
「クソが、今度騒いだらぶっ殺すぞ!」
お嬢様は1回も蹴られて無いのに泣いちゃって声出したらまだ来るぞおー。まあ魔術で音は消してるけど。
さーて、ん?あー足も折れてんのか。体がふらつく。
「だ、大丈夫なの?」
「大丈夫ではありませんね。ゲホ、ですがこうなるのはお嬢様だったかもゲボ、知れませんよ?お嬢様も私と同じような事をしようとしていたゲホゲホ、でしょう?」
「で、でも」
「こういう時にどうすればいいのかゲボ、これからお手本を見せます」
「まず、相手を過度に刺激しないようにしながらゲホ、情報を集められるなら集めます」
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「で、例のヤツに売っぱらうのか?」
「いや、身代金にしようぜ?」
「足がついちまわねえか?」
「構わねえだろ。そんときゃ隣国だ」
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「相手はお嬢様を誰かに売るつもりの、ようです」
やっと、肺の中の血が出たかな?無詠唱しても意味がないから……
「母なる慈愛の女神よ、彼の者の傷を塞ぎ、健やかなる体を取り戻さん、エクスヒーリング」
母さんの詠唱を聞いて覚えた中級の治癒魔術を魔力増し増しで使って体内を治療する。
「な、何だ。治癒魔術使えるじゃない」
「ええ、お嬢様の先生ですので。けれど、これがバレたら私は殺されます」
「ひっ、あれ?何で腕とか足治さないの…?」
「今それについて教える時間はありません。今度の授業の時に教えますよ」
今治したらゴミが混じるかもしれないってのを教えるのは今じゃない。
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「値段は売るより身代金のほうが高えんだろ?」
「とりあえず、夜までには決めとこうぜ」
「どっちにしろ、な」
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「さて、今までの会話で分かったことは何ですかお嬢様」
「え?アイツ以外にも敵がいるって事と2人が喧嘩してるってことでしょ」
「いえ、他にも此処の近くに人がいるということと今の時間が夜では無いってことがわかります」
「どうしてそんな事がわかるのよ」
よし、この状況を利用して授業しよう。
「私が声をあげる事を異様に嫌がっていることから近くに人がいて憲兵などを呼ばれるの警戒しているのでしょう。他にも夜までに決めようとしていることから今の時間が夜ではない事がわかります」
「そうなのね。分かったわ。で、どうするの?」
「どうするべきだとお嬢様は思われますか?」
「それはもちろん。彼奴らを倒すのよ!」
「どうやってですか?お嬢様はアイツに勝てるんですか?」
「そ、それは………」
そうだよなあ〜今、目の前には年下の血だらけで腕や足が折れ曲がった少年がいるんだ。自分も同じ目にあわされたら……って考えると無理だよな。そうなるようにしたんだし。
「お嬢様、答えはここから逃げるです」
「汝の求める所に、大いなる大地の加護あらん、頑強なる盾と なり、我が前にそびえ立て『
「まずこのように、身を守る為に安全を確保します。そして次に逃走経路を確保します」
壁壊すだけだから何でもいいんだが一応、水聖級魔術師だし、水魔術を使うか。
「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、清涼なるせせらぎの流れを今ここに、ウォーターボール」
はい、ドォーンと壁が壊れました。すると、物音に反応したアイツが
「おい、開かねえぞ!どうなってやがる!」
と、声を荒げながらドンドン音を出しながら戸を叩いてる。
「ではお嬢様逃げますよ」
「う、うん。分かった」
あばよ、とっつぁん!