魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜   作:ΣiGMA

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北部戦域D〈鴉視点〉

 一面真っ青な程の澄み渡る空────

 

 それを眺めながら俺はポツリと呟く。

 

 

『そろそろか……』

 

「伝令!グリシャオラス樹海群より複数体の影!禍憑です!」

 

『来たか……』

 

 

 伝令からの報告に俺は視線をグリシャオラス樹海群へと向ける。

 

 その視線の先では樹海群から続々と姿を現す禍憑達の姿があった。

 

 

『それでは作戦通り!向かって右側を魔導師達、左側を北部の討伐師で対応しろ!正面は俺が抑える!』

 

『了解!』

 

 

 一斉に飛び出す高町達と北部の討伐師達……それを見送り俺はこちらへと向かってくる禍憑達の大群に向かって手をかざす。

 

 

『開幕一発目ってやつだ。存分に味わえ……〝轟天神雷(シャクラ・ヴァジュラ)〟』

 

 

 目の前に落下する極大の雷────

 

 雷は轟音と共に正面の禍憑達を飲み込み一掃してゆく。

 

 

「お見事……ですが奴ら、怯む様子もありませんな?」

 

『元より理性なんてもん持ち合わせてねぇ奴らだ。ただ獲物に襲いかかり食らうという本能しか残っちゃいねぇ。とは言え……』

 

 

 俺が今度は右手を天へと向けて翳すと、俺の正面に〝法陣〟と呼ばれる円形の術式が浮かび上がる。

 

 

『わざわざそれに付き合ってやるつもりは無いがな』

 

 

 そうして俺は天に翳していたその手を前方へと下ろす。

 

 

九曜砲陣(ナウ・トープ)

 

 

 前方へ重なる二種類の円形法陣……後方の法陣から放たれた九種類の属性による砲撃が前方の法陣にて集束し、一つの巨大な砲撃となって禍憑を襲う。

 

 

「おぉ……通常一種類、多くても二種類までしか扱えぬ属性法術をなんと九種類を同時に……しかも集束し一つの強力な砲撃にするとは……流石は〝人類最強〟の討伐師」

 

『何事も鍛錬と実践の繰り返しだな』

 

 

 それからは絶えず法術を繰り出す時間が続く。

 

 俺の正面から来る禍憑達は次々と屠られ、また他へと目を向けてみれば高町達や北部の討伐師達も次々と禍憑達を屠る奮闘を見せていた。

 

 だが、禍憑の氾濫ともあって数が多い。

 

 次から次へと樹海群から出てきては、一心不乱にこちらへと向かってくる。

 

 

『ふむ……』

 

 

 俺は絶えず法術を放ちながらも戦況を確認する。

 

 

『少し押され気味か?』

 

「はっ!兵士達も頑張ってはいるようですが……法術のみでしか倒せないとは何とも歯痒いものです」

 

『そう悲観するな、あれはそういうもんだ。ふむ……流石に国連の魔導師とは言っても、そろそろ疲労が見えてきたようだな。一方で北部の討伐師達も疲れてきた頃合いか?とは言え、流石の俺も少しだけ集中力が落ちてきたように思える』

 

「ご休憩なさいますか?」

 

『それぞれの交代要員に連絡し、交代させろ。俺はこれより詠唱を行う。まぁちょいと相手を弱体化させ、こちらを強化する結界を張るだけだ』

 

「鴉殿の詠唱法術……!分かりました……直ぐにご指示通りに」

 

 

 そうして俺のそばにいた兵士はその場から離れる。

 

 俺はそれを横目に詠唱を始めた。

 

 

『術式展開。領域指定。善良なる者共の生に祝福を、不遜なる者共には遍く死を与え給え。我が振るうは運命を定めし力。それ即ち生殺与奪の理。刮目せよ、これより顕現するは神の裁定を顕す大法陣。一つ進まば恐れを感じ、二つ進まば昏迷に苛まれ、三つ進まば命が尽きる……』

 

 

 うんうん、詠唱中に邪魔が入る事は無かったな。

 

 今から発動するこの法術は俺が持つ幾つもの大法術の中でも戦略級の法術。

 

 そして全ての詠唱を終えた俺がその手を天へと翳すと、上空に大きな法陣が現れ、それを確認した俺はその法術の名を口にしながらその手を振り下ろした。

 

 

『大法術破邪結界法陣、〝遍く生と死の円環(テスカ・トリポカ)〟!』

 

 

 その瞬間、上空にあった大法陣と同様のものが北部砦を中心に広範囲に展開する。

 

 その法陣は三重の円によって構成されているもので、その一つ一つはある種の境界線である。

 

 その効果は────

 

 

「報告!樹海群から出てきた禍憑達が一斉に弱体化!こちらへと進むにつれて怯えているかのような……中には足取りがままならぬものまで」

 

 

 外側の法陣は〝恐慌界〟……その死を前にして恐怖と錯乱状態へと陥る。

 

 真ん中の法陣は〝昏倒界〟……そこに踏み入れたものは視界が霞み、まともに歩けぬ状態へと陥る。

 

 そして最後の法陣は〝絶命界〟……その言葉の通り絶対的な死へと陥る。

 

 そしてこの法術は俺が味方だと認識している者……この場合だと人類、高町達や北部の討伐師、そして兵士達には〝常時回復〟と〝精神安定〟の効果が付与され、そして敵……悪意や害意、殺意を向けてくる者、この場合では禍憑には弱体化をさせ、最終の法陣にて〝即死〟の効果を与えるものだ。

 

 まぁもはや襲うことと食うことといった本能しか無い(禍憑)らでも、これがどういったものか理解すれば足を止めるだろう。

 

 だが足を止めた瞬間にこちらの攻撃が襲ってくる。

 

 何ふり構わず特攻したとしても死に至る。

 

 つまり奴らは今〝八方塞がり〟と相成った訳だ。

 

 

(さてさて……これで余裕を持って交代する事が出来るだろうよ)

 

 

 そう思っていると前方からこちらへと向かって飛んでくる物体が……よく見ればそれは巨大な岩石であった。

 

 どうやら巨獣とまではいかないが、比較的大型の猿の禍憑が投げたものだろう。

 

 

(やれやれ、禍憑に堕ちるとああしてなまじ知恵と怪力を得る奴が出てくるってんだから辟易する)

 

 

 そうして俺は飛んでくる岩石を打ち砕こうと手を翳したのだが、その直後に俺の背後から一つの影が飛び出してきて、その拳で岩石を意図も容易く木っ端微塵にした。

 

 

『ん……?』

 

「お久しぶりっス、鴉さん!」

 

『…………まさか、アルカか?』

 

 

 岩石を殴り砕いたのは前に保護した禍憑人、〝アルカ・ベルトラム〟だった。

 

 彼女は前のようにその身体を鎧のような外殻で覆っていたのだが、前よりもかなりスラッとしたスタイリュッシュなものに変わっていた。

 

 しかしその前腕部と下腿部は一回りも二回りも大きい。

 

 何というか……攻撃に使う箇所だけを強化した感じの形態である。

 

 そんな容姿のアルカは器用にも空中でこちらに両手を振っていたが、その背後から飛行型の禍憑が迫って来ていた。

 

 

『アルカ、後ろだ!』

 

「────っ……ンなろォ!」

 

 

 俺の警告に直ぐに体勢を変えて飛行型の禍憑に向けて拳を放ったアルカ……すると彼女の拳と飛行型の禍憑の顔近辺の空気が振動したような光景を確認する。

 

 ちなみにアルカの拳を受けた飛行型の禍憑は一瞬で塵と化していた。

 

 今度は何も無い空間に蹴りを放ったアルカ……その身体が何かに弾かれるようにこちらへと飛んできたかと思えば、彼女は数回後方宙返りをして少し離れたところで綺麗に着地を決める。

 

 そしてさも嬉しそうな笑顔でこちらへと駆け寄ってくると、俺に向けて敬礼をした。

 

 

「国際禍憑対策委員会総統直轄特別部隊〝GARGOYLE(ガーゴイル)〟所属アルカ・ベルトラム。北部砦への応援要請により、ただ今北部砦へ着任致しましたっス!」

 

『〝GARGOYLE〟?聞き覚えの無い部隊だな?』

 

「はい!つい最近、総統閣下により現在試験運用中の禍憑人による部隊なんで!まぁとは言っても今のところオレだけっスけど……なんで正確に言うと〝GARGOYLE(仮)〟なんスけどね」

 

『なるほど……それにしてもさっき飛行型の禍憑を殴った時に空気が振動したように見えたが?』

 

「あ、はい!それはオレの禍憑としての力っスね!なんか衝撃波を放てるっぽいんスよ」

 

『衝撃波を?』

 

「はい!オレは基本的に殴ったり蹴ったりする際に使ってますけど、やろうと思えば衝撃波そのものを放つ事も可能っス!」

 

『モンハナシャコみてぇな奴だな……』

 

「あ〜……かもッスね〜。ほら、禍憑人って他の生物の特性を持つのが多いじゃないっスか?」

 

『まぁ人間の中にある幾つもの大いなる可能性が顕現したようなもんらしいからな。本来機能している制御(リミッター)が禍憑人になる事で強制的に外されてる状態だとか』

 

「はい。なので訓練を受けてる時はそっち方面の力を伸ばしつつ、その制御にも力を入れてたっス。まぁまだ完全に訓練が修了した訳じゃないっスけど」

 

『じゃあ何で総統閣下はお前さんをここに?』

 

「総統閣下によると〝鴉めはこちらが無理矢理にでもしない限り交代せずにぶっ通しで戦い続けるので、貴様は無理にでもあ奴と交代して休憩させてこい〟だそうっス」

 

『……言い返せんのが何ともだな』

 

「あ〜、やっぱそのつもりだったっス?なら総統閣下の判断は正解だったっスね。それよりも総統閣下って凄いっスよね?オレがその話をしてた時に大統領が突然連絡入れて来たんスけど、大統領を〝貴様〟呼びとか神経図太くないっスか?」

 

『あれが総統閣下の平常運転だ。まぁそのうち慣れる』

 

「なんだか慣れたくはないっスね〜……感化されそうで……」

 

『安心しろ。お前さんもそのうち染まって大統領の事を裏で〝ボンクラ〟と呼ぶようになる』

 

「それって安心していい事っスかね?まぁとにかく休憩入って下さいっス!その間はオレがここを受け持つんで!」

 

『まぁせっかくの総統閣下からのご好意だ。是非とも甘えさせて貰おうか。おい、俺は今から休憩に入る!その間はここに居るアルカ・ベルトラムが対応するのでサポートしてやって欲しい!』

 

「はっ!宜しくお願いしますベルトラム殿!」

 

「うっ……そう畏まられるのは何だかむず痒いっスね」

 

 

 兵士達に一斉に敬礼されドギマギするアルカを横目に、俺はその場から一瞬でガラン・ハイムへと跳んだ。

 

 今のところはアルカでも十分対応出来るだろうし、不確定要素も無い。

 

 しかしその後、この現状を大きく変える不足の事態が起こるのは、休憩を終えた俺が北部砦へと戻った時であった。

 




〈余談〉
「なんか弱ってるっぽいっスね?」

「鴉殿による結界のお陰ですな」

「やっぱり鴉さんって凄いんスね」

「ベルトラム殿も先程、あの大岩を木っ端微塵にしたお姿は凄かったですぞ」

「うっ……オレの事は〝アルカ〟で良いっスよ?」

「それなら今後は〝アルカ殿〟とお呼びさせて頂きます!」

「い、いや……〝アルカ〟って呼び捨てで構わないっス」

「そんな!我らでは太刀打ち出来ない禍憑を倒せるお方を呼び捨てなどと!」

「別に気にしなくて良いっスよ」

「いえいえ!今後ともアルカ殿と呼ばせていただきます!」

「アルカ殿!」

「アルカ殿!」

「うぅ……鴉さん、早く戻ってきて〜っス〜!」
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