魔法至上世界の銃職人〜魔法が最強の世界で、魔法より強い銃を作って最強の戦士たちに提供したら、最強集団が出来上がってしまった〜 作:水葉わいん
「――おいおい、姫騎士ちゃん。なんでこんなモヤシみたいな野郎と一緒に飲んでるんだよ……!」
冒険者風の男は酔っ払った様子でラディアの肩へ手を伸ばした。
――が、途中でバシッとラディアに手を払われる。
「私の仲間を馬鹿にするの、やめてくれない?」
ラディアは不機嫌そうに男を睨みつけた。
「仲間ぁ? おいおい、冗談だろ! こんなモヤシに何ができるってつうんだよっ!」
男は俺を舐め回すように見回すと、俺に質問を投げかける。
「おいモヤシ野郎、冒険者ランクは幾つだ?」
「あー、いや俺は冒険者じゃないよ」
「んだと……?」
「俺は魔銃職人だ。ラディアには銃を提供する代わりに俺の身の安全を守って貰ってるんだ」
「魔銃……職人……」
馬鹿にするのかと思ったら、男は何か引っかかる点があったのか、沈黙すると――
「っ!? まさか、ルイが言ってた特異個体のレッドベアーを一発で殺した魔銃職人か!?」
「そうなの? クライン」
ラディアは不思議そうに首を傾げる。
「あー……ま、まあね」
まさか、もうそんなに噂が広まってるなんて。
「とにかく私たちに絡むのやめてくれない? そろそろ、ぶん殴るよ?」
「姫騎士ちゃんは冷てえなぁ。突然、変な男が姫騎士ちゃんと一緒に飲んでたら気になるのは当然じゃねえか」
俺は酒場を見回す。
すると、多くの人が俺たちに注目を向けていることに気づいた。
「っ……はぁ、勘弁してよ……」
ラディアは不満げに口を尖らせた。
「少しくらいいいじゃねえか……! なあなあ、姫騎士ちゃんが目を付けるってことは相当、優れた魔銃職人なんだよな?」
「まあ……それなりには」
「じゃあ、特異個体のレッドベアーの頭を魔銃で一発で撃ち抜いたってのは本当なのか!?」
「……本当だよ」
「すげぇ! そんな魔銃なら精霊魔法に匹敵するんじゃねえか!?」
男は驚いた様子で、大声ではやし立てる。
「ねえ! いい加減にしてくれない? クラインは私たちと食事してるの。邪魔しないでよ」
ラディアは握り拳を作りながら、男を睨みつける。
「ひー、怖え怖え! じゃあな、魔銃職人!」
男は大袈裟に怖がったフリをすると、去っていった。
「……えっと、あの人はなんだったんだ?」
「ふんっ、あいつは万年Bランクの冒険者だよ。いつも私にダル絡みしてきて困ってるんだよね」
「へぇ……」
Bランク冒険者か……。
あれでも、一応、冒険者の中では中堅なんだな。
「さっ、あの面倒な酔っ払いも居なくなったし……話を戻そっか」
「そうだな」
その後、俺たちは何気ない世間話をしたり、錬金術についての質問に答えたりして楽しいひとときを過ごした。
――◇――◇――◇――
「ふぁ〜……流石に今日は色々ありすぎて疲れたな……」
ラディアとリリスと別れた後。
俺は部屋着や日用品を買うために一人で夜の大通りを歩いていた。
「なんとか店が閉店する前に必要なものは買えたし……帰るか」
俺は宿に帰るために大通りを曲がり、少し暗い路地裏を通る。
すると、路地裏の真ん中まで来たところで……背後から複数の足音がした。
「……なんだ?」
俺は背後を振り返ると――さっき俺たちに絡んできた冒険者の男が道を塞ぐように仁王立ちしていた。
「お前は……」
まさか、ここまで尾行されていた……?
しかし、どうして?
俺は警戒して腰の電撃銃に手をかけた。
それを見て……男は嘲笑うような声を上げる。
「ははっ! いいのか? 銃なんて使っちまって……。そんなことしたら――俺の仲間が黙ってないぜ?」
「っ……!?」
再び、背後から足音がした。
今度は俺が元々、進んでいた方向だ。
慌てて振り返ると――複数人の魔法使いが道を塞ぐように立っていた。
「……なるほど。俺は袋のネズミということか」
魔法使いたちは全員、杖を構えていた。
俺が電撃銃で攻撃すれば、あっちも攻撃してくるつもりか――!?
「悪ぃな、魔銃職人。お前はここで始末させてもらうぜ」
男はポキポキと拳を鳴らし、口元を大きく歪めた。
「……何が目的だ? 俺は別にあんたに何もしていないだろ」
「ふっ、確かに
「……はぁ?」
「本来、遠距離武器の最強は精霊魔法だ! だけどよぉ……アンタが特異個体のレッドベアーも簡単に倒せる魔銃なんて普及させちまったら、その常識が崩れちまう」
「っ……そうか」
ラディアが言っていた一部の過激な魔法使い。
つまり――こいつらが、まさにそうなのだろう。
魔法使いの地位を危ぶまれるのを危惧して、俺を殺そうとしているのだ。
「……嗅ぎつけるのが随分と早いじゃないか」
「ふっ。ルイの野郎が馬鹿みてえに言いふらしてたぜ?」
「っ……!」
口止めしておけば良かったか……!
しかし、もう後悔しても遅い。
俺はまさに頭に複数の銃を突きつけられているような絶体絶命の状態だ。
「恨むんなら馬鹿なルイと守ってくれなかったお仲間さんを恨むんだな!」
男は背負っていたロングソードを構えて近づいてくる。
相手はBランク冒険者だ。
俺はどうしたら……。
その時、俺の視界に自分が背負っていた鞄が目に入る。
思い出した! 確か、俺の鞄の中には――
俺はカバンに手を突っ込むと……手の平に丁度、収まるくらいのサイズの円柱が見つかった。
ボタンのような物が付いたこの円柱は――いわゆる閃光弾と呼ばれる物だった。
「これでもどうだッ!」
俺は注目させるような台詞と共に――閃光弾を頭の上に投げた。
次の瞬間、眩い光が閃光弾から溢れ出す。
「ぐあッ!?」
光は夜の暗闇を真っ白に塗りつぶし、暗闇に慣れた男たちの目を強く刺激した。
彼らは目を抑え、痛みで悶えている。
「よしっ……今のうちに……」
俺は振り向くとすぐに魔法使いたちを電撃銃で気絶させた。
そして、路地裏から出ようと必死に走り続ける。
宿まで行けばラディアが助けてくれるはずだ。
だから、そこまで頑張って走って――
「――随分と姑息な手を使うじゃねえか。魔銃職人さんよぉ」
ガシッと俺の肩が強く掴まれ――気付けば、俺は地面に倒れ込んでいた。
「な……んで……」
「ハハッ! 俺はBランク冒険者だぜ? 視界が潰れても音と匂いで一般人をぶっ殺すことくらい出来んだよッ!」
男は俺の首を万力のような力で掴んだ。
俺は必死に、もがくが……Bランク冒険者と俺では力の差が大きすぎた。
ギシギシと骨が軋む音が頭に響き、酸欠で頭が徐々にボーッとしていく。
「死ね……! 魔銃職人!」
男はオーガのような形相で腰から短剣を抜き、振り下ろす。
俺は――咄嗟に首を左手で庇った。
「ぐうッ……!?」
手のひらに鋭い痛みが走り、短剣が俺の手を貫通した。
鮮血が飛び散り、俺の顔を真っ赤に塗りつぶしていく。
濃い血の匂いが鼻をつき、口に入った血は鉄の味がした。
「でも……これで……ッ!」
俺は痛みを堪えながら、別の手で短剣を掴む。
「チッ……往生際がわりぃなァ! 早く死ねよ、お前……ッ!」
「死んで堪るかよ……ッ!」
しかし、男は別の手で俺の首を絞めているため、俺の意識は少しずつ朦朧としていっていく。
俺は意識が飛ばないように必死で舌を噛んだ。
何が何でも死ぬわけにはいかないッ!
俺が死ねば、俺の銃は没収され……きっと廃棄されてしまう。
絶対の絶対の絶対にそれだけは許さねえ!!
「ああもう、じれってぇ!」
男は短剣を手放すと、腰に差していた別の短剣を取ろうと手を伸ばした。
――その一瞬の隙を俺は見逃さなかった。
俺は自分の手に刺さっている短剣を抜いた。
そして、俺の首を絞めている男の腕に思いっきり突き刺す。
「ぐぁッ……!? テメェ……」
男は痛みで悶え、思わず俺の首を放す。
今だ。
今しかない……ッ!
俺はすぐに腰に差していた電撃銃を構え、引き金を引いた。
銃口から電撃が迸り、男に命中する。
そのまま男は気絶し、地面に倒れた。
「はぁはぁ……危なかった……」
本当に死ぬかと思った。
正直……生きた心地がしない。
「……この魔法至上主義な世界を少し舐めすぎてたかもな……」
この世界で銃職人をやっていくのは予想していた何倍も難しいようだ。