「近くに王族もいるんだし余波くらい考えて欲しいんすけど…」
「それに関しちゃ悪かったって。でもお前らだって恐竜でるタイプのゲームで掴まれたら
暴れるだろ?」
「「そりゃまぁ…」」
「んで
「ん、方角はこのままでいいんだが…」
空から落ちて来た二つ首のプテラノドン擬きを撃墜したサンラクと共に森の中から出て来たこの男
名をトットリ・ザ・シマーネという。通称は確か”我らが勇者”とか何とか…エルフからも英雄扱いされているのは彼いわく弓の誤射が色々巡った結果だとかなんとか言っていた。
「何だよ歯切れわるいな」
「…トットリさん、今ログイン持続時間いくつっすか?」
あぁそういう事かと頷くサンラクはならば一度全員で落ちてログインし直そうと提案。
ソレに賛同はしたが同時にプレイヤーが一人もいなくなるのはマズイと判断したlordは
先に自分がログアウトし再ログインしてから二人が落ちる運びを提案した。
「時に陛下殿下、お二人に木登りの御経験などは…?」
「サンラクよ、王とは得てして斯様な場とは最も縁遠い者なのだ。」
「私も、お兄様なら訓練と称してやっていそうな物ですが…」
首を横にふる王女とお腹をペチっと軽く叩く前王を見ながらロードの率直な一言が二人を刺した。
「打ち首覚悟で言うっすがそのお腹とスカートで木に登れってのも酷っすよ。」
「本当に打ち首レベルの発言する奴がいるか馬鹿!」
「ロードとやら、歯に衣着せぬと先に申して負ったが多少は腹芸を覚える事を勧めるぞ?
相手が王族であるか以前の問題故な。」
エルフのスキルで出来たセーブポイントは樹上、つまり登らなきゃいけない訳だが…
前王の体重はまぁまぁ重い部類、お腹がペチっとなるくらいだ。
「ソレこっちに卸して頂戴~~~…ハイOK」
「おぉ流石アラクネの糸、強靭だな」
「フフ、実家にはもっと強い糸がだせる子もいるわよ?」
「へぇ…でもガタイは小さかったりするんだろ?」
「あら、アナタ詳しいのね?」
「親の影響でな…うん」
エルフが厳選した枝や蔦でカゴを編みルブの糸をワイヤー代わりに滑車の要領で上まで引っ張る。
束ねた糸の強靭さときたらブランコくらいは余裕だった。
因みに編み込んだのはイーゼル、大工の腕の見せ所らしい…糸を結うのは服飾ではないだろうか?
「あ、強制ログアウトの通知きたわ」
「あ~…ならサンラクさんに残ってもらっていいすかね?」
「いいぞ、俺はそこまで急ぎじゃないからな。」
思ったより長期ログインだったようでトットリが緊急のログアウトを迎えサンラクを残して一度
lordもログアウトする運びとなった。
「ふぃ~さてさて…」
ログアウトし現実へ期間したロード…否、
冷蔵庫のコーラに黒糖をぶち込んで飲み干した後、何重にもかけられた鍵を開けその中にあるPCを
立ち上げた。
「再履修は大事っすからねぇ…えーと3章っすよね確か…」
オンラインに繋ぐ機能を全て失ったそのPCに一つだけ存在するファイルの中には神が宿る。
シャンフロの創造神という名の神が。
文字を見ながら別のアプリに自力で打ち込んでコピーした時もあったが翌日にきれいさっぱり白紙になっていた、コレは門外不出…ここにこうしてある事だけを許されているのだろう。
とはいえ…
「ん、話数があわな…あぁ更新されてるんすか。」
前回開いた時と今回でファイリングされた物語の数が合わないという事はよくある…最近は半年に数回あるかどうかだがコレは終わった物語ではないのだ。
「まぁ最新話はその時になったら読むとして…あぁ
クワッドビートルだのドミニオンホーネットだのこのバッタだの、そういう本来小さい生き物が
やけに力をもっているのはきっと神の寵愛…性癖?なのだろうか。
「レベル解放はもう終わってるし、拠点のセーブできたらそこで解散…いや安全ルート作るって話だったっすか」
自分の目的は彼らについてくことではなくキャッツェリアに行く事。
彼らの目的は新大陸の拠点、つまり港まで戻る事であり噛みあってはいない。だが―――
「目的果たせたんでバイビーは流石にヤバイ奴っすよねぇ…仕方ない、腹くくるっすか。」
脳裏によぎるは”不義理”の3文字。
それは剣士としてのロールプレイとしては―――いささかバツが悪かった。
「………もしもし
こういう時は先駆者に聞くのが一番だ。もっとも殆ど答えちゃくれんが。
ログインし直したら既にトットリが戻って来ており…エルフをあやしていた。
「何があったんすか?」
「サンラクが俺等をまつ間に弓の作り方を聞いていたらしい。問題は…」
「ヒック…ヒック」
「質問っていうか恐喝されたと見ていいっすねコレは…まぁ彼らにも非はあるっすが」
「どこがだよ?」
「種族単位でヘタレっつっても神輿と仲良く喋ってる相手にこんだけ怯えるのは信用問題っすよ。ソレは『自分たちにはトットリがいるもん!』ってアンタを信用してないのと同義っす。」
「黄金の鱗は時のなんたら…じゃないかしら?」
「ルブさん、何すかそれ」
「今騒いでもどうにもならん、そういう事だ。」
…あれ?なだめられてる?何故?
「あぁいや別に怒ってるとかじゃなくて」
「「言い方の問題よ(だ)」」
「う、うす…」
あ、リュカオーンの呪いにNPCの反応が変わる効果があった様な・・・気のせいと言う事で。
「待たせたな」
「ほんじゃ行くっすか」
「陛下、道なき道ゆえ足元は御悪いでしょうが何卒…」
「構わぬ。難を過ぎ今後を考えれば必要である事など目に見えておるしな」
一日の殆どを城で暮らす割にタフネスがある前王であった。