夢の中で胡散臭い奴に会った。魔術でぶっ飛ばそうとしたけど出来なかったクソが。
何か言われた気がするが全部無視していたからわっかんね。
まあ、そんなどうでもいい事は置いといて、目が覚めたってことは生きてるってこと。うーん。此処は何処だろ?魔大陸だと嬉しいんだけど……
動きにくい体を無理矢理起こすと……あれ?体が起こせない?あ、エリスが服掴んでる。ちょいと失礼。
手を外してから体を起こして周りを見ると焚き火とルイジェルドの姿が見える。ふう。何とか一番の不安要素は解決したみたいだな。
「ハロー!」
「?はろー?」
「こんにちはって意味。助けてくれたんでしょ?お兄さんが、ありがとうね」
「ああ。お前たちは空から降ってきた。人族の子供はひよわだ。体も冷えていたので、焚き火を作って身体を暖めておいた」
へぇ、人族の子供のこと知ってるんだ。いつ知ったんだろ?……ラプラス戦役の時か!――口に出さなくて良かった。
「……お前は、目が見えないのか?」
「見えますよー。見えなかったらあらぬ方を見て会話してるはずですけど、そうじゃないでしょ?」
「確かにそうだな」
「ならば、親にスペルドについて聞かずに育ったのか?」
「親には言われませんでしたけど、師匠には言われました。スペルド族には近づくな、と」
「………師匠の教えは守らなくていいのか?」
「俺は約束を守らない男なので」
「……そうか。お前は不思議な子供だな」
そちらさんは帝級相当の強さのくせにナヨナヨすんなよ!
さーて、これからは何しようかなー。原作通りの道行った方が流石にいいよな?海をエリスと二人で旅するものいいとは思うけど遭難が怖いもんなー。俺一人だと空の旅でいいんだけど……
「お名前は?俺はルーデウス・グレイラット。こっちがエリス・ボレアス・グレイラット」
「ルイジェルド・スペルディア」
「よろしく、ルイジェルド」
「ああ」
「んんー」
エリスが寝苦しそうにしている。まあ地べたの上で寝てるんだから仕方ない。もうそろそろ起きるのかな?
「此処は何処でして?」
「ここは魔大陸の北東、ビエゴヤ地方。旧キシリス城の近くだ」
ふーん。キシリスかー。キシリスといえば魔眼欲しいなー。せっかく魔大陸来たんだし、貰えるものは貰いたいよなー。どれにしようかな~やっぱり予見眼かな〜。千里眼は魔術で望遠鏡作ればいいから〜。
早速、探してみるか。え~と、近くに転移した人は他にいるかなー?
「お前達は何処から来たのだ」
「中央大陸のアスラ王国、フィットア領のロアという名前の都市から……知ってる?知らないよねーほぼ真反対だもん」
「いや、アスラは知ってる。確かに遠いな」
「あら、そう?それは失礼」
「だが安心しろ、必ず送り届けてやろう」
「優しいねルイジェルドは」
「そうか?」
「そうさ」
「そうか……。ここに来た心当たりはあるか」
「いやー特にはただ光の柱によって転移させられたみたいです」
「そうか」
うーん。無口。もうちょい笑ったりしてもいいんだよ?
「そうか……ならば護衛だけはさせてくれ。小さな子供を放り出したとあっては、スペルドの誇りに傷がつく」
「誇り高い一族だね」
「傷だらけの誇りだがな」
「傷だらけでも残っているなら大事にしないと」
「ああ、そうだな」
おっ、少し笑った。
しばらくして、エリスが目を覚ます。ガバッと身体を起こし、キョロキョロと周囲を見渡す。次第に不安そうな顔になり、俺と目があって、不思議そうにしつつもほっとした表情になる。
飼い主の姿を探すワンコみたい。……でも何で不思議そうな顔したんだろう?何か変わったとこあるかな?
そう俺が体を捻って見ていると、ルイジェルドと目があった。すると、見たこともない表情になり、
「キャアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!」
絶叫。そんなに怖いかスペルド族が。あのアルマンフィの方が怖いだろ。あんないきなり人に斬りかかる奴の方が怖いよ普通。
そうのんびり考えていると、エリスは腰を抜かしながら逃げようとしていた。
「イヤァァァアアアアア!」
「ははっ面白」
「お前性格悪いな」
「いやールイジェルドはエリスの事を知らないからそんな事が言えるの。凄いんだぜ、うちのお嬢様。多くの家庭教師を返り討ちにしたじゃじゃ馬だぜ?」
「ヤダ! ヤダヤダ! 怖い! 怖い怖い怖い!
助けてギレーヌ! ギレーヌ! ギレェーヌ!
どうして来てくれないのよ! イヤ、イヤ! 死にたくない! 死にたくない!
ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさいルーデウス!
約束を守れなくてごめんなざぁぁあ、あ、あぁぁぁん!
うえええぇぇええん!」
いや、ルーデウスはここにいるじゃん。目あったじゃん。なかったことにすんなよ。
「あれが、普通の反応だ。お前みたいに肩を組んで一緒に怯えるやつを見ようとするのはおかしい」
「おかしいとか言うなよ〜ルイジェルド〜うりうり〜」
「まあ、気分は悪くない」
ずっと泣かれたままでは困るので泣き止んでもらおう。
「ほーら、エリスー、ギレーヌ人形ですよー」
そう言って数々のギレーヌ人形を作り出す。衣装違いとして、軍服やメイド服のギレーヌ人形もある。
「そんなの今はいいわ!それよりスペルド族よ!食べられちゃうのよ!」
「食べられませんよ、ね?」
「ああ、食べない」
「だ、だ、だって! だってスペルド族よ! 魔族なのよ!」
「いやー魔族だからって怖がるんですかー?言葉も通じるし何が怖いんですかー?」
「言葉の問題じゃない!」
じゃあ何が問題なんだよ。もう仕方ない…
「あーあ、そんな無様な姿を晒すようではサウロス様は悲しまれます」
「そ、そこまで言わなくていいじゃない!」
すると、いつもの様に仁王立ちになって、腕を組み、ルイジェルドをきっ、と睨んだ。
足はカクカク、体はカタカタ震えていて、半泣き。
「は、はじ、はじ、はじめ、て、お、おめにかかります。え、え、エリス・ボボ、ボレアス……グレイラットです!」
「エリスの紹介は既にしています」
「先に言いなさいよね!」
「で、こちらのスペルド族のお兄さんがルイジェルドさんです」
「ルイジェルド・スペルディアだ」
ふん!とエリスが自慢気になっている。私、スペルド族なんて怖くないんだから!と言わんばかり。ここでいや、君さっきまで泣き喚いていたよね?とは言ってはいけない。
「そういえば、ルーデウス頭どうしたの?」
「どうしたとは?」
「真っ白じゃない。ルーデウスの髪はもっとクリームぽい色だったでしょ?」
はー?そんなわけないだろ。魔力切れは何回か起こしたけどそんな、髪が白くなることなんて一度も……
なっとるやないかーー!!!
次の日、白髪になってしょぼしょぼしてる俺。冒険を楽しみにしているエリス。そして、護衛のルイジェルドの3人でのアスラ王国への旅が始まった。
道中、エリスはルイジェルドと仲良さそうに会話を繰り広げていた。あの怯えようは何だったんだ。
くそぅ。前世より何十年も早く白髪になるなんて……治ってくれないかな……
ルイジェルドは護衛として俺たちの進む道にいる魔物を前もって倒してくれている。あのレーダーやっぱり俺も欲しい。ずっと探知専用の魔術を使うのは疲れる。
そうして歩くこと3時間。遂に人の気配がある所に着いた。着いたのはミグルド族の村らしい。……ロキシーの故郷かな?
門番の少年と一悶着あり、村の長が俺たちの身分を確かめるようだ。ルイジェルドがあまりにも口下手なのがこじれた理由だ。
「そちらの子たちかね……?」
「はい、片方は魔神語を話せるようです。なんとも怪しい」
「言葉ぐらい、勉強すれば誰だって話せるじゃろう?」
「あの歳の人族が、どうして魔神語なんて勉強するんですか!」
ふむ。確かに。門番の少年ロインの言う通り。普通の子供は魔神語なんて覚えようとはしないだろう。俺みたいに魔族の師がいない限り。
「まあまあ。君はもう少し落ち着いて待っていなさい」
長は年長者故か落ち着きを持っていてこちらに歩み寄ってきた。
「ハロー!町長さん。俺はルーデウス・グレイラット」
「私はこの集落の長のロックスです」
ほらエリスも挨拶して大丈夫。俺が言葉は翻訳するからさ。
「うー……。お、お初にお目にかかります。エリス・ボレアス・グレイラットです」
「こちらのお嬢さんは、もしや挨拶をしてくださったのかな?」
「そうですよー。彼女はエリス・ボレアス・グレイラットというんです」
「ほっほっほ。そうですか」
「で?俺達は村に入れるんでしょうか?」
「ふむ」
俺の体を確かめると首と鎖骨当たりで一度目を止め、ロキシーからもらったペンダントに目を止めた。
「そのペンダントはどこで手にいれなさった?」
「師匠からお守りに、と」
「師匠はどこの誰かね?」
「ロキシー」
「なんだって!」
と、声を上げたのはロイン。彼は凄い勢いで歩いてきて、俺の肩を掴んだ。あー、この人ロキシーのお父さんだ。
「お、お前、い、今ロキシーといったか!」
「ええ」
答えると同時に、視界の端で拳を握りしめたルイジェルドに制止を掛ける。早い早い。
ロインの顔に怒りの色は無く、焦燥だけがある。
「ロ、ロキシーは、今どこにいるんだ!」
「シーローン王国で第七王子の家庭教師をしていると聞いています」
「そうか……無事か……無事なのか……はは……よかったぁ」
……娘さんが王子にセクハラを受けているってことは言わないほうがいいよな。ロキシーこんなに愛してくれている人がいるんだから手紙くらい書けよな。
「それで、集落には入れてくれるんでしょうか?」
泣き崩れるロインを尻目に、長ロックスへと話を振る。
「無論だ。ロキシーの無事を知らせてくれた者を、なぜ無下にできようか」
何だ。親御さん以外もロキシーの事を心配しているんじゃない。
『ミグルド族の里』へようこそ!ってね。
しばらくIFの方を書きます。本編と進行を揃えた方が書きやすいので。