「「キャッツェリア?」」
「そうっす、場所知らないっすか?」
80ラインを突破した*1lordはその数日後、新大陸の拠点、
厳密にはイーゼル達のキャンプ地に合流した。
自由に使える船とはまことに便利である。
「いや、知ってるというか
「アタシの実家もキャッツェリアとは縁があるけど…何かあったの?」
竜人とドワーフ・ケットシーが横続きの関係なのは知っていたがアラクネもその口なのが意外だ。
キャッツェリアと縁があるなら当然ラビッツとも遠からず繋がりがあるだろうし問題無いか?
「実はこないだ旧大陸に戻った時ヴァイスアッシュって御仁に試練を課されたんすよ」
「「ヴァイスアッシュ!?」」
「そっす。でかの御仁曰くキャッツェリアまで来いやとの事で…」
というか暫定あの峡谷を超えねばいけない状態で期限なんぞ付けられてたまるかって話ではあるが
流石にそれを言えるほどlordはヤンキーではなかった。
「…因みに期限はいつまでだ?」
「特に指定されてないっすけど多少頭数を連れて来いって感じっすね」
「うーん…ルブ?」
「ロードちゃん、アナタあっちで何しでかしたのよ?」
「水泳しながらナベブタ壊してただけっす」
「悪いが波濤の言葉は慣れてないんだ、コッチに分かるように言ってくれ。」
「同じ言語っすよ!?」
「だとしたら状況がなにも分からないが?」
と言われても赤竜の死骸から素材回収する為に水中でツルハシ振り回してたらヴァイスアッシュに
凸かまされて監視付けられたなんていえないだろう。
「えっと…向こうにある火山の火口にでっけぇ岩盤がナベの落とし蓋みたいになってるんすよ。で、その岩盤から珍しい素材が取れるっつーんでツルハシ片手に行ったって訳っす。」
「何で水泳…あ、雨水がたまって火口湖になってるのね?」
「そうっす。」
「そこで岩盤を掘っていたらあのお方に目を付けられた…と。」
「端的に言えばそうっすね、試練の理由は言われてないんで分からないっすけど…」
結局いくのが一番早いんじゃね?というのがイーゼル達の意見でありソレはlordも同じ。
幸いアラクネがキャッツェリアと繋がりがある為門前払いされる事も無いだろう。
「問題はこの馬鹿デカイ森っすよねぇ」
「…そうか、来る時はアレに乗って来たんだったな。」
「逆に浜辺まで出られればどうにかなるんじゃないかしら?」
そうなのだ。
森からさらに南西に抜けた熱帯浜に出れば見通しもよく比較的賢いゴリラしかいないので
ボディランゲージで意志疎通して戦闘は回避できる。だがイーゼルの言う通りこの拠点にきた時はそのゴリラタクシーで来た。その為ここから浜辺に行くルートの確立に至っていないのだ。
「大まかなルートは分かるっすけど問題はあのトリケラトプスっすよ」
「ドラクルス・ディノケラスというらしい。お前の仲間も手を焼いていると聞いたぞ」
「あとアレよアレ、上空飛んでる奴…ディノコアトルだっけ?」
「二人とも随分森に詳しいっすね?」
聞けばこのキャンプ(ほぼ家)に使っている柱やらなんやらに使っている木を伐り出す過程で
開拓者の手を借りたんだとか‥‥ん?開拓者の手を借りた?
「ルブさん!なんか握手とかハイポーズとか言われなかったっすか!?」
「え?まぁ確かに最初はあったけど…」
おのれ暫定SFーzooめ、人の女に向かってなんという目を使って…ん?
「イーゼルもいたしね♪」
「あまり酷い奴は申し訳ないが剣を向けたが…まずかったか?」
「いやいやとんでもねぇっす!モンスターと亜人の差も分からんような方にはいい薬っすよ」
前々からSF-zooにはNPCとモンスターの区別がついてない疑惑がチラホラあった。
これでいくらかマシになってくれると助かるが…
「ならいいんだが…アレはどうする?」
「アレ?」
イーゼルが親指でクイクイと家の窓を指す。
草と木しか無い…筈なんだが赤だの水色だのやたらトゲトゲしい鎧だのが見え隠れしている。
向いている方向は…斜め上?ルブが目的か。
「なんすかアレ」
「開拓者だ。どうやらルブが好きらしい。」
「…それは性格的にすか?それとも種族的にすか?」
「どちらかというと後者でいい筈だが…」
という事はルブさんではなくアラクネスキーもしくは蜘蛛スキーって事か。
…何か揉めてるようだがめんどくさいので関わらないようにしないとな。
「アタシは気にしてないわよ~?」
「だそうだ。」
「ならまぁ…実害がでたら都度対処でいいっすね」
後に聞いた話だが厄介ファンはルブ自身で蹴散らしたらしい。しかも物理で。
可笑しいな、ゴーレム操作系のジョブの筈なんだが…?
まさか蜘蛛の口でかじりついてたりしないよな?
「話を戻すがどうする?」
「大人数でいくとカバーしきれないんで増やしてもあと二人っすかね。」
自分はあまりカバーが得意ではない。
目の前に注意が生きがちというか視界に入っていないものに注意をする意識が偶にヌケるというか
そんな感じだ。ソナー系の魔法を覚えて補ってはいるがそれでも視野は広くは無い。
イーゼル・ルブに加えて誰かを考慮しないといけないならキャパ的にあと二人が限界だろう。
気にしなくて良いほど飛びぬけた強さを持つプレイヤーだったり馬鹿みたいに機動力がある奴を
含めていいならもう1~2人増やしても構いやしないだろうが…*2
「知り合った開拓者の中で誰か良い人いないっすか?」
「うん?…やたらと回復が得意な魔導士はいたが忙しいと聞く…」
やたらと回復…あ、それ多分回復が得意なんじゃなくて回復しか出来ねぇガチヒーラーだ。
というかその人絶対カシューさんじゃん、コッチにもういるんだ…*3
「あぁ何となく誰の事か分かったっすけど確かに奴さんは忙しい身っすねぇ…」
下手な攻撃では死なず周囲のプレイヤーも即死しない限り死なせない脅威のヒーリングは
この新大陸では恐らく引く手あまたのひっきりなしなのは想像に容易い。
キャッツェリアまでの道のりが何日かかるか分からない以上下手にお願いする訳にもいくまい。
それはそれとしてメールはしておく、おいでハヤブサちゃん。
「ポーション買い込むのは当然として…誰かいないっすかねぇ…」
「あの人はどうかしら?」
「誰だ?」
「アレよ、すごい畏まった顔でメイド服がどうとか聞いて来た人」
…この二人は有名人に合うのが得意なのだろうか。
装備生産職の中でメイド服と言えば彼しか思いつかないくらいにはあの人とメイド服は密接だ。
かくいう自分もあのメイド服戦争に必要な素材を採取する旨のクエストを受けた事がある。
あれは良いお祭りだった。
「因みになんて答えたんすか」
「フリフリがある方が好き…だったかしら?そういったら『機会があれば善処しよう』だって。」
以前あった所感だとトラディショナルなメイド服を好む印象だが…可愛い感じも大丈夫なのか。
「うーんあの人の専門は服飾っすから流石に除外っすね」
「お前の知り合いでだれかいないのか?」
「うーん知り合いは皆戦うのは得意っすがスニーキングとなると…?」
旧大陸はプレイヤーが十分煮詰まってエリア攻略の方法が周知されてる分よほどの馬鹿が紛れない限りは問題ないが新大陸は文字通りの前人未到の地。正直良い方法ではないんだがパーティー募集でもするしかない…でもそうだな、新エリア開拓か。
「NMM。」
「「なんて?」」
「あぁ、知り合いの所属してる組織の事っす。アソコなら融通聞きそうっすね」
NMM。正式名はネイキッドなんちゃらみたいな長々としたものだった筈の未踏破エリアの調査と
開拓に特化したクラン。あそこの所属なら今回の目的からして利害も一致するはずだ。
ただ問題なのは…
(トットリさん今森の中っすよねぇ…どーしよ)
今一番動けそうなクランリーダーが森の中で竜と鬼ごっこしている事だろう。
彼とは旧大陸でエリア調査の際に前衛としてちょくちょく組んだこともあるのでツーカーだが
NMMそのものとはあまり面識がないがダメ元でメールしてみるか。
「はいハヤブサさんお願いするっす。向こうのカシラに今打診出したんでとりあえずは」
「返信待ちね、ならちょっと体動かしましょ?」
「別に今すぐ行く訳じゃないぞ?」
「戦おうって訳じゃないわよ。外で買い物とかやりようはあるでしょ」
森の攻略の為、ルブの大きな腹にのってその日は買い物やら武器の修繕やら気ままな物見遊山を
して過ごす事になった。今思えばルブがニコやかな顔付きだったと思う。
意外とショッピングとかが好きなのだろうか…
竜人は鉱物への強い興味や好みという点でドワーフと親和性が高くそれ故に横の繋がりがあり
ドワーフは生産職の職人という立場でケットシーと繋がりがある為間接的に竜人がケットシーと繋がる機会が多いのは当然の成り行き。
ケットシーがヴォーパルバニーとの国ぐるみの繋がりがあるのはlord視点だと周知の事実なのでキャッツェリアにいけばラビッツまでのルートも確保できるよねというのがヴァッシュの考え。
とはいえ竜人は厳密には
個体ごとの繋がりはあっても種全体の繋がりは薄い(頭数がたりない)という解釈。