魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
時は少し遡り、合同庁舎の大会議室。
そこでは八神はやてがリサンデラ・ギルナスティスに数名の男女を紹介していた。
「彼女達が新たに我がEXCEEDSの戦力として来て下さった方達です」
「フィリー・メルキュールです」
「ゼオだ」
「ラムダです」
「ルミナです」
「シフォン……」
「久瀬シイナです」
「夜海トワです」
「相沢シオリです」
「喜多森ユーナでーす」
「新名アオイです」
「古寺ユズです」
「ここの総統であるリサンデラ・ギルナスティスだ。我のことは〝総統閣下〟と呼べ。まぁ今はこちらは大変な状況でゆっくりとここの事を案内していられる暇は無いのだ」
「まぁそれについてはおいおいという事で大丈夫です。とりあえず彼女達は向こうで何かあった場合の応援として動いて貰うという形で考えとります」
「構わぬ。来て早々現地に向かわせるなどというのは無能なトップがする愚行そのものだ。先ずはここまでの旅の疲れを癒してもらいたい」
「何か……口調はアレですけど、すっごく良い人ですね?」
「そうですね。だからここで働いてる皆さんから信頼が厚く、人気が高いんですよ」
はやてとリサンデラのやり取りを見ていた久瀬シイナが、隣にいた八神リインにそう問いかけ、リインは笑みを浮かべながらそう答える。
しかし小声で話していたのにも関わらずリサンデラの耳には入っていたのか、彼女は不敵な笑みを浮かべてシイナに向けてこう言った。
「ふっ……我がこの口調なのは他に舐められない為だ。特に上の連中は我が女だからと下に見る輩が多くてな。舐められていてはやりたい事もやれなくなる。上に立つ者というのは、そのような要らぬ面倒事も抱えているものなのだよ」
「あ、すみません……まさか聞こえてるとは思わず……」
「よい。これは我が優秀過ぎるが故のものだ。なにせ、どのような些細な言葉でも、組織をより良きものにするに必要な事であるかもしれんからな」
リサンデラはそう言い切ると、その表情を真剣なものに変えてシイナ達にこう告げた。
「現在、我らは北部で起きている禍憑の氾濫の鎮圧へと動いておる。今のところ順調ではあるが、いつ不測の事態が起こるかも分からん。故に貴様達の協力は大変ありがたいと思っておる。その活躍、期待しておるぞ?」
『はい!』
その言葉にシイナ達が揃って返事をした時だった。
大会議室のドアが勢いよく開けられ、そこから一人の職員が姿を現した。
「何をそんなに慌てている?」
「総統閣下、大変です!北部にて禍憑氾濫の対処中に巨獣が出現しました!」
「なんだと?」
「巨獣?」
「超大型の禍憑の事や」
「しかし巨獣といえど鴉めならば容易く対処出来るであろう?何をそんな焦る必要が……」
「今回現れた巨獣はこれまでとは大きく違うんです!とにかく北部砦より映像が送られてきましたのでご確認下さい!」
そうして職員は手にしていたノートパソコンを開き、出しうる速さで操作する。
そして話にあった映像を出すと、それをリサンデラへと見せた。
そしてその映像を見たリサンデラは……。
「なっ……貴様、今すぐこれをスクリーンに映し出せ!」
「はっ!」
映像を見た瞬間に様子が変わったリサンデラ……彼女にそう指示された職員は急いでプロジェクターへと向かうと、それが接続されていたノートパソコンを外し、代わりに自身のノートパソコンにそれを接続する。
そしてスクリーンに映し出された映像を見て、はやて含むその場にいた全員が言葉を失った。
「なん……や、山が……動いて……」
「こ……こんな事があって……いいのか?」
巨大な山が動いている光景に職員達は震え上がる。
そして開け放たれたドアから今度はそれまで席を外していたダリルが姿を現し、リサンデラへと耳打ちをした。
それを聞いたリサンデラは勢いよくダリルへと顔を向ける。
「それは本当か?」
「はい……先程ガラン・ハイムより連絡が……」
「不味い……それは非常に不味い……ガラン・ハイムから車を出すことは出来ないのか?」
「ガラン・ハイムでも負傷者多数で動かす人員が確保出来ないと」
「くっ……こんな事になるならば、北部砦にも治療班を配置すべきであった」
「あの……何があったんですか?」
更に様子のおかしいリサンデラにはやてが恐る恐るそう問いかける。
するとリサンデラの口から放たれた一言に、はやてとリインが愕然とする。
「鴉めが……あの巨獣の一撃を受けて瀕死の状態だそうだ……」
「なっ……!」
「ガラン・ハイムでも負傷者が多数故に車を動かす事も出来んそうでな……そちらのシャマルという者もそちらの治療にかかりっきりなのであろう」
「なら北部砦からガラン・ハイムへ移動させれば……」
「今奴のそばにおる兵士の報告では胸を抉られ、胸骨と肋骨もやられておる故に搬送は難しいそうだ。下手に動かせば心臓やら肺やらの内臓が落ちる恐れがあるらしい」
「ではどうすれば……」
「うぅむ……極力奴を仰向けの状態で運び、それも一瞬でガラン・ハイムにまで運ぶ事が出来ればまだ助かる見込みはあるやもしれん……が、現状として一瞬で別の場所へと移動出来るのは鴉しか……」
「そんな……」
「あの〜……」
はやてとリサンデラが鴉を救う手立てについて頭を悩ませていると、シイナが恐る恐る手を挙げながら声をかけてきた。
「なんだ?」
「要するにその鴉さんって方を慎重に、かつ一瞬で運べればいいんですよね?」
「そうだが?」
「それ、出来ます」
「なに?!」
「あ、そか……」
難しい条件での鴉の搬送を〝出来る〟と言い放ったシイナにリサンデラは目を見開き、はやては何か心当たりがあるのか手をポンっと鳴らしていた。
「古寺ユズさんの力があれば……」
「八神総督、我にも分かるよう説明せよ」
「この古寺ユズさんは空間干渉系の能力……つまり瞬間移動のような力を使えるんです」
「なんだと!!それは本当か?!」
「は、はい……で、出来ます」
はやての説明にリサンデラが勢いよく古寺ユズの両腕を掴みながらそう確認する。
その事にユズは戸惑いながらもしっかりとそう答えた。
「慎重に運ぶ係は俺とラムダが受け持とう」
「俺と隊長に任せてください!」
「本心では来て早々頼むのは気が引けるが……やむをえまい、それでは鴉めを頼む!あ奴は我々にとっては居なくてはならぬ存在ゆえな!」
「シイナさん達も一緒に行ったてや。前線が瓦解したとしたら、今度はガラン・ハイムが襲われてまうから」
「はい!」
そうしてシイナ達は北部へと向かう事が決定した。
ユズの能力〝扉〟、〝鞄〟は空間干渉により現在地と指定した座標を繋ぎワープホールのようなものを生み出し移動することも出来る能力だが、連続使用不可と再使用までに時間がかかるという条件により、ガラン・ハイムまでは車で向かう事になった。
また指定先の座標も知っておかねばならないという事で、北部砦の座標をダリルより渡される。
そしてこの後、ユズはファインプレーとも言える行動を取ることになる。
それはガラン・ハイムに到着した時のこと、鴉がいるその詳細位置が分からなかったユズは適当にグリシャオラス樹海群側の壁から少し離れた位置を移動先に指定した。
そして開かれた〝扉〟の先……ゼオ達が出たのはまさかの鴉が落下した建物の目と鼻の先であった。
そしてそこから鴉、なのは、兵士の姿を捉えたゼオとラムダは直ぐに彼女たちの元へと駆け寄ったのだった。
「ゼオさん?!それにラムダさんも……」
「久しぶりだな、なのは……息災だったか?」
「隊長、今は呑気に挨拶してる場合じゃねーって」
「む、確かにそうだな……なのは、こいつは俺達が運ぶ。お前もあの子が開いたゲートを潜ってここから退避するぞ。ラムダ、お前は足を持て」
「了解、隊長!」
そうして二人がかりで鴉を持ち上げたゼオとラムダは出来るだけ急いでユズの扉へと向かう。
そしてなのはもまたゼオ達と共にその扉を潜るのであった。
時は少し戻り、かの巨獣が動き出していた頃……ガラン・ハイムでもまた騒ぎが起きていた。
巨獣の歩みは地を揺らし、その揺れにより老朽化していた建物の外壁などが次々とそこに居た者達へと降り注いだ。
「うわぁ!」
「きゃあぁぁぁ!」
「おい、建物から離れろ!瓦礫に押し潰されるぞ!」
落ちてくる瓦礫から逃げ惑う者達……その光景はまさに災害発生直後の様相であった。
そんな中、アメリア達もまた城壁から離れようとその階段を降りていた最中であり、揺れに足を取られそうになりながらも必死に駆け下り続けた。
「早くここから離れるわよ!」
先頭を行く美奈が友人達へと顔を向けた瞬間、そのすぐ後ろにいたアメリアはハッと気付いて美奈の背を突き飛ばした。
「ミナ、危な────」
「リア?!」
美奈を突き飛ばした直後に自身の後頭部に鈍い衝撃が走る。
そしてアメリアはそのまま意識を手放しその場に倒れ込む。
その後頭部からは血が滲み出していた。
「リア?!リア!!」
「ミナ、早くリアを運ばないと!」
「待って下さい!無闇に動かしては駄目です!」
マキナが駆け寄り声をかけ、そしてアスカがアメリアの身体を動かそうとした時、巳白が鬼気迫る表情でそれを止めた。
「なんで?!」
「頭を打っているからです!無闇矢鱈に動かしては後遺症が残る可能性が……」
「そう言ったって早く治療してもらわないと!」
「なら慎重に運びましょう……手伝って下さいミナ。……ミナ?」
返事が無いことに訝しんだ巳白がそちらへと顔を向けると、美奈は青ざめた表情で立ち竦んでいた。
それを見た巳白は直ぐに美奈に駆け寄り、その頬を軽く平手打ちする。
パンッ────
「いっ……何をして────」
「しっかりしなさい!今は一秒でも早くリアを運ばないと!狼狽えるのはその後!」
「おい、どうした?!」
巳白が美奈を我に返させていると、たまたま居合わせた兵士が彼女達に駆け寄ってくる。
「ゆ、友人が……」
「これは瓦礫が頭に当たったか!おい、急いで担架を持ってきてくれ!怪我人だ!」
「はっ!」
そうして待つこと数分後にアメリアは兵士達が持ってきた担架によって仮説の救護室へと運び込まれた。
その前で美奈達が祈りながら待っていると、中から八神シャマルが姿を現す。
「先生、リアは?!」
「大丈夫ですよ、命に別状はありません。あとは彼女が目を覚まし次第、検査を行わないといけないけれど」
命に別状は無いと言われホッと胸を撫で下ろす美奈達。
しかし今度は一人の兵士がシャマルへと駆け寄ってくる。
「シャマル殿!北部砦から重傷者一名運び込まれてくるそうです!対応可能ですか?!」
「大丈夫ですよ。どれくらいで運び込まれてくるのですか?」
「国連からの応援者により直ぐにだそうです!」
「分かりました。それでは貴女達はお友達に付いていて下さいね」
シャマルはそう言うと兵士と共にその場から去っていった。
それを頭を下げながら送った美奈達は頭を上げると、静かにアメリアが眠るベッドの元へと向かう。
魔法による治療の為か眠るアメリアの頭に包帯は巻かれておらず、それを見て美奈は更に安堵した。
「目が覚めたら先ずはお礼と……あとは説教ね」
「クスッ……」
眠るアメリアの頭を撫でながら美奈はそう言うと、その様子を見て巳白はクスリと微笑むのであった。
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