チート悪転生トレーナー「お前らさぁ、いい加減卒業してくんない!?」 作:弥栄実
ルドルフに病院に誘拐され年齢にしてはお若い脳年齢してますねぇと言われて数日。仕事は減っていた。
心配したルドルフが実家の担当者にマネジメント部分を担当してくれるように願ったのだ。これで仕事の数%は減った。
あまりこう言う時に実家を頼らないルドルフが実家を頼った理由が自分の過労による頭の故障だと言うのは納得がいかない。故障しているのは世界の方だし。
自分はそんな思いを抱えながらも病院で抜けていた分の仕事をようやく終わらせられたこともあり、他の物事もどうにか解決して木陰で寝転がっていた。
「おや?何やら難しい顔をしているね、トレーナー」
「そんなことないだろシービー」
「そう?アタシにはそんなふうに見えるんだけどなぁ」
こいつ心よんでるのか。チートで自分の顔は完璧なポーカーフェイスを実現していると言うのに。
なぜ悩んでいることがバレたのかと悩んでいればシービーが隣いいかなと言いながら許可を取らずに座る。
別にこの場所は自分の場所でもないので構わないのだが、せめて聞いてから座るなら許可を待てよと思う。
「こんなでも担当の中じゃ1番長い付き合いをしてるからね。君のことはよくわかるよ。前にルドルフに病院に連れていた件と言い、悩みがあるなら聞こうか?」
「んー。多分言ってもわからんと思うけどなぁ」
彼女の名はミスターシービー。言うまでもなく、原作で三冠を十数年ぶりに取り競馬会を大いに盛り上げたレジェンドである。ルドルフの一つ上の先輩。あと寮には住んでおらず一人暮らし。
彼女との付き合いはそこそこに長い。自分がこの学園に所属した翌年に彼女と出会い、たまに瞑想という名の日向ぼっこをしたりしていた仲である。
そして、現在は自分の担当バの一人だ。2番目の担当であるとも言える。
1番目がルドルフ、2番目の担当がミスターシービーであるのになぜ、彼女の方が昔から付き合いがあるのか、時系列的にはミスターシービーの方が先ではないかと疑問を持たれたことだろう。そこには海より高く山より深い理由が……つまるところシービーとは担当になるまでにかなりの時間の差があったということだ。
「こういうのは言ってみるだけでもスッキリするものだよ?悩んでる状態だと走ってもあまり楽しくないし、まぁ走り続けてると悩みを吹っ切れたりもするけど。早いとこ解決しない?」
「んー……」
言えるわけがない。トレセン学園がご都合サザエさん時空になってるからうまぴょいできないなんて。言った瞬間に軽蔑されセクハラで警察行き間違いなしである。
これまで下心なく普通に接してきたとはいえ、その接していたのにも下心があったのではと誤解されれば真面目に辛い。悪いチート転生者とはいえ、自分は一人のトレーナーなのだ。ウマ娘に対してはそういう相手としてみる前に一人のウマ娘として見るようにしている。
あと、普通に考えて中高生に下心抱くのは人としてどうかと思う。
教え子が大人になったあとにうまぴょいしたいというのはどうなのかとは思うが、あくまでも自分は中高生の彼女らではなく大人の彼女らとうまぴょいしたいのだ。……あれ、これ結構最低では?今更か。
「担当が卒業しないし引退移籍しても担当契約切らないし人数が増えてることとかかな。いっそのこと卒業して欲しいんだけど」
「あはは。アタシだってそうしたいところなんだけどね。ここで走りつづけたいともおもうし、早く卒業して次のステップに歩み出したいとも思うし。君には1.2年待っててもらえると嬉しいよ」
「もう待ってる年数二桁に突入してますけど?」
「そんなわけないだろう?」
「ならなぜ中高の間で12干支の年全てを経験した?留年しなけりゃ六干支で終わるはずよ?留年してるの?」
「してないよ?別におかしな話ではないと思うけどなぁ、ルドルフが心配してた理由なんとなくわかっちゃたかも」
これはきっと三女神の陰謀である。シービーもルナも聡明な娘である。こんな簡単なことに気づけないわけがないのだ。いや、もしかしたら前世を知る自分が異質なだけでこの世界ではこれが常識なのかもしれない。いやそんなわけないだろう。
なぜだ、トレセン学園にくるまでは普通の時間経過だったというのに。トレセン学園の関係者だけ時間がおかしいのか。
「ならせめて担当契約切らない?ぶっちゃけ、移籍もしたんだしもう必要ないでしょ。昔だって気楽にトレーニングを見るだけの関係で契約してなかったじゃん?」
「あはは。昔はそれでも、今はちょっと無理かなぁ」
「How why」
「担当から外れたりすると、他のみんなに置いてかれそうだからね」
みんなの何から置いてかれるというのだろうか。自分はご都合サザエさん時空を置いて行っているのだから、ある意味みんなを置いて行っていると言えるが。
「よし。トレーナー、久しぶりに走らない?アタシと君で」
「疲れるからパス」
「えー」
自分は今現在とある緑帽子の人から逃走してきたところなのだ。なぜわざわざまた体力を消費しなければならないのだ。
「……トレーナーはさ、私たちのことどう思ってるの?」
「ん?担当」
「それだけ?」
「んー、あまり生徒に対してこういうこと思うのは良くないんだろうが、全員に対してではないけど、半ば腐れ縁?」
ルドルフやシービーなどの面子に至ってはすでに2桁年を共に生きているのだ。ぶっちゃけ、うまぴょいしたいとかそういう次元を超えて達観した関係性をしていると思っている。
「ふーん」
「……あ、もちろん良い意味な。嫌な関係とかじゃない」
「わかってるよ、トレーナーが私たちのことを好ましく思ってることくらいね」
「おぉ、なんというポジティブマインド」
シービーは隣に座っていたが、とうとう背中も地面につけ寝転びだす。トレーナーと担当バが二人揃って木陰で横になる。
こういう関係がトレーナーと担当バで果たして良いと言えるものかは知らないが、なんやかんやトレーナーになる2桁年前にもやっていることなので今更である。
「……」
「……こうしてると、むかしを思い出すなぁ」
「何年前よ」
「5年前くらい?」
「どんなこと?」
「まだ君がアタシのトレーナーじゃなく、ただアタシに付き合ってくれてただけの関係だった時のこと」
「それ5年どころじゃねぇよ」
「アタシが中等部の頃だよ?」
「お前高等部になってから何年経ってると。年2回のドリームトロフィーリーグに出たのだって10回で終わらんだろ」
「……さぁ?まぁ、君のおかげで走るの楽しくやれてるし問題はないかな」
「そういう問題じゃ……いやまぁお前が楽しいならそれでいいか」
認識阻害は的確にかけられているようで、やはり自分の説明ではなんの理解も彼女らは得られないらしい。シンボリルドルフだけでなくシービーも。そうなると他の担当もそうであると判断すべきだろう。
いや、全員がそうとは限らないが。こういう異常を感知する存在というのは案外いてもおかしくはなさそうである。
候補は担当に限定はしないが幾人かはいるし。
「……ところでシービー」
「なんだいトレーナー」
「今更だが、授業時間なのになんでここにいるんだ?」
「……」
「シービー?」
「……窓から君のことが見えてね。つい抜け出してきちゃった」
「おいコラっ。ここまで一応見逃してたがすぐ戻れ!トイレ長引いてたでまだ説明はつく。このままだと担当の不始末についてたづなさんに反省文書かされることになるっ、また追いかけられるのはごめんなのだが!?」
担当バのやらかしは時としてトレーナーに責任追及が飛ぶことがある。特にトレーナーが理由として起こったものはより多くの責任追及が飛んでくる。
あくまでも生徒のやらかしなので減給とかそういうことはないが、だが反省文とか今後の担当バに対する指導書などを書かされる。そういうのを指導するのはトレーナーじゃなく教師がやれよと言いたい。
「んー……言い訳にトイレを使うのは嫌だな。アタシだって乙女だよ?」
「乙女の羞恥心と自分の悪評ならどっちの方がマシだ?聡明なシービーならわかるはず」
「キミの悪評」
「この野郎っ!どこの誰にそんなふうに育てられたっ」
「キミだよ。アタシはキミのアイバさ」
「それなら育て主の言うことを聞けや」
「反抗期だよトレーナー。さて、それじゃあ一緒に走ろうかトレーナー」
「断る」
「ふぅん?あれ見ても?」
「え?」
シービーが指差す先にはとても可愛らしく、しかしとてつもなく恐ろしい笑顔で歩いてきているたづなさんがいた。なぜか人間なのにウマ娘同様のステータス画面が写っている彼女がである。
それの状態は絶好調だった。
「……よし、シービー、ひとっ走りするか」
「あぁ、行こうかアタシのトレーナー。アタシ、たづなさんとの追いかけっこも憧れてたんだ」
自分たちが去ろうとしていることに気づいたたづなさんはとてつもない加速力で距離を詰めてくる。こちらも速度が乗り出してからは距離が埋まりにくくなってはきていた。あとは体力勝負となるだろう。
「あはは。男女で逃げるってさ、なんかロマンチックじゃない?いっそのことこのまま駆け落ちしたりしない?」
「誰が高校生なんかとするか」
「振られちゃったかぁ。ちなみになんでトレーナーさんはあんな追いかけられてるの?」
「寝ぼけてだ時に緑の悪魔って呼んじゃって。謝りはしたしその時持ってたもので謝罪しようとしたけど職権濫用で大量の書類任されそうになったから逃げた」
「あはは。そりゃキミが悪いよ」
「反省はしている」
その後、なんとか彼女からは逃げおおせた。シービーは捕まっていたが、囮として見捨てた。
ここだけの話、オリ主は周囲から批判されても担当のためならと実行するタイプ。つまら南坂トレーナーみたいなこともとかたまにするタイプ。