ミグルド族の村に来るまでに、救助できたのは3人。多いのか、少ないのか。少ない気がするなあ。
もっと捜索する範囲を増やさないとな。
ミグルド族の里は正直に言ってブエナ村よりも貧しい。これが魔大陸ということだろう。
家は地面掘って甲羅を被せた様な頑丈なテントといったもの。
畑に植わっているのも栄養価は高くなさそう。萎びてしるし。
だから食料はほとんど魔物だろう。美味しいのかな。
村を観察しながら歩みを止めずにいると、村一番の大きさの家。里長のロックスの家に着いた。
「お邪魔しまーす」
「お、お招き頂き、ありがとう御座いますわ……」
何時までエリスは敬語なんだろうか……。
中は昔のそれこそ縄文時代の日本のようだった。毛皮を敷いていて寝袋も毛皮。
端には剣や弓などの狩猟道具。中央には囲炉裏らしきものがある。
「さて、では話を聞くとしましょう」
ロックスは囲炉裏の近くにどっかりと座り、そう言った。ルイジェルドがその正面に、俺はルイジェルドの隣にあぐらをかいて座った。
エリスはとみると、所在なげに立っていた。
「家の中でも床に座るの?」
「剣術の授業では、よく床に座ってただろ?」
「そ、それもそうね」
そうしてエリスも床に座った。
話し合いに進む前に俺の簡単な自己紹介とエリスの身分の説明を終えた。そして、どうして魔大陸に来たのかは分からないこと、出来れば迅速に帰りたいことを伝えておいた。
「……と、いうわけ」
「ふむ」
ロックスはそれを聞いて、顎に手を当てて考えだす。歳とるとする奴俺もしてた。
「……そうさのう」
結論を出すのが長引きそうだから眠そうなエリスは寝て貰うことにした。
「話は俺とルイジェルドが聞いておくから、寝ててもいいよ」
「………寝るって、どうやってよ」
「そのへんの毛皮にくるまって」
「枕がないわ」
「俺の膝とか渡したぬいぐるみ使いなよ」
「ひ、膝ってなによ……」
「膝を枕にしていいってこと」
「……………そう? あ、ありがと」
あれ?膝の方にするんだ……てっきりぬいぐるみの方をするのかと、ああそっちは抱き枕にするのね。
家族と離れて不安だろうから安心させるために頭撫でてやろう。
「仲がよろしいのですな」
「それはもう。仲良くなかったら叩き出されるので」
「それで、どうやって帰るつもりかね?」
ロックスの質問は、ルイジェルドにしたものと同じ。
「お金を稼ぎながら、徒歩で帰ろうかなと」
「子供二人でかね?」
「いいえ、金は僕が一人で稼ぎますよ。これでも稼ぎ口は何個もあります。魔術師なので」
「二人ではない。俺が付いて行く」
と、ルイジェルドが口を挟んだ。力強い味方だから拒否するつもりは無い。けれど、貴方の分の渡航費稼ぐの俺何だけど?俺に何か無いの?
「ルイジェルド、おぬし、付いて行ってどうするつもりね?」
悩んでいると、ロックスが難色を示して、むっとするルイジェルド。
ほら、言われた。
「どうもこうもない。俺が二人を守り、無事に故郷に送り届けるのだ」
「お主、町に入れんじゃろう?」
「む……」
む……じゃないよ。む、じゃそれじゃ困るんだよー。
まあいくらでもどうこうできるけど髪の部分だけ光の当たり具合を変えるとかダーバン巻いてもらうとか。
「子供を連れて町に近づいたら、どうなる?衛兵に追い回され、討伐隊を組まれたのは、百年前じゃったか?」
へー里長百年は生きてるんだ。長生きだなー。俺も今世は百年生きてみたいなー。
「それは、だが……俺ひとりで町の外で待てば」
「町の中の出来事は知らんか、無責任じゃのう」
それでもいいけど。エリスは上級剣士だし、俺は神級相当の魔術は使えるし、街にいるチンピラ程度には負けないよ。
「町中で何かあれば……」
「あれば、どうするんじゃ?」
「町の人間を皆殺しにしてでも二人を救い出す」
その時はやる。という凄みがあるが、それは辞めてほしい。血だらけの街なんてエリスの教育に悪い。
「子供のこととなると見境がないのぉ。……思えば、この里で認められたのも、魔物に襲われていた子を助けてくれた事じゃったか」
「そうだな」
「あれが五年前か、時が経つのは早いもんじゃな……」
ああ、だからロキシーはスペルド族を恐怖の対象として見ていてこの里の人は見ていないのか。ロキシーがいない間にミグルド族はルイジェルドとの親交を深めたんだ。だからその時を過ごしていないかつ外で暮らしていたロキシーはスペルド族を恐れている。なるほど。
「しかしルイジェルドよ。そんな強引さで、お主の目的は達成できるのかな?」
「む………」
そうそう目的。スペルド族の悪評を祓うのはどうするつもりさ。
呪いのせいとはいえ敵味方関係なく殺し回ったんだからさ。そんな強引な方法だと何も変わらないよ。
まっ分かってはいてもどうしよも無いことってあるよね。俺もそうだったし。
「着いて来るなら手伝うよルイジェルドのやりたい事」
「良いのか、何をしたいのか話して無いのに」
「いいのいいの。護衛してくれるんでしょ?俺達お金ないんだからさ代わりの報酬を渡さないと」
「あ、ああ」
「で、何したいんです?」
そうして旅の目的にスペルド族の悪評を取り除く事が追加された。
次の日の朝、村を出ようとしたら門番のロインから、
「おはよう」
と、声をかけられた。
「もう行くのか?」
「昨日のうちに話もまとまってルイジェルドも来てくれることになったし、そうなるかな」
「娘の話を聞きたかったんだが……」
「俺は此処で暮らすのもやぶさかじゃないんだけど、エリスはそうじゃないので」
「そうか……」
「その代わりにどうぞ」
「なんだこれは……ロキシーそっくりだ」
「それが今のロキシーの姿ですよ。差し上げます」
話を出来ない代わりにロキシー人形とロキシーの写真を渡しておく。喜んでくれて嬉しい。早く帰ってこいロキシー。
「会ったら故郷に帰ったら?と伝えておきますよ」
「頼む……」
頭を下げられ、ロキシーに出会った時に伝えようと、心の中にメモっておく。手紙はちょっと離れすぎて無理。魔力探知出来ない。
「あ、そうだ、ちょっと待っていてくれ」
ロインは、ふと思いついたように言うと、村の中へと駈け出した。一軒の家 (おそらくロキシーの実家)に入って、数分後。
ロキシーによく似た女の子と一緒に戻ってきた。誰かを呼び出すなら念話を使えばいいのではないか、と思ったが、何か剣のようなものを持っていた。
どうした?婚儀の決闘か?負けんぞ。
「家内だ」
「ロカリーです」
「ルーデウス・グレイラット。お若いですね」
「そんな若いだなんて……今年でもう102歳ですよ」
「まだまだ十分お若いですよ」
なんだこの里の大人は大体百は超えてるのか……。
「ロキシー先生には世話になりました」
「先生……あの子が人に教えられるような事なんて、何かあったかしら……」
「知らない事をたくさん教えてもらいましたよ。それこそ魔神語とか」
「しかし、ちょうど俺が門番をしている時に来てくれてよかったよ」
「本当に、会えてよかったですよ。ロキシー先生には、本当にお世話になりましたから」
「これを受け取ってくれ」
ロインはそう言って、持っていた一振りの剣を差し出した。
「いくらルイジェルドがいるとはいえ、丸腰じゃ心もとないだろう」
「おお、ありがとうございます」
と、受け取り、鞘から抜いてみる。武骨で年季を感じさせれる傷が持ち手などにあるけど刃こぼれは一切無い。そして、鈍く光っている。
いい剣だ。
「昔、フラっと集落に寄った鍛冶師にもらった物だ。長年使っていても刃こぼれ一つないほど頑丈だ。よかったら使ってくれ」
「ありがとうございます。大切にしますね」
よし、早速エリスに渡そう。彼女の剣を何度も作るのは大変だなとは思っていたんだ。
「それから、こっちは金だ。大して入ってはいないが、宿に2、3日泊まれる程度にはあるはずだ」
やったーお小遣いだ。今世ではお小遣い始めてもらった気がする。
昨日会っただけの子供なのにこんなに良くしてもらったんだ。ロキシーには里帰りしてもらわないと。
最寄りの街までは三日ほどかかるらしい。だから探知範囲に人の気配が全然ないのか。まあおかげでいる人は皆転移した人だってわかるけど。
街に着いたらルイジェルドみたいに流れ星を見た人を探さないとな。方向がわかった方が精霊の数を絞れて負担が減る。
道中で、あまりにもルイジェルドが一人でしようとするので俺の杖とエリスの剣技を見せて俺達がただの子供ではないことを証明したりした。
そうだ俺達は戦士なのだ。
戦士である俺達が始めに戦ったのはストーントゥレントという岩に擬態する木の魔物。嘘をつくあのモンスターとは真逆の魔物だ。
この魔物は魔大陸では薪として利用されているので、水や火は使えない。あんまり関係ないけど。
「エリス。好きに動いて、いい感じに援護するから」
「わかったわ!」
そう言うとエリスはストーントゥレントに向けて駆け出す。するとエリスに反応して、擬態を解いて襲いかかってきたからその腕を風で縛る。練度を上げるとこんな事も出来る魔術は素晴らしい。
それをチャンスと見たエリスが切り刻む。あーあ、何も出来ずに可哀想に。
ていうかあんまり強くないな魔物。何回かは攻撃する必要があると思っていたんだけど1回か。上級とはいえエリスは十一の少女なんだけど。
「どう!ルーデウス!」
「流石だよエリス」
「そうでしょう!」ふふーん
「……お前は何もしないのか?」
「しましたよートレントの動きが鈍かったでしょ?あれは俺がやったの」
「……詠唱も魔法陣も無しにか」
「無くても魔術は使えるんですよ」
「……そうか。全力の攻撃だとどんな事が出来るんだ?」
「小国を消し飛ばすくらいは出来ます」
「……それは使うな」
「当たり前じゃないですか」
ルイジェルドとの会話を終えると、いい感じの大きさの薪を拾って移動を再開した。
その後、日が暮れるまで、移動しながら4度の戦闘を行った。
ストーントゥレント、
アシッドウルフは、口から酸を吐く狼。1匹だったので、エリスが倒した。鋭い踏み込みから一閃、一撃で首を両断。ルイジェルドに比べると雑だけど、一撃。
とはいえ雑だったので返り血を浴びそうになっていた。洗濯するにしてもその間の着替えの服が無いから返り血は逸らしておいた。……この逸らす技術水神流に流用出来ないかな。
ちなみに二匹目のストーントゥレントは俺が剣で倒した。エリスが簡単に倒したので俺でもいけるかな?とやってみた。なんか普通にいい勝負した。ロインから貰った剣が頑丈だから何とかなった感がある。
そして現在。最後のパクスコヨーテの群れとの戦闘中。
パクスコヨーテは、数十匹の集団を作る。群れるわけではなくて作る。数ヵ月に一度分裂して群を成す。増えた個体はリーダーが制御するので二十体も集まれば並の冒険者は命を落とす。
か、此処にいるのは並の冒険者ではない。エリスはギレーヌに教わった技を試せてニコニコ。今もコヨーテと戦いながらルイジェルドに教わっている。ルイジェルドも教えるのは上手だ。いや、子供の扱いが上手なのかな?
二人で二十を相手にして余裕みたい。凄いなこの世界の剣士。
とはいえエリスが怪我をしそうな場面が何度かあったのでそれは防いでいた。爪や牙だけを風で斬らせてもらった。
そして、二人によって訓練相手だったコヨーテは全滅した。
「ルーデウス!こっちだ!パクスコヨーテは毛皮が売れる。剥ぐぞ。こんなに数がいるとは、運がいいな」
ルイジェルドは、ナイフを取り出しつつ、そう言った。俺とエリスの分のナイフは土魔術で作った。二十となれば相当な量だな。
エリスは戦闘での疲れがまだ取れてはなさそうだけど、ルイジェルドは沢山のコヨーテを前に少し興奮している。全然疲れてないんだろう。
「エリス息を整えておきなよ」
「はぁ……はぁ……。わかってるわ」
「今日が始めての実戦ですけどどう?気分は」
「関係ないわ。いつも通りよ。全部ギレーヌに教わったもん」
それは凄い。血の匂いってのは駄目な奴がまあまあいるってのに………いやこのお嬢様人を血だらけになるまで殴ろうとする奴だった。大丈夫に決まっていたわ。
「エリスに戦わせてどうするつもりだ?」
「女の子だからって戦いが嫌いってわけじゃないんですよ。ほら、ほめてほめてって顔してる」
「そうか……。エリスは精進すれば一流の戦士になれる」
「ほんと!?やった!」
おお凄い。さっきまで息を切らしていたのに凄いジャンプ。よほど嬉しかったんだろう。
今日の戦闘で道中の陣形はエリスとルイジェルドが前衛。そして俺が後衛に確定した。
その日晩に
薬味とか香味野菜を使ったらまた違うのかもしれない。だってかなり生臭いし、硬い。
今日は二人か。明日はもっと頑張ろ。
ルーデウス バットステータス
過度な魔力消費による白髪化
広範囲の探知(大体半径50キロ)により脳の負荷大
救助の為の精霊召喚(偽)による魔力消費も追加され使える魔術に制限がかかる。最大出力が聖級までに