魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
9月に入ったばかりの今日……教室ではある話題で持ち切りだった。
「禍憑氾濫が起こるって?!」
「今朝ニュースで総統閣下が会見を開いてた。場所は北部の方らしいぜ?ほら、あの樹海のある……」
「北部に私のおばあちゃんの家があるんだけど、今朝お母さんが連絡したらもう避難が始まってるって」
「ここでも避難者の受け入れ始めてるみたいだとさ。早く鎮圧されて欲しいよ」
クラスの子達は口々にそんな話をしていた。
それを横で聞いていた私達も禍憑氾濫について不安を抱く。
「ここ最近起きてなかったのにね」
「そうだね……北部の街まで到達しなければ良いんだけれど……」
「そこは北部の砦頼みになりますね……」
「今スマホで確認してたんだけど、北部にいた討伐師達がたった今砦に集結したって」
「ここからも派遣するんだよね〜?でもそうなると首都近辺の禍憑はどうするんだろ〜?」
「どうやら派遣されるのは部隊と国家討伐師だけのようですよ?一般の討伐師の方達は残るそうですから大丈夫なのでは?」
国家討伐師……と言うことは兄様も北部へ向かうという事ですね。
大事が無ければ良いのですが……。
そうしてミナ達と話していると登校してきたキサラが私達の元へと駆け寄ってくる。
「うぇーい、おっはー☆」
「おはようキサラ。あんたこんな大事にも関わらずいつも通りね?」
「だって、あーしらがどーこー言った所で何も変わんないっしょー?それよりも新しいコスメにしてみたぜ☆」
「あんたのそういう所……素直に感心するわ」
「どこのコスメ?」
「はいはいリアもそこで興味持たない」
「んっふっふー、なーんと
「え〜、良いなぁ……それ、予約2年待ちでしょ?しかも凄く高いやつ」
「販売前予約開始直後に鬼連打で予約勝ち取って、そんで貯めてた小遣いと頑張って稼いだバイト代注ぎ込んで買ったのさー」
「そういう所に全力注ぐんだから……そのほんの一部だけでも勉強に使いなさいよ、あんたは」
「勉強で可愛くなれるかってーの」
「でも万年補習組のままじゃ、いつかメイクする余裕すら無くなっちゃうよ?」
「そん時は本気出すぜぃ」
「それでガチで本気出すとテストで1位獲れちゃうんだから凄いわよね……こう言うの、〝バカと天才は紙一重〟って言うんでしょうね」
「どーも、普段はおバカ、しかし裏では天才児の超絶美少女ギャルのキサラ・アビゲイルちゃんでーす☆」
「天才級のバカだったわ」
「にゃんだとう!」
「ふふっ……」
そんなミナとキサラのやり取りを見て思わず笑っていると、突然教室内に大声が響き渡った。
「あんた達!もうとっくに授業は始まってんのよ!さっさと席に着きなさい!」
その声の主は私のクラスの担任にして生徒指導担当でもある〝カマナンデス・オネ〟先生だった。
オネ先生はクラスの子達から〝オネェ〟と呼ばれており、身体は男性だが心は女性という個性的な先生であった。
とても気さくで優しく、こうして厳しい時もあるけれど、悩みのある生徒の相談を親身に聞いてくれる、生徒達から非常に人気がある先生だった。
「まったくもぅ……北部での事気になっちゃうのは分かるけれど、それは政府のお偉いさんや現地の大人達が気にすることであって、あんた達が気にするのは勉強と貴重な学生生活をどう楽しく過ごすかだけよ。とはいえ、北部に家族がいる子達は不安でしょう。だからもしご家族から連絡が来たら授業なんて気にせず出ちゃって構わないからね」
気軽にそう言ってくれるからオネ先生は学園内で人気No.1の先生なのだ。
そんなオネ先生は自身の教科書を開こうとしてその手を止めると、何かを思い出したかのようにポンっと手を叩いた。
「そうそう忘れる所だったわ!実は職員会議で学園長からこのリストに載ってる子達を学園長室に来るよう伝えて欲しいって言われてたのよ〜」
「オネェ先生、それは忘れてたらダメでしょ」
「あたしの名前は〝オネ〟であって〝オネェ〟じゃないわよ!まぁオネェでもあるけれど、あたしはオ・カ・マ♡あ、でもオネェなのだからあながち間違ってはいないわね。いや、そんな事よりもこっちよ、こっち」
「オネェちゃんホントに面白いわー」
「こら、アビゲイルちゃん。流石に教師を〝ちゃん〟で呼んでは駄目よ!ちゃ〜んと〝先生〟と呼びなさい!別に学校の外でなら〝ちゃん〟でも構わないけれど、学校の中では先生と呼ぶこと。いい?じゃないと将来苦労するのはあんたなんだから。社会ってのはね?あんたが思ってる以上にうんたらかんたら……」
「せんせー、また話が脱線してまーす」
「あらヤダあたしとした事が……という事で今から読み上げるから、名前を呼ばれた子は直ぐに学園長室へと行きなさい。他の子達はその子達の為にノート取っておく事」
そうしてオネ先生はリストを手にすると、そこに記された名前を読み上げてゆく。
「
「えっ、あたし?!」
最初に名前を呼ばれミナが驚く。
オネ先生はそれを機にする様子もなく次々と名前を読み上げていった。
「キサラ・アビゲイルちゃん、
キサラ、ミシロ、アスカ、マキナまで名前を呼ばれる。
彼女達を含め、名前を読み上げられていった子達は皆驚いていた。
そして────
「……最後に、アメリア・A・D・コルニクスちゃん」
「えっ……」
「今呼ばれた子達は直ぐに学園長室に向かうこと、いいわね?」
どうして私達が学園長室へと呼ばれたのか分からなかったけれど、オネ先生は既に授業を始める準備をしていた為、その理由を聞けずに言われた通り学園長室へと向かう事となった。
そして学園長室へと到着しノックをすると〝どうぞ〟と学園長先生の声が聞こえてくる。
「失礼します」
私を先頭に中へと入ると、そこには他のクラスの子達と生徒会の皆さんの姿があった。
「よく来たね。まぁ立ったままになってしまうのは申し訳ないが我慢して欲しい」
学園長先生はそう話すと、目を通していた書類を置いてこちらへと顔を向ける。
「さて……時間も有限なので早速本題へと入ろう。君達は北部で禍憑氾濫鎮圧戦が行われるというのは既に耳に入っているだろう」
その言葉に私達は全員頷く。
「その事でリサンデラ・ギルナスティス総統閣下より協力要請が入った。まぁ所謂〝お手伝いが欲しい〟と言ったところだ」
「そのお手伝いをしに我々が向かうという事ですか?」
生徒会長の質問に学園長先生は頷いてそれを肯定する。
「可愛い我が校の生徒達を危険な場所へ向かわせたくはないのだけれどね。流石に総統閣下の命となると無闇に断れない。とは言え、君達が送られる場所は戦地では無く、後方支援の場所……つまり首都と北部砦の中間にある補給地点だ君達は補給部隊と共に食料や装備の確認と、北部砦への輸送、そして砦での荷降ろしの手伝いが主な役割となる」
それを聞いて少しだけホッとする。
しかし完全に安心出来る訳ではなく、前線では無いとはいえ全く危険は無いという訳では無い。
「もしもの事が起これば直ぐに輸送隊の方々が君達を首都まで送り届けてくれるそうだし、こちらとしては無理にとも言わない。総統閣下も〝本人の意志を尊重して欲しい〟と言って下さっている事だしね」
「どうして私達なんですか?」
私は恐る恐る手を挙げながらそう訊ねる。
「それはひとえに君達が我が校でも優秀だからだ」
思わずキサラを見そうになった。
ミナもまた同じような懸念を感じていたようで、こちらは普通にキサラの顔を見ていた。
「優秀……」
「なんだよー、やんのかオラー?」
「コホン……それで、どうだろう?是非とも行きたいという者はいるか?別に辞退したとしても成績に関わる訳ではない。もし辞退するのであれば静かに自分達の教室へと戻るといい」
その言葉に辞退を考えていた子達がゾロゾロと学園長室を後にする。
気付けば残っていたのは私、ミナ、キサラ、ミシロ、アスカ、そしてマキナの六人だけだった。
てっきり生徒会の皆さんも参加するかと思っていたけれど、どうやらそうでは無かったらしい。
「まったく……普段はあれだけ〝将来の為に〜〟なんて言ってたくせに、いざこんな話が出ると途端に尻尾巻いて逃げるだなんて情けない」
「ミナ……」
「当然あたしは行くわよ。今行かなかったとしても将来討伐師になったら嫌でも行かなくちゃならないんだし、それに今行けば将来の為に良い経験になるしね」
「あーしもーミナちと同感ー」
「私もです」
「私も」
「私もだよ〜」
「リア、あんただってそうでしょ?」
「うん、もちろん」
将来、兄様の隣に立って一緒に戦う事を決めてこの学園に入ったのだ。
その為なら今回の話は受けて当然だと言える。
「六人共、実に素晴らしい心意気だ。だが現地に着いたら気を引き締めなさい。僅かな油断が命取りなのだから」
『はい!』
こうして私達は北部の補給地点へと向かう事が決定した。
もしかしたら兄様と出くわすかもしれないけれど、もしそうなったら浮かれないよう気を付けることにしないといけないわね。
「鴉様に会えるかも〜、楽しみ〜♪︎」
訂正……マキナが浮かれて変な事をしないよう注意しないといけないかもしれない……。
私はマキナに一抹の不安を抱きながら、呆れた表情のミナ達と共にため息をつくのであった。
感想待ってます