山籠りしてた魔銃職人、街に出て常識を壊す~銃は【ゴミ武器】と馬鹿にされてるけど、俺が作る銃は竜すら穿つ【最強武器】らしい~ 作:水葉わいん
「……金がない」
翌朝、俺は財布の中を見て、呟いた。
財布を逆さにして出てきたのは、たったの銅貨7枚。
パン1個が銅貨1枚で買えると考えると……食費だけで数日で破産してしまう。
「そういえば、私、クラインに銃の代金渡してなかったよね……?」
すると、独り言を聞いたラディアが思い出したように言った。
「ああ、そういえば……というか、まだ具体的な代金すら決めてなかったよな」
「そうだね。じゃあ、今決めよっか」
ラディアは部屋に設置された金庫を開き、幾つもの金貨袋を取り出した。
「あの……えっと、その金貨袋は?」
「ん? 亡命する時に持ち出した物とか冒険者として依頼をこなして稼いだ物だよ」
「……ご、合計で幾らくらいあるんだ?」
「んー、金貨が100枚入った金貨袋が10個くらいあるから……金貨1000枚?」
「せ、1000枚……ひえっ……」
あまりに膨大な数字に眩暈がした。
金貨は一枚で銅貨1000枚くらいの価値がある。
……もう計算するのも怖い。
「でも、金貨何枚にしよっか……。クラインの銃は唯一無二のものだから、値段がつけられないんだよね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
この様子だと、ポンと金貨袋を丸ごと一つ、渡してきそうな勢いだった。
俺は慌てて待ったをかける。
「そんな馬鹿みたいに高い金額じゃなくて良いんだぞ? そうだな……金貨5枚とかでどうだ?」
「……流石に自己評価低すぎない? 私の剣が金貨300枚したんだから、それ以上の金額じゃなきゃ釣り合わな――」
「――待った待った待った! ……多すぎじゃないか?」
そんな大金貰ったら、確実に金銭感覚が狂う……!
「多すぎないよ。私だってクラインに正当な対価を渡したいの」
「ううっ……じゃあ……」
俺は少し考えてから……一つの結論を導き出した。
「多分なんだけど、俺が金貨を300枚も持っても誰かに盗られる可能性が高いと思う。だから……ある程度は預かっててくれないか?」
「まあ、それなら……いっか」
結果として、俺はラディアから金貨300枚を代金として受け取ることにした。
だが、その内の250枚は預かってて貰うことになった。
「ふぅ……これで金銭感覚が狂う心配は無くなった……」
「クライン、そんな心配してたの?」
「当たり前だよ……。金銭感覚は狂っても直らないからな……!」
既にこんな高級な宿に泊まって、だいぶ狂ってる気はするが……。
まあいいや。
「それよりも今日は二人とも、どうするんだ?」
「んー、私は少し一人でやらないといけないことがあるかも」
「私は特に無いですね……」
ラディアは予定あり、リリスは予定無しか。
「実は俺は装備を色々と整えようと思ってるんだけど……」
「ふぅん? じゃあ、リリスもついていったら良いんじゃない?」
ラディアは予想外にもそう言った。
「リリスも?」
「クラインなら人攫いくらいなら倒せるだろうし……ついでに錬金術の材料も買ってきたら良いんじゃないかなって思ってさ」
「錬金術……!」
リリスが『錬金術』という言葉に反応し、表情をパアッと明るくする。
「確かに……ちょうど良いな」
錬金術には大きな鍋や秤《はかり》などの道具や様々な材料が必要だ。
リリスに錬金術を教えるなら、それらを揃えるのは必須だろう。
「じゃあ……クラインさん、ついていっても良いですか?」
「勿論だよ」
「やった……!」
リリスは嬉しそうに飛び跳ねる。
「ふふっ、決まりだね。じゃあ……これ、渡しておくね」
ラディアは青い宝石が嵌められた指輪を俺に手渡してきた。
「これは……魔道具か?」
「うん。この指輪に魔力を込めて心の中で助けを強く祈ると、私に知らせが届くようになってるの」
「へぇ……助かるよ」
「外出する時はそれを肌身離さず付けておいてね?」
「わかった」
俺は左手の中指に指輪をつける。
それを見て、ラディアは安心したように微笑んだ。
「じゃあ、私は用事を済ませてくるから……!」
ラディアはそう言って、大きなカバンを背負って部屋から出ていった。
「……そういえば、どんな用事なんだろう?」
「さぁ……? 私も知らないんですよね」
リリスも知らないのか。
あんなに沢山の荷物を持って、一体、何をするのだろうか……?
俺は少し疑問に思うのであった。
――◇――◇――◇――
「相変わらず、大通りは人が多いですね……!」
「本当だな……」
昼間の大通りは普通に歩いているだけで人と肩がぶつかるくらい人通りが多かった。
「リリス、はぐれないように近くに居てくれよ?」
「は、はい……!」
リリスは俺の左腕にピタリとくっつく。
「そ、そこまでくっ付かなくても……」
「こうしていた方が安全じゃないですか……!」
「そうだけど……」
まあいっか。
随分とリリスは俺のことを信頼してくれているみたいだ。
大通りを抜けると、装備や錬金道具が売っている店が並ぶ通りに出た。
流石にここまで来ると人通りは減っており、冒険者たちがチラホラ通りかかるだけだった。
「さて……まずは錬金道具から買おうか」
「錬金術……!」
俺はラディアから教えてもらった錬金道具を売っている店に到着した。
「……なんだか、凄い怪しげな雰囲気だな」
「で、ですね……。店の外壁に蔦がこんなにびっしり……」
俺は意を決して恐る恐る店の扉を開けた。
店内には使い道がよくわからないような変な道具が沢山置いてあり、中には大釜や秤なんかの錬金道具もあった。
「いらっしゃいませ〜」
その声は――予想外にも若い女性の声だった。
カウンターの方を見てみると、若い女性が椅子に座りながら本を読んでいる。
彼女は一瞬だけ、俺たちを一瞥した。
「……あれ? もしかして、ラディアの妹さん?」
「は、はい……!」
店主さんは俺とリリスを交互に見て、興味深そうな顔をする。
「そっちのお兄さんは……? まさかラディアが新しい仲間でも作ったの? それともリリスちゃんの彼氏?」
「ち、違いますよ!」
リリスは頬を紅潮させ、慌てて否定する。
なんで15歳くらいの少女と俺が彼氏に見えるんだよ……。
「俺なら一応、ラディアの仲間みたいなものですよ」
「うっそ!? あのラディアが仲間ぁ!? 一体、どんな魔法を使ったの?」
店主さんは椅子から転げるように立ち上がり、驚愕で目を見開いた。
「魔法というか……俺が作った魔銃を売る代わりに身の安全を守ってもらっているんです」
「へぇ……。そういえば、あの子、強い魔銃を欲しがってたね。……じゃあ、お兄さんは相当優秀な魔銃職人なんだね」
「そうなんですよ! クラインさんは雷が出る銃とか凄い銃を沢山もっていて……あっ」
リリスは慌てて口を押さえた。
「……待った。雷が出る銃? 普通、魔銃は風魔法を発動させて溜めた風で銃弾を撃ち出す仕組みだろ……?」
「あ〜……まあ、そうなんですけど……」
困ったな。
銃の発射方式は売る相手以外には秘密にしておきたいんだが……。
「えっと……風魔法を使うやり方だと、風を溜めるまでに数十秒かかりますし、威力も弱いんで、別の発射方法を使ってるんですよ」
「別の……?」
「まあ、詳しくは秘密ってことで……」
俺は肩をすくめた。
「……ふぅん」
店主さんは興味深そうにじろじろ俺を見つめる。
うっ……。
これ以上、詮索されても面倒だし……話題を変えよう。
「そういえば、今日は錬金術の道具を探しに来たんですけど……」
「お兄さん、錬金術も出来るの!?」
「まあ、少しだけですけどね」
「そっか、なら……」
店主さんは腕を組み、しばらく何かを考えると――
「錬金術をやりたいなら道具を買うより、錬金術の工房ごと借りるのがいいと思うよ」
「工房ごと……」
その手があったか。
しかし……工房なんて、どこで借りれるんだ?
「実は私、偶然、錬金術の工房持ってるんだよね。それを君にタダで貸してあげる」
店主さんは「代わりに」と付け足すと――
「――私の友達に君の銃、売ってくれないかな?」
そう言って、ニコリと微笑んだ。