魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
〈なのは視点〉
北部への遠征が決まり、私達は北部砦へと向けて兵士さん達と共に軍用車で移動していた。
その道中、私はフェイトちゃんと一緒にはやてちゃんとアイネスさんの二人と通話していた。
『……という訳でなのはちゃん達については向かってくる禍憑達の対処が主な役割となるからよろしくな〜』
「うん。作戦としては私とフェイトちゃんは主に右側を担当すれば良いんだよね?」
『そうですね。左側を北部の討伐師の方々、そして真ん中正面を鴉さんが受け持つといったところですね』
『とは言っても終わるまで戦いっぱなしって訳やないからな。ある程度になったら交代でシグナム達が入ってくれるそうやし、その間はなのはちゃん達はちょっと休憩って流れや』
『その辺もちゃんと考えて下さっているあたり、総統閣下は素晴らしいリーダーですね』
『まぁこっちは現状動けるのがなのはちゃんやフェイトちゃん、そしてシグナム、ヴィータくらいなもんやからなぁ。あとは現地での協力者の方々に手伝ってもらわなアカン』
『そろそろ新しい人員が欲しいところですが……』
『他も他で色々と忙しいからなぁ……まぁこちらも色々と掛け合ってはいるし、そろそろ
「彼女達って……もしかして!」
『せや、フィリーやゼオさん、ラムダさん、ルミナさん、シフォンさんのダルナザ組や、シイナさん、トワさん、シオリさん、ユーナさん、アオイさん、ユズさんの瑞穂組や』
「彼女達が来てくれれば、EXCEEDS側の戦力増強になるね」
「まぁあの総統さんを怖がっちゃうかもだけど」
『あはは、そこはまぁ慣れてもらうしかあれへんな。まぁそういう訳で北部では頑張ってや〜。私は私で逐次入ってくる情報を元に総統閣下と話し合い頑張るわ〜』
「りょーかい♪︎それじゃあまた後でね」
『ほな、またや〜』
『それでは私もこの辺りで。現地に着いた頃にまた連絡します』
「は〜い。アイネスさんもまた後で」
そうして通話を終えると、同乗していた兵士さん達が感心した表情でこちらを見ていた。
「凄いもんだなぁ魔法ってやつは……そんな事も出来るのか?」
「あ、はい、そうですね。まぁこれも技術の一つではありますから」
「こっちでもそれが出来れば、わざわざ写真撮って送る手間が省けるんだがなぁ」
「法術を使って出来たりしないんですか?」
「今の時点でそういった法術は聞かねぇなぁ。〝法具〟なら可能かもしれないが……それでも使えるとしたら法術使いの奴らだけだろうな」
「ほうぐ?」
聞き慣れない言葉に思わず首を傾げる。
「〝法具〟ってのは法術を強化したり補助したりする道具でな。基本的に武器や防具が多いな」
「法具は法術使いにしか使えない代物で、それを手がけている職人さんも法術使いだ」
「まぁ要するに嬢ちゃんが使ってる杖と同じようなもんだ」
「へ〜、なるほどそういう物があるんですね?」
「ちなみに通常よりも更に強力な力を秘めたものは〝神器〟と言われててな。これについては出自不明の物が多いんだ」
「出自不明ですか?」
「いったいいつ作られたのかも分からねぇ。どっから出てきたのかも分からねぇ。作者も不明な上にどんな力を宿してんのかも使ってみなけりゃ分からねぇときた」
「それと過去に使い方を誤って、周りを巻き込む大事故を引き起こしたなんて話もあるくらい危険な代物でもあってね」
「更に使い手を選ぶのか、法術使い全員が使えるとは限らねぇんだ」
「ここだけの話ではあるんだけれど、そんな神器の一つを鴉殿が持っているという噂があるんだ」
「そうなんですか?」
私が見てきた限りでは鴉さんがその神器とやらを使っていた所は見た事がない……と言うより、そもそも武器を使ってる姿も見たことないなぁ。
「それは事実なんですか?」
「さぁ〜審議の程は分からねぇけど、でも過去に鴉殿がそれらしき物を使っていた所を見たって奴がいるらしい」
「まぁでも、何も可笑しくはない話ではあるけれどね。逆に鴉殿程の人が持っていない方が信じられないよ」
「ん〜……今回の事でそういう所見れたりするのかな?」
「どうだろう……鴉さんの事だから法術で一掃している姿しかイメージが浮かばないかな?」
「だよね〜」
「ははは!まぁそっちの方が早ぇだろうしな。まぁ今後も一緒に行動してりゃあいつかは見れたりするだろうさ。……と、そろそろ着くようだな」
兵士さんが窓の外を見てそう告げる。
私達も傍の窓から顔を覗かして見てみると、前方から立派な外壁が姿を現してきた。
「ようこそお二人さん。メディウス・ロクス連邦国内にいくつもある中で最も堅牢とされた首都から北部砦への中間地点にある要塞都市ガラン・ハイムへ」
そうしてガラン・ハイムの中へと入ると、窓の外の景色は広大な草原から建物が並ぶ街並みへと変わる。
けれど人の影は無く、まるでゴーストタウンのような風景になっていた。
それを見て兵士さんが悲しそうな表情で話す。
「本来なら首都に負けず劣らず賑わってる待なんだけどよ……今回禍憑の氾濫が起こるってんで皆他所に避難しっちまってんだ。俺らもこんな事でじゃなくて普通に嬢ちゃん達に遊びに来て貰いたかったんだけどよ」
「仕方無いですよ……それに今回の事が終わったら街の人達も戻ってくるんでしょうし、その時にでもフェイトちゃんと一緒に来ますよ」
「それにしても、まるで故郷のように話すんですね?」
「まぁな……俺は元々ここの出身でよ。それこそ今では首都勤務ではあるが、それまではここに暮らしてたんだ」
「そうだったんですね……また元の街に戻ると良いですね?」
「そうだなぁ。その為にも頑張んなきゃな」
「「はい!」」
そんな話をしていると車が止まり、後部座席のドアが開いた。
そしてそこから鴉さんが姿を現す。
『今から昼食に入るそうだ。兵士は食事の準備に取り掛かって欲しいらしい』
「了解。それじゃあ行くぞお前達」
『了解!』
そうして兵士さん達がぞろぞろと降りてく中、私達も後に続いて車を降りる。
するとそんな私達に鴉さんが声をかけてきた。
『お前さん達はこっちだ』
そうして鴉さんに連れられた先は仮設された休憩所だった。
そしてそこには先にシグナムさん達が入っていた。
「私達も手伝わなくていいんですか?」
『俺達は戦闘が主な役割だからな。その時まで不要な体力を使う事はせず温存していて欲しいそうだ。とは言え、俺はこれから飯が完成するまで警戒に当たるんだがな』
「なら私達も警戒のお手伝いをしますよ!」
『良いのか?別に無理はせんでも良いんだぞ?』
「いえ、あまりに暇だと逆に落ち着かないので」
『そうか……ならついでに戦地について教えてやる。お前さん達はどうする?』
「ふむ……ならば私も同席願おう」
「ならあたしも行くぜ」
「私は救護班と最終打ち合わせがあるので」
「俺も防衛隊と話がしたいので遠慮しておく」
『分かった。なら高町達は俺と一緒に来い。場所は向こうに見える城壁の上だ』
そうして鴉さんの後ろを付いて城壁へと向かう。
門の隣にあるドアから入り、中の階段を登って城壁の上へと出ると、視線の先には広大な草原と、雄大な山脈……そしてその間に広がる樹海群という景色が広がっていた。
『見えるか?あそこにあるのが件のグリシャオラス樹海群だ』
「思ってた以上に広大ですね……あれが全て古代からあるだなんて信じられないです」
『今の今まで誰も立ち入らなかったそうだからな。つまり現代に至るまでは手が付けられていなかったという事だ。よって数を減らすことなく増え続け、今のような姿になったというわけだ』
「そしてあの中に数多の禍憑がいる、という事か。ここから見る分には到底そうは思えないがな」
『異様に静かだと言われれば確かにそうだ。だが一度足を踏み入れれば、そこはもう襲われて当たり前の危険な領域となる』
樹海群を真っ直ぐに見据えながらそう話す鴉さん……この人は実際にそんな危険な場所をいくつも見てきたのだろう。
鴉さんは私達より上だけれど、アイネスさん達よりは若い────
なのに、いったいその身にどれくらいの
『どうした?』
「あ、いえ、なにも」
どうやら自分が思ったよりも鴉さんを見てしまってたっぽい。
その事を訝しげに問いかけてくる鴉さんには私は両手を振ってはぐらかした。
何となくだけど、この人が皆から慕われている理由が何となく分かったような気がする。
若くして国家討伐師となり、誰よりも先頭を切って禍憑達と戦う……〝最強〟と呼ばれる所以はその実力じゃなくて、決して折れない心の強さ故なんだろうなぁ。
「そういえば、あそこにポツンとある建物……あれが北部砦ですか?」
『そうだ。このガラン・ハイムにとっての防衛線。かつてブライスオスが、ごく少数の軍勢のみを率いて北から侵攻してきた大軍からメディウス帝国軍本隊が到着する迄に見事守り抜いた場所だ』
「ブライスオス?」
『メディウス帝国では知らぬ者はいないとされる程の英雄だ。メディウス・ロクス連邦英雄史である〝暁の星〟に必ず描かれている人物だ。かなりの戦上手な人だったらしくてな……東部にある〝ドリュッセン・ハイウェイ〟の元となる道を切り開いたドリュッセウスもまた相手の意表を突く戦術で有名だが、それ以上の軍略家であったとされている。そもそもブライスオスの何が凄いかと言えばやはり敵兵の北部砦への侵入を許さなかったとして────』
「ストップ、スト〜ップ!か、鴉さん……そろそろその辺で……」
『おっと……つい悪い癖が出てしまった。いやぁ、俺はこう見えて古い時代の偉人達の逸話や伝承が好きでな?その手の話になるとついつい長くなっちまう』
「それは分かる気がするな。私としてもそういった話には心に熱いものが込み上げてくる」
『特に絶対的不利な状況からの一気に形勢逆転する様は手に汗握るよな?』
「分かる……分かるぞ。史実なのにまるで壮大な物語を読み終えたような興奮と満足感が────」
あぁ、また始まってしまった……。
シグナムさんも意外とそういうのが好きなとこあるから、妙に鴉さんと意気投合しちゃった。
こういう時にだいたい助け舟を出してくれるのが────
「おい!ここには警戒の為に来たんじゃねーのかよ?」
『おっと……そういやそうだったな』
「む……これは本来の目的を忘れてついつい盛り上がってしまった」
「……ったく、ちゃんとしてくれよな?まぁガチガチに重苦しい空気になるよりかは全然マシだけどよ……って、お前はさっきから何でンな救世主が来たみてぇな顔でこっち見てんだ?引っぱたくぞ?」
「え〜?ヴィータちゃんの気のせいだよ〜」
『まぁともかく、〝堅牢〟と言われたガラン・ハイムが誇る砦だ……ちょっとやそっとの禍憑の襲撃くらいじゃ簡単に堕ちたりしない。だが油断は大敵……難しい話にはなるが、戦闘中も砦の方も気にかけといてくれ』
「そうですね。突破されたりしちゃったら今度はここが危ないですもんね」
『ガラン・ハイムは首都との間にある補給地点だ。つまり要請を受け入れ協力してくれている一般市民もここに居るんでな。まぁここを守る防衛部隊の事は信頼しているが……』
「ここには我々の仲間であるザフィーラとシャマルもいるからな。こと防衛に関しては信頼していい」
「それに最初はシグナムとあたしも待機してるからな」
『なら一先ずは安心といったところか。それにしても……』
不意に鴉さんはそこで言葉を区切ると、また樹海群の方へと視線を向けながらこんな気になる事を言い出した。
『妙だな……』
「妙?何がだ?」
『本来、禍憑氾濫が起きるメカニズムとしてその主軸……まぁ簡単に言えば親玉となる禍憑の存在があるってのが現時点で禍憑氾濫に関する常識だ。だと言うのにそれらしき奴が見当たらねぇ』
「ほぅ……ここからでも見えるのか?」
『法術の一つに〝千里眼〟ってものがあってな?俺はそれを使えるんでこうしてここから樹海群の中を見て回ってたんだが、う〜ん……堕ちた禍憑人がいる様子も無し。ならなんで禍憑氾濫の兆候はあった?』
「堕ちた禍憑人……つまりその存在によって他の禍憑達が呼び寄せられて氾濫が起こる可能性もあるわけですね?」
『前に話していたことをよく覚えてたな?偉いぞ』
「え、えへへ……////」
褒められてついつい照れてしまう。
でもそうなると……。
「原因となる禍憑は無し、それでいて禍憑人も不在って事は、今回は禍憑氾濫じゃないかもしれないって事ですか?」
『そうかもしれんし、そうじゃないかもしれない』
「なんだそれ?随分曖昧だな?」
『今回のケースは初めてなんでな。確かな事が言えねぇんだ。戦況を不利に陥らせる要素の一つとして〝憶測でものを言い、現場を混乱させる事〟ってのが俺の自論でね。だから常日頃から憶測でものを語らないように気をつけているのさ』
「当たり前のように見えて、実は大事な事ですよね、それ?」
『しかし禍憑氾濫が起こる要素が何も見受けられないってぇのも事実だし……さっきから嫌な予感がしてならねぇんだよなぁ』
そう言いながら自身の後頭部をかく鴉さん。
かくいう私もさっきから変な胸騒ぎがしてならないんだよねぇ。
「(なのは……)」
「(ん?どうしたのフェイトちゃん?)」
不意に隣にいたフェイトちゃんから念話で声をかけられる。
不思議に思ってそちらへと顔を向けてみると、フェイトちゃんは神妙な顔付きで私の事を見ていた。
「(気のせいかな……鴉さんと同じく、私もとても嫌な感じがする。なんかとっても悪い事が起きるような……)」
「(うん、それは私も感じてた。もしかしたら今回は予想よりも簡単には行かないかもしれないね)」
『どうしたんだ二人共?急に黙りこくったりなんかして……』
「あぁいえ、こっちの話なので」
「どうぞお気になさらず」
『……?まぁお前さん達がそう言うなら気にはせんけどよ。何か気付いた事があったら直ぐに言ってくれよ?じゃなきゃ後手に回りやすくなっちまうからよ』
「はい、その時は直ぐに伝えます」
『それじゃあ一旦戻るか。そろそろ昼食の準備も終えてる頃合だろうしな』
鴉さんがそう言ったのと、シャマルさんが呼びに来たのはほぼ同時だった。
そうして皆と共に昼食を取りに戻る私だったが、まだ胸騒ぎは治まらなかった。
そしてそれから数時間後、その胸騒ぎの原因が直ぐに分かることになる。
〈鴉視点〉
先に城壁から降りてゆく高町達を見送って俺はもう一度だけ樹海群へと目を向ける。
しかし何度見渡しても禍憑氾濫の原因となる存在は見受けられなかった。
(ふむ……俺の目が届かない所に潜んでいるのか、はたまた高町が言っていたように今回は禍憑氾濫等では無かったのか……)
これ以上探っても何も得るものは無いと判断した俺は昼食の為に城壁を降りようとする。
しかしその際に視界の端でチラリと見えた物に再度そちらへと目を向ける。
(……気のせいか?
そんな違和感を感じるも変に感覚が鋭くなってしまってるが故の気のせいだと思って再び視線を切った。
この時、その違和感を直ぐに総統閣下へと報告しなかった事を、俺はこの後後悔することになるのだが……この時の俺はそんな事をまだ知る由もなかった。
〈余談〉
「あー!ヴィータちゃんまたお残ししてるー!」
「なっ……余計な事言うんじゃねー!」
『あの二人、いつもあんな感じなのか?』
「あはは……割と」