(あぁ、報告書を書かないと……)
しばらく安静にしていれば明日には動けるようになるだろうと、診察をしてくれた分析官の
昨日、常守は狡噛さんをドミネーターの非致死制圧モード《
その場面が今もありありと脳裏に過ぎる。
あれで良かったのかな……と再度悩んだところで唐之杜さんが言っていた【新人】の話に意識を切り替えた。
年齢も近いから、同期と呼んでもいいのかもしれない。
頼れる仲間が増えることは嬉しい。右も左も分からないまま放り込まれた昨日の事件では、早速大きな失態をやらかしてしまったからだ。
(うぅ……とりあえず狡噛さんが無事でよかった。後でちゃんと謝らなくちゃ)
唐之杜はその2人の少女を「面白い子たちよ」と言っていた。
何がどう面白いのかは分からないが、きっと仲良くなれるはず。そう思いながら分析室からの帰りを急ぐ。
「……?」
なにやら一係が賑やかだ。
宜野座さん…ではないだろうから、新人の2人だろうか。
「そんで、2人はなんでこんなところへ?」
「
「ッて!クニっち暴力反対!!」
「別になんてことは無いって言うか…あはは……」
一係に戻ると見た覚えのない少女二人と、縢さん
正確に言えば、少女の片割れであるくすみのある淡いブラウンの髪の少女は会話に参加せず傍で見守っているように見える。
今日配属という話だから、もうこの二人と仲良くなったのか。縢さんらしい。
「あ、こんにちは。常守監視官…ですか?」
縢さんと会話をしていた少女が常守に気が付き、声を掛ける。
明るく屈託のない笑顔から感じるこの心地よさは何だろうか。初対面なのに不思議と昔から知っているような、そんな安心感があった。
彼女がチラリともう片方の少女を見ると、その子が席を立ち常守に敬礼する。
「本日付で配属になりました、
「同じく
「葉風ちゃんは監視官で、椋羽ちゃんは心理支援官なんだって」
「心理支援官、ですか?」
「はい。みなさんの心理ケアやカウンセリング、被害者への初期心理支援などを担当します」
初めて聞いた役職だ。養成所でもそんな役職は聞き覚えが無いので新設なのかも。カウンセラーのような人がいてくれるなら、現場で辛い思いをする人も少しは減るのかもしれない。
「よろしくお願いします、常守
「もちろんです。ね、椋羽ちゃん」
「はい!」
想像以上に可愛らしい2人だ。私より一つ年下なんて思えないくらい、どこか落ち着いて見える。
葉風ちゃん、は落ち着いて見える。
同じ監視官としてなんだか頼りになりそうだ。しっかりしていて芯を感じる。きっとシビュラに適性を見出されたのもそんな要素があったからだろう。
椋羽ちゃんは心理支援官の名にふさわしい柔軟さを感じる。直ぐに人と仲良くなれて、心の懐に入り込めるようなそんな柔らかさ。
もし昨日椋羽ちゃんが着任して同じ事件に対応していたなら、執行されてしまった
でも事件に巻き込まれ被害者となってしまった
しばらく考え込んでしまっていたことに気が付き、ハッと顔をあげると葉風ちゃんと目が合う。
そこに、鏡があったような気がした。
葉風ちゃんは静かにこちらを見ているだけなのに、不思議と自分の内側まで映してしまうような瞳。
同じ監視官だから? 歳が近いから?
……いや、そんな言葉では説明できない。
「葉風ちゃん」
「ん」
椋羽ちゃんが声をかけ、彼女はそちらを向いた。
先程までの感覚が嘘のようにそこにいるのは確かに葉風ちゃんだ。考えすぎて疲れているのかもしれない。常守はひとつかぶりを振ると自分のデスクへと戻る。
報告書の続きを書かなければ。
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執行官
正規の監視官より1日遅れて配属になった監視官。聞いたこともない肩書きを用意してまで差し込みたかった心理支援官。
きな臭いったらありゃしない。
長年の勘が「面倒事だ」と囁いている。そしてこういう時の勘はたいてい当たるもんだ。
どう思うか、と伸元に聞かれたため素直に意見を述べたところ「また刑事の勘か!」と怒らせてしまった。
この確執は簡単には解決しない。たとえ親子といえど監視官と執行官。一昔前は潜在犯に対する誤解もあり、あいつが良くない思いをしたのも事実。
さてどうしたもんかな、と考えながら征陸は歩く。
とりあえずこの2人が配属されたのには何か上の思惑があるはずだ。
本人たちが自覚しているかは分からないが、まずはそれを突き止めてからでないと話は始まらない。