「不意の助太刀もありましたが陛下並びに殿下、差し当たり逃げ切る事は出来ましたが目的地とは
真逆に逃げる事になりました、しばしアレらを避けながら歩く事に…都合により少々手荒な手段もやむを得ない可能性もございますが…」
「構わん。この状況、余とて贅沢は言わぬとも。」
前王がlordを一瞬視界に収めたのち数歩サンラクに近づいて感謝の意を述べた。
「仇討ちの刃よ…まず余と我が娘アーフィリアの命を救った事、褒めてつかわす。
ソチラの剣士も偶然の鉢合わせとはいえ助かった、その方にも感謝を。」
「己の道理を通したまでの事、感謝など木っ端開拓者には身に余る光栄っすよ」
「同じく、身に余る光栄を」
慣れない騎士プレイに多少ギクシャクするサンラク達に前王がその名を問う。
「その方ら、名を申せ」
「我ら仇討ちの名などあって無いような物ですが…サンラクと申します。コチラは…
ヴォーパルバニーのエムル、モンスターではありますが由緒ある相棒でございます。
詳しくは聖女様のほうが詳しいかと。」
前に乗り出した王女がサンラクに食い気味な感謝を述べている間にlordも自身の挨拶を
早々に、後ろの二人に目をやった。
「改めてlordハンド・ヒット、ロードと呼んで頂ければ幸いでございますっす。
後ろの彼らは小さいのがイーゼル大きいのがルブ、陛下殿下に置かれましては
亜人は知見にありますでしょうか?」
「うむ、いつぞやに
「アハハ…最初に邂逅するのが突飛な竜人とアラクネとは陛下も豪運といいますか…」
「むぅ、これもまた人‥‥愚息の思いも理解はできよう。」
全身にフジツボみたいな穴のあいたバケモンとデカイ蜘蛛のバケモンを
前王とて蟲人を見る前であれば不可能だった事だろう。
「これアーフィリア、そうあまり詰め寄るな今の状況を考えよ」
「お父様、申し訳ありません…つい」
「あ~その、何だ。ともかく御身らに相応しくない事は承知の上ですが、このまま数日
野宿の可能性もお覚悟いただきたい」
「うむ…今この命があるだけ贅沢というもの、仕方なかろう。」
「必要とあらば夜の番くらいは受け持つんで陛下らは安心して仮眠をお取り下さいっす。
その代わり呼んだら飛び起きてもらうっすけど」
尻の一つでもひっぱたいて起こすんでと付き加えたロードを見る3人の顔には
もっと方法あるだろと書かれていた。
「しかし特に身支度もなく結構な森奥まで来ちゃった訳っすが…どうしたもんすかね」
「理想はあの騎士団が三つ首ティラノとやりあって全滅してる事だが…イベントの性質からして
最低限の数は残るだろうな。」
「っすねぇ。自分らと違って前王らは夜目が効かないし差し当たり朝を待つっすか?」
「その前に夜をやりすごせるセーフゾーンの確保だな。獣は火でも焚けば…あぁいや駄目か」
「フクロウ擬きがいなければ火も焚けるし樹上で何とかなるんすけど…」
「サンラクさん、あそこの木のちょっと上の方気になるですわ」
「…OK、ロード」
「お手洗いっすね?了解っす、ちゃんとお手手は洗って来て欲しいっす」
…流石に早い。機動力特化ビルド、それもレベルダウン無しにここまでの速度を出せるのは
プレイヤーそのものの直感的な操作も関わって来る筈なのに…だ。
「さて陛下、突かぬ事をお伺いしますが陛下は亜人との友好条約などは考えておいでで?」
「率直な事は言えんが…知性があり言葉が通じ文化がある。であればそれは隣人たりえよう」
「その言葉が聞けて何より。実は森を抜けたかなり先に亜人の国がありまして、此度の難を
逃れた暁には不肖このロードを彼の国との取り持ちとして名指しして頂きたく…」
「ロードちゃん、流石に吹っ掛けすぎじゃないかしら?」
「なにいってんすかルブさん、国王に直接おねがい出来る機会なんて生涯あるかないかっす。
とは言え腹芸をするつもりも無いっすが…陛下?」
「その国とは貴殿の…ルブ殿とやらのか?」
「いえ、ケットシーの国キャッツェリアね。その方が色々都合がよさそうだもの。」
2~3考える前王を見ながらサンラクを待つロードの目に移ったのは空似向かって伸びては消えゆくスキルエフェクト。
「あの人何やってんすかね…」
「小便にしては遅いと思えば…アレは何を?」
「……あ、何かに掴まれてないかしら?」
ん~?ジタバタして?何かスイングして?ユラユラ…!?
「陛下!後ろへ!!」
少し奥のほうで鳴るスジンという衝撃音ともに響くギャーギャーとした鳴き声。
首チョンパではなく胴裂きのようだが…自分がいるからとはいえ王族の近くでそんな雑に
撃墜するのはどうなのだろうか…
サンラク
王女の顔に悶絶、気を紛らわすためにお花を摘みにいった。
lord
「これはある種の楔、何も王権をかざして欲しい訳じゃないっすよ」