魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
ふと目が覚めたら俺の目にまず映ったのはどこぞの天幕の天井だった。
(生きてたか……)
本当に自身のあまりのしぶとさに思わず笑いそうになるが、まだ痛む身体がそれを許してくれそうにない。
「……っ」
起き上がろうとして身体を走る痛みに顔を歪ませた時、不意に誰かから声をかけられた。
「目が覚めましたか」
「あぁ、え〜と……シャマル殿だったか?」
「はい、そうですよ。記憶の方は大丈夫ですね。まだ痛みとかはありますか?」
「まだ痛むところはあるが、ある程度は動け────」
シャマル殿の質問に答えながら上体を起こそうとした俺は、自分の声にハッとして顔を手で触れる。
すると口元に仮面は無かったが、両目には仮面が付けられていた。
「ご自身で外されてましたよ?仮面を外そうとした私の手を掴んで、〝こうすればここだけ外せる〟って言いながら。もしかして覚えてません?」
「覚えていない……」
「まぁ意識が混濁してましたし、無意識だったんでしょうね」
シャマル殿の言葉を聞きながら、横の小さな台に置かれた仮面の顎の部分を手に取る。
血を吐いていたのにも関わらず内側は綺麗なものだった。
「なのはちゃんが綺麗に拭き取ってましたよ?ちなみに変声機などは大丈夫ですか?」
『あーあー……うん、問題なさそうだ』
顎の部分を取り付け声の確認をする。
どうやら何処か故障しているわけでは無さそうだ。
『そういえばここは何処だ?首都の合同庁舎か?』
「いいえ、ガラン・ハイムの仮説の病室ですね」
『なに?!』
その言葉に俺は思わずベッドから降りようとしてそのまま落ちた。
「ちょっ……まだ安静にしていないと────」
『もう治った。それよりもガラン・ハイムだと?!俺が運び込まれてから目が覚めるまでどれくらい経った?!』
「治ったって……そんなわ──「丸一日が経過している」──総統閣下?!」
シャマル殿の言葉を遮って総統閣下がそう言いながら天幕へと入ってくる。
「あんな大怪我でよくたった一日で目を覚ませたな?本当に貴様のタフさには毎度驚かされる」
『んな事ァどうでもいい。それよりも一日経ってるだと?なんで撤退してねぇんだ?』
「それについては上からの指示だ」
その言葉に俺はそれ以上何かを言うことは無かった。
総統閣下の言う〝上〟とは大統領の事を指す。
つまりは大統領からここに残るよう指示……いや、あえてそう言っているだけで実質的には命令だろう。
それが下されたということか。
ただ……。
『あ〜、シャマル殿……少しだけ席を外しては貰えねぇか?ちょいと閣下と込み入った話になるんでな』
「まぁ総統閣下の言う通り大丈夫そうなので、私は他の患者の様子を見に行きますね」
そうしてシャマル殿が去っていったタイミングで俺は総統閣下の背後にいた人物に声をかける。
『脅しでもあったかダリル殿?』
その言葉に総統閣下の背後に控えていたダリル殿が目を見開く。
「相変わらずのカンの鋭さですね……えぇ、はい、その通りです」
ダリル殿はそう話すと総統閣下に目配せをする。
それを受けた総統閣下が頷いたのを合図にダリル殿は話を続けた。
「総統閣下は即時撤退を命じようとしておりました。しかしその矢先に大統領府から通信が入り、〝撤退は認めぬ。無事な者達のみで北部を守り通せ〟との命令を下されました」
『応援については?』
「首都の防衛で人員が割けぬとのことです」
『チッ……何が〝首都の防衛〟だ。要するに自分達だけは無事でいたいってだけだろうが。んで?総統閣下は当然拒否したんだろ?』
「当然であろう。一時的に首都まで撤退し、十分に体勢を整えてから改めて〝泰山鳴動アーケロス・タイタノクス〟へと挑むのが得策だと進言した。しかし奴は……」
「〝そういえば君によく似た幼い少女を見かけたのだ〟と……不意にそう話しましてね」
『……人質か』
〝泰山鳴動アーケロス・タイタノクス〟とはあの巨獣の名前だろう。
そして総統閣下によく似た少女については俺もよく知っている。
総統閣下は現在40手前だ……当然、子供がいてもおかしくはない。
これは現在に置いては俺だけが知っている事なのだが、総統閣下とダリル殿は秘密裏の夫婦関係……つまりは内縁の夫妻である。
婚姻届は出しておらず別居もしてはいるものの事実婚ではあり、そして二人の間には一人の娘がいる。
何故それを公にせず、また別居をしているかと言えばそれは総統閣下を狙う奴らから守る為だ。
なのでその娘さんについてもダリル殿の今は亡き弟夫婦の娘という名目でダリル殿と暮らしている状態なのだが……まさかあの
『あのボンクラの口振りから察するに勘付いているだろうな』
「まさか娘……リリルと二人で買い物に出かけていた所を見られていたとは思いませんでしたが、その容姿からそこに繋がるとは……」
『仮にも大統領になるくれぇのカンの良さは持ち合わせているってことか。そうなるとちぃと不味いな』
娘さんの母親が総統閣下だと気付かれているとなれば、今後またどんな無茶振りをされるか分かったものでは無い。
最悪、それを出汁に総統閣下の座を引き摺り下ろされる可能性もあるわけで……そうなればもうあのボンクラを止める者は居なくなるだろう。
「やはり信頼出来る者に護衛を任すべきか……」
『そうすると余計気取られる事になる。これで誘拐でもされてみろ?どうなると思う?』
「くっ……どうすればあの男を大統領の座から叩き落とせるのだろうか?」
『それよりも今はあのデカブツをどうにかする方が先だろ?そういやさっきから気になってたが、一日経ったってのにやけに静かだな?』
「それについては……いえ、これは実際に見た方が早いでしょうね。鴉殿、今動くことは可能でしょうか?」
『問題ねぇよ』
「それでは私と共にこちらへ」
そうしてダリルに案内されたのはガラン・ハイムの城壁の上……北部砦が見える場所であった。
そしてそこには……。
『どこをどう見ても山だな』
北部砦があった場所には一つの山が悠然とそびえ立っていた。
しかし普通の山と違うところはその根元に大きな穴が空いており、特に正面の穴には巨大な顔が押し込められるようにして入っていた。
『どういう状態だアレは?』
「休眠状態と言ったところでしょうか?あの後、アーケロス・タイタノクス……長いのでタイタノクスと言いましょうか?タイタノクスは北部砦の真上で止まり、そしてあの状態になったそうです。そこからは微動だにしなくなったとの事ですが……」
俺とダリルが話している前で一匹の巨獣が現れ、そいつは正面の穴……つまりタイタノクスの顔の前に降り立った直後にその姿を消した。
……というのも降り立ったタイミングでかなりの速さでタイタノクスはその頭を伸ばし巨獣に食らいついたのである。
そしてそのまま咀嚼をしながら頭を引っ込めていた。
「あのように捕食行為はするんですよね……どういうことだと思います?」
『ん〜……』
タイタノクスが何故あのような状態になっているのか俺の見解を訊ねるダリル殿。
俺はタイタノクスを見ながら頭の中で奴の今の状態について思案し始めた。
(獲物を見るなり直ぐに噛み付いてくる獰猛さからカミツキガメの禍憑だと推測されるが……)
獰猛な亀には主にカミツキガメやワニガメなどが挙げられるが、ワニガメの捕食方法は主に餌を誘い込んで待つスタイルで、自身の舌を疑似餌のように動かし、それに誘われた魚を食らう。
しかしそのような行動をしている様子は無い事からカミツキガメだと思われるが、だとすればそれが禍憑になったら更に獰猛になり、今頃当たり構わず暴れまくっていてもおかしくは無い。
そして先程のように目の前に餌が来れば直ぐに食らいつくので腹を空かせて弱っている訳では無さそうだが……。
「えっ、鴉さん?!動けるようになったんですか?!」
天を見上げ考え込んでいると不意にそんな声が聞こえ、目を向けてみればそこには目を丸くしている高町とハラオウンの姿があった。
『おぉ二人共。無事なようで何よりだ』
「それはこっちのセリフですよ!あんな大怪我だったのに……本当に大丈夫そうで良かったです」
「彼女達がここまで運んでくれたんですよ」
『そうだったのか……すまねぇな、助かったよ』
「いえいえ。それよりもお二人はここで何を?」
『あぁ、タイタノクスの様子を確認しにな。お前さん達は?』
「私達も同じです」
『なるほど。ちなみに二人は体調はどうなんだ?』
「今までしっかりと休んだのでバッチリです!」
『そうか、しっかり休めたのなら何より……────!!』
そこで俺はハッと気付く。
不意に言葉を止めた俺に高町達は疑問符を浮かべていたのだが、俺は構わずまた思考の波へと沈んでゆく。
(そういや氾濫の鎮圧を行っている間、タイタノクスは動いている様子は無かった。もしかしたら今の状態が奴にとっては通常の状態なのかもしれない……では何故その状態が通常なのか?もし動くだけでかなりのエネルギーを消費しているのだとしたら?そして他の禍憑や生物を捕食して得られるエネルギーが全くの不十分であったとしたら?つまり奴は……)
『身体の大きさとエネルギー保有量、そしてその消費量が比例していない?』
「え?」
『禍憑になった事により突然あの大きさまで成長したとしたら?そしてその事に身体が追いついていないのだとしたら?』
「つまりタイタノクスは強制的に休眠状態に陥る程、少し動いただけでもかなりのエネルギーが消費されると言うことですか?」
「それって結局、どういう事なんです?」
『つまり奴はナマケモノと同じって事だ』
「あー……えー……な、なるほど?」
「なのは、ナマケモノはわずかに摂取したエネルギーを節約する為に全く動かない動物なんだ。つまりあのタイタノクスという巨獣はあまりにも身体が大き過ぎて、そのせいで消費するエネルギーの量も多過ぎて、だからそれを節約する為に今みたいに動かないって事なんだよ」
「なるほどそっかー!そうだったんだね!」
『……』
ハラオウンの説明でようやく俺の話が理解できた高町に思わず白い目を向けてしまう。
『今の状態で得られるエネルギーの補給源……つまり餌になる奴が居なくなったら、奴はあのままの状態を強いられる事にならねぇか?』
「なるほど……つまり無理にタイタノクスと相対する訳ではなく、餌になりうる禍憑達の討伐を優先するという訳ですか」
『そういう事だ。ダリル殿、今すぐ戦える奴らを集めろ。グリシャオラス樹海群に潜む禍憑の掃討戦を開始しよう』
「はっ、直ちに」
「あの〜……ちょっと良いですか?」
「なのは?」
直ぐに行動へ移ろうとした俺とダリル殿だったが、その矢先に高町が恐る恐る手を挙げながら待ったをかけてきた。
その事に俺とダリル殿、そしてハラオウンが高町に注目すると、高町は自身の意見を述べ始めた。
「あの、確かに鴉さん達の話は理解できたんですけど、それならなんでタイタノクスはこんな所まで出てきたんでしょうか?」
『なんでって……そういやなんでだ?高町の言葉で確かに疑問を抱いたな』
「そうですよね!」
「確かにそんな状態なら無理に動かずにその場で他の禍憑や生物を捕食していれば済む話ですね」
「じゃあなんでこんな所まで……」
「その事で私、一つ思い出した事があるんですけど、私達が育った世界では山にいる熊がよく街とかに出てくる事が多かったんですよね」
『山にいた熊が?そいつぁ珍しいな』
高町達の世界にいる熊はともかく、こちらの世界においての熊は山や森などの生息地から人里に出てくる事など無い。
それは山や森には豊富な食料があって、どれだけ食べても食い尽くすことは無いからだ。
それに俺達人間側もその事を理解しているので決して無闇矢鱈にそう言った場所を荒らすような行為はせず、こうして街を作るのにも山や森を切り開く事はせずに開けた場所を探して作る。
(こうして自然との調和をする事で山や森の動物達の食料が尽きないように務めて……務め……────!!)
『そうか!そういう事か!』
俺は気付く……ナマケモノのようにエネルギーを節約する為に休眠状態となるタイタノクスが何故わざわざこんな所にまで出張って来たのか。
俺は直ぐにダリル殿へと顔を向けると、彼に向けてこう言い放った。
『ダリル殿、今すぐ全員を集めて欲しい。詳しい説明はそこでする。そして先程は禍憑を掃討すると言ったがそれも予定変更だ』
「分かりましたが……いったい何をするおつもりで?」
『奴を打ちのめす算段がついたんだよ』
そうして俺はタイタノクスへと顔を向け、我関せずといった様子で目を瞑る奴を見ながらこう言った。
『勝負は明日だ……明日、必ず奴との決着を付ける』
な「前回からだいぶ時間が空いたね?」
作「まぁ、何かと忙しくて……」
フ「FGOやってたのに?」
作「だって新キャラの蒼きアズライールが欲しかったし、ストーリーも第2部に早く入りたかったんだもん!」
な「蒼きアズライールは迎えられたの?」
作「な、なんとか……もちろん最終再臨まで育てました」
な「じゃあこれからは心置き無く更新出来るね♪︎なんたって今は夏季休暇中だしね!」
作「あ……はい……」
これからも執筆頑張ります