ダンガンロンパD   作:ファイネス1

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入学式

 

「それではこれより、入学式を始めたいと思います。

 えー、人々が宣う"世界の希望"であるお前ら才能溢れる高校生達には、これからこの学園内だけで秩序を守った共同生活を送ってもらうことになります。

 そして期限ですが、

期限はありません!

 つまり一生ここで暮らしていくことになるのです。

 それがお前らに課せられた学園生活なのです。」

「え…一生、ここで…!?」

「ああ、安心してよ。

 お前らが一生不自由なく暮らせるだけの、予算は十分にあるし。」

「ちょ、ちょっと待ってください!

 そんなこと言われても困ります!」

「おいおい、何だよそれ。

 悪ふざけ過ぎるだろ。」

「まったくさっきから明明白白に説明を聞いてさえも理解が出来ないときたもんだから

耳か心によっぽどゆとりがなくアカが詰まりまくってるんだね。

 まあでもそういうことならなくもないよここから出る方法が。

 それが『卒業』という特別ルール。

 オマエラにはこの学園で"秩序"を守った共同生活が義務付けられた訳ですが、

もし、その秩序を破った者が表れた場合、その人物だけは学園を出ることが出来る訳です。」

「その秩序を破るとは…一体何を意味するんだ?」

 十神の言葉を受け眼々途がはーいと手を上げた。

「学園内をバイクで走り回ったり机とかを粉々にぶち壊せばいいのですか。」

「うぷぷぷぷ、残念ながらどこかの暴走族君の頭並の時代遅れ漫画や15の夜のような色んなものを拗らせまくった秩序な破り方じゃなくてね。」

「あ"あ"こらっ!」

「僕が言うのは、あくまでルールによって秩序を破るシステムということなのです。」

「全く意味が分からん!

 ルールによって風紀を乱すとは、一体何を言っているのだね!」

「つまり、みんなで仲良く共同生活を送ってもらうこの学園の共同生活の"秩序"を乱す最大のタブー…

『人が人を殺す』ことだよ。」

「こ、殺す……ッ!?」

 苗木の困惑をよそに、モノクマはルールの説明を続けた。

「殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺斬殺呪殺…殺し方は問いません!

 『誰かを殺した生徒だけがここから出られる』

 それだけの簡単なルールだよ。

 最悪の手段で最良の結果を導けるよう、せいぜい努力してください。」

 苗木があまりの理不尽とその恐ろしさにゾワリと寒気を感じて

硬直し、目の前で様々に騒ぐ他の生徒達の言葉が耳から脳を素通りする中、未だにこれを学園のドッキリ程度に捉えているがために比較的落ち着いた態度の葉隠を押しのけ、大和田がビキビキと血管を顔中に張り巡らしてモノクマに詰め寄った。

「オイコラ!今更謝ってもおせぇぞ!テメェの悪ふざけは度が過ぎた!

 今すぐ俺らをここから出せ!」

「悪ふざけ?

 それって君の髪型のこと?」

「ガアアアアアアッッ!!」

 大和田は雄叫びと共にダンッと床を蹴り一直線にモノクマに迫り、チョークスリーパーの要領で首根っこを掴み上げた。

「捕まえたぜこらぁ!

 ラジコンだかヌイグルミだか知らねぇが、バッキバキにしてやんよ!」

「ギャァアアアア!

 学園長への暴力は、校則違反だよ〜!」

「ウッセェ!

 今すぐ俺らをここから出せ!

 さもねぇと……」

 大和田の啖呵を前にバタつかせていた両手を降ろし、あくまでラジコン越しであるにも関わらず圧倒されたかのように押し黙るモノクマ。

 そこからピコン、ピコンと電子音が鳴り響き、ながてその間隔とペースが短くなりつつある中、それまで言葉を発しなかった少女の初めて聞く焦りの感情が込められた声が大和田に向けられた。

「危ない!それを投げて!」

「あぁ!?」

「早く!」

 霧切響子の言葉に気圧された大和田がモノクマを放り投げた直後、ドカーン!と耳をつんざかんばかりの爆発音と火薬の匂いが辺りに舞った。

「ふう、危ない危ない」

 何事も無かったかのように新たに表れたモノクマが警告と共に支給した電子生徒手帳を手に持ったまま、現実を受け止められずに呆然とした苗木は、思わず周りの皆の顔を見回した。

 それは、自分だけではない。

 その場の恐らくは全員が、お互いを探ろうと、敵意や不審をにじませた視線をまじ交わしていた。

 凍り付いた場。

 石のように動かなくなってしまった苗木の意識を動かしたのは、先程仲間の一人を救った涼やかな声だった。

「それで、これからどうする気?

 このまま…ずっとにらめっこしている気?」

 不愛想で、棘のある言葉ではあるが、その言葉が皆を現実に引き戻した。

「そうだな…確かにそうだ…」

 クラスの規律を正し、率いてきた「超高校級の風紀委員」が、目覚めた現実から己のすべき言葉、言うべき言葉を真っ先に放った。

「怖かろうと不安だろうと、歩を進めなければならぬ時がある!

 そんな簡単な事を忘れるなんて…僕は自分が情けない…許せない…

 誰か殴ってくれないか!僕は自分が許せないんだ!

 頼むから誰か僕を殴ってくれッ!」

「うん、分かった。」

 石丸の、本気であろうが誰も本気にしないであろう訴えを受け、彼の前に灰色の少年が躍り出て、虚を突かれた苗木と石丸当人に向けて、思いっきり拳を振りかぶった。

 ドカーン!!!

「ウワッ!!」

 先程の爆発音ほどではないが沈黙した体育館に響き、見ていた苗木の方が思わず声を上げた。

 盛大に吹っ飛び、尻もちをつく石丸の姿に、それまでとはまた違った沈黙が場に降り、やがて

頬を腫らしながら立ち上がった石丸はむしろにこやかな顔で眼々途に言った。

「は、はりはとう、いいんひょう殿。

 では、あらはめて、みんなのやるへきこほを……」

 霧切の冷静な促しと一連の茶番によって、それまで張りつめた空気が弛緩し、出口を探す方向が固まり始めた中、不二咲千尋が“校則”の確認を提案し、苗木も電子生徒手帳で”校則”を確認してみた。

 

《1》生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。

   共同生活の期限はありません。

 

《2》夜10時から朝7時までを〝夜時間〟とします。

   夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

 

《3》学級委員長以外は就寝は寄宿舎エリアに設けられた個室でのみ可能です。

   他の部屋での故意での就寝は居眠りとみなし罰します。

 

《4》希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。

   特に行動に制限は課せられません。

 

《5》学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。

   監視カメラの破壊を禁じます。

 

《6》仲間の誰かを殺したクロは〝卒業〟となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

 

《7》なお、校則は順次増えていく場合があります。

 

(ん?何だこれ)

『3 学級委員長以外は就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。

 他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。』

(委員長って……眼々途クンのことだよな。

 まだ寄宿舎の個室は確認していないけれど、やはり一番気になるのは……)

『6 仲間の誰かを殺したクロは”卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。』

 改めて殺し合いを明言する校則に不安を感じたものの、朝日奈、石丸、桑田といった前向きな者達の激励によって改めて探索を開始しようとしたのだが……

「…俺は一人でいくぞ。

 自分を殺すかもしれん、何一つ信用できる要素がない奴らと行動するなど、愚の骨頂だ。」

 初対面の他人を信用しようとしない十神白夜の和を乱す発言で場は再び緊迫に包まれ、先程同様大和田がつっかかってきた。

「待てコラ、勝手なこと抜かしてんじゃねぇぞ。」

「ふん、その場限りの怒りを目の前の相手にぶつけることしか能がない犬畜生レベルの知能が

俺に指図とはな。」

「ぶっ殺す!!」

「ちょ、ちょっと待ってよ、ケンカは……」

「あぁっ!?

 テメェ、いっちょ前に俺に教えを説こうってのか!」 

 思わずケンカを止めようとした苗木に、血が上った大和田の暴力の矛先が向こうとした時、その腕がガシッと脇から掴まれた。

「え………眼々途クン………」

「テメェさっきの……

 おい、邪魔だ、どきやが……グワッ!」

 言い出した大和田の頭がガクッと下がり横ざまに転倒した。

「い………一体、何を……」

「足を払っただけだけれど、大和田君。」

「ふざけた真似してんじゃ……」

「よさぬか大和田。」

 苗木達の傍に、これまた自己紹介以来沈黙を保っていた、女子にしてはかなり威圧を感じさせる声と共に静かな熱気を放つ大神さくらの巨体が近づいて来た。

「先ほどの眼々途の足払い。

 何気ない所作ではあるが体捌きをそれなりに心得た者と思われる。

 お前ではまともに闘っても勝ち目はないだろう。

 もし、それ以上の狼藉を働こうというのなら。

 今度は我が止めるぞ。」

 彫像のように不動の構えを取る大神を前に、大和田はふん、と目を逸らした。

「女は殴らねぇ。

 それが男の約束だ。」

「茶番は済んだか。

 それでは、俺は勝手に行かせてもらうぞ。」

 十神が体育館を立ち去り、大和田が離れ、ようやく緊張が解けた苗木は大神と眼々途に改めて礼を言った。

「ありがとう、大神さん、眼々途クン。」

「本来なら我が真っ先に止めるべきだった。

 済まぬ苗木。」

「そんな……」

「ねえ、苗木。

 ちょっとお願いがあるんだけど。」

「何?眼々途くん。」

「君の電子生徒手帳を確認させてくれない?

 特に校則の所とかが、僕のと同じか確認したいんだ。

 大神も、苗木のと見比べて改めて電子生徒手帳の仕様を確認した方がいいんじゃないかな。」

「ふむ……そうだな……」

「分かったよ。」

 先程助けられた負い目もあり、苗木は二人に見えるように電子生徒手帳を開いてマップや通信簿といった一通りの機能と、校則を改めて確認した。

「成程、校則はこの7つなんだね。」

「うん、そうみたい。

 順次増えていく場合があるってるけれど、今の所はこの7つだよ。」

「分かった。」

「ウム!

 十神君が非協力的なのは致し方ないが、では、改めて第一回の探索を……」

「お待ちくださいな。」

「ム、何だね、セレス君。」

「それについて提案なのですが、

協力して出口を探すにしても、全員一緒でいる必要はなくて。

 何人かで手分けして探した方が、効率的だと思うのですが。」 

 セレスからの提案に、霧切も乗った。

「確かに。

 大勢で探索したからって見つかりやすくなるという保証はないわね。」

「フム、それでは、各々チームに分かれて探索し、発見を持ち寄るとしよう!」

「あ、大神ちゃん、ちょっと付き合ってくれない?

 十神の言葉を真に受けるわけじゃないけれど、やっぱり怖くて……」

「いいだろう、朝日奈。」

「では僕は寄宿舎とやらを調べてみよう。

 僕たちが唯一就寝できる場所で、これからの生活における重要な場所になるからな。」

「丁度僕もそこに行こうと思ってたよ。」

「そうか、委員長殿もか!

 では、一緒に探索して活路を見い出そうではないか!」

 元から上下関係などにうるさい風紀委員という特性もあろうが、先程の一件から石丸は眼々途に対して奇妙な信頼感を持ったらしく、二人揃って体育館を後にした。

 霧切も、いつのまにか体育館を出て行ったらしい。

「うう、本当に出口とかあるのかなぁ。」

「あの鉄板、ホントウザいよね。

 どっか壊れたりしてないかな?」

「もしどっか緩んでたらこじ開けようぜー。」

「俺の占いではお前たちについてった方が吉!と出たべ!」

 不二咲、江ノ島、桑田、葉隠が口々に言って去り、

大和田が大神と朝日奈の二人に近づいた。

「男としちゃあ、女だけってグループは不安だからな。

 ついてってやるぜ。」

「ええー?大和田、また変に暴れたりしない?」

「安心せよ。

 その時は、我が止めよう。」

「とにかくあれだ!

 あのバカでかい玄関ホールの鉄の扉とか、俺と大神とでぶち壊せねぇか確かめようぜ!」

 大和田、大神、朝日奈という肉体派も外に出て、残った中ではセレス、山田、腐川は探査に行く気もなく体育館にぶらぶらしている中、苗木は丁度声を掛けようとしている相手から声をかけられた。

「あの、苗木君……」

「あ、舞園さん。」

「私たちはどうしましょう。」

「そうだね。

 やっぱり出口を探そうよ。

 皆が一通り探しているようだけど、改めてこの学園の全体を探索してみよう。」

「はい!行きましょう。」

(何だか、自然と舞園さんと探す流れになっちゃったな。

 山田クンからの視線がイタい………)

 かくて校舎の中を一通り見て回り、他の探索チームに遭遇して一通り聞いてみたものの彼等以上の目新しい発見などなさそうであった。

 苗木達が初めに揃った正面玄関前では大和田、大神、朝日奈のグループと遭遇した。

「あっ!舞園ちゃん!

 苗木と?」

「はい、皆さんはどうですか?」

「チッ。俺と大神でこじ開けられねえか試したんだがウンともスンとも言わなくてよ。

 その内モノクマの奴が出てきて、今後扉を無理にこじ開けようとしたらあのマシンガンで蜂の巣にしてやるってよ。」

 大和田が指し示した天井では、取り付けられた機関銃の銃口が入り口を向けて設けられていた。

「この扉を開けるには脱出スイッチってのが必要何だけど宝くじで1等を2回は当てるくらいの幸運でもないと見つからないって。

 ねえ、苗木の『超高校級の幸運』で当てられないかなそれ!」

「今の僕は自分が超高校級の不運だと思ってるから…」

「まあ、そうだよねぇ。

 それとあそこのレターボックスは電子生徒手帳入れだけど自由に使ってもいいらしいよ。

 あっ、舞園ちゃん!

 私アイドル生で見るの初めてなんだ!

 この間の歌番とかにも出てたよね!」

「あっ、見てくれてたんですねあれ!」

 この学園に集められた超高校級達の中でも比較的一般的な家庭環境で育った朝日奈葵がトップアイドルである舞園に自分同様の反応を示して雑談に興じていることに苗木は親近感を覚えつつ女子特有の空気への疎外感を感じていると、自然と側にいた大神に話しかけられた。

「苗木、少しいいか。」

「ん?何?大神さん。」

 大神からは敵意などは感じられないものの威圧感のある風貌と声色に自然と体に緊張を張り巡らせる苗木に、大神は『超高校級の格闘家』としての見地を語った。

「先程体育館で眼々途が石丸を殴り、大和田を止めたのを見たであろう。

 あの2つとも、それなりの武の心得が必要だ。

 石丸もまた、大和田に匹敵する体躯と身体能力の持ち主。

 質実剛健を謳い、風紀を取り締まる『超高校級の風紀員』は伊達でない。

 眼々途の身体能力はあの2人に匹敵する、いや、あの実践派の動きからしてみて、単純な争いでは上回るだろう。」

 言われてみればシャツから伺える一般的高校生の背丈の彼の体はかなりガッチリしていた印象だった。

「じゃあ、眼々途クンにはやっぱり超高校級の運動神経とが……」

「いや、確かに鍛えてはいるであろうがあくまで十神などの上流階級の護身や嗜みレベルの高校級。

 少なくとも奴が体育会系の超高校級とは思えぬ。」

(改めて眼々途クンは何者か何だろう。

 それに霧切さんも見ないけど、どこにいるんだろう。)

 集合場所の食堂に着いたが、苗木と舞園の2人は他の人の探索を見て回った程度のため他の者達は来ていなかった。

「あの、苗木くん。

 丁度いい機会ですから、苗木君と話しておきたいこたがあるのですが、いいですか?」

「うん、僕も舞園さんと話してみたいと思っていて。」

「良かった。

 あの、苗木君って根黒六中で、私と同じ中学じゃありませんでしたか?」




通信簿
眼々途 森(めめと しん)
超高校級の???
学級委員長

身長 175cm
体重 68kg
胸囲 90cm
誕生日 11月10日 蠍座
血液型 B型

好きなもの SF小説
嫌いなもの 舞園さやか
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