魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
話は鴉達が休憩へと向かった時に遡る────
鴉と交代で入ったアルカ・ベルトラムはやる気十分といった様子で鴉の結界により弱り果てた禍憑達へと飛びかかった。
「おっしゃあ!」
「おぉ……あの禍憑が一撃で木っ端微塵に……」
迫り来る禍憑達を押し留める役割として戦場に立っていた兵士達はアルカの勇姿に思わず感嘆の息を溢す。
「ちょいと手こずるかと思ってたけど、鴉さんのお陰で超余裕だな!でもやっぱ、ちょっともの足りねーな」
「あはは、でもこうして温存出来ているのは良い事ですよ。それなら不測の事態が起こっても直ぐに対処出来ますから」
「まぁ確かにそーっスね……っと、おらよっと!」
「面白いように飛んでいきますなぁ。先程のように砕かないので?」
「こうして方が遠くにいる奴らに攻撃出来るっスよ?」
先程と同様に猿の禍憑が放り投げた岩石を、今度は砕かずに蹴りで打ち返すアルカ。
蹴り返された岩石は投げられた時と同じ軌道を描きながら飛んでいき、見事に猿の禍憑に直撃した。
「なるほど……確かにこちらの方が効率が良さそうですな」
「そうっスよ」
打ち返した岩石が猿の禍憑に直撃したのを確認したアルカは兵士に向けてサムズアップをする。
するとその時────
ズズゥゥ……ン────
「のわっ?!」
「危ない!」
不意に地響きと共に地面が大きく揺れ、その揺れでアルカはよろける。
あわや倒れそうになったアルカだったが、丁度そばにいた兵士が支えてくれた事でそれは回避出来た。
「ありがとうっス」
「いえいえ……それよりも今の揺れはいったい……」
「なんか一瞬だけ揺れたっスよね?地震にしては短すぎるような……って、いきなり固まっちゃってどうしたんスか?」
先程の揺れに関してそう話していたアルカだったが、ふと自分を支えてくれている兵士へと顔を向けた時、その兵士が一方向を見て固まっている事に気づく。
そして何故固まっているのかと問うと、その兵士はゆっくりとある方向を指差した。
なのでアルカもそちらへと顔を向けたのだが……。
「なん……スか、あれ……?」
そこには山を背負った巨大な亀の悠然とした姿がそこにあった。
時を同じくして、北部砦の城壁の上────
北部砦の責任者、ガイスト・ハーゲン大佐は双眼鏡を介して戦場の状況を眺めながら部下と話をしていた。
「報告します。現在討伐された禍憑の数は40。そして現在確認されている禍憑の数はおよそ20。まだ樹海群の中に潜伏している可能性も考慮すれば更に増えるかと」
「あぁ、報告ご苦労。また何かあれば報告に来い」
「はっ!ところでハーゲン大佐」
「……なんだ?」
「大佐は先程からずっと双眼鏡で戦場を眺めておられるご様子……何か気になる事でもありましたか?」
「いや、なに……」
部下からの問いかけにガイストはそう言葉を発する。
しかし依然として双眼鏡から視線を外そうとしない。
「何か妙だ妙だとは思ってたんだが、連中……どうにも俺達を襲うつもりで来てるように思えねぇんだよな」
「……と言いますと?先程では猿の禍憑が岩石を投げ込んで来ておりましたが」
「それも俺達が邪魔だからそうしてるように見えるんだよ。なんつーか……その……」
どうにも歯切れの悪いガイストに部下はただただ疑問符を浮かべる。
そしてガイストはようやく双眼鏡を下ろしたかと思えば、こんな事を口にした。
「奴ら……
「……は?」
ガイストのその言葉に部下が素っ頓狂な声を上げたのと、大きく地面が揺れたのはほぼ同時であった。
また時を同じくして今度は鴉達が戦場へと戻って行った後のガラン・ハイム────
次の休憩者達が各々自由にその休憩時間を過ごしていた頃……アメリア達は昼食の準備の手伝いを行っていた。
アメリアは友人の美奈達と共に大人数が食事を取れるようにテーブルや椅子などを並べ、また調味料類や割り箸、プラスチック製のフォークやスプーンが入った容器等をテーブルの上に並べ置いてゆく作業を行っていた。
そしてその作業もひと段落つくと、今度は城壁の上にいる兵士達に軽食を配る作業が始まる。
そして指示通りに兵士達に軽食を配り終え、次の指示を仰ぎにまた休憩所へと戻ろうとしていた時だった。
ふと気になりアメリアがその視線を戦場へと向けた時、そこにあるものに目が止まった。
そして彼女は思う……〝あそこに山があったかな?〟と────
アメリアは幼少の頃にヴァローナと景久と共に森の中で暮らしていたという事もあり、自然の風景を眺めるのが好きであった。
特に旅行専門誌等に載っている自然豊かな観光地の写真も見るのが好きであった。
ここ北部砦はメディウス・ロクス連邦でも歴史的価値のある観光地という事もあり、当然その城壁の上から眺める景色を写した写真も載せられている。
それを見た記憶と、今目の前に広がる景色で少し違和感を感じたのもアメリアのそういった趣味が高じてなのかもしれない。
とにかくアメリアが気になった山がある位置には、アメリアが見た写真に映る景色と照らし合わせても、その位置に山があった記憶は無い。
そんな違和感と疑問に思わず立ち止まっていると、彼女のその様子に気付いた親友の美奈に声をかけられる。
「何してんのリア?早く戻って次の指示を仰ぎに行かないと……まだまだやる事はたくさんあるんだかんね?」
「あ、うん……ねぇミナ?」
「なによ?」
名前を呼ばれたので美奈がアメリアの元へと戻ってみると、アメリアは山の方を指差して美奈に問いかけた。
「あんな所に山なんてあったっけ?」
「は?」
美奈がアメリアの質問に対しそう疑問の声を上げた時、その山の根元……山と樹海群の境からゆっくりと亀の頭がその姿を現した。
「「……え?」」
ありえない光景に思わずそちらを見ながら固まってしまうアメリアと美奈……そして彼女達二人と同じような反応を示していたのは城壁の上にいる兵士達全員であった。
そして彼女達の視線の先で、その山はゆっくりとこちらへと動き出した。