ダンガンロンパD   作:ファイネス1

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プロローグ

 人類史上最大最悪の絶望的事件。

 希望の象徴たる希望ヶ峰学園を初めとして平和な時には当たり前のようにあったあらゆる施設、建築物、果ては国家までもが崩壊したはずの世界において、

むしろそれ故に必要不可欠な不滅の象徴のように聳え立つその施設に足を踏み入れると、爽やかな営業スマイルを浮かべた品のいい男性が恭しく出迎えた

「いらっしゃいませ。探偵図書館にようこそ。

 あらゆる探偵による万の依頼を受け付けておりますこの館に、本日はどのようなご用件でしょうか。」

 個室に通されて要件を告げた客に、職員はごく当然のように応対する。

「畏まりました。

 お一つお聞きしますが領収書等に書くお客様の宛名は『超高校級の絶望』か、別の通称にしますか。

 勿論、本名の方でも宜しいのですが。

 『小泉真昼』様。」

 身分証どころか名乗りすら上げていないにもかかわらず、平然と本名を告げてくる相手に、客は驚いた様子もなく、寧ろそれが当然のような対応で宛名を当初出された『超高校級の絶望』に設定するように手続きを申し入れた。

「承知しました。

 依頼の内容に関しては3時間ほどお時間がかかります。

 それで、料金に関してですが。」

 その存在意義たる守秘義務の粋を凝らし、盗聴はおろか携帯などの電波すらも徹底的に防いでいる探偵図書館の個室にて、これまた空々しいほどに顔を使づけて声を潜めて手を口元にあてた

内緒話スタイルで職員は言った。

「内容が内容なだけにかなりの額です。

 もちろん、貴方のような立場の者がそんなのを気にする必要はないのですが、お客様のような方に対しては、只今表には公開されていないある条件を吞んでくだされば、料金を20%割引していただきましょう。

 つい先日全国中継された17人の超高校級の生徒達による殺し合い学園生活。

 超高校級の絶望の主要人物の一人にして、その観察眼を評されている貴方には、是非とも情報をお渡しするまでの間、あの事件に関する見識と、それに関する情報を提供していただければと思いまして。

 我々にとって情報とは、謂わば大工にとっての木材、料理人にとっての食材。時に金そのもの以上の資産、いや、金を駆使して手に入れるべき最大の財産なのです。

 我々にしてみたら貴方からの情報は単なる割引程度では済みません。

 どうでしょう、貴方からの個人的な依頼と引き換えに、つまり無料で引き受けるという条件も付けて。

 ありがとうございます。」

 

 客からの返答を受けてニコリと笑った男性は、エヘンと咳払いして居住まいを正した。

「さて、それではまずこの世界の皆様に公開され、周知されている殺し合い学園生活の顛末について改めて振り返ってみましょう。

 本来希望の学園から羽ばたいて世界の希望になるはずでありながらあの学園でその生涯を費やすことを課せられた哀れなる超高校級達。

 『超高校級のスイマー』朝日奈葵

 『超高校級の風紀委員』石丸清多夏

 『超高校級のギャル』江ノ島盾子

 『超高校級の格闘家』大神さくら

 『超高校級の暴走族』大和田紋土

 『超高校級の野球選手』桑田怜恩

 『超高校級のギャンブラー』セレスティア・ルーデンベルク

 『超高校級の御曹司』十神白夜

 『超高校級の幸運』苗木誠

 『超高校級の占い師』葉隠康比呂

 『超高校級のプログラマー』不二咲千尋

 『超高校級の文学少女』腐川冬子

 『超高校級のアイドル』舞園さやか

 『超高校級の同人作家』山田一二三

 しかしこれら「一般的な」超高校級達の中でも異分子であり、この異常極まる学園生活に大きく影響を与えるに至る更なる超高校級が3人いました。

 一人目は『超高校級の絶望』と呼ばれている少女、戦場むくろ。

 二人目はその超高校級の才能が判明されていない謎の少女、霧切響子。

 そしてもう一人は……」

―――――――――――――――――

 一般人の中から抽選で希望ヶ峰学園の生徒として選ばれた「超高校級の幸運」として選抜されてそこに通うことになった苗木誠が、しかし胸膨らむその「希望」と程遠い目覚めの後、銃器や監視カメラの照準に晒された異様な玄関ホールに導かれた先で、

本来希望ヶ峰学園での学園生活における自分達のクラスメイトとなる同年代(葉隠康比呂だけは例外だが)の「超高校級」達との自己紹介を経て、改めて平凡な自分とは別格の存在感に圧倒されている中、

まるで暗闇の海の中で溺れかける中微かに煌めく灯台の灯のごとく、この異様な状況下で特に注意を向けるべき3人の高校生を改めて見回した。

 一人目は、本来自分のような凡人とは住む世界が全く違う超高校級達の中で、唯一奇跡的ともいっていい接点を持つ相手であり、向こうからも自分に何か話があるらしき相手。

 『超高校級のアイドル』舞園さやか。

「あの、苗木君。

 今は状況が状況ですので、

お話は、また後で。」

「う、うん、舞園さん。」

 二人目は、名前以外その才能や素性などを一切明らかにせず、何か一人考え込んでいるようや、何か知っているかのような、謎の美少女。

 霧切響子。

「あの、霧切響子さん。」

「何?」

「………………」

 そしてもう一人。

「ここどこだろう?」

 その少年は、間の抜けた至極一般的なセリフと相まって自他ともに認める凡人であり「超高校級」達の存在感に引け目を感じている苗木誠にとっては非常にシンパシーを感じさせる相手であった。

 顔立ちは平凡、背丈も一般的高校生の平均くらいで数少ない特徴である160センチの低身長の苗木を見下ろす格好になっている。

 撫でつけられた灰色の髪の頭頂から少しアンテナみたいにピョコンと飛び出ているのが数少ない特徴といえようか。

 着ている服も何の柄もない、髪の色同様の灰色のシャツと薄青いジーンズで集合シーンでの立ち位置が端っこだったのもあって薄暗い玄関ホールの闇に今すぐにでも紛れてしまいそうな、一瞬「超高校級」ではなく自分同様何かの事情で巻き込まれただけの一般人ような印象を与えた。

 もしここが外で、こんな限定された人数の場所ではなく街中とかだったりしたら、個性が強い主要キャラのやりとりを一歩引いたところでリアクションしているエキストラのポジションとして描写されていたろう。

 少年は、未だに状況が理解できず、目を大きく見開いたキョトンとした表情ながらも苗木誠に自己紹介した。

「僕はこういう者らしいんだ。」

「?」

 自己紹介としてはかなり違和感があるビジネスマンのようなセリフと共に取り出したのは、名刺ではなく苗木が持っていたのと同様無地のバースデーカードのような紙で、そこにはこう、書かれていた。

眼々途 森(めめと しん)様。

 あなたをこの希望ヶ学園の学級委員長にします。

 至急玄関ホールにお集まりください。」

「学級委員長?」

「自分の名前すらこの紙で今知ったんだよね。」

 そもそもこれが僕の本名なのかも含めて、自分に関して一切何も分からないんだ。」

「ええっ!?

 記憶喪失ってやつ?」

「ねえ、苗木誠君。

 君に聞きたいんだけれど、そもそも希望ヶ峰学園って何?」

「希望ヶ峰学園を知らない!?」

 卒業したら成功したも同然とされる全国の学生の憧れであり、世界の中心のように都心の真ん中に聳え立ち、その入学者や卒業者に関して立ったスレッドに、自身が選ばれたのもあったとはいえ一般的な学生として当然の反応と興味としてそれを眺めていた苗木誠にしてみたら希望ヶ峰学園の存在を知らないというのは日本人に「お正月って何ですか?」と聞かれたくらいの衝撃だった。

 一見平凡な少年のその異様さに戸惑っていると、キーンコンカーンコーンという一般的な学園において聞き覚えがあるチャイムの音と共に未だに何も映っていないモニターからピーガガガガサゴソという謎の音と「あー、あー、マイクテス、マイクテス。校内放送、校内放送」という能天気なダミ声による耳障りな音声が響いた。

「全員揃ったね。

 ええ、新入生の皆さん、これより入学式を執り行いたいと思いますので、

至急体育館にお集まりくださーい。」

 訳の分からない状況のなか、唐突に始まった外部からのイベント。

 葉隠康比呂の「入学式の催しということだな。」という見解にその場の皆が落ち着いて体育館に行く中、拭い切れない嫌な予感を抱えつつ苗木誠も結局その指示に従って行き着いた体育館にて、檀上に「それ」がぴょーんと表れた。

 片方が眼光鋭い黒い熊。

 もう片方が愛らしい白い熊。

 善悪両面をごっちゃににつめたような、どっちつかずの異様な気味悪さを感じさせるヌイグルミ。

「ボクはモノクマ。

 キミたちの、この学園の、学園長なんだよー。」

 かくて、絶望の主人公による希望の物語が始まった。

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