魔法至上世界の銃職人〜魔法が最強の世界で、魔法より強い銃を作って最強の戦士たちに提供したら、最強集団が出来上がってしまった〜 作:水葉わいん
「ラディアの……へ、部屋!?」
あまりにも予想外の言葉に思考が止まる。
「さ、流石に不味いじゃないか? 年頃の男女が同じ部屋に泊まるというのは流石に……」
「でも……クラインの身の安全が心配だよ。夜は襲撃には絶好のチャンスだから私が守らなきゃ……っ!」
「そ、そう言われても……」
流石に同じ部屋で寝るのは不味いんじゃ……?
も、もしも、間違いなんかが起こってしまったら……。
「そうだ! 部屋にはラディアの妹も居るんだろ? 俺も一緒に泊まるとなれば、困惑するんじゃないか?」
「むっ……確かにそうかも」
「そ、そう、だから同じ宿に泊まるくらいが丁度いいんじゃないんかなぁ〜って……」
「それも……そうだね」
ラディアは顎に手を当て、しばらく考えると――
「仕方がない……クラインには隣の部屋に泊まってもらうことにするよ」
「助かるよ……」
俺は安堵の息をついた。
「それよりもさ……今日は一緒に夜飯を食べないか? ほら、親交を深まるだろうし……」
話を逸らすためにも俺はラディアにそう提案した。
「確かに……私たち、まだお互いのことあんまり知らないし、凄く良いと思う……!」
「じゃあ、決まりだな……!」
その後、俺たちは宿に荷物を置き……街の酒場に再び集まった。
「じゃあ、新しい仲間に乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯です!」
俺は二人とジョッキを合わせ、乾杯するとエールをゴクゴクと喉に流し込んでいく。
はぁぁぁ……久しぶりにお酒飲むとやっぱり美味しいな……!
俺はふと、横を見ると……ラディアも俺に負けない勢いでお酒を飲んでいた。
「お姉ちゃんも、クラインさんも凄い飲みっぷりですね……」
ラディアの妹は俺たちを見て、少し羨ましそうな顔をした。
「ふふっ、リリスはまだ子供だからね。飲んじゃダメだよ?」
ラディアは妹に対して、
「へえ……名前はリリスっていうのか」
「あっ……! ごめんなさい。そういえば私、自己紹介してませんでしたね……!」
ラディアの妹は咳払いを挟むと――
「私はリリスです。えっと……知っての通り、お姉ちゃんとは姉妹で……今は滅んだフェリシュ王国の第二王女でもあります」
「じゃあ、ラディアは第一王女なのか」
「まあね〜……でも、もう滅んだ国の話だから変に気にしなくて良いからね?」
「わかったよ」
彼女らの傷を抉るかもしれないから、あまり深く触れない方がいいのだろう。
しかし……気になることが一つあった。
「その……滅んだって言ってたけどフェリシュ王国を攻めたのはどこの国なんだ?」
「……フェリシュ王国の東にあったアステール帝国って国だよ。50年前まではそこまで強国じゃなかったんだけど……」
「……精霊魔法か」
ラディアは深く頷いた。
「アステール帝国は精霊魔法を最初に発明した国でね。最先端の魔法技術によって軍事力を増していって……今では最強と言っても過言じゃないくらい強くなったんだ」
「そうか……」
「結果、剣と伝統を重視しすぎて魔法革命に乗り遅れたフェリシュ王国は滅ぼされちゃったってわけ」
ラディアは肩をすくめた。
もう仕方がないことだったと過去の事は割り切っているようだ。
「ラディアは……これから、どうしたいんだ? リリスちゃんを守る以外にやりたいことは無いのか?」
「ん〜……ないかなぁ。私は王国の再建とかも考えたけど……私、王様ってガラじゃないでしょ?」
「……確かに」
ラディアが王様になっている所は全然、想像がつかないな……。
雰囲気や口調は明らかに『自由気ままな冒険者』って感じだし……。
「……でも、一つ、やりたいことあるかも」
「本当か……!?」
「うん。それはね……二人を守ることかな……!」
ラディアは俺に真剣な眼差しを向けながら話を続ける。
「クラインとは今日、初めて会ったけど……妹を守ってくれたし、私を信頼してとんでもない性能の銃を売ってくれた。もう、家族みたいなものだよ?」
「そ、そうか……?」
「うん、だから私は二人を守れるように誰よりも強くなりたいかな」
そう言うラディアの表情はとても生き生きとしていた。
「ふふっ、お姉ちゃん、クラインさんに魔銃を貰ってから自信を取り戻したみたい……!」
「そうかな? うーん、そうかも……」
ラディアは少し気恥ずかしそうに笑った。
「そ、それよりも……リリスは何かやりたいことないの?」
誤魔化すようにラディアはリリスに質問を投げる。
「わ、私!? 私は……お姉ちゃんについていくだけだよ」
「えー。リリス、いい子ぶり過ぎだよ……! もっとお姉ちゃんに甘えてくれていいんだよ?」
「むぅ……そう言われてもぉ……」
リリスは、うんうんと悩むと――
「……ちょっと興味があることは……あるかも」
「え!? なになに!?」
「私……ポーション作りに興味があるの」
へぇ、ポーション作りか……!
「良いじゃないか。凄く立派な目標だと思うよ」
「ありがと、クラインさん……! 魔法が無くてもポーションを使えば誰でも傷を治せるのって凄く素敵だなぁって思って……」
そう言ってリリスは口元を緩ませて、言葉を続ける。
「それにポーションを作れるようになったら魔法を使わなくても傷ついたお姉ちゃんを治療できるし……!」
「リリス……! ううっ、いい子すぎるよぉ……」
ラディアはリリスの頭を何度も撫でる。
本当に二人は仲良いな。
見ているだけで、こっちも微笑ましくなってくる。
「でも、そうなると錬金術を勉強しなきゃいけないな」
「そうなんですか……?」
「ああ」
俺が頷くと――ラディアが難しそうな顔をしていることに気づいた。
「……錬金術……かぁ」
「どうしたんだ?」
「いや……錬金術に関する情報ってさ、錬金術師たちが独占してるんだよね……。だから、どうしようかと思って……」
「そうなのか……!?」
少し予想外だった。
だって――
「そっか……。じゃあ私、ポーションを作るのは難しいんだ……」
リリスは悲しそうに目を伏せた。
「――えっと……俺が教えようか?」
「クラインさん、ポーションが作れるんですか……!?」
「うん。中級ポーションまでなら作れるよ?」
「え……クラインって魔銃を作れるだけじゃなくてポーションまで作れるの……!?」
ラディアは驚きで目を見開く。
「いや、実はお爺ちゃんが何故か錬金術の知識があってさ。俺も中級ポーションまでは作り方を教わったんだよね……」
「簡単に言ってみせるけどさ……! 中級ポーションが作れるって一流の錬金術師としてやっていけるレベルだよ……?」
「え……!?」
「はぁ……クラインに常識を当てはめて考えるのは間違いだったね」
ラディアは諦めたような眼差しを俺に向ける。
俺をまるで異常者みたいに言わないで貰ってもいいか……?
そう思っていると――
「クラインさんっ!」
リリスは俺の右手を両手で掴んできた。
「お願いします! 私に錬金術を教えてください……!」
「勿論だよ。元々、そのつもりで言ったんだし」
「ありがとうございます……! クラインさん、大好きっ!」
リリスは太陽のような満面の笑みで感謝を告げた。
か、可愛い……。
思わず釣られて俺の口元も緩んだ。
……が、隣からラディアの鋭い視線を感じて気を取り直す。
「もう……! リリス? そんなに簡単に大好きとか言っちゃダメなんだからね?」
「……? なんでなの? お姉ちゃんはクラインさんのこと好きじゃないの?」
「ふぇ!? す、好き……じゃないことはないけど……それとこれは話が別で……」
ラディアは頬を淡く紅潮させながら、そっぽを向く。
「ああもう! とにかくダメなんだから……! わかった?」
「え〜……わかったよぉ」
リリスは少し不満げに返事をした。
えっと……これは俺はラディアにもリリスにも好かれてるってことでいいのか?
仲間として好かれているのだろうが、それでも純粋に嬉しいな。
俺がそう思っていた時――ラディアの後ろから冒険者風の身なりをした男が近寄ってきた。