魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜   作:ΣiGMA

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憤怒〈ミランダ視点〉

 総統閣下より禍憑氾濫の鎮圧へと向けた作戦会議が行われるということで、この私〝ミランダ・リンバス〟は鴉殿を呼びに訓練室へと訪れていた。

 

 その入り口に到着すると、そこには総統補佐官であるダリル・エドウィン殿の姿があった。

 

 

「お疲れ様ですエドウィン総統補佐官」

 

 

 そう挨拶をしながら敬礼すると、エドウィン補佐官もまた敬礼を返した。

 

 

「お疲れ様ですリンバス軍曹。ダン曹長とメイザース伍長の件聞きました。さぞお辛い事でしょう……心よりお悔やみ申し上げます」

 

「ありがとうございます。ですが、今はそれに心を割いている訳には行きません。ところでエドウィン補佐官はここで何を?」

 

「あぁいえ、鴉殿が訓練室にいらっしゃると聞き、ドリンクとタオルを差し入れに来たのですが……どうにも入っていける雰囲気では無かったので」

 

 

 何故なのかと思ったが、ダン曹長と鴉殿の仲を思い出した私は恐る恐るエドウィン補佐官に訊ねる。

 

 

「もしや……相当荒れておいでですか?」

 

「えぇ、それはもう激しく。今は止みましたが、先程までここまで聞こえてくるほどに激しい音が鳴り響いておりましたから」

 

 

 ドアの先は静寂で、とてもそうであったとは思えない。

 

 

「先程のお言葉を返すようで申し訳ありませんが……リンバス軍曹はどういった要件でここに?」

 

「はい、総統閣下より禍憑氾濫鎮圧の為の作戦会議を開くとの事で、鴉殿を呼んできて欲しいと頼まれここに来た次第であります」

 

「そうでしたか……そうなると私も戻って色々と準備をせねばなりませんね。すみません、私は戻るので代わりにこちらを鴉殿に渡して下さいますか?だいぶ落ち着きを取り戻したでしょうから」

 

「お任せ下さい。それではエドウィン補佐官、また後で」

 

「はい、また後で。それでは失礼致します」

 

 

 そうして去ってゆくエドウィン補佐官。

 

 私はその背を見送ると、ドリンクとタオルを手にドアの先にいるであろう鴉殿に声をかける。

 

 

「鴉殿、ミランダ・リンバス軍曹です!失礼致します!」

 

 

 そうしてドアを開いた瞬間、中から凄まじい程の気迫が私に押し寄せてきた。

 

 これは他でもない……殺気だ。

 

 その凄まじいまでの殺気に私の全身は総毛立ち、毛穴から汗が吹き出す。

 

 

(なんという殺気……気を抜けば一瞬で意識を刈り取られそうだ)

 

 

 ダン曹長と鴉殿は親友とも呼べる間柄であった。

 

 そんな親友のようなダン曹長を失ったのだ……このように殺気立つのも仕方は無い。

 

 

「……失礼します」

 

 

 震えそうになる声を必死に抑え、再度そう声をかけてから中へと入る。

 

 訓練室は無惨な状態であった。

 

 用意されていた的はおろか、天井や床、壁の至る所にまで斬撃の後が深く刻まれており、それはまるで鴉殿の怒りや心の痛みを表しているかのようであった。

 

 

『……ミランダか』

 

 

 私の存在に気づいた鴉殿が振り返る様子もなくそう口にする。

 

 

「はっ!総統閣下より作戦会議が行われる故、鴉殿も参席して欲しいと……よって呼びに参った次第です!」

 

『分かった』

 

「あとこちら……エドウィン補佐官より差し入れのドリンクとタオルだそうです。お使いになられますか?」

 

『使わせて貰う……ありがとうな』

 

「いえ、お礼ならばエドウィン補佐官に」

 

 

 私からドリンクとタオルを受け取った鴉殿は、顔を背け仮面を外しタオルで汗を拭う。

 

 今まで鴉殿の素顔を拝見した事は無いが、それが普通となっていたので対して気にならなかった。

 

 しかし今は絶対に見てはならないと思っている。

 

 そう思わせる程に鴉殿の身体からは怒りの感情が滲み出ていた。

 

 

「ダン曹長にお酒を添えられましたよね?ありがとうございます」

 

『かつての約束を反故されたからな……まぁ向こうでジョージと飲んでくれたらありがたいな』

 

 

 嫌味ったらしく言ったつもりでしょうが、どうにも嫌味ったらしく聞こえない辺り、本当に鴉殿はお優しい方だ。

 

 

「その作戦会議ってぇの?シャワーで汗を流してからでも間に合いそうか?」

 

 

 懐かしい鴉殿本来の声……最後に聞いたのはかつての掃討戦以来だ。

 

 

「はい、十分間に合うかと。宜しければその旨を総統閣下に伝えておきましょうか?」

 

「そうだな……頼む』

 

「はっ!それではお先に失礼します」

 

 

 私はそう告げると訓練室を後にする。

 

 

 するとそんな私に鴉殿が背後からこう言った。

 

 

『ミランダ、お前も鎮圧戦に参加するつもりか?』

 

「はい、そのつもりです」

 

『……死ぬなよ?』

 

「────!ふっ……生憎と私のこれからの予定にそれは含まれておりませんので」

 

『そうか……それなら良い』

 

 

 そうして私は再度敬礼をしてから訓練室を出る。

 

 そして総統閣下の元へと向かう中、心の中で禍憑共に向けてこう告げた。

 

 

(待っていろ禍憑共……貴様らは怒らせてはならぬ方を怒らせた。相見えるその時まで、せいぜい震えて待つが良い)

 

 

 北部では未だ禍憑がその数を更に増やしているだろう……だとしても何ら問題は無い。

 

 どうであろうと殲滅するのに変わりないのだから。

 

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