魔法少女リリカルなのはEXCEEDS〜RAVEN and DRAGON STRIVE〜 作:ΣiGMA
あくる日の朝を迎えたリアは、またいつものように身体を起こして欠伸と伸びをする。
そのタイミングでジャンヌが来て、リアは着替えをしてから朝食を食べに下へと降りる。
いつもは賑やかな屋敷の中……けどその日はどこかいつもと違っていた。
ヴァローナ義母様が亡くなった日はすごく辛い空気だったけれど、今はそれとは違うような……また別の何かが失われたような……そんなぽっかりと穴が空いたような感じの雰囲気だった。
「……?」
どうしてそう感じたか分からないまま椅子につき、出された食事を食べ始める。
兄様はいない……兄様に〝嫌い〟と言ったあの日、リアはずっと部屋で泣いてたけど、でも思いっきり泣いたら頭の中がスッキリとして、だから兄様は悪くなくて、一番泣きたいのは兄様の方なんだって思った。
でも嫌いって言った手前、どうしても顔を合わせずらくて、いつの間にか兄様を避けるようになってた。
でも、いつまでもこのままじゃ亡くなったヴァローナ義母様が悲しむよね?
だからリアは隣にいたジャンヌにこう言った。
「ジャンヌ……リア、兄様と仲直りしようと思う」
「それはとても良い事ですね」
「だから兄様に会いに行きたい。兄様は今どこにいるのかな?」
リアがそう言った時、ジャンヌの顔が一瞬辛そうなものになった。
直ぐにまたいつもの顔に戻ったけれど、リアはそれを見逃さなかった。
「ジャンヌ、どうしてそんな顔をしたの?」
「い、いえ……私は変な顔などしては……」
「嘘言わないで。リア、ちゃんと見ていたもの」
「リアお嬢様……私は……」
「兄様はまだ出かけてないんでしょ?ならお部屋にいるよね」
そう言って私は椅子から降りて兄様の部屋へと駆け出す。
「お待ちくださいリアお嬢様!」
ジャンヌがそう言ってくるけど構わず走り続ける。
そして兄様の部屋の前に来ると、ノックをして兄様に声をかけた。
「兄様、いる?」
返事は無かった。
不思議に思って恐る恐るドアを開けると、そこに兄様の姿は無かった。
いつもなら何処かに出かけているのかなと思うところだった。
でも今は違った……だって兄様の荷物が無くなっているのだから。
「……兄様?」
がらんとなった兄様の部屋の中で茫然としていると、追いついたジャンヌがリアの前に姿を見せる。
「ジャンヌ……兄様……どこ……?」
震える声でそう訊ねると、ジャンヌはまたあの辛そうな顔をしてこう言った。
「リアお嬢様。若様は……カゲヒサ様はもうこの屋敷にはおりません」
「どういうこと?もしかして何処かにお泊まりってこと?そうだよね?何日かしたら戻ってくるよね?」
「いいえリアお嬢様……若様はもう二度とこの屋敷にはお戻りになりません」
そう答えたのはいつの間にかリアの後ろにいたデイモンだった。
「デイモン?」
「若様はこの屋敷を出られました。特級討伐師となる為に。その為にデータベースから若様のデータは全て削除されております。つまり、この屋敷から〝鴉丸景久〟という人物は消えたのです」
「嘘!だって兄様はリアを一人になんかしないもん!」
「リアお嬢様、生憎ですが事実に御座います」
「ならどうして!どうして兄様は最後にリアに会わなかったの?!」
「リアお嬢様が若様にお会いしようとなさらなかったからです」
「そんな……リアは……」
「若様はあの日、お嬢様を失った事に自責の念にかられておりました。〝師匠が死んだのは俺のせいだ〟と言って……故にそのせいで再び母親を失う事になったリアお嬢様に合わせる顔が無かったのでしょう」
「……のせい?」
「……リアお嬢様?」
「もしかして……リアのせい?リアがあの時〝いなくなっちゃえばいい〟って言ったから、兄様はいなくなっちゃったの?」
「違います!若様は決してそのように言ったリアお嬢様の事をお責めになることは致しませんでした!ずっとリアお嬢様の事をお気にかけられており……」
「リアは兄様に謝りたかった!〝嫌い〟って、〝いなくなっちゃえ〟って言ったこと謝りたかった……のに……」
そうしてリアは涙が止められなくてわんわん泣いた。
ジャンヌもデイモンも止めようとはしなくて、ただただ優しくリアを抱きしめて頭を撫でてくれていた。
そしてそれから二年後────
あの日から私は兄様と会うことは無かった。
何度もジャンヌやデイモン達に聞いても手紙すら届くことはなく、何処にいるのかも分からないのでこちらから手紙を送ることすら出来なかった。
だから私はこの学園へ通うことに決めたのだ。
かつてヴァローナ義母様が通っていた学園……ヴァローナ義母様と同じ特級討伐師への近道。
(私はここで三年間過ごし、必ず特級討伐師になって兄様と再会を果たす)
心の中でそう決意し、角に巻かれたリボンにそっと触れる。
かつてヴァローナ義母様と兄様が口論しながらも選んで下さったリボン……今となっては一番の宝物であるリボンに触れながらその時のことを思い返す。
「見ていて下さい義母様。アメリア・アレキサンドラ・ドラキュリアス・
澄み渡る空を見ながらそう決意を顕にした私は、桜が舞う正門を潜り、校舎へと向かうのであった。