魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
〈景久視点〉
いったい何故こうなってしまったのか?
それについては〝なるべくしてそうなった〟としか言えない。
俺は戸惑う
『構えも無しに俺とやり合うつもりか、リア?』
「────っ!」
そう言ってやるとリアもその場で構えを取った。
一時間の何でもありの勝負……いつの間にかリアの背後にある城壁の上には
「それでは……始め!」
『〝
その合図と共に俺は影による無数の棘を纏った幾本もの槍をリアへと向けて放つのであった。
〈アメリア視点〉
兄様と勝負をする事になった私は兄様の言葉で構えを取った。
そして総統閣下による開始の合図と共に兄様の法術が私を襲う。
「くっ……!」
直ぐにその場から飛び退いて躱した私は直ぐに反撃に転じようと竜人化して飛び出そうとした。
しかしそんな私の身体に痛みが走る。
「ゔっ……くっ……」
見れば私の身体には細い針のようなものが刺さっており、それは先程躱した事で地面に突き刺さっていた影の槍から伸びていた。
(しまった……そういう法術だったの!)
初めて見た法術〝
しかも何処からどう伸びてくるのかも予測出来ないから避けようにも避けられない。
もしこれで空に逃げようとも兄様の事だから対空法術を放ってくるだろう。
つまりは始まった瞬間から私の凡ゆる攻撃は封じられていたと言っても過言では無い。
(流石は兄様……)
『感心している暇はねぇぞ?』
兄様はそう言うと私に向かって手を翳した。
『〝
その直後、私の身体は強制的に兄様の方へと引き寄せられる。
〝
(痛っ……!)
このままでは翼が引きちぎられそうだと判断し翼を閉じる。
私は何とかして体勢を整えると、出していた爪を振り上げ兄様へと目掛けて振り下ろした。
(獲った!)
そう思ったのも束の間────振り下ろした爪は兄様に届く前にその手によって止められていた。
『黒天穴の強制力の中で、それでも反撃しようとしたのは素晴らしい……が、それが通じる程、特級討伐師は甘くは無い』
「……っ!」
兄様の目は本気だった……本気で私を殺そうとする目だった。
そして兄様は掴んでいた私の爪ごと私の身体を高々と持ち上げると、そのまま勢いよく地面へと叩きつけた。
「────っ……かハッ……」
身体中の骨が軋むような感覚が襲う。
禍憑人……しかも竜の禍憑人である為頑丈ではあるが、それでも骨の一、二本は折れていてもおかしくは無い程の衝撃だった。
その衝撃で上手く呼吸が出来ない。
『寝ている暇があると思うか?』
「くっ……」
私の顔を狙って兄様が踏み付けた足を紙一重で躱し、そのまま身体を回転させて回し蹴りを放つ……しかし呼吸が出来ないせいで身体が思うように動かず、その蹴りは兄様に容易く掴まれた。
(しまっ────)
『腑抜けた蹴りだな』
私の身体を浮遊感が襲い、今度はうつ伏せの状態で地面に叩き付けられる。
「がハッ────」
私の口内に鉄の味が広がる。
「ゲホっ────」
咳き込んだ拍子に口から血が吐き出される。
強打した胸はもちろん、腹部などにも激痛が走る。
しかも呼吸する度に痛むのだから何処か折れたかヒビが入っているのかもしれない。
「ヒュー……ヒュー……」
あぁ不味い……呼吸がおかしい……これは非常に不味い呼吸の仕方だ。
だとしてもそれで動きを止める訳には行かない。
「ぐっ……くっ……」
痛む身体をなんとか動かし立ち上がる。
しかしそこに兄様の姿は無く、代わりに私の四肢に釘のようなものが打ち込まれる。
『〝
「か、身体が……!」
『こいつを食らったとてダメージを負う訳ではねぇ……が、こいつを打ち込まれた奴は打ち込まれた箇所の時間が止まる』
兄様はそう説明しながらゆっくりと私の前へと移動する。
そして徐ろに人差し指で私の眉間へと触れると、こんな一言を私に放った。
『耐えろ。さもなくば
その瞬間、私の体内で何かが暴れ始める。
『〝
「あぁぁあぁぁぁぁ!!!!!」
私の体内で電気が暴れるように走り回る。
〝感電〟だなんてそんな生易しいものじゃない……まるで自分の身体の中から雷が生じたような衝撃。
そしてそれが収まった時……私の意識は彼方へと消えていた。
〈なのは視点〉
鴉……鴉丸景久さんとアメリアさんが二人だけで移動し始めたので私とフェイトちゃんもそれについて行ったのだが、総統閣下から〝お前達はこっちだ〟と言われ今は首都側の門の上に来ている。
どうやら総統閣下は景久さんが何をしようとしているか察していたらしく、他の討伐師の方に二人の周りに結界を張るよう指示を出していた。
そして始まったのが景久さんとアメリアさんによる真剣勝負────景久さんの実力は何回も見ていたから知ってはいるけれど、アメリアさんについてはどれ程の実力があるのか分からない。
さっきの話を聞くにアメリアさんも景久さんのお師匠さんであるヴァローナさんから教えを受けていたらしいけれど……。
そうして始まった勝負は景久さんによる一方的なものだった。
もう勝負とは言えない……これは景久さんによる蹂躙だ。
「大丈夫なんですか……あれ?」
「景久めはヴァローナ同様、アメリアの事を大切に思っておる……故にこの勝負でアメリアを戦闘不能にさせ、無理矢理にでも首都へ送り返す腹積もりであろうな。安心せい、あ奴は殺す気でかかってはいるが、本気で殺そうなどとは思っておらん」
「でも……アメリアさんは本気で景久さん達の力になろうとしてたのに」
「なまじヴァローナと共に数々の禍憑を相手にしてきた故に、今のアメリアの実力では到底無理だと思っておるのだろう。アメリアもそれ程までに本気であるならば、ここで景久にそれを知らしめねばならぬ」
「それにしても鴉殿は……そのようなお考えであるとしても些か冷酷ではありませんか?」
「そう見えるのは貴様がまだ景久の事を理解しきれておらぬ証拠だ。一見冷酷そうに見えて、あの仮面の下では悲痛な表情をしておるだろうよ。のぅ、ダリルよ?」
「そうですね……初めて彼女と会った時から、彼はヴァローナ殿と共に大層可愛がっておりましたから」
ダリルさんがそう言った瞬間、激しい音が鳴りそちらへ顔を向けてみると、そこには口から煙を吐きながら倒れるアメリアさんの姿があった。
「アメリアさん?!」
「酷い……体内に直接電撃を放つなんて……」
私と違って一部始終を見ていたフェイトちゃんが顔を歪ませながらそう話す。
しかしそんなフェイトちゃんの言葉を否定したのは総統閣下だった。
「いいや、あれは体内に電撃を見舞いした訳ではない……あれは生体電流を増幅させ暴走させる法術だ」
「生体電流を?」
「人間の……いや、生物の体内には微弱な電気が流れておる。それ故に我らはこうして身体を動かし、五感で得た情報を脳へと送る事が出来る」
「つまり景久さんはそれを暴走させたという事ですか?」
「そうだ。今のアメリアは自分の身体に流れる生体電流によって感電した状態だ。あ奴め……いくら戦闘不能にするとはいえ、あのような法術を使わんでも良いものを」
その場にドサリと倒れるアメリアさんはそれから動く様子は無かった。
これで決まりなのかと総統閣下は首を横へと振り、ダリルさんも目を伏せてため息を溢す。
他の皆も同じように落胆した声を上げていた。
しかしそんな中である人達だけはアメリアさんに向かって声を上げていた。
「倒れてんじゃないわよリア!あんたはこんな所で簡単に終わるような子じゃないでしょ!」
「リア、ここで終わったらもう二度と認めてもらえる機会が失われますよ!」
「頑張れリアー!非常な兄貴をぶっ飛ばしてやれー!」
「早く起きてリア!ようやく再会したお兄ちゃんに一発くらいお見舞いしてやらなきゃでしょ!」
「リア!学園の優等生の意地を見せてやって!」
アメリアさんのご友人の方達は声が枯れる勢いで必死にアメリアさんに声をかけ続け、その声が届いたのか倒れていたアメリアさんの手が僅かに動く。
けれど……。
ゴシャッ────
『────!!』
私達の目の前に飛んできたアメリアさんの身体は、そのまま城壁へと叩き付けられた。
その際に激しく血が噴き出し、その血飛沫が私達へと飛んでくる。
(い、今……景久さんが蹴り飛ばしたの?)
総統閣下は景久さんにとってアメリアさんは大切な存在だと言っていた。
しかし目の前の景久さんからはそんな様子は微塵にも感じ取れない。
今の景久さんは……ただ目の前の人間を壊す為だけにいる人の形をした悪魔であった。