吹き飛ばした屋敷の瓦礫の中から聖獣様を探すと案外すぐに見つかった。どうやら建物と密接に関わっている結界に囚われていた為に一緒に吹き飛んでしまったらしい。けれど、聖獣様には外傷は無い。ふー、セーフ。一応治癒魔術かけておくか……よし。それじゃあ大森林に行きますよ〜。
ガチャン
……?あー首輪が鎖で繋がれていたのかごめんなー気づかなくて今外すからなー。これのせいでたあと一緒に吹き飛んだのか?
首輪だけを熱したり冷ましりして首輪を脆くさせてから軽く力を込めると……うん。外れた。
「ウォン!」
ベロベロと顔を舐められている。これは懐かれているってことでいいのか?ただ聖獣様が人懐っこいという可能性は無いか?
――……重いな退いてくれない?動けないんですけど。
「ウォン!」
いや、ウォン!ではなくて退いて?大型犬にのしかかれて動けない怪盗なんて誰が見たいのよ。少なくとも俺はそんな怪盗ではない。
しばらくのしかかれ舐められていると人影が見える。
「貴様、聖獣様に何をしているか!」
ほら~来たよ君の保護者。怒ってるみたいだからどうにかしてくれない?
口元に手を当てている。……吠魔術か。そのまま喰らう馬鹿じゃないんでね合わせるか。
『ウオオオオォォォォォン!』
「空震」
吠魔術は音魔術とも言われる魔術で、原理としては自身の声に魔力を乗せるものだと。つまりは空気を媒介にして発動している魔術。だから空気を乱すと……
「なっ!?効いていない!?」
「イッツァマジックってね?」
「……ガァオ!」
まあそうなるよな。魔術で無力化出来ないなら武術でくるのは当たり前。だが、エリス以上に愚直だな。どんなに速くて見えなくても真っすぐ来ることが分かっているのなら幾らでも方法はある。……魔術師だから舐められているのか?
時間が無いので空震を発動した時の残りを使って風の壁を正面に作る。すると何故か衝突を避けられたので火の矢で追従する。ギレーヌは火が苦手だったから火にしてみたけどどうだろう。ボレアス家のメイドたちに聞いておけば良かったか。
「ふん!どうした怪盗。それだけか?」
初級程度のものとはいえ火の矢を切るって事はあまり火に恐怖心は持ってないのかな?
見えないはずの風壁をどうして避けられたのかと思ったけどただの山感か。
「さぁ?どうでしょう?お客様がお望みになるのであればもっと様々なショーをご覧になれますよ?」
「貴様のしょうなどに興味はない。聖獣様を開放しろ!」
それにしても獣人の身体能力はすごいな。全然目が追いつかない。空中に仕掛けている魔術も綺麗に避けられている……。突っ込んでくるからまだ何とかなるだけ。
「ガォオ!」
【獣人ギュエスが周りの木を利用した3次元の動きでばら撒かれた魔術を避け怪盗を脳天から叩き割る。が、怪盗は地に伏す事はなく粉々に砕け散りギュエスの叩き割った物の正体が明らかになるだけだった】
「これは……氷?」
「ええ、その通り。貴方が先ほど私の魔術を避けるために森に入った時に入れ替わっていたのです。どうです?本物そっくりだったでしょう?」
「そうか……」
……ん?何でまた吠魔術?
『ウオオオオォォォォォン!』
「空震」
なるほど……狙いは俺の無力化ではなくて……、
「ギュエス、どうした?」
「戦士長どうかしましたか?」
増援か。
「アイツが怪盗ルパンだ!」
「アイツが!!!」
あらあらそんなに怒ってどうしたのかな?手品でも見て落ち着こう?打ち上げ花火とか見たこと無いんじゃない?
ドーン!
「うるさい!」「クソッ耳が!」
あと、もう小さな玉じゃあ止められないから
「エレメントカーテン」
【増援の戦士が参加してから戦いは一対一の時とは比べものにならないほど激化した。怪盗によって展開された4属性の魔術の壁を無理矢理破るために獣人たちは限界まで体を使いその踏み込みや衝突で吹き飛んでいた屋敷の瓦礫はとうに塵になり、木々も幾つも倒れ戦闘の余波で地下が崩壊してい為にお椀状の即席の闘技場が生まれた。始めは五人ほどだった増援もいつの間にか十五を超えている】
うーん。どうしようか。あっちが落ち着くまで続けるか?気絶させようにもあまりにも速くて丁度良い魔術だと当てられないんだよな。捕らえようにも山感で風魔術は避けられるし、泥沼とかで動きを鈍らせようにもそんなものでは止まらないし。こういう時に使えるライトニングは今は俺しか使えないから後々面倒になりそうだから使いたく無いんだけど………。おっと。
「チッ、これでも当たらんか」
「どうします?族長、戦士長このままだと負けるのはコチラです」
「何を言う。相手は魔術師だこのまま魔力切れまでやれば勝てるのは我々だ」
「――そうだろうな」
お?諦めてくれる感じ?そうしてくれると嬉しいな。安心しなよ聖獣様を捕ったりはしないからさー。少し話したろ返すから。
「親父!?」
「聖獣様。我らではその者には勝てない様です。貴方様の試練を乗り越えることが出来ず情けない限りです」
え?いつの間にそういうことになってるの?
「ウォン!」
「おお!寛大な御心に感謝いたします!怪盗ルパンいえ、聖獣様の使徒様」
何だよそれ。勝手に変な設定生やすな。
「族長?」「親父?」
「そもそもの我々の下に怪盗の予告状が届いて来なかった事が違和感を持った事の始まりでした。『深き森の奥に住まう、救世の獣をいただきに参ります』この救世の獣とは聖獣様の事であるのは確か。それなのに予告状はザントポートへと送られていました」
「……つまりどういうことだ?」
よく言った戦士長。いきなり斬りかかったことは許してやる。
「わからないのかギュエス。これだからお前は……。良いか使徒様は我々の失態を受け聖獣様を救出に動かれたのだ。聞けばザントポートでも悪を誅する為に動かれていたのだとか。正に世界を正すお方だ」
うん。もうそれでいいよ。
「ウォン!」
そうして俺は族長に謎の設定を生やされ、感謝をされた。
今後の俺の怪盗生活どうなるのな。