極悪な悪役貴族に転生したが、最弱設定の操作魔法を過剰な努力で極めたら作中最強になった~俺を断罪するヒロインを助けたら、全員ヤンデレ化して離れない件~ 作:青空あかな
「た、大変です、ギル師匠! カレンさんとネリーさんが!」
「だから、くっつくんじゃありませんって!」
恐ろしいオーラを纏った二人を見て、ルカはさらに強く俺に抱き着いた。
大慌てで引き離す。
火に油を注ぐでしょうが!
俺とルカが押し問答している間も、カレンとネリーはゆっくりと近寄る。
いつの間にかさらに50mほど近づいており、それがさらに恐怖を与えた。
どうしよ、どうしよ、と思っていたら、Aチームのメンバー男女三人が俺たちの前に並んだ。
「ギルベルトがリーダーとは言ったけどな。もちろん、俺たちも戦うぜ」
「いつも、あなたばかりに良いところはもってかれたくありませんので」
「僕だって強くなりたいんです。応援しててください」
そう言うと荒れ地に舞い降り、カレンとネリーに向かって颯爽と駆け出した。
こ、この流れはまずい!
「ま、待てっ! 早まるなっ! 戻ってこい!」
回廊から身を乗り出して叫ぶも、時すでに遅し。
カレンとネリーに敵として認識されてしまった。
「ギルベルトの浮気を守ろうなんて健気ね……《氷の雨》」
「行く手を阻むのであれば、あなたたちも同罪ですね……《剣舞》」
「「うわあああ!」」
上空からは氷の雨が激しく降り注ぎ、何本もの巨大な剣が躍るように地面を抉る。
とてつもない衝撃で荒れ地が揺れ、チームメンバーは全員吹き飛ばされてしまった。
果敢に挑んだ三人は地面に倒れ、みな目がぐるぐると回っている。
一撃で気絶させられたようだ。
なおもゆっくりと迫りくるカレンとネリーに対し、俺はもう必死の思いで叫ぶ。
「ち、違うんだ! これは違くて!」
「カレンさんとネリーさんが相手でも、ギル師匠の隣は渡しませんよ!」
「やめなさい、ルカ!」
ひっつくルカを命懸けで引き剥がしていると、カレンとネリーのやけに落ち着いた声が静かに聞こえた。
「聞いたわよ、まさかルカが女の子だったなんてね。ギルベルトが喜ぶわけだわ」
「そういえば、ギルベルト様は嬉しそうでしたよね。ルカさんにくっつかれたときの笑顔は、眩しいほどに輝いていました」
いや、あの……200m離れてたんですけど。
どうやら、二人は大変な地獄耳だったらしい。
前世で100周プレイした俺でも知らなかった事実が明らかとなる。
転生しなきゃわからなかったことを知れて、なんだか得した気分だ。
よかった、よかった…………なんて思うかー。
またもや頭を抱えていたら、残りのメンバー(クレマンは隅っこでジッとしてる)が俺の前に出た。
「来たな、カレンにネリー! 全力で戦うぜ! ギルベルトが!」
「あなたたちが来るのを待ってました! 正々堂々と戦います! ギルベルトさんが!」
「どれほど強い相手でも最後まで諦めません! 二人は倒しますよ! ギルベルト君が!」
みんな……受け入れてくれたのは嬉しいけど、俺の名前を強調するのやめてくれるかな。
ルカの衝撃的な事実が明らかになったものの、それどころじゃないらしい。
チームメンバーは威勢よく叫んだ後、俺の後ろに隠れちゃった。
俺のことを盾みたいにするのやめてくれるかな。
とはいえ、ここは俺が戦わなければ……。
誤解を解くためにも。
「みんな! 二人とは俺が戦う! “フラッグ”を見張っててくれ!」
「あっ! ギル師匠!」
ルカとチームメンバーを残し荒れ地に飛び降りると、カレンとネリーが立ち止まった。
「まぁ、でも、一度ギルベルトとは真剣に戦ってみたかったわ」
「私もカレン様に同感です。この実地試験は良い機会ですね」
その言葉を聞き、どこかホッとできた。
「ああ、俺も二人とは本気で戦いたかったよ」
「浮気は許さないけどね」
「浮気は許しませんが」
「あっ、はい。すみません…………いや、あれは浮kではなく単なるスキンシップというか……」
もごもごと弁明する間もなく、カレンとネリーの魔力が強くなった。
どんな魔法が来るか身構える。
「《氷の巨人》!」
「《大いなる剣》!」
7mほどの巨大な氷のゴーレムが出現し、右手には3mもありそうな大剣が握られた。
ネリーの剣を装備したカレンの氷ゴーレム。
なるほど、二人の複合魔法か。
これは倒すのが大変そうだ。
カレンとネリーが同時に手を下ろす。
「「攻撃開始!」」
ゴーレムが右手の剣を勢いよく振りかぶってきた。
重い轟音が鳴るほどの力強さだ。
すかさず、その全身に魔力を飛ばした。
「《ゴーレム操作》!」
俺の魔力を受けると、氷ゴーレムはピタッと動きを止めた。
操作はできるものの……相当な抵抗だ。
カレンの強大な魔力を感じるようで、一時も気が抜けない。
だが、このまま押し返してやる。
さらに魔力を込め始めたとき、ゴーレムの後ろに広がる空間がキラリと輝いた。
「《曲射の剣》!」
ネリーの剣魔法による攻撃が飛んでくる。
生成された剣はどれも曲刀で、くるくるとカーブを描く不規則な軌道で襲いかかった。
すかさず、操作魔法で空気を凝縮した壁を作る。
「《大気の防御壁》」
曲刀は空気の壁に阻まれ、宙で止まっては地面に落ちる。
だが、ゴーレムへの操作魔法がわずかに弱まった。
動きを取り戻したゴーレムが地面をパンチすると、俺を追うように氷のトゲトゲが何本も生えた。
生成スピードは人間の魔法にも劣らないが、相手が氷なら操作魔法でベストな対処ができる。
「《氷温度上昇》」
氷の温度を操作して急上昇させると、トゲトゲは溶けてなくなった。
操作魔法の汎用性を感じる攻撃だ。
ゴーレムの後ろから、カレンの感嘆とした声が聞こえた。
「考えたわね、お見事」
「ああ、これなら土や空気を操作するより消費魔力が少ない」
大型の氷ゴーレムも温度を上げれば溶かせてしまえるだろう。
だが……なんだろうな。
正面から戦いたい気持ちになった。
右手に魔力を集め勢いよく駆け出す。
氷ゴーレムの全身に魔力が迸り、無数の氷片が放たれた。
走りながら地面を操作し、いくつもの土の塊を空中に生み出した。
土塊を蹴り宙を進む。
迫る俺を見て、氷ゴーレムは剣を振り上げた。
大剣の一撃は強力だが、どうしても隙が出る。
振りかぶった瞬間、操作魔法で氷ゴーレムの動きを止め、土塊を蹴ってジャンプした。
「《隕石拳撃!》」
身体の中央狙って全力で殴る。
硬い岩に当たったような感触の後、ピシピシと拳の周りからひびが入り、氷ゴーレムは木っ端みじんに砕け散った。
宙に舞う氷の破片が陽光に煌めくその向こう側には、カレンとネリーの嬉しそうな顔が見える。
「……やるわね。さすがはギルベルトだわ」
「一筋縄ではいかないということですね」
二人と戦うのは……楽しい。
魔物とのバトルよりずっと。
実際に対峙すると、彼女らの基礎が詰まった実力をひしひしと感じた。
……俺も負けてられないな。
やる気がさらに満ちあふれる。
「さあ、今度は俺の番だ!」
全身に魔力をみなぎらせた、そのとき。
手の甲の紋章からアナウンスが聞こえた。
[BチームがAチームの“フラッグ”を奪取しました。試験は終了します。戦闘を中止してください]
……なに?
“フラッグ”が回収された?
もしかして、他の生徒が砦に侵入したのだろうか。
慌てて砦を振り向くと、小さな青いゴーレムが嬉しそうにAチームの“フラッグ”を振っていた。
ポカンとする俺にカレンとネリーが説明する。
「あれは私のミニ氷ゴーレムよ。ギルベルトが大型と戦っている間に、こっそり作っておいたの」
「事前にカレン様と綿密に相談したのです。これはあくまでも“フラッグ”を取った方が勝ちですから、どうにかしてギルベルト様たちの注意を引こうと」
つまり、俺やルカ、Aチームの面々がすっかりバトルに夢中になっている間、うまいこと取られてしまったらしい。
カレンとネリーは手を取り合って喜ぶ。
「やったー! ギルベルトに勝ったー! いつか勝ちたいと思っていたの!」
「ようやく勝利しましたね! 搦め手の作戦が成功しました!」
「…………ぐぎぎ」
喜ぶカレンやネリー、そして遠くBチームのメンバーを見て、悔しさがあふれる。
な、なかなかやるじゃないか。
ミニゴーレムの存在に気づいていれば操作魔法で対処できたのにぃ……!
勝負の余韻が漂う中、どこからともなくライラ先生が現れ実技試験は終了となった。
□□□
「“砦防衛戦”の勝利者はBチーム。戦闘に集中させての“フラッグ”奪取は見事な作戦だった。少々大雑把ではあったが、学園での勉学が活かされた戦闘であった。これからも頑張るように」
「「ありがとうございます」」
ライラ先生の声が荒れ地に響き、カレンたちBチームはお辞儀する。
俺を含めた生徒たちは荒れ地の真ん中に整列し、“砦防衛戦”の講評を受けていた。
やはり、当初の目的である“フラッグ”の奪取のため、あえて目を引く魔法を使ったカレンとネリーの作戦が評価されたようだ。
数分で講評が終わると、ライラ先生がギッ! と恐ろしい目で俺たちAチームを睨んだ。
「……さて、敗北したAチームの男子生徒。横一列に並べ」
ま、まずい、局部破壊の時間がやってきてしまった。
下半身の中心がひんやりする。
学園に入学して、せっかく回避できると思ったのに~……と頭を抱えていたら、Aチームの男子ズがさりげなく俺の背中を小突いた。
な、なんだ?
「(ライラ先生に局部破壊を止めるよう言ってくれ。俺たちのリーダーよ)」」
みな、雨に打たれる小犬のような、ウルウルした瞳で俺を見る。
彼らの不憫な顔を見ると、忘れかけていた悪の心が蘇った。
そうだ、俺は天下の“極悪貴族”、ギルベルト・フォルムバッハ。
みすみす局部を破壊される男ではない!
めちゃくちゃに逆らってやる!
力強く一歩踏み出し、ライラ先生の前に出た。
「あの…………俺たちも頑張ったというか……」
「は?」
「すみません、並びます。横一列に並び、足を開かせてもらいます。……さあ、みんな! 早く一列に並ぶんだ! 局部を破壊しやすいような角度を作って!」
どうした、みんな、シクシクと泣いちゃって。
なぜか涙を流すAチームとともに、俺も捌きを受ける。
足を開いた後、キンッ! キンッ! キンッ! と甲高い音がこだました。
「「……ぅああああ~!」」
荒れ地に響くAチームの絶叫(クレマン以外)。
久しぶりの痛みは思いのほか気持ちいい…………わけもなく、しっかり痛かった。
ちなみに、ルカは回避した。
女の子だから。
……ずるくね?
そして、真の本番はこの後に訪れるのであった。
□□□
「た、頼むっ! 二人とも許してくれ! 悪かった! 俺が悪かったから!」
両手両足を縛られ、身動きがとれない。
ベッドの両脇には、にこりとした笑顔のカレン様とネリー様。
「あなたが誰の物なのか、もう一度身体に教え込まないといけないわね」
「隠れて楽しむなんて度胸がありますね。さすがはギルベルト様です」
「だから、あれは浮kじゃなくて…………ああああ~!」
気絶しては無理やり意識を戻される。
この猛攻に耐え切れるのだろうか(何がとは言わないが)。
何はともあれ、さらに数週間が過ぎ、いよいよ前期の最終実技試験“学年合同演習”の日がやってきた。