俺が茜さん……ロゼさんの手伝いを始めてから一週間ほど時間が経った。
いつも通り事前予測を頼りに待機していたんだけれども、待っていても現われることはなかった。
「最近、事前予測が外れることが増えているらしいんだよね、予測されたのに現われなかったり……」
俺とロゼさんの声しかしていなかった空間に着信音が鳴り響く。
ロゼさんの、魔法少女に配られている端末に連絡が入ったらしい。
「こういう風に予測とは違う場所に現われるって事も増えてるらしいんだ、ってことでちょっと遠いけど向かうよ!」
「わかりました、一般人に被害が出ていないと良いのですが」
ロゼさんに支援魔法をかけると同時にロゼさんは俺のことを抱えて走り出した。
抱えられて運ばれるというのは情けないと思う気持ちもあるけれど、これが効率の良い方法なので仕方がない。
ロゼさんと共に向かった先には、目玉のついた触手が大量に生えた肉塊のような魔獣が逃げ遅れたであろう小学生くらいの女の子に向かって触手を伸ばしているところだった。
「女の子が危ない!」
慌てて俺は結界魔法を女の子の前に展開する。
「間一髪でしたね、ロゼさん魔獣をお願いします、女の子は私が対応します」
「うん!わかった!」
魔獣を任せ怯えている女の子に駆け寄る。
「大丈夫ですよ、貴女の事は私が守りますから」
「お姉さんたちは魔法少女?」
「……そのようなものだと思っていただいて構いません」
「お願い!お母さんを助けて!さっきあの気持ち悪い奴に何かをかけられて……」
女の子が指を指した先を見ると、青白い顔の女性が倒れていた。
見たところ息はありそうだが……これはおそらく毒か。
「ロゼさん!そいつは毒か何かを持っているかもしれません!注意してください!」
「毒!?」
一応ロゼさんに伝えてから女の子を連れて女性の元へと向かう。
俺なら治すことは可能だと思うけれど……ここで一般人に回復魔法を見せて良いのだろうか、回復魔法を使える魔法少女は数が少ないらしい、そんな希少な魔法を使ったら後から正式な魔法少女ではなかったとバレてしまうのではないか?
もしばれてしまったら気味悪がられたり、魔人と間違われたりするのでは……?それに茜さんたちにも迷惑を……。
女の子が涙目で俺のことを見つめてくる。
ダメだな俺は、自分の事ばっかり考えて、目の前に泣いている女の子がいるんだ救えるだけの力があるのに救わない選択肢なんてない。
「安心してください、君のお母さんは私が助けますから」
少しでも安心できるようにと女の子の頭を撫でて微笑んでから、女性に触れて回復魔法を使う。
魔法による特殊な毒なのか解毒するのに少し時間はかかったが、無事に治す事ができた。
「これで大丈夫、少ししたら目を覚ますでしょう」
心配そうに女性を見つめる女の子から目を離して、ロゼさんの方を見る。
無数の触手をよけることはできているが、接近できていないようだ、遠距離攻撃の手段があれば楽になるんだろうけど……。
俺に直接的な戦闘能力はない、けど何か助ける方法があるかもしれない。
結界魔法……は細かい調整が効かないからこの場面では適さない。
触手と目が合い、こちらに緑の液体を飛ばしてくるものの結界に阻まれ俺達には届かない、攻撃が無駄だとわかるとまたロゼさんに向かいだした。
目か、目が存在しているという事は視界があるということだよな……?
「ロゼさん!魔力だけで敵の位置はわかりますか!?」
「え!?こいつなら多分わかると思う!」
「では目を瞑ったまま戦闘できますよね?」
「……難しいことを言うね!でもできるよ!」
「私が光で触手の視界を奪います、その隙に接近して倒してください!」
「わかった!やってみる!」
「ではいきます!」
結界魔法を調整しこちら側には影響が出ないようにしてから魔法で光を放つ、すると予想通り魔獣はロゼさんの位置がわからなくなったようで、触手の動きがめちゃくちゃな物へと変わる。
ロゼさんは目を閉じたまま不規則に振るわれる触手を華麗に交わし、魔獣の本体へと接近した。
「これで決める!」
ロゼさんが勢いをつけた拳で魔獣を殴りつけると、攻撃に耐えきれなかったのか魔獣が徐々に消滅していった。
魔物の消滅を確認してから光を消すと、ロゼさんがこちらに向かってきた。
「よし!これで倒せたね、触手に魔力を割いていたのか本体はそこまで硬くなかったよ」
そう言ったロゼさんを見ると紫色の液体が腕や脚に付着していた。
「ちょっと体を見せてください」
ロゼさんに触れ、魔力を流すと毒が少しだけ体に回っている事がわかる、魔法少女だからか大きなダメージにはなっていないけれど放置すると大変なので回復魔法を使って取り除く。
「これで毒はもう残っていないはずです」
「あ、回復魔法を……」
「そちらの方を助けるのにもう使ってしまいましたからね、今更気にする必要もないでしょう」
「あ、他にも被害者がいたんだ……」
「この子の母親らしいですよ、魔獣の毒に侵されていたので取り除きました、命の心配はないでしょう、軽率に回復魔法を使ってしまったのは……すいません」
「この人を助けるためにやったんでしょ?それなら何も悪いことじゃないよ!私もルナちゃんの状況なら同じことをすると思う!」
まぁロゼさんも同じことをするというのは容易に想像できるな、なんなら俺よりも迷わず行動しそうだし。
ロゼさんと会話をしていると倒れていた女性が目を覚ました。
「お母さん!生きてた!良かったぁ……」
「真衣!大丈夫!?魔獣は!?」
「大丈夫だよ!お姉さんたちが守ってくれたの!」
「お姉さん?あ、魔法少女の方々ですか!娘と私を助けてくれて本当にありがとうございます!」
「お姉さんたちありがとう!」
「ご無事で何よりです」
こうして生きて笑っている姿を見ていると、無事助けられて良かったと心から思う。
その後、俺は2人を安全な場所に送り届け、報告などの事後処理を終えた茜さんと共に帰路に就いた。
「今日はルナちゃんのおかげで2人を助けられたね!私だけだったら守りながら戦うなんてできなかったよ!」
「茜さんが魔獣を倒してくれたおかげでもあるよ」
「私が戦って、ルナちゃんが守る、私達って結構良いコンビなのかもね!」
良いコンビか……。
仲間とかパーティとかコンビとかこういった言葉は心地が良いものがある。
「ルナちゃん嬉しそうだね」
「良い響きだなって思ってね」
認められて自分の居場所ができた、そう思えるから心地が良いのかもしれない。
魔法少女ロゼインパクトと、聖女ルナの魔獣との戦いを、一人の魔人がとある廃墟から魔法で観察をしていた。
「最初は俺の獲物に手を出そうとしている魔人か何かだと思ってたんだが……なんだあいつは、おい!強い魔人ってのはいくつも魔法が使えるもんなのか!?」
魔人が大声を出すと、廃墟の奥からスーツ姿の男がやってくる。
「いえ、それはありませんよ魔人も魔法少女も一つの魔法しか扱えません、何故今更そのような常識を聞こうとしたのですか?」
「居たんだよ!複数の魔法を使う奴が!魔法少女のフリをしていたがあれは魔法少女じゃねぇ、多分魔人だ」
「へぇ……複数の魔法を扱う魔人……それは興味深いですね」
スーツ姿の男は不敵な笑みを浮かべていた。
「その魔人と戦ってきてください」
「はぁ!?なんでそんなことを!俺はロゼインパクトに仕返しがしたいだけだ!ロゼインパクトが1人でいるところを狙った方が……」
「お前に力を与えているのか誰か忘れたとは言わせませんよ、その力がなければロゼインパクトに復讐なんて夢のまた夢でしょう」
「わかった、やってやるよ」
「ええ、期待していますよ」
無理やり従わされる形になった魔人は大きく舌打ちをしてから廃墟を後にした。
魔法少女?プロフィールNo.2
本名:ルナ 前世の名前:
魔法:神聖魔法全般が使用可能、回復やバフに結界の生成など扱える魔法は多いがサポート用の魔法ばかりで攻撃的な能力を持った魔法は扱えない。
戦闘スタイル:基本は裏からのサポート役、前線でヘイトを集めて結界魔法で耐えるタンク役のような戦い方をすることもある。
好きな物:異世界の仲間達、前世の妹、茜、食事、お風呂
メモ:本作の主人公、異世界から転移してきた聖女であり魔法少女ではない。
話が進んだらどこかで掲示板回とか書いてみたい!って気持ちだけあります!