魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
夏もそろそろ終わりを迎える頃……この私、〝アメリア・アレキサンドラ・ドラキュリアス・コルニクス〟は学園の食堂にて仲の良い友人達と共に昼食を取っていた。
近くでは同じ学年の男子達がカードを手にかなり盛り上がっている。
「見ろよこれ!お小遣いをつぎ込んでようやく手に入れたんだぜ?」
「すげぇ……最高級の激レアカードの鴉じゃねぇか!いいな〜……俺はまだ一枚も手に入れたこと無いんだよ」
そんな会話を男子達が繰り広げているのを冷めた目で見ている友人達。
「男子って、どうして皆あんな感じなの?本当に子供なんだから」
「最近流行ってる討伐師のトレーディングカードだっけ?あれの何処が良いのかしら?」
「まだ初等部の子達なら微笑ましいけれど、流石に高等部になってからは……ね〜?」
そんな話をしている中、私は気まずそうに一枚のカードを取り出し彼女達に見せる。
「いやあんたも持ってんのかい!」
「以外〜。リアってばそんなの興味無いと思ってた」
「う、うん……確かに興味は無いけれど、このカードだけは気に入ってるの」
「もしかしてその人のファンだったり〜?まぁ男子達の事はあー言ったけど、その〝鴉〟って人は確かにかっこいいものね」
「人類最強って言われるくらい強いんでしょ?そりゃあファンになる子は多いわ」
「そう言ってるあんたも実はファンなの私知ってんだからね?」
「なんで知ってんのよ?!」
「だって私もファンだもん」
「嘘……ホントに?」
「ほら、これ」
友人の一人であるマキアの手の中には一枚のカードがあった。
それは私が持っているトレーディングカードではなく、〝鴉ファン倶楽部〟と書かれたものだった。
「そ、それは……加入するまで数年待ちとまで言われたファン倶楽部の会員カード……しかも三桁?!」
「初めて鴉様のご勇姿を拝見して直ぐに加入申請したの。そしたら幸運にも直ぐに加入出来たのよね〜」
「キーッ!私だってまだ加入待ちの状態なのにぃ〜!羨ましい!」
「そう言えばリアはまだファン倶楽部に入ってないの?」
「う、うん……私がこの人を知ったのはつい最近だし、そんなのがあるのも今知ったから」
「もったいな〜い!ファン倶楽部の会員になったら特製のブロマイドやポスターといったグッズを貰えるのに〜」
「ブロマイド……ポスター……グッズ……」
気がつけば私はスマホを操作し、ファン倶楽部への加入申請を出していた。
その様子に友人達が呆れている。
「あんた……物凄い勢いで申請してたわね」
「はっ……いつの間に……」
「無意識かい!全く……あんたが会員になったらコアなファンになりそうだわ」
「そうだね〜。もしそうなったら次に遊びに行った時祭壇とか作っててそ〜」
「そ、そんな事は……無い……と思う……」
「声ちっさ!」
「しかも歯切れ悪く言われても説得力な〜い」
「うぅ……」
私は友人達からのツッコミに地味にダメージを負いつつ、手にしていたカードへと視線を向ける。
人類最強と名高き特級討伐師〝鴉〟……黒い戦闘服に身を包み、そしてカラスの仮面で常に顔を隠した謎多き人。
突如として現れ、次々に禍憑を討伐した功績を持つ討伐師の中でも最高峰である国家討伐師。
本当の名前も顔も知らないこの人の事を私はよく知っている。
素顔を隠し名を変えてはいるけれど、絶対にこの人は私の敬愛する兄様、鴉丸景久その人だ。
私がそう確信したのは、ある日のニュースで彼を取り上げた報道を見たから。
その時に彼が使っていた法術、〝
それこそ声は機械的なものに変わっていたけれど、インタンビューを受けている時の口調は、私が幼い頃にいつも聞いていた兄様の口調そのものだった。
愛する兄様……あの日、彼に酷い言葉を投げつけ、それを最後にもう会う事が出来なくなった兄様……出来れば今すぐにでも会いに行ってあの時のことを謝りたい。
でも、今はまだそれを叶える事は出来ない。
だって、今の私ではそんな資格が無いから。
必ず私も特級討伐師となって、そして兄様の隣に立てる存在になれたなら、その時こそそれが叶う時なのだ。
だから私は自らそう〝戒め〟を立てて生活している。
そしてきっと、必ず兄様と共に禍憑を討伐するようになるのだ。
「フフッ……」
「あ、あんた……いきなり笑い出してどうしたの?」
「え?いや……私もこの人のように凄い討伐師になりたいなぁって」
「あ〜なるほどね。なれるよあんたなら」
「え?ホントにそう思う?」
「だってリア、ずっと努力してるじゃない」
「そーそー。それこそこの学園に来た時は禍憑人だって皆怯えてたけど、今ではその人達とも仲良いじゃーん」
「それも皆から好かれるようにリアが努力した結果だものね。知ってる?この学園に実はリアのファン倶楽部があるそうよ?しかも男女問わず会員さんがいるんだって」
「えぇ……嘘ぉ……なんだか恥ずかしよ////」
「そう恥ずかしがってる仕草もファンが増える要素の一つだわ絶対……」
「実は私が創設者だったりして〜」
そうしてマキアは新たにカードを取り出して見せる。
そこには〝アメリアファン倶楽部〟の文字と、〝会長〟の文字が記されていた。
「い、いつの間に……」
「それこそリアと友達になってからだよ〜。その日に直ぐにファン倶楽部のブログ立ち上げて〜、そこでリアの写真やどれだけリアが可愛いかを力説したらあれよあれよという間に会員が増えちった〜♪︎」
「あんたのそういう所、正直尊敬するわ。それにしても何で教えてくれなかったのさ?教えてくれたら直ぐに入ったのに」
「えっ、ミナ?!」
「あーしも入ってた」
「キサラも?!」
「あら?それなら今からでも入りましょうか?」
「ミシロ?!」
「マキア、今からでも会員になれたりする?」
「アスカまで?!」
「ふっふっふ〜♪︎そう言うと思って実はこっそり作っちゃってたりして〜♪︎」
マキアはそう言うとミナ、キサラ、ミシロ、アスカの分の会員カードを取り出し配り始めた。
どれもが1桁ナンバーであった。
つまりミナ達は既に私のファン倶楽部に加入していたという事になる。
どうしてマキアはその行動力と仕事の速さを普段の授業で出来ないのだろうと疑問に思う。
当の本人は平然とミナ達から感謝の言葉を受け取っていたが……。
「……という事であたしらは今日からリアの親衛隊ってことで」
「「「「了解!」」」」
「や〜め〜て〜////」
不穏なことを口にするミナと、それに同意する皆に私は顔を赤くしながらそう願うが、皆はそれすらも面白がって笑うのだった。
ちなみに会員カードに添付されていた私の画像は、前に新入生の歓迎パーティーにてマキアにお願いされて〝竜人化〟した時のドレス姿でポーズを決めた時の私だった。
本当に恥ずかしいからせめて画像くらいは別のに変えて欲しい……。
「そんな事よりも昨日のニュース見た?」
「私の一大事を〝そんな事〟で済まさないで……それでニュースって?」
「あ〜、確か鴉様が禍憑人を保護したってやつでしょ?ニュースで総統閣下であるリサンデラ様が保護された禍憑人共に映されてたわね」
「そこでリサンデラ様は世界に向けて禍憑人についてと、そしてその保護を呼びかけてたよね」
「リサンデラ様が言ってること凄く分かりみ。あーしらももしリアと出会ってなかったら、きっと不満抱いてたわー」
「そうそう、リアを見てから禍憑人に対する認識が変わったというか……禍憑人も私達と同じ人間なんだって痛いほど理解させられました」
「凄いじゃん。リア、あんたのお陰で他の禍憑人達への認識が変わり始めてきたんだよ」
「そ、そうなのかな……?」
もし本当にそうであったのなら、これ程嬉しいことは無い。
これでもし私が特級討伐師として活躍出来たのなら、更にその認識が変わるかもしれない。
そう思うともっと頑張れるような気がする。
(また新しい目標が出来ちゃったな)
私はそう思うと、笑みを浮かばずにはいられないのであった。
「そう言えばもう一つのニュースで外から協力者が来てくれたらしいね?」
「え?そうなの?」
「うん、この子達がそうらしいよ?」
そうしてアスカが私達にスマホを見せると、そこにはリサンデラ閣下と、そしてその補佐官であるダリルさんと共に握手を交わす二人の少女の姿があった。
「すっごく可愛らしい子達ね?」
「それに私達より若い……幾つくらいなの?」
「話によると二人とも13歳だって」
「ええっ?!大丈夫なのそれ?」
「う〜ん、なんでも今まで二回ほど世界の危機を救ってるらしくて、その他にも色々と事件とか解決してるっぽい?」
「なるほど……見た目によらずそれ程までの実力者という事ですか……」
「噂によると別の世界から来たらしいよ?」
「別の世界?いきなりファンタジーな話になったわね」
「それはガセネタでしょー?別の世界なんてあるわけないしー?」
「別の世界ならあるよ」
私がそう言うと皆が一斉にこちらへと顔を向ける。
「昔、ヴァローナ義母様がよく話してた。この世界の他に幾つもの別の世界があって、そしてそれぞれ違った文明が発達してるんだって」
「そうなの?」
「うん。〝魔法〟っていう法術とはまた違う力が溢れた世界だったり、ここよりも遥かに進歩した高度な科学の世界があったり、酷く荒廃した世界や、自らの力によって滅びた文明の世界だったり、そして魔法も法術も無く、科学が発達した世界だったり、数えたらキリがないくらいの世界があるんだって」
「そうなんだ……そうなるとそんな世界に行ってみたくなっちゃうね」
「うんうん。もしうちらの世界が更に進歩したら、自由にそう言う世界を行き来出来るかもしれないね」
「もしそうなったら、私は小説に出てくるような世界に行きたいですね。この小説に描かれてる獣人さんとか見てみたいです」
「ま、そんなファンタジーな存在が今目の前にいるけどね」
そう話すマキアの視線は私に向けられていた。
ミナ達も同じように私に視線を向けては、〝確かに〟と何度も頷いている。
「行かずして見れてたわ」
「そうですね。なんなら交流も出来ていますし、こうして触れ合うことも出来ていますしね」
「私をファンタジーな存在にされても困るな〜……」
「事実じゃーん?リアがたまに尻尾出してゆらゆら揺らしてんの見ると、めっちゃ触りたくなってくるしー?」
「えっ?!私、尻尾なんて出してました?」
「ウトウトしてる時はそうだよね〜?なんなら今もそうだし」
「えっ、嘘……」
そう言われて見てみれば、確かに私の尾骶付近から尻尾がスカートとシャツを押しのけて出ており、ゆらゆらと揺れていた。
「わっ!わっ!」
慌ててそれを引っ込める私……幸いにもスカートから下着や肌が出ていた様子はなく、それを見られていた様子もない事にほっと安堵する。
「リアってば気ぃ抜きすぎー」
「本当に……いつか悪い男から狙われないか不安だわ〜」
「まぁその時は私の愛刀がその殿方の血を啜るだけですけれどね」
「そう危険な笑みを浮かべながら刀を取り出すのはやめなさい。見てて怖いから」
「流石は極道の娘……圧がパネェっすわー」
「あらやだ、私とした事がはしたない」
「はしたねぇのはその危険な思考だってぇの。いい加減気づけ!」
「あはははwww」
ミシロに対するミナの鋭いツッコミに私達は思わず笑ってしまう。
そうしているとお昼休み終了五分前を告げる予鈴が鳴り、私達は慌てて片付けを開始する。
「ヤッバイ!いつの間にか時間来てたわ。次の授業は視聴覚室なのに!」
「急いで教室に戻り教科書と筆記用具を持って向かわねば間に合いませんね」
「よく見たら残ってんのあーしらだけじゃん。マヂヤバすぎワロター」
「いいから急ぐ……ってリア、また尻尾出てる!」
「あ、あら……?」
ワタワタしながら食べ終えた食器を棚へと置いて教室へと戻ろうとする私達に、それ見ていた食堂のおば様が呆れ顔でこう言った。
「あんた達は……いつ見ても姦しいねぇ」
うぅ……いつも本当に申し訳ないです……。
そうして急いで教室へと戻る私達……途中、廊下を走っているのを先生から注意されたり、教室から視聴覚室へと向かう最中にキサラがノートを忘れたと言って戻ったり、結局遅れて視聴覚室に入る事になり授業担当の先生に呆れ声でお叱りを受けたりしたけれど、それでも私にとっては掛け替えの無い日常。
(ヴァローナ義母様、兄様、私は……リアはこうして頑張ってます)
放課後、帰路へと着く前に今はもう青くなってしまった桜の木を見上げながら、私は心の中でそう二人に伝えるのであった。