魔法至上世界の銃職人〜魔法が最強の世界で、魔法より強い銃を作って最強の戦士たちに提供したら、最強集団が出来上がってしまった〜   作:水葉わいん

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第4話

 

 

 

「うぐっ……」

 

 俺は少しの倦怠感と共に、薄目を開ける。

 

「一体、何が……」

 

 記憶が混濁としている。

 

 確か……意識を失う前、俺は少女を助けたはず。

 それから……背後から殺気を感じて……。

 

「そうだ、鳩尾(みぞおち)に膝蹴りを食らったんだった……!?」

 

 俺は思わず、飛び起きた。

 次の瞬間――

 

「――良かった! 起きた……!」

 

 そう言って、安堵の笑みを浮かべる銀髪の女性。

 

 待て……この人って……

 

「お、俺に膝蹴りをした……人……」

 

 俺は慌てて後退り、腰に手を伸ばす。

 ……が、腰には銃は無かった。

 

 不味い、銃は取り上げられてしまったのか……!?

 

 ええっと、じゃあ――

 

「――ま、待って! 私は敵じゃないよ!」

 

「敵じゃないって……出会い頭に膝蹴りをしてきた人が敵じゃないわけないでしょ……!」

 

「違う、勘違いなの……私はてっきり、君が妹を襲おうとしたのかと思って……」

 

「勘違い……?」

 

 そんなことあるか……?

 俺が怪訝に思っていると……廊下から一人の少女が現れた。

 

「――お兄さん! 起きたんですね……!」

 

「君は……」

 

 12歳くらいに見えるその子は……まさに、俺が誘拐犯から助けた少女だった。

 少女は、突然、頭を下げた。

 

「うちのお姉ちゃんが本当にごめんなさい……! お兄さんのこと、誘拐犯だと勘違いしちゃったみたいで……」

 

「っ……!? ほ、本当に勘違いしたのか……?」

 

 つまり、俺が誘拐犯かどうか、ちゃんと確認せずに衝動で俺を殴ったってことじゃん……!?

 考えなしにも程があるだろ……。

 

 そうやって俺が呆れた視線を向けていると――

 

「本当にごめんなさい……君が誘拐犯じゃないことなんて少し考えればわかることだったのに……」

 

 銀髪の女性は心底申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「まあ……治療してくれたから良いけどさ……」

 

 俺は溜め息を零す。

 

 その時、銃のことが頭に浮かんだ。

 

「――あっ! そうだ、俺の銃! 俺の銃は無事か!?」

 

「銃? もしかして、あの沢山の魔銃のこと? それなら勿論、無事だよ」

 

 そう言って、銀髪の女性は机の横に置かれた鞄と一丁の電撃銃を指差した。

 

「はぁぁぁ……良かったぁぁぁ……俺の(いと)しの銃たちが無事ならいっか」

 

「ほ、本当っ!?」

 

「要するに妹への愛が強すぎるが故に周りが見えてなかったってことでしょ? なら……まあ、ギリ許すよ」

 

 どうやら、ポーションか回復魔法かで俺のことを治療してくれたみたいだしな。

 

「あっ……でも、代わりに一つ、訊いても良いか?」

 

「うん! 君には妹を助けてもらった恩があるからね。何でも答えるよ」

 

「じゃあ……実は俺、『姫騎士』って人を探すために冒険者ギルドに行こうとしてるんだけど……冒険者ギルドの場所、教えてくれない?」

 

 銀髪の女性は俺の言葉を聞いて目を大きく見開くと……少しだけ口角を上げた。

 

「ふふっ、その必要はないと思うよ?」

 

「え? どうして……?」

 

「――だって、私が『姫騎士』と呼ばれる者だからね」

 

「……へ?」

 

「私の名前はラディア。元々は既に滅んだ西の小国の王女で……今は冒険者として活動している者だよ」

 

 銀髪の女性――ラディアは胸に手を当てて、そう自己紹介した。

 

「………………ええええええ!?」

 

「お兄さん、お姉ちゃんを探してたんですか……!?」

 

「あ、ああ……まさか、こんな偶然があるなんて……」

 

 じゃあ俺、会いに行こうとした相手に突然、ぶん殴られたってこと……?

 

 運がいいんだか、悪いんだか……。

 俺は苦笑いしながら、自己紹介する。

 

「俺はクライン。魔銃職人だよ」

 

「魔銃職人……?」

 

 ラディアは机の横に置かれた銃を一瞥すると、質問を投げかけてきた。

 

「魔銃を持っているということは……もしかして、噂を聞いて私に魔銃を売りにきてくれたの!?」

 

「そういうことだね。俺は誰にでも銃を売る気はないけど……高明なSランク冒険者さんになら是非と思ってさ」

 

「そ、そうだったんだ……凄い偶然……」

 

「まさか、」

 

「俺は魔銃においては世界一の職人の自信がある。俺から魔銃を買ってくれないか?」

 

 俺が自信満々に言うと……ラディアは少し複雑そうな表情を浮かべた。

 

「……うーん、本当は即答したいんだけど、私の命を預けることになる物だからね……。申し訳ないんだけど、銃の性能を試させてくれないかな……?」

 

「勿論いいよ」

 

「いいの……!? ありがとう……! 凄く助かるよっ!」

 

 俺はベッドから立ち上がると、鞄から幾つかの銃を選び取り、机の上に並べた。

 

「とりあえず、オススメはこの三丁の銃かな」

 

「へぇ〜、他の銃はダメなの?」

 

「まあ、売るつもりがない品とかもあるからね……」

 

 俺は苦笑いをして、誤魔化した。

 

「じゃあ、この三つの銃を試し撃ちさせてもらってもいい?」

 

「ああ、勿論! ……といっても街中じゃ不味いから場所を移動しなきゃな」

 

「えっとね……この街のすぐ近くに低ランクのモンスターが出現する平原があるから、そこに行こっか」

 

 俺はラディアの言葉に頷き、平原へと向かった。

 

 

 ――◇――◇――◇――

 

 

「じゃあ、まずは……この銃身が短い銃だな」

 

 俺は近くにあった大きめな岩に銃口を向けると、引き金を引いた。

 

 雷撃が迸り、20mほど先の岩に焦げ跡をつける。

 

「へぇ……! これは凄い……」

 

 ラディアは感嘆の声を漏らしていた。

 しかし……実際、その声色は少し残念そうだった。

 

「っ……気に入らなかったか?」

 

「ご、ごめん……。いや、魔銃の性能は極めて良いことはわかるよ? だけど……どうしても、精霊魔法と比べちゃってさ……」

 

「っ……」

 

「ごめんなさい、気分を悪くさせたよね。さっきの言葉は忘れて……!」

 

 ラディアは申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 でも……精霊魔法と比べると……か。

 俺は一つの疑問が頭に浮かんだ。

 

「……ラディアは魔法使いを圧倒できるくらい身体能力が高いんだし、銃にそこまでの性能を求めなくてもいいんじゃない?」

 

「……うん、私も少し前は同じことを思ってたよ」

 

 ラディアは下唇を噛んだ。

 

「何か深い事情があったのか?」

 

「少し前に……私は天才魔法使いに思い知らされたの。剣は精霊魔法に勝てないって」

 

 空を見上げて、そう呟く姿からは哀愁が漂っていた。

 

「勝てないって……実際に戦って敗北でもしたのかよ……」

 

 俺が何となく言い放った言葉に――ラディアはゆっくりと頷く。

 

「うん、負けたよ。私は千人の兵士を殺すのが限界だった。けど――相手は灼熱の太陽を作たり、大地ごと凍てつかせたりして……一瞬で一万の兵士を殺したの」

 

「っ!?」

 

 訊かなくてもわかる。これはラディアの母国での話なのだろう。

 

 そうか……確かに戦争じゃあ、そうなるよな……。

 

「でも、一騎打ちならラディアの方が上手なんじゃないか?」

 

「……ううん。相手は飛行魔法で常に上空にいるの。ジャンプすれば、こちらからも攻撃は届くけど……逆に空中で回避ができない私は無防備になっちゃう」

 

「……確かに」

 

 じゃあ、剣士ですら魔法使いに勝てないのか……。

 とんでもない時代だな……。

 

「でも、それならラディアも精霊魔法を使えばいいんじゃ……」

 

「ダメなんだよ。私は何故か精霊に嫌われてるらしくてさ……。精霊魔法が使えないんだよね」

 

 そう言うラディアは凄く悔しそうだった。

 

「そんなわけで私は精霊魔法に勝てる方法が欲しい。戦争では勝てなくたっていいから……せめて一騎打ちでは勝てるようになりたい」

 

「……そっか」

 

 精霊魔法に……勝ちたい、か。

 

 俺とラディアではそれぞれ生き様も使う武器も職業も違う。

 けれど――心の内に秘めた願いは全く同じ。

 

 ――精霊魔法に勝ちたい。

 ただ……それだけ。

 

「……一騎打ちで魔法使いに勝てるようになって、ラディアは何をしたいんだ?」

 

「私の目的は妹を守ることだけだよ。敵はきっと王族である私たちを放ってはおかない。私は襲われても逃げれるけど……妹はそうはいかないからさ」

 

「妹のこと……随分と大切にしてるんだな」

 

「ふふっ、当たり前でしょ? 唯一の……家族なんだから」

 

 口元を緩ませるラディアを見て……俺は鞄に手を伸ばした。

 

 一丁の銃を取り出す。

 

 それは――レッドベアーを倒した時に使った俺の最高傑作の銃だった。

 

 

 

 

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