魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
「それでは先ず始めにこの世界についてご説明致しましょう」
ダリルさんはそう話すと、パソコンを操作しながら私となのはへの説明を始めた。
先ず最初に映し出されたのは一枚の地図……どうやらこのアルトランディアの世界地図のようだった。
「この世界アルトランディアは主に五つの大陸からなる世界です。先ずは中心にあるセントリア大陸……こちらは我がメディウス・ロクス連邦がある大陸ですね。そして東の
次に映し出されたのは少し古い……なにかの文献の挿絵のような画像。
「そしてこの世界にはあなた方の使う〝魔法〟ではなく、〝法術〟と呼ばれる力が普及しております。しかしそれでも法術を扱える者は限りがあり、その大半が討伐師として活動しておりまして、生活に関係するような法術使いは極限に少ないのが現状ですね」
「はいはい!それはつまり生活向上の為の法術より主に戦闘系統の法術の方が多いという事ですか?」
「なのは殿、素晴らしい質問ですね。その通り、主に攻撃用の法術や防御用の法術ばかりが多く、逆に言えばそうでなければならない程、この世界は危機的状況にあるということなのですよ」
「禍憑……ですね?」
「はい。フェイト殿、禍憑とはいったいどのような存在であるとお考えですか?」
ダリルさんからの質問に私は頭の中で言葉を選びながらそれに答える。
「え〜と……生物が異形の姿へと成り果てた、人類にとって危険な存在、というくらいしか」
「良き回答です……ですが少し足りないですね。正確に言えば禍憑の因子により凶暴化した元は生物や機械であった存在ですね」
「機械も禍憑になっちゃうんですか?」
「はい。これ迄に旅客機や戦車、自動車、それにビルやマンションだった禍憑が確認されております」
「建物まで……いったい何なんですか?それらをそんなものに変える禍憑の因子って……」
「それについては残念ながらまだ詳しいことが分かっておりません。ただ、一般的な認識としては〝淀み〟のようなものだと言われております」
「〝淀み〟……」
「それこそ呪い、祟り、怨念といった負の力の塊と言った方が分かりやすいでしょう。それらが生物や物に宿ることによってそれを凶悪なものへと変化させるのです。我々はこの現象を〝汚染〟と呼んでおります。例えば人形には魂が宿るなんて話聞いた事がありませんか?」
「あります!地球でもよくそんな話を聞いてました」
「そのような事が実際に起こっているのですよ、この世界ではね。だからこそそれらに対抗出来る唯一の力が法術なのですよ」
「そういえばずっと気になってたんですけど、法術って何ですか?」
「法術とは神々の力を借りて行使する力の事です。そうですね……今回あなた方を迎えるに当たって私独自に地球の事を調べまして。その中で似たようなものをあげるならば地球で言う〝陰陽術〟や〝霊媒術〟のようなものと思っていただければ」
「なるほど、それだと分かりやすいですね」
「つまり体内にある魔力を使って魔法を放つ私達と違い、法術使いは祈りによってその力を行使するという認識で間違いないですか?」
「う〜ん、ちょっと違いますね。魔法は魔力を使う、一方で法術は氣というものを使って使うものです。もっと詳しく説明するならば、体内の氣と外に漂う〝神氣〟を結びつけ、神々の力を顕現し放つという感じでしょうか」
「難しい……」
「ははは、これは研究員の受け売りですから少し言葉が難しかったですね。そうですね……ちょっとお待ち下さい」
ダリルさんはそう言うと一旦退室して、暫くして牛乳とコーヒーと、そしてコップを手に戻ってきた。
「このコーヒーが体内にある氣で、そして牛乳が外に漂う神氣だとしましょう、この
「あ、凄く分かりやすいです!」
「良かったです。この法術が禍憑にとても効果があり、つまり禍憑は法術でなければ倒せないという事です」
「そうなると私達の魔法は効かないかもしれないということになりませんか?」
「そうかもしれませんし、そうではないかもしれません。なにせ未だかつて魔法を用いて禍憑と対峙した記録はありませんから。だからそう悲観せずとも良いですよ。例え通じなかったとしても、その時はあなた方には市民の避難支援やその安全の確保、そして怪我人の保護と治療をお願いしますから」
「そうですか……」
「フェイト殿、そう悲しい顔をなさらずに。我々は……いえ、総統閣下は仰ってたはずです、〝我々も貴殿らへの協力は惜しまない〟と」
「そう……ですね。すみません、少し情けない姿をお見せしました」
「いいえ。必要とされてはいないのではないかという不安は誰しもが持つものですし、そう思った際の辛さはよく分かります。ですが総統閣下を始め我々の中にだからと言って見捨てるような薄情者はいないと自負出来ます。総統閣下曰く〝何事も適材適所なのだ〟というやつですよ」
そう言って浮かべるダリルさんの笑みに少しだけ心が軽くなる。
「ダリルさんって、よく皆さんから良い上司だと言われません?」
「ははは、面と向かいそう口にしてくれたのはたった一人しかおりませんが、まぁそうであれば良いとは思っております」
なのはの言葉に屈託の無い笑みを浮かべながらそう話すダリルさん。
私もこんな方が上司なら、部下の人達は仕事がしやすいんだろうなと思う。
「さて、この世界について一通りご説明致しましたが、次は禍憑についてご説明致しましょう。その前に少し休憩でも取りましょうか?あまり一度に情報を詰め込み過ぎても仕方ありませんからね。何事もメリハリです」
そうして少し休憩へと入った私となのはは、休憩室に向かい自販機から買ったジュースを飲みながら先程の説明について話をする。
「聞いてた以上に人手が足りなさそうな感じだったね」
「そうだね……それに禍憑相手に魔法が通じるかどうかもまだ分からないしね」
なのはとそう話していると通信が鳴り、出ると相手ははやてだった。
『やぁ二人とも、そっちの方はどないな感じや〜?』
「さっきこちらの職員さんから説明を受けてたところ。今はちょっとした休憩中だよ♪︎」
『そやったんか。それで……説明を受けてみてどう思った?』
「かなり危険な状態だと思う。到着時に禍憑に襲われて、兵士さんが一人亡くなった」
『なんやて?!てっきり中心地なら比較的安全やと思うとったけど、実際はそうやないんやな』
「でも職員さん達は優しい人達ばかりだよ。あ、総統のリサンデラさんはちょっと怖い人かも」
『それは聞いてた通りやな〜……』
「魔法が禍憑に通じるかもまだ分からないし、色々と気をつけた方が良いかもしれない」
『それについては私も思ってたところやね。まぁやってみない事には分からへんって事やな』
「そうだね。それと軽く禍憑について説明して貰ったのだけれど、どうやら禍憑になるのは生物だけじゃないみたい」
『どういう事や?』
私の言葉に訝しげな表情となるはやてに、ダリルさんから受けた説明を彼女へとした。
『なるほどな〜……そうなると乗ってきた次元渡航機もそうなるかもしれん可能性があるっちゅーわけか』
「そうならない事を祈るしかないかな」
『そういえば話は変わるんやけど、そっちにとっても強い人がおるらしいな?』
「もしかして鴉さんのこと?」
『鴉……』
「本名なのか、それともコードネームなのかは分からないけど、皆からはそう呼ばれていたし、本人もそう名乗ってたよ」
『流石にコードネームやろな。ほんで、会ってみた感想は?』
「凄く強かった……私達に襲いかかってきた禍憑を雷の法術で仕留めたんだけど、私でもあのレベルの雷撃は出せないかな」
『そんなに?』
「うん、だって庁舎の電子系統にまで影響が出るほどだったし、その時にサングラスと耳栓渡されたくらいだしね」
『マジか……』
「それにこの世界で唯一、瞬間移動が出来る人だってダリルさんから教えて貰ったから、相当な実力者なんだと思う」
『ダリルさん?』
「ここの職員さんで総統閣下補佐、そして私達のサポート役をしてくれる人だよ」
『なるほどそやったんか』
「うん。ところではやて、いきなりなんでそんな事を聞くの?」
『なんでって……もしそこでの任務を解決出来たら、あわよくばうちに引き込めるかもしれへんやんか』
「う〜ん……流石に無理だと思うよ?いくら本人が承諾したとしても、あの総統さんが手放してくれるとは思わないし」
「もしそうなったら私達のうちのどちらかと交換って条件が出されると思うよ?」
『それは本末転倒やな〜……まぁ一応交渉くらいはしとくわ。それではほなな二人とも。あ、そうそう私達も明日くらいにはそっちに合流出来ると思うわ』
「分かった。それについてはダリルさんに伝えておくよ」
『宜しゅうな〜』
そうしてはやてとの通話が切れる。
そのタイミングで背後からダリルさんの声が聞こえてきた。
「どうやら終わったようですね」
「あ、すみません……もしかして休憩終わっちゃってました?」
「ははは、一応声をかけに来ただけですよ。そうしたら何やら通話をしていたようで、邪魔するのも悪いと思い待っていたのです。それにしても後発組が明日に合流するのは分かりましたが、我が国の最高戦力を引き抜こうとするのは頂けませんね」
「あ〜……聞こえちゃってました?」
「聞き耳を立てるつもりはありませんでしたが、流石に聞き捨てならない事ではありましたので」
そう言って苦笑するダリルさん。
「ちなみにリサンデラさんに交渉してみるって言ってましたけど……」
「間髪入れずに門前払いでしょうね。それか先程なのは殿が仰ってたように、お二人のうちのどちらかと交換という条件が出されるでしょうね。いえ……あの方の事ですからお二人揃ってという可能性もあります。それかEXCEEDSの皆さん全てを引き入れようとするでしょうね」
「思ってた以上にリスクの高い交渉だった!」
流石にそこまではと思ったけれど、顔を合わせた時のリサンデラさんを思い浮かべると無くはない話だと思った。
後ではやてには交渉する事すらやめといた方が良いと助言して置こう。
「ともかく先ずは説明を再開することにしましょう。あまり時間をかけ過ぎると総統閣下からお小言を貰ってしまいかねますから」
そうして私達はまた小会議室へと戻り、ダリルさんによる説明を再開するのであった。