ルイジェルドの事がバレてしまっては仕方ない。泣いた赤鬼作戦を行おう。
作戦会議をするためにまずは、クルト達を逃がそう。その後ルイジェルドと話し合おう。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫なわけがあるか!見ろよ!アレはデッドエンドだぞ!」
「そうとなれば逃げるぞ!立てるか?」
「あ、ああ立てる。立てるぞ!」
「よし、来た道を進んで逃げろ!エクスキューショナーは俺達で倒しておいたから大丈夫だ!」
「あ、ありがとう!おい逃げるぞ!」
うん、逃げ足は速いな。B級からも逃げるだけなら出来そう。
「ルーデウス、アイツらどうしたの?」
「ルイジェルドが怖いんだって」
「ふーん。私はルイジェルドのこと怖くないんだからね!」
「はいはい、そうだねー。数は減ってるけどルイジェルドの加勢するよ」
「わかったわ!」
ルイジェルドが一人であらかた片付けていたから、加勢しても意味はあまり無かった。
「済まない、ルーデウス」
「ホントにね?まあいいけど」
「ゆ、許してくれるのか?」
「そりゃあもう。じゃあこれからについて話し合おうか」
それから俺はルイジェルドの泣いた赤鬼作戦の説明を行った。ミグルド族だって助けてもらってルイジェルドの事を信頼したんだ。それとおんなじ事を大規模にリカリスでもやろうと。
「わかった。それで俺は何をすればいい?」
「しばらくそうですね……三日ほどリカリス周辺で活動してほしい。周囲にデッドエンドがいるってことを認識させておかないと竜を討伐したのが他の誰かと思われちゃうでしょ?」
「例えばドラゴンスレイヤーである。俺とエリスとか、まあ俺たち二人はルイジェルドと一緒に戦うつもりだけど……」
「そんな大規模な魔術の制御は出来るのか?」
「おいおいルイジェルドさんや。まだ俺の実力を疑っているのかい?いい加減信頼してくれてもいいんじゃないかなぁ?」
「俺はお前の体調を心配しているんだ」
『……もしかして気づいていた?』
『ああ、お前が魔術を限界ギリギリで毎日使っていたのはな』
『それエリスとか家族には黙っててね?まあこれくらいの魔術なら大丈夫だよ』
『……わかった』
「二人で何、内緒話してるのよ!私にも聞かせなさいよ!」
「俺が魔術を途中で使ったのは覚えてる?」
「もちろん覚えているわ!」
「それで倒した魔物をどうするか話していたの」
「ルーデウスが倒したんだからルーデウスのものじゃないの?」
「俺が倒したっていう証拠がないし、その魔物は森の入り口で会った豚さんが持って行っちゃった」
「……許せないわ!!!」
「いいんだよ。別に欲しくもないからさ」
「ルーデウスがいいって言うなら……わかったわ」
その後ギルドには俺とエリスの二人で帰ってきた。ルイジェルドが来ちゃったらクルト達と鉢合わせして騒がられるかもしれないからな。ごめんね。
……お前らがガキがアーモンドアナコンダを倒せるわけないと難癖つけられたけどエリスが撃退してくれた。これに懲りたら見た目で判断するなよ。
3日後の作戦決行日。
リカリスの人々は口々にデットエンドの事を噂している。デットエンドは襲撃を企てているーとか子供を攫おうとしてるーとか根も葉もない噂。
そんな中で俺は魔術を発動させた。雷龍だとルイジェルドが空を飛べないから作戦には組み込めない。ということで、今回作り出す龍は岩を纏ったこの世界では地竜と言われている奴にする。
リカリスの人々は正に終末を予言されたよう。町の一画(スラム)はもう地竜に飲み込まれてしまったから無理もない。
さあ!目を見開け!英雄ルイジェルド誕生だ!
……ダメだった。ルイジェルドの強さをちょっと過小評価していた。まさか魔術の脆い点を的確に突いて一撃で壊しちゃうとは……。全力でやっていいなんて言わなければ良かった……。自信あったんだけどなあ。
おかげでルイジェルドの恐ろしさを知らしめるだけになってしまった……この作戦じゃだめかぁ、いいと思ったんだけどな思ったより呪いが強いようだ。
今回の事はルイジェルドが地竜を制御できずに起きた事だと思われてしまった。
因みに地竜の亡骸は調整して体内を人が住めるようにしておいた。うまく使いな。餞別だ。
……町壊したの俺だけど、高そうな街灯壊したの俺だけど。バレなきゃ犯罪じゃないから平気平気。人は殺してないし、物資も体内にあるから探してね。
だからルイジェルド。作戦の失敗を申し訳なく思いつつ、俺を睨むの辞めて?善人も子供も殺してないからさ?ね?
「お前が俺のことを思って今回の事を起こしてくれたのはわかっている。だがあれはやり過ぎだ」
「……はい。ごめんなさい」
「これからは、俺の事は後回しにしろ」
「え?は?」
「安心しろ。悪評の回復をせずとも、俺はお前たちを守る。信用しろ。いや、信用してくれ」
「ルイジェルドこそ俺の事を信用しろよ?何?俺だと悪評の回復が出来ないと思ってるの?」
「そうなの?ルイジェルド!ルーデウスは凄いんだから任せておけばいいのよ!」
「……じゃあ、よろしく頼む」
翌朝。起きると、ルイジェルドがスキンヘッドになっていた。
「今回のことで、人が俺の髪を恐れていると分かったからな」
今までわかって無かったのか………
リカリスの町を出てから1年。遂に魔大陸南端であり港町であるウェンポートに辿り着いた。
この一年で、
エリスは遂に無詠唱魔術を使えるようになった。魔術のアレンジもできるようになり、ぬいぐるみも自分で作れるようになったのだ。まだまだ精度は高くないけど確かな進歩。
後、魔神語を覚えて会話ができるようになり、毎回喧嘩を買うようになってしまいました。先生はエリスさんの将来が心配です。
ルイジェルドの悪評も少しは改善した。今までは姿を見られるだけで人々に怯えられ逃げ惑われていたのに……なんとスペルド族とバレても恐怖で腰が抜けるくらい。ルイジェルドとエリスが初めて会った時ぐらいまでになった。
前世でのゾンビや幽霊くらいまでに改善した。………これで改善したってのが悲しい。
海岸に来たという事でエリスが泳ぎたいと言ったがルイジェルドから海には魔物が多いから泳ぐべきでないとの進言があったので俺が砂浜にプールを作って泳ぐ事になった。
その日はパシャパシャ遊んで宿で眠りについた。
この世界って水着ないんだね。下着姿で泳ぐってのを始めて知った。エリスは川でよく泳いでいたみたいだけど、その時も下着姿だったんだろうか……。
「ルーデウス、魔術ってホント何でも出来るのね!」
「そうですよー。でもお願いがないと何が欲しいのか分からないから作ってあげられない。だから今後はもっとやりたい、欲しいものがあったら言っていいからね」
「わかったわ!」
エリスは家族の事はどう思っているんだろうか。故郷に帰りたいって中々言わないし、泣き言を言ったのはリカリスの宿だけだった。
あーあ、わがまま娘のエリスは何処に行ったんだろうか。魔術も、魔神語も魔大陸に来てからなんか真面目に取り組んでいるしさ。いいことなんだけどさ。なんかなーとおじいちゃんは思うわけでして。
翌日、俺たちはミリス大陸に渡るための方法を探しに冒険者ギルドに行き、受付に関所を案内され、そこで料金を聞くとスペルド族の渡航費が膨大であることを知った。
「緑鉱銭200枚かー」
「すまんな、俺のせいで」
「いや、仕方ないでしょールイジェルドが気にすることはないって」
「でも、困ったわね。まさかルイジェルドだけ置いていくわけにもいかないし」
「方法は幾つかあるんだよ」
「ほう」
「凄いわね!幾つもあるなんて!」
「一つ目。依頼で緑鉱銭200枚を稼ぐ」
「でもそれは時間がかかり過ぎるんじゃない?」
「そうなんだよ。今持ってるお金は緑鉱銭100枚に満たないくらいだから何ヶ月もかかっちゃう。いくら俺達がA級冒険者だと言ってもね」
「次に、二つ目。迷宮に潜って価値のあるものを取ってくる」
「迷宮! いいわね! 行きましょう!」
「だめだ」
「どうして?ルイジェルド」
「迷宮は危険だ。罠は俺の目では見きれんものもある」
ふむ。罠かどんな罠があるのかも定かじゃないのに挑むのは確かに危険か……
「行ってみたいのに……」
じゃあ1回くらいは行こうかな。C級くらいならルイジェルドもダメとは言わないでしょ。
「三つ目。お金持ちに援助してもらう」
「誰によ」
「誰でしょう?」
「ダメじゃない」
はい、ごめんなさい。
「四つ目。密航」
「密航?」
「関所を介さずにミリス大陸に行くってことです」