ルナちゃんの衣装も手に入り、私の魔法少女としての活動を手伝ってもらうことになった、今日がその初陣だ。
私も賛成したけれどルナちゃんを戦いに巻き込んでしまうのは心苦しくもあった。
『俺が幸せな人生を歩むには……君が必要だ、だから俺は俺の為に君を手伝いたいダメかな?』
しかし、あんな言葉を言われたら断ることはできなかった。
自分の為に誰かを助けたいと思うその気持ちを否定するという事は自分の在り方を否定することと同じだから。
ルナちゃんに戦ってもらうというのは不安だ、自衛はできると言っていたし異世界での実戦経験もあるから心配は必要ないのかもしれない、でもこの世界の魔獣と戦った経験はないから過信してはいけないだろう。
私が素早く魔獣を倒してルナちゃんのところへ向かわないようにしないと……。
「どうでしょうか」
着替えを終えたルナちゃんを見る、先日購入した白い魔法少女衣装が本当によく似合っていて、首にかけている銀のロザリオも違和感なく馴染んでいる。
この衣装をネットで調べてもヒットしなかったことだけは疑問だけれど……似合ってるから良いかな!
「やっぱり凄い似合ってるね!ところでどうして敬語なの?」
「聖女としてのスイッチを入れたという表現が一番正しいでしょうか、この方が魔力の通りも良い気がするんです」
銀のロザリオを握りながらそう言ったルナちゃんは普段とは違い神聖なオーラを纏っている。
目の前にいるだけでも只者ではないと理解させられる、これが異世界の聖女様……。
「オーラが違うというか……何か凄いね」
「茜さんは……いやロゼさんは普段通りに接していただければと、この世界の私は聖女でも何でもありませんからね」
「わかった!」
「では参りましょうか」
魔法少女へと変身した私は、魔法協から送られてくる魔獣出現予測を元に、ルナちゃんと共に現場へ向かう。
このデータはそこそこの精度で魔獣の出現位置や時間、出現する魔獣の脅威度などがわかる便利な代物だ。
今回予測されている魔獣の脅威度であれば私一人でも討伐できるので、ルナちゃんのデビュー戦としては最適だと思う。
「来るよっ……!」
空から緑の肌をした鬼のような魔獣が現れる、あの日魔人が操っていた魔獣よりは強いが私一人でも倒せる魔獣だろう。
「ゴブリン……?見た目は向こうの魔物とあまり変わりませんね、まずは支援魔法をかけます」
「了解!って支援魔法?」
「身体能力を向上させる魔法です、聖女風に言うのであれば貴女に加護を授けましょう、といったところでしょうか」
ルナちゃんのロザリオが光ったと同時に私に力が流れ込んでくる、これは……。
「凄い!力が溢れてくる!」
魔力を込めて魔獣に殴りかかろうとするも想像以上のスピードが出てからぶり壁に突っ込む寸前で何とか止まる、身体能力が上がりすぎて制御が難しい。
止まった私に向かって魔獣が殴りかかってくるもののその拳は私に当たることはなく、壁に阻まれているかのように静止した、よく見ると薄い光の壁のようなものができている。
魔獣はそのまま光の壁を殴り続けているがびくともしない。
「この程度の攻撃であれば私の結界魔法で防ぐことは容易ですね」
ルナちゃんはとても得意げな様子だ、光の壁もおそらくルナちゃんの魔法だろう。
「この壁って解除できるの!?」
「もちろんです、傷ついても私が癒しますから思う存分戦ってください!」
私が魔獣から距離を取ったタイミングで光の壁が消える、光の壁を殴りつけていた魔獣はその場でバランスを崩してよろけた。
魔獣に向かって飛び掛かり魔力を込めた拳で殴りつける、拳に触れた魔獣が凄い勢いで吹っ飛んで消滅した。
今日の討伐はあっさりと終った、私一人であれば勝てはしたものの多少は傷を負ってしまっただろう。
「お見事です」
「ルナちゃんの支援魔法が凄いんだよ!ここまで強力だとは思ってなかった!慣れたら凄い戦いやすくなると思う!」
「これでも聖女ですからね、神聖魔法に関しては私の右に出る者は居ません」
回復魔法が使えるだけだと思っていたけど、こうも多種多様な魔法を使えるのであれば、ルナちゃんが何をできるのか把握する必要がある。
「神聖魔法?っていうのはどんなことができるの?」
「そういえば伝えていませんでしたね」
魔獣を討伐し終えた報告や帰り支度をしながらルナちゃんから使える魔法の説明をしてもらった。
私に使った支援魔法は様々な身体能力が上がる魔法を混ぜ合わせた魔法で、光の壁は物理的な物から概念的な物?まで遮断できる結界を張る魔法を狭い範囲に発動した物らしい。
他にも前に使った回復魔法や特殊なフィールドを作り上げる魔法、光を操る魔法などが使えて更には奥の手まで隠し持っていると教えてくれた。
魔法少女や魔人は固有魔法と呼ばれる、覚醒した時に手に入る一つの魔法しか使うことができない。
ルナちゃんのように多種多様な魔法を扱うというのは私達の常識からしたらあり得ない話だった。
異世界の魔法は術式の構成を学び、魔力の流し方を覚えて扱う物で、ルナちゃんが言うにはプログラミングに近く術式の組み方次第ではもっといろんなことができるみたいだ、魔法を学ぶ学園なんてものもあるらしい。
「ルナちゃんの魔法はやっぱり私たちの魔法とは別物だね、私たちは魔法を勉強したことなんてないし」
「おそらく根本的な仕組みから違うのでしょう、魔力が持つ性質も私の魔力とロゼさんの魔力では違うように感じます」
「魔法少女と魔獣の魔力は互いに打ち消し合う性質があるけど、ルナちゃんの魔力はどちらとも反応している様子はなかったからね、どっちも魔力と呼んでるけど別の物なのかな」
「この状況ミスティなら、一目見ただけで分析して答えを出せるのでしょうね……」
ルナちゃんは仲間の名前を出しては暗い表情を見せる時がある。
こういう時に何を言ってあげれば良いのかわからない。
「よし!ちゃんと報告もできたし帰ろっか!」
「そうですね、帰りましょう」
変身を解除し、私服に着替えたルナちゃんと共に帰っている途中、とある公園を見てルナちゃんが立ち止まった、仲間の名前を出した時や辛い過去を語った時以上に表情が暗い、何処か青ざめているようにも見える、初めて出会った時のルナちゃんと何処か重なるような表情で……。
「思ってたより近かったんだ……」
「ルナちゃん、大丈夫?」
「あ、いやなんでもない、大丈夫……遅くなっても良くないし早く帰ろう」
私に話しかけられるまで立ち止まっていることにも独り言を言っていることにも気付いていないように思えた。
ルナちゃんは私にまだ話していない何かがあるというのはここ数日一緒に過ごしていて薄々感じ取っていた。
家では日本のお風呂や電化製品を戸惑うことなく自然に扱えていたし、さっきは魔法をプログラミングに例えていた。
異世界から来たばかりにしてはこの世界に慣れ過ぎている。
それにルナちゃんが寝言で言っていた美咲という名前もルナちゃんの話には出てこなかった。
公園で見せた反応や独り言からある程度の推測はできる、きっと私に出会う前はこの近くで美咲という名前の人と共に居たのではないだろうか、そしてそこで深く傷つく何かが起きてしまったんだろう……。
心の傷を抉ることにしかならないから無理に聞き出そうとは思わない。
でもルナちゃんが話したいと思った時にちゃんと聞いてあげられるように。
話さなかったとしても心の傷を埋めてあげられるようにしたい、そう私は思った。
魔法少女プロフィールNo.1
魔法少女ロゼインパクト 本名:
固有魔法:『増幅』……自身の体や触れている物を対象に色々と増幅させることができる魔法、応用の利く魔法だが、本人は近接戦闘に用いることが多い。
魔力は増幅できないので魔力を増幅して無限増殖バグみたいなことはできない。
戦闘スタイル:身体能力、自己再生能力を増幅してステゴロで戦う前衛タイプ。
趣味:人助け。
メモ:本作のもう一人の主人公、ロゼインパクトの名は昔活躍していたとある魔法少女の影響を強く受けているらしい。