謝肉祭のロールケーキ展 -または桐藤ナギサは如何にして疑うことを辞め、ミカとセイア、そしてロールケーキを愛するようになったか- 作:やきそばVer2
原作:ブルーアーカイブ
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トリニティ謝肉祭イベントの、「ロールケーキの絵が並ぶ美術館に佇むナギサ」スチルを元に色々妄想してみました。
今回はコメディ路線ではなく、しっとりとした感じで、ティーパーティーの三人の友情を描きました。
話の都合上、ごく僅かに本編の展開を変えている箇所などがあります。
ちなみにタイトルは映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」をもじったものです・
なお内容は某映画とは全く違う内容で、タイトルだけオマージュしてます。
【謝肉祭当日:アートギャラリー】
壁一面に飾られた、色とりどりに描かれた、ロールケーキの絵画。
そして、丁寧に作られた、ロールケーキを模した銅像。
感慨深そうな顔で、優雅に中央の椅子に腰掛ける一人の少女。
「思い返してみれば、私の人生はロールケーキ、そして愛しい幼馴染と歩んできましたね。」
椅子に腰掛けた少女、桐藤ナギサは自然とこぼす。
「ミカさんと出会ったのは、幼稚園の時でしたね。」
【ナギサ幼稚園(年少組)時:砂場】
「やめてよ!いじわるばっかりしないで!せっかくつくったのに!もうやだー!」
幼稚園内の砂場で、壊された砂のお城の隣で、私は泣いていました。
「お嬢様なんだろ!お金の力でなんとかしてみろよ!」
「ママにでも泣きついたらいいだろ!」
私の前には、二人の悪ガキが、意地の悪そうな顔で立っていました。
「もう、ゆるさない。」
「なんだなんだ、やるのか!」
「こんなへっぽこパンチでどうする気なんだ?」
私は殴りかかりましたが、相手は年長組。力で敵うはずもありませんでした。
容易く組み伏せられる私。
その時でした。
「よわいものいじめしてる!いけないんだー!」
目の前に、私と同じくらいの年の幼児が現れました。
「だれ?」
「たすけてあげる!」
「何だこいつ。」
「年少組のくせに生意気だな!」
(いくらなんでも勝てません...逃げてください!)
声を上げようとしましたが、出てきたのはかすれた音だけでした。
「だいじょうぶ!じつはすごくつよいから!」
そう言って彼女が殴りかかると、悪ガキ二人は吹き飛ばされました。
驚く私に彼女は手を差し伸べました。
「ねえ、おともだちにならない?」
それが彼女との出会いでした。
その時の彼女の笑顔は、一生忘れないでしょう。
【ナギサ幼稚園(年少組)時:ミカ宅】
「わたしは『みそのみか!』あなたのおなまえは?」
「『きりふじなぎさ』ともうします。」
「もうーなぎさちゃん、かたいよー。」
ミカさんが笑いながらそう言います。
「ねえ『なぎさちゃん』だとかわいくないしー、『なぎちゃん』ってよんでもいい?」
「いいですよ」
「やったー。じゃあわたしのことは、『みかちゃん』ってよんでよ!」
「わかりました『みかさん』」
「かたいよー『なぎちゃん』、ちゃんづけでよんでよー。」
「でもおかあさまから...」
「わかった、じゃあ『みかさん』でいいよ。」
話をしているとロボットの頭をした、執事さんが入ってきました。
「お嬢様、おやつをお持ちしました。」
「ありがとね。しつじさん!」
「ごていねいに、ありがとうございます。」
「本日のおやつは『ロールケーキ』でございます。」
「やったー!それだいすき!」
切り分けられたロールケーキを見て、少し暗い気持ちになりました。
(ロールケーキは、あまり好きではないのですが...)
私の気持ちに気づいたのかどうか、それは今でもわかりません。
ですが、彼女はこう言いました。
「ねえ『なぎちゃん』このロールケーキすごくおいしいんだよ。」
勧められるまま、ロールケーキを口に運ぶ私。
「おい...し...い...」
「おいしいです!みかさん!」
「でしょー!なぎちゃんやっとえがおになったね!」
その時のロールケーキは、今まで食べた他の全ての物よりも美味しかったです。
そしてミカさんに言われて初めて、緊張から全身がこわばっていたことに気づきました。
【ナギサ中学2年時:とある路地裏】
その頃の私は、全てに嫌気が差して荒れていました。
『ヤンチャ』と言えば聞こえはいいですが、やっていることは、犯罪スレスレのことばかりでした。
本格的な犯罪に手を染めなかったのは、不幸中の幸いでした。
「全て、お母様たちのせいです。」
「勉強しろだの、淑女らしくあれだの、習い事だのはもう嫌です。」
「いっそのこと、ヘルメット団にでも入ってやりましょうか。」
荒れていたのにもかかわらず、お嬢様口調で話していたのは少し滑稽でしたね。
ミカさんに戦い方を教わったせいで、誰にも止められない問題児でした。
そのミカさんはというと、中学校に進学する直前に引っ越していました。
家の都合だったとのことです。
いつものように家出をして、路地裏を歩いていたときでした。
「ナギちゃん!やっと見つけた!」
「ミカ...さん?」
手提げ袋を持ったミカさんが、そこにいました。
「昨日こっちに戻ってきたんだ!これからはまた一緒だよ☆」
「い...や...見ないで!ミカさん!」
笑顔でこちらを見るミカさんに怯える私。
問題児になった私の姿を、一番見られたくない相手に見られてしまったからです。
笑顔を崩さないまま、ミカさんは私に言いました。
「執事さんから聞いたよ。ナギちゃんが家出してるって。」
「それに周りの子に暴力も奮っているって。」
「一緒にやり直そう。ナギちゃん!」
にこやかに話しかけるミカさんに、私はこう叫びました。
「ほっといてください!!もう以前の私はいないんです!!!」
「もう全部!全部!全部嫌なんです!!!!」
「頑張っても!頑張っても!それが当然だと言って、褒められることもありません!!」
「それどころか!少しテストの点が落ちただけで、怒鳴られるんです!!!!」
「淑女らしくするのも、息が詰まってもう嫌です!」
「我慢してトリニティ総合学園に入っても、同じことが続くとしか思えません!!」
「もういっそのこと、ゲヘナ学園にでも行くべきなんでしょうか?」
ミカさんが答えました。
「辛かったんだねナギちゃん...でもゲヘナに行くのだけはだめ!」
「ゲヘナなんて悪魔の巣窟だよ。そんなところに行こうとするくらいなら...私が、あなたのヘイローを壊す!」
ミカさんの笑顔が完全に消え、私を睨みつけてきました。
「行くよナギちゃん...力ずくで止めてあげる!」
「本気で言っているのですか?今の私は昔とは違うのですよ!」
「やればすぐわかるよ...」
ここまで暗い表情のミカさんを見たのは、この時とエデン条約の時だけでしたね。
思い返せば、とてもひどいことをしてしまいました。
勝負、いえ一方的な暴力はすぐに終わりました。
本気を出したミカさんにより、私は近くの壁にめり込んだ状態になっていました。
「み...かさ...ん。」
「ごめんねナギちゃん。こうでもしないと、お話してくれなさそうだったし。」
「いくら...なんでも。吹き飛ばして、壁にめり込ませなくても。」
「本気のミカさんはお強いのですね。」
「これでもかなり手加減したんだけどね。」
「ねえナギちゃん。ちょっとお話しよ☆」
暗い表情が消え、ミカさんが優しく微笑みながら、そう言いました。
またしてもミカさんに救われたのです。
【ナギサ中学2年時:路地裏近くの公園】
「落ち着いた?」
「ええ、ありがとうございました。」
裏路地を出て、近くの公園のベンチの上で、全てを打ち明けました。
ミカさんは全て聞いたうえで、こう言いました。
「ナギちゃん、私と一緒にトリニティに行こう。二人一緒なら大丈夫だよ。」
「しかし、お母様g」
「そのお母様達にやり返したくないの?」
私の話を遮ったミカさんは、思いもよらないことを言いました。
「もし、もしもだよ。ナギちゃんが適当な学校に行ったりしたら、束縛からは逃れられないと思うんだ。」
「でもトリニティは別でしょ!特にティーパーティーの権力は絶大でしょ!連邦生徒会にだって、影響力を及ぼせるんだし!ティーパーティーに入れれば、もう束縛なんてされないはずだよ!」
「だからさ、ナギちゃん一緒に行こ☆」
優しい抱擁を行いながら、優しく諭してくれました。
悲しみではない涙を流しながら、私は何度もうなずきました。
暫く経ち
「久しぶりにナギちゃんに会えると思って、お菓子持ってきたんだよ☆」
手提げかばんの中に手を入れるミカさん。
「じゃ~ん、私特製のロールケーキ!ナギちゃんのために、頑張って作ったんだよ!」
「初めて会った時を思い出しますね。」
「あっ確かに!」
取り出されたロールケーキは、ぐちゃぐちゃになっていました。
まるで悩みを抱えて、問題ばかり起こしていた私の心みたいでした。
「ごめんナギちゃん。さっきの戦闘のせいで崩れちゃってる。」
「すみません。私のせいで。」
「気にしないで、ナギちゃん。」
そのロールケーキの甘さは、私の心の中に差した一筋の明かりのようでした。
【ナギサ高校1年時:トリニティ総合学園自習室】
「まさか...ここまでとは...」
生徒のレベルが高い。そのことは知っていました。
しかし、トップ層がここまでのレベルとまでは思いませんでした。
自分で言うのもなんですが、地頭の良かった私は、多少頑張ればなんとかなると思っていました。
しかし、現実は非情でした。
学年での順位はそれなりに高い方でしたが、「それなりの高さ」止まりでした。
ミカさんはトップ層をキープしていて、私に勉強を教えてくださいました。
ただ、教えるのがあまりうまくなく、大きく学力が上がることはありませんでした。
(このままでは、ティーパーティーに入れたとしても。行政官止まりになってしまいます。)
焦りのせいで、かえって勉強の効率が悪くなる。そして、そのせいでまた焦る。
私は、負のスパイラルに陥っていました。
そんな中、いつものように自習室で勉強していた時、声がかかりました。
「やあ、少し落ち着いたらどうだね。」
振り返るとそこには、学年トップを維持しているセイアさんがいました。
(少し傲慢な喋り方、であまり好きではない方なのですが...)
考えが顔に出ないように気をつけて、セイアさんに向き直りました。
「申し訳ありません。勉強で忙しくて、お話をする時間はないのですが。」
「焦っているのだろう。参考書の山脈を築いてもうまく行かないよ。」
「いいかい、ナギサ。ただがむしゃらにやっても意味はないんだよ。」
怪訝な表情で私は聞き返しました。
「『意味がない』とはどういうことですか?」
「見た感じ、君は参考書の全ての問題を解いてやった気になっていないかい?」
「それのどこが、いけないのでしょう?」
「無限に時間があれば、それもよいだろう。しかし、使える時間は有限だろう?」
「だから、選択と集中をするべきなのだよ。」
「と言いますと?」
「試験に出そうなところに絞るのさ。絞った範囲の問題を重点的に解いていく。そして大事なのはただ解くだけでなく、素早く解けるようになるまで繰り返すのさ。」
「よく出る問題を素早く解ければ、テスト中に応用問題を解くのに使える時間が増えるだろう?」
「これが私なりの勉強法だよ。」
「理屈は分かりましたが...。まあ試しにやってみます。」
半信半疑でそう答える私。
今のやり方では通用しない。そのことがわかっていたため、従うことにしました。
【ナギサ高校1年時:トリニティ学区内のカフェ】
二ヶ月後…
「やりました!やりましたよ!ミカさん!セイアさん!」
「言った通りだろう、ナギサ」
「やったねナギちゃん!これならホストの座も狙えるんじゃない?」
カフェで待っていた二人に朗報を伝える私。
「まさか本当にうまくいくなんて。」
「コツを掴めば後は簡単だよ。」
「本当にナギちゃんがホストになっちゃったりしてね。」
「あまり褒められると、恥ずかしいのですが。」
注文していたものが運ばれてきたて、私はそう告げました。
「今日は私が奢ります。本当にありがとうございました!」
運ばれてきたのは、またしてもロールケーキでした。
「ナギちゃん、ロールケーキ大好きだね☆」
「どれ頂くとしよう。」
(そういえば、ミカさんと出会った時も、問題児になった私を助けてもらった時も、ロールケーキが傍にありましたね。)
そう考えながら、楽しいときは過ぎていった。
しかし、その幸せは永遠には続かなかった。
【エデン条約編:ナギサの極秘セーフハウス】
「誰?誰?誰なんですか?一体誰が、裏切り者なのですか?」
ナギサは恐怖に震えながら、セーフハウスの中でうずくまっていた。
(一体誰が、セイアさんを殺したんですか?それに、まだ補修授業部に犯人がいるかも知れないのに..条約締結も目前なのに、何一つわかりません!)
疑心暗鬼から、補修授業部の四人を退学させようとした私。
そのためだけに先生を騙し、溺愛していたヒフミさんまで追い出そうとしてしまいました
あの時の私は、恐怖に支配され、全てが敵に思えていました。
「せめてミカさんだけでも、助かってくれれば...」
最愛の幼馴染の無事を祈っていた時、玄関のドアが吹き飛ばされました。
(どうして、ここがバレたのですか!)
考えたときには、二人の少女が突入してきました。
「こんばんわ、ナギサさん。」
「なっ...ハナコさんとアズサさん...裏切り者は、あなた達だったのですね!」
「私達だけではありませんよ。あっ、そうそうリーダーから伝言があります。」
「『あはは...えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ。』とのことです。」
(ヒフミさん!まさかヒフミさんまで裏切っていたのですか?)
驚く私。
「アズサちゃん。やっちゃってください。」
「少し寝ていてくれ。」
ダダダダダダダダダダ
アズサさんの放った弾丸によって私の意識はなくなりました...
【エデン条約編 :トリニティ総合学園会議室】
聖園ミカの裏切りに対する、聴聞会前日深夜。
(まさかミカさんが首謀者だったなんて!しかも牢屋から脱走するなんて!)
気絶していた私が目を覚ましたとき、全てが終わっていました。
ハナコさんたちは、私を助けるために芝居をうったこと。セイアさんはミネさんに匿われていて、無事だったこと。そしてミカさんが首謀者だったこと。
報告を受けて、また気絶しそうになりました。
しかし、やるべきことに向き合うため、なんとか踏ん張りました。
疑いの目は向けました。しかし、信じていたいと強く願っていた、幼馴染に裏切られたことのショックは強いものでした。
もし早い段階で陰謀を知ることができたら、ここまで事態は悪化しなかったと後悔しました。
しかし、悩んでいる場合ではありません。
このままだと、ミカさんが立ち直る可能性は...ゼロになってしまうことでしょう。
そうなってしまったら、ミカさんは死を選ぶかもしれません。
(ミカさんには、助けられてばかりでした...しかし、今度は私がミカさんを助けます!)
決意を胸に、呼び出した三人に向き合う。
「ツルギさん、ミネさん、サクラコさん。来ていただいて、ありがとうございます。」
「呼び出したのは、他でもありません。ミカさんを救っていただきたいのです。」
しかし、三人は首を縦に振りませんでした。
「行き先はわかっているのか?それにミカの目的は?」
ツルギさんが、冷たい声で疑問を投げかける。
(確かなことはわからない。でも予想はできる。)
「ミカさんは、アリウスに向かったはずです。」
「ミカさんが『セイアさんを殺した』と思わされたせいで、事態をミカさんが制御することができなくなりました。」
「そのせいで、彼女はティーパーティーどころか、トリニティからも追われようとしています。」
「追い詰められたミカさんは、アリウス...特に錠前サオリに復讐するでしょう!」
「もしこのまま放っておいたら、錠前サオリを殺してしまうでしょう!そうなったら...もうミカさんが立ち直ることはできなくなってしまいます!!」
「だから、協力してください!協力してくださるなら私はどうなっても構いません!追放していただいても...私のヘイローを破壊していただいても構いません!!」
「だからどうか...ミカさんを助けてください!!!」
「そのために、今すぐに御三方の戦力をアリウスに向かわせてください!!!」
私は泣きながらも、そう強く訴えました。
「いいだろう。助けに行ってやる...お前たちもそれでいいな!」
ツルギさんが二人に問いかける。
「構いません。」
「良いでしょう。」
「だがな、ナギサ。お前はホストの座に残れ。そして罰を受ける必要はない。」
「ツルギさん...」
「お前は強い覚悟を見せた。なら私たちはそれに答える必要がある。」
「それにこの状況でトップがいなくなってみろ。それこそ他校が攻め込んでくるぞ。」
「そのとおりです。権力の空白を作ってはいけません。」
「それに、ナギサ様がいなくなるのは嫌です。」
ツルギさんの言葉に賛同するお二人。
「ありがとう...ございます。皆...さん。全戦力をアリウスに投入してください!」
感動の涙を流しながら、私は命令を下しました。
【エデン条約編:アリウス分校地下通路】
「私...死んじゃうのかな...」
「でも...仕方ないよね...みんなを裏切っちゃったんだし...」
「それにコハルちゃん達が止めなかったら...ナギちゃんまで殺してただろうし...」
倒れた柱の影で、ミカは倒れていた。
復讐の魔女となった彼女は、かつての敵を赦し、穏やかな表情をしていた。
サオリ達が黒幕を倒すまでの時間を稼ぐため、ミメシス達と戦ったミカ。
優勢だったものの、敵は倒してもすぐに起き上がってきた。
無限に押し寄せてくる不死身の軍勢に、ミカは段々と押されていった。
そして、現在。ミカは満身創痍の状態で、立ち上がることもできなくなっていた。
ミメシス達が近づいてくる音を聞きながら、ミカは後悔と願望を口にした。
「先生、利用してごめんね。補修授業部の子達をよろしくね...」
「セイアちゃん。ちゃんと謝りたかった...」
「ナギちゃん。裏切ってごめんね...せめて死ぬ前に...一瞬だけ、一瞬だけでいいから会いたいよ...」
刻々と命の灯が消される時が迫る中、ミカは誰かに抱きしめられた。
「せん、せい?」
「大丈夫か?ミカ!」
夢でも見ているのかと思うミカ。
先生はミメシス達に向かって叫んだ。
「私のお姫様になんてことをするんだ!!!」
直後、アリウススクワッドの面々と、トリニティの部隊が現れる。
ミカは、先生に抱きかかえられながら、地下通路を出た。
地下通路を出たミカの前には、最後に会いたいと強く願った相手が立っていた。
「おかえりなさい、ミカさん。」
傍らのテーブルの上には、切り分けられたロールケーキが並んでいた。
【謝肉祭当日:アートギャラリー】
そして現在...
(思い返すと、助けられてばかりでしたね。)
私は、胸が温かくなりながら、回想を終える。
人生の重要な場面で、常に登場した『ロールケーキ』
私は、ロールケーキの絵が並んだアートギャラリーを見渡しました。
(題材がマニアック過ぎましたか)
閑古鳥の鳴くアートギャラリーを見てそう思いました。
その時、先生がやってきました。
「やあナギサ。展示を見に来たよ!」
(先生が来てくださったのは嬉しいですが...ミカさんと、セイアさんにも来てほしかったですね。)
少し残念に思いながら、先生に説明をしながら歩いていたときでした。
「やっほーナギちゃん☆本当にロールケーキの絵ばっかり☆」
「元気にしてたかいナギサ、展示を見に来たよ。」
振り返ると、ミカさんとセイアさんの姿がそこにはありました。
(もう誰も疑いません。誰も失いたくありません。)
(今度こそこの幸せを失いません。)
二人に展示物の解説をしながら、ナギサは静かに決意を固めたのであった。
完