某日、旧大陸からの大陸調査船に譲位を終えた前王トルヴァンテが到着したとの話を耳にした。
今はまだ船の中で上陸の準備を進めている段階らしいが…それでもあえて言おう、遂に来た。
待ちわびたと言えば変ではあるが待っていた事は事実だった。
ログイン中の昼間は森にプレイヤーがいすぎてしょっちゅうスローターが始まる影響で至る所で
だがこの樹海、夜には面倒くさいフクロウことドラクルス・ディノウル?とやらが活発になる為
どうにかエンカウント率を下げる必要があった所で思いついたのが―――
「そろそろいくっすよ。」
「了解した。コッチの準備はいつでもできてるぞ。」
「アタシも同じく。」
別プレイヤーのイベントシーンを利用して固定エンカウントだけ出来ないか?という疑問だ。
夜間に護送され船から降りる前王たちを後ろから尾行する。道路を歩くとルブが大きすぎるので
屋根どうしの間に糸を張ってもらってその上下を歩いたり渡ったりする感じになるのだがコレが中々面白い。
ひと昔前の公園にあった雲梯とかいう子供用の遊具はきっとこんな感じなんだろうと子供心が
くすぐられるのだ。
アクティブソナーに引っかかる事を考えてかなり遠くから尾行しているから目的の人物までは
偉く遠いが…剣の1本や2本ぶん投げて当てられない距離ではない。
王たちが開けた場所に移ったのを遠めから確認しつつ対象の目視を終え森の近くにステンバイ。
第三騎士団 ”
ユリアンと俺の拳が向かい合う直前、俺達を隔てるように降り注いだ1本の巨剣。
そしてソレを担ぎ直す為に横からスタスタを誰かが歩いて来た。
エムルからソナーに引っかかる奴がいるとは聞いてたが…
「ここでか!!」
「次から次へと誰だ!!」
「…え~まずはご両人控えなすって。堅苦しい言葉を省く事にまず謝意を。手前、名を
†lord★ハンド・ヒット†と申すっす。豪奢な鎧に身を包みますればその方、エインブルスより
来た王国の方々とお見受けするっすが…相違なく?」
「そうだ、見た所開拓者のようだが横やりを入れられる雰囲気でない事は承知して頂きたいが?」
「ふむ。ではソチラの恩方…最後に謁見叶ったのはいつかの剣闘大会の授与式だったすかね?トルヴァンテ前王につきましては息災なようで何よりっす。」
「たった今息災じゃなくなりそうだけどな。」
剣闘大会…あれか、サイガ―100が剣聖になる為に優勝してるっていう…
とすればコイツも優勝経験者、つまり対人に秀でたプレイヤーになる訳だが…味方か?
「この状況で軽口たたける肝は実にすげぇっすが…さて。」
lordなんちゃらと名乗ったプレイヤーが俺達に背を向けて剣を担ぎ直した。
少なくと今ここで前王の首を狙っている訳ではないらしい。だとしたら何が目的だ?
「此度お二方に割って入ったのは知人の夜遊びの間際、その豪奢な鎧を着た騎士の皆々様がこんな
夜更けに、それも前王に剣を向けるのが目に入った事に起因するっす。譲位こそすれどかの国の王に騎士が謀反、それも多勢に無勢とは実に心無い…故に助太刀参るっす」
たまたま通りがかり…だと?ソナーに引っかかったのも興味本位?
「フ、フン!たかが1人増えた程度でどうになると『ならばもう二人いたらどうだ?』な!?」
月明りをバックに空から弾むように着地した…デカイ影と人型がlordと名乗った奴と並び
王の前を塞ぐ。
「アラクネと…フジツボ?」
「見ない顔のバードマン…いや人間か?一応言っておくが魚人ではなく竜人だ。」
「アンタらもアレの仲間でいいんだな?」
「あぁ、故あってな。」
「アタシも同じく。」
「さぁさぁ騎士の皆さん、斬った張ったはお好きっすよね?お互い目的を果たす為、存分に―――
そうlordが言い切る前に揺れ動く大地。そしてそれを告げる俺のマフラーが擬態を解いてまで
「何かくるですわ!?」
かくして無事前王の遭難に無事介入する事が出来たlord一行は騎士を払いつつ
サンラクを先導として夜の大樹海を歩く事になる。
「時にツチ…サンラクさん一つお聞きしたいんすけど…」
「ん?前王の護衛クエストならさっき話した通りだぞ?」
「あぁソッチじゃなく…
「は!?お前何で!?…マジで?」
「良かった、その反応って事はご本人なんすね。」
「…どっち側のどこだ?」
「一応ソッチのパンクロック担当っす」
「つまり俺達は」
「「同士」」
「っすね」
人の悪意に押しつぶされた忌まわしき過去のドブのような栄光は思いもよらぬ所で実を結ぶ。
lord一行
途中下車前提の介入(予定)。それなりに森の中を歩けたので予定通りではある。
実はこの日まで午後十字軍の連合パーティーに臨時で入っていたし
パーティー壊滅させられてキレた1人でもあったりする。
サンラク
何か知らん奴が降って来たと思えば三つ首ティラノに追い立てられた原作主人公。
以降少しの間lordと共に行動する。