魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜   作:ΣiGMA

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聖天歴2036/9/2 PM16:30〈はやて視点〉

 昼休憩も中盤に差し掛かった頃、昼食を終えたダン曹長は午後の偵察任務の準備の為に先に退室して行った。

 

 私達もそろそろ食べ終えなアカンなと食べ進めておったんやけど、いざ食べ終えて食器を返却する為に立ち上がろうとした矢先に、私の両側になのはちゃんとフェイトちゃんがドカッと座ってくる。

 

 

「今からお昼ご飯なんか二人と……も……」

 

 

 そう声をかけながら二人を見ると、何だか雰囲気が怖い……。

 

 二人はずっと黙ったままで、せやけどお冷を置きに来たスタッフさんに素早くメニューを見ながら注文を済ませとった。

 

 その様子にシグナム達も困惑しており、だけど二人は何も言わずにそのまま……。

 

 

「ど、どないしたん二人と──「「はやて(ちゃん)」」──な、なんやろか?」

 

 

 こちらから声をかけ、ようやく口を開いたかと思えば、こちらに顔を向けた二人の表情は笑っていた。

 

 せやけどその目は笑ってはおらず、妙な圧をこちらへと向けてくる。

 

 

「じゃ、じゃあ先に行ってるなはや……総督」

「それでは先に失礼します八神総督」

 

「皆待っ……「は〜やてちゃん?」……はひっ!」

 

 

 そそくさと先に退室してゆくリイン達に助けを求めようとしたが、それを遮ってなのはちゃんが呼びかけてきたので、私は思わず声が上擦ってしまった。

 

 

「私達、あの後総統さんに会いに行ったの」

 

「あ、あぁ知っとるで?」

 

「そしたらね?中で総統さんと鴉さんが口喧嘩しててね」

 

 

 まだやっとったんかいなあの二人……。

 

 

「でも私達も早く報告を済ませなくちゃならなかったから、頑張って声をかけたの。そしたらね……」

 

「そ、そしたら……?」

 

「二人はどちらの味方に付くのか問い詰められちゃって。どっちの味方に付くか決めるまでずっと……ず〜っと拘束され続ける羽目になっちゃったんだ〜」

 

「そ、そやったんか……それは災難やったな。あ、そろそろ私も行かなアカンからここで────」

 

 

 今直ぐにでもここから逃げなければと立ち上がろうとした私の肩を、フェイトちゃんがガッチリと掴む。

 

 

「逃がさないよはやて」

 

 

 気付けば二人の顔はこれでもかと私の顔に寄せられており、その分だけ圧を感じて私の額から嫌な汗が滲み始める。

 

 よく見れば反対側の肩にはなのはちゃんの手が置かれていた。

 

 

「知ってたよね、はやてちゃん?」

 

「な、何をや……?」

 

「二人が口論してたこと。そういえば、あの時はやては私達を止めようとしてたよね?」

 

「どうしてもっとちゃんと止めてくれなかったのかな?そうしたら今頃、はやてちゃん達と一緒にお昼食べれてたのに」

 

「え〜と……そ、それはやな……」

 

「「はやて(ちゃん)」」

 

「は、はい……」

 

「「お話……しよっか?(♪︎)」」

 

「は……はい……」

 

 

 その後、私は二人からこってりと絞られる事になった。

 

 二人の料理を運んできた来たスタッフさんも、それを置くなり直ぐに逃げるように去ってしまい、周囲もまた私達と距離を置いていた。

 

 そうしてようやく解放されたのはそれから数時間後の事やった。

 

 トホホ……悪い事は考えるもんやないな……。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 その日の夕方頃、明日の予定について話がしたいと総統閣下から呼び出されていた私がリインと共に執務室にて総統閣下と話をしていると、突然エレベーターのドアが開きそこから一人の職員さんが駆け込んできた。

 

 

「貴様!今は会議中だから立ち入り禁止だと言っておったろうが!」

 

「ほ、報告します!たった今帰還した偵察部隊より禍憑氾濫の兆候ありとの報せが届きました!」

 

「なんだと?!」

 

 

 叱責する総統閣下の言葉を無視してされたその報告に、総統閣下の驚愕の声が響く。

 

 

「何処でだ!」

 

「今回の偵察先……メディウス・ロクス連邦北部、センダルセン山脈麓の樹海でです!なお、偵察部隊の大半が負傷……10人中、軽傷者が六名!重傷者二名!そして……死亡者二名……」

 

「死亡者が出ただと!亡くなったのは誰だ?!」

 

「第三陸上偵察部隊部隊長ガイウス・ダン曹長と、ジョージ・メイザース伍長です」

 

「え……」

 

 

 死亡した方の名前を聞いた私は思わず声を漏らす。

 

 

(ガイウス・ダン……それにジョージって……)

 

 

 私の脳裏に二人の顔が浮かぶ。

 

 

「なんで?!どないして二人が?!」

 

「落ち着け八神総督!いったい何があった?何故、禍憑氾濫の兆候が分かった?」

 

「ダン曹長率いる第三偵察部隊は偵察中に群狼による禍憑の襲撃を受け、即時撤退へと移ったそうです。それからの詳しい内容は治療を終えた隊員達から聞かないことには何とも……」

 

「愚か者がぁぁぁ!そういう急を要する報告はその詳細まで聞けといつも言っておろうが!よもや治療を受けねばと要らぬ気を回したわけではあるまいな!」

 

「ひぃぃぃ!も、申し訳ありません!」

 

「よい!後のことは我自ら聞き出す!八神総督、八神事務総長。二人も共に来るが良い!」

 

 

 その言葉に私達は頷いて了承した。

 

 そして向かった先……合同庁舎の駐車場には天幕が張られ、そこでは怪我を負った兵士さん達が治療を受けていた。

 

 そのうちの一人がこちらに気付くと、治療そっちのけでこちらへと駆け寄ってくる。

 

 

「そ、総統閣下!ご報告致します!」

 

「禍憑氾濫の兆候があったのだろう?それについては聞いておる。先ずは貴様はそのまま治療を受けよ。話はそこで聞かせてもらう」

 

「申し訳ありません……詳しい話をする前に伝令を頼んだ者が〝禍憑氾濫〟という言葉を聞くなり行ってしまい……」

 

「その者については叱責した。だから貴様は戻って治療をせよ」

 

「はっ!」

 

 

 兵士さんはそう言うと今しがた治療を受けていた場所へと戻り、その続きを受け始める。

 

 総統閣下は私達を連れて一緒に行くと、改めて兵士さんの報告を聞いた。

 

 

「それで……何があった?」

 

「はっ……偵察任務中、いきなり群狼の禍憑の襲撃を受けまして、隊は即時撤退を決めました。その際、群狼が飛び出してきた方向を見ると、そこには複数体の様々な禍憑の視線があり、その数、ざっと見る限りでは50は下らなかったかと……」

 

「完全に禍憑氾濫の最小規模だな……」

 

「撤退中、次第に群狼の数も増え、果ては飛行型の禍憑まで現れる始末……何としても生き延びて報告せねばとは思っていたのですが、その最中に……だ、ダン曹長と……め、メイザース伍長が……」

 

 

 二人の名を出した直後に兵士さんはその場に泣き崩れた。

 

 

「お二人は我々を逃がす為に犠牲になりました!我々はそんなお二人を残しては置けないと……〝何としても生き延びよ〟という総統閣下の命令に背いてまで連れて帰りました……」

 

「本来ならば褒められるべき事ではない。それは……その行動はお前達を逃がすべく犠牲になった二人の意志を、覚悟を無駄にする行為になりかねんというのは分かっておるな?」

 

「はっ……我ら、どのような処罰も受ける覚悟です」

 

「うむ、それについては後で必ず受けさせる事にしよう。だが、よくぞ二人を連れて帰った。その勇気、その心意気、褒めて遣わす。よくやった」

 

「うぅ……あり、ありがとう……ございます……」

 

「それでは我らはここで失礼する。ゆっくり休め」

 

「はっ……」

 

 

 そうして兵士さんが治療を受けていた天幕から出た途端、中から慟哭にも似た声が聞こえてくる。

 

 そして私達が次に向かったのはダン曹長とメイザース伍長の遺体が安置されている場所であった。

 

 お二人の遺体には布が被せられ、私達が来たのに気付いた職員さんがその布を捲り顔だけを見せた。

 

 総統閣下はその場にしゃがみ込むと、目を閉じ、それぞれの手でお二人の身体に触れる。

 

 

「これまでの働き、大儀であった……今はただ安らかに眠れ」

 

 

 昼食時には笑顔を見せていた二人……気付けば私はそんな彼らの遺体を見ながら涙を滲ませていた。

 

 そんな時、ダン曹長の傍に鴉さんが現れ、その手に持っていたウィスキーやろか?

 

 その蓋を開けるなり、ダン曹長の口に付け少しだけ……その唇を濡らす程度の酒を注ぐ。

 

 

『本来、〝末期の水(まつごのみず)〟は水でやるもんだが……これが俺からあんたに贈る末期の水だ。それとこれは向こうでジョージと二人で飲んでくれ』

 

 

 そう言ってダン曹長の胸元にウィスキーの瓶を置く鴉さん。

 

 

『話は聞いた……先に禍憑氾濫について他の奴らに話しておく。作戦会議をする際は呼んでくれ』

 

「必ず」

 

『……失礼する』

 

 

 鴉さんはそう言うとその場から姿を消す。

 

 そのタイミングで今度は数人の兵士さん達が中へと入ってきた。

 

 よく見れば全員、ダン曹長の部下の方達だった。

 

 

「お前達、治療はどうした?」

 

「はっ!ここにいる者達は全員治療を終えました!流石に重傷者については連れてはおりませんが」

 

 

 彼らの先頭に立っていた女性の兵士さんがそう返答する。

 

 そして女性兵士さんはダン曹長の遺体の上に置かれていたウィスキー瓶に気付くと、嬉しくも切なそうな表情でこう呟く。

 

 

「鴉殿……」

 

 

 そして直ぐに姿勢を正すと、その場で大声で号令を発した。

 

 

「ガイウス・ダン曹長及びジョージ・メイザース伍長に対し敬礼!」

 

 

 その号令に彼女は勿論、後ろに控えていた兵士さん全員が敬礼をした。

 

 そして女性兵士さんが先に手を下ろし、兵士さん達も一糸乱れぬ動作で手を下ろすと、女性兵士さんはダン曹長とメイザース伍長に向けて追悼の……別れの言葉を述べ始めた。

 

 

「ガイウス・ダン曹長!かつてまだ未熟であった私達を、誰よりも親切に、時には厳しく、そして時には優しく接し引率して下さいました!あの時も我が身を顧みず私達を逃がす事に専念して下さいました!それによりここにいる私達は負傷しつつも帰還する事が出来ました!そしてメイザース伍長!貴官は一人の兵士であると共に、一人の父親として、常に市民を守る為に働き続けてきた!その姿、その意思、心より尊敬する!あっ……〜〜〜っ!」

 

 

 別れの言葉を述べている最中に涙が込み上げてきたのか、女性兵士さんは目頭を抑える。

 

 しかし直ぐにまた姿勢を正すと、その続きを述べ始めた。

 

 

「これからは二人の意志を継ぎ、この私、〝ミランダ・リンバス〟軍曹を先頭に職務を遂行して行くことをお二人に誓います!これをお二人への最後の言葉とし、改めて敬意を込めて……敬礼!」

 

 

 途中でもう駄目になったのか、女性兵士さん……ミランダ・リンバス軍曹は無理矢理敬礼を持って締めくくった。

 

 しかし後ろにいた兵士さん達は誰一人として遅れることなく揃って再度敬礼をしていた。

 

 だが今度はリンバス軍曹は一向に手を下ろそうとせず、軍帽を深く被った顔を僅かに伏せたまま。

 

 それを見て兵士の一人がなにかに気付いたのか、敬礼をした手を下ろし、そのままリンバス軍曹の肩へと置いた。

 

 それを合図に次々と彼女の背をポンポンと叩いて去ってゆく兵士さん達……最後に肩に手を置いていた兵士さんに連れられ、リンバス軍曹もこの場から去って行った。

 

 

「リンバス軍曹は随分とダン曹長を慕っておられたのですね……」

 

 

 最後に敬礼をきた時のリンバス軍曹は泣いていたのは分かっていた。

 

 僅かに見えた口は下唇を噛んだ状態で、その深く被った軍曹から一筋の涙が流れていた。

 

 それを見て私も思わず涙を流してもうたしな……。

 

 

「彼女は……ダンめが新兵教育の教官をしておった頃の教え子の一人でな。あ奴の後ろにいた連中は皆、かつてのダンの教え子達だ。その中でも誰よりも出世したのがリンバスよ。〝いつかダン曹長の右腕になる〟との目標を立てておった。ダンについても近々少尉に昇格する予定でな……我はその補佐官にリンバスを任命しようと考えておったくらい、彼女もまた優秀な兵士であった」

 

「そうだったんですね……」

 

「メイザースだって数ヵ月後に軍曹教育を受ける予定であった。ダンもメイザースもリンバスも……いや、あの者ら全員が悔しいであろうよ」

 

 

 総統閣下はそう話すと、立ち上がりお二人の遺体に向けて深く一礼した後に天幕を後にする。

 

 

「共に来い八神総督。これより禍憑氾濫に対する作戦会議を開く」

 

 

 その言葉に私達はひとつ頷き、彼女と共に会議室へと向かうのであった。

 

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