触手の魔獣と戦った翌日から数日間、魔獣の出現予測が外れる現象が続いた。
一般人の前で魔法を使う事にはなってしまったものの、何とか被害は出さずに対応できている。
ロゼさんの担当地域周辺で起きている現象らしく、魔人の関与も疑われているらしいが……。
これが続くといつかは一般人に被害が出てしまう可能性が高い、何とかしたいものだが打開策がない。
魔獣の出現が予測されている、廃工場へと向かう。
予測されていた時間になると、大きいカラスのような魔獣がその場に現われた。
「久々に予測が当たったね」
「予測が当たるというのは好ましい限りですが……」
何か嫌な予感がする……俺の気のせいなら良いが。
攻撃を仕掛けては高所に戻るという行為を繰り返している、そして何故か俺しか狙ってこない……。
「高くて攻撃が届かないよ!それにルナちゃんばっか狙うし!」
「私に手があります、しかし結界魔法を解除しなければならないので……」
「わかった!ルナちゃんのことは私が守るよ!」
「次に魔獣が結界に攻撃してきたタイミングで仕掛けます」
魔獣が結界に攻撃し、空へと戻ろうとするタイミングで結界魔法を解除して、魔獣を結界の中に閉じ込めるようにして結界を再展開する、魔獣は空へと戻る前に頭を結界にぶつけよろめいた。
結界の存在に気付いた魔獣がこちらに向けて再び攻撃しようとしてきたタイミングでロゼさんが魔獣に蹴りを入れ討伐が完了した。
「ルナちゃんありがとう!結界ってそういう使い方もできるんだね!」
「何かを通さない壁を作るイメージですからね、色々と使い道は多いです、便利な代わりに2つの結界を同時に生成することはできないんです、なのでロゼさんに守っていたたのは助かりました」
「ルナちゃんにできないことは私がカバーするから任せてよ!」
後処理をしてから帰ろう、そう思った時だった。
廃工場の奥から先日倒した触手と同タイプの魔獣に加えて、狼やゴブリンのような魔獣が十数体現われた。
嫌な予感が当たってしまったか……。
「この数の魔獣が!?」
「まずいですね、各個撃破するのが無難でしょうか……」
「私がルナちゃんと出会った日に魔獣を使役する魔人と戦ったんだよね……もしかしたらそいつかもしれない、気を付けて」
この魔獣たちが使役されていると考えるとある程度統率の取れた動きをしているのも頷ける、隔離して各個撃破しようとするも触手が上手いこと邪魔してきて結界が張りずらいっ!
これで隠れてるかもしれない魔人にも警戒しなきゃいけないんだから厄介だな……。
ロゼさんが接近戦しかできないのがきつい……。
「一度引いて上に連絡を入れるべきなのでは?」
「片手間に連絡を試みてるんだけど繋がらないんだよね!ここから出るかこいつらを倒すしかなさそう!」
通信妨害までしてくるとか用意周到だな……触手の魔獣も用意しているあたり、こちらの弱点も把握している可能性が高い、結構まずいかもしれない。
ロゼさんが触手の猛攻をかわしながら隙をみて他の魔獣を片づけているが、攻撃が激しく反撃も受けてしまっている。
回復魔法を飛ばしてサポートしているけれど、直接触れないと効率が悪く焼け石に水だ。
ロゼさんに向かって5本の触手が向かう、横方向から狼型の魔獣も攻撃してきていてかわせそうにない、俺の目の前ではゴブリン型の魔獣が結界を殴りつけてくる……。
守れるのはロゼさんか俺どちらかだけ、どちらを選ぶかは決まっている。
俺は結界魔法を解除して、ロゼさんと触手の間に結界を再展開した。
触手が結界に弾かれて余裕ができたロゼさんが狼型の魔獣を蹴り飛ばした。
目の前の結界が消え、ゴブリン型の魔獣が俺に殴りかかってくる、俺の身体能力ではかわせない。
腹部に鋭い痛みが走る、頭を狙われなかったのだけは良かったか。
流れに身を任せて吹き飛ばされ、距離が取れたところで結界を再展開、回復魔法で傷を癒す。
「ルナちゃん!?」
「平気ですよ、私には回復魔法があります、それに触手は毒を持っていますからね、ロゼさんがあの数の攻撃を食らうのは危険でしょう」
俺は元の身体能力が貧弱だから、支援魔法を使っていても、大した力も耐久力もないのが辛い、いかにも雑魚っぽい魔獣の攻撃を食らっただけでも大ダメージを受けてしまう。
けれど、痛いだけだ、回復魔法があるから数分我慢していれば治せる。
ロゼさんが傷つくよりも、自分で回復できる俺が傷つくほうが合理的だから。
敵を倒し終えたと思って、べらべらと結界魔法について話したのが失敗だった、間違いなく敵に聞かれていた、その弱点を突くように攻撃されている……。
少なくとも触手の魔獣と戦ってからのデータは取られていると考えて良いだろう、切り抜けるには今まで出してない手札を切るしかない、あれを上手く扱えればこの状況を打開できるか……?
「あまり見せたくはなかったのですが……仕方ありません、私も攻勢に出るとしましょうか」
ロゼさんに向けてウィンクをしてから光を光線のようにして放つ、触手の魔獣とロゼさんの間をどちらにも当たることなく通り過ぎた。
ロゼさんならきっと俺の意図を理解してくれるはず……!
ロゼさんは一瞬驚いた顔をしたものの頷いてくれた……!
この光線は当たっても何のダメージ与えられないブラフだ、けれど相手はそれを知らないからかわすしかない。
ロゼさんと俺の連携がはまったのか狼型とゴブリン型の魔獣を流れるように倒し終え、残りは触手の魔獣1体となった。
光線をいくつか放ち、触手の行動を制限する、光線に殺傷能力がないとわかっているロゼさんは光線を無視して一直線に魔獣の本体へと向かい殴りかかろうとした、が何かに弾かれたように後退した後、俺の元まで戻ってきた。
「やっぱりあの時の魔人……」
魔獣のいる方向を見ると、そこには両腕に長く大きい爪を付け、額には禍々しい角が生えた、異世界の魔族に似た特徴を持つ男が居た。
「久しぶりだなぁロゼインパクト、あの時の仕返しをしに来てやったぜ」
「今度こそ逃がさないから!」
「逃がさない……ねぇ勝てると思ってるのか?」
「あの時だって、私が勝ったようなものでしょ!それに今回はルナちゃんもいるから負けないよ!」
「ルナ……そこの魔法少女もどきの名前か、そいつは生け捕りにしろって言われてるんだよな……めんどくせぇ……」
ロゼさんが触手を掻い潜りながら魔人に向かって攻撃を仕掛ける、魔人も爪で受け流しながら反撃を仕掛けてくるがロゼさんには当たらない。
俺も光線を放ち触手の邪魔をするが先程までの戦いで光線に殺傷能力がない事はばれているので効果が薄い。
時々振るわれる触手が厄介だが、魔人の戦闘能力は俺の支援魔法を受けたロゼさんより低いので戦いが拮抗している。
ロゼさんの回し蹴りが当たり魔人が横に吹き飛ばされる、それに合わせて結界魔法を使い魔人の動きを一瞬止める。
少し動きが鈍った触手の合間を抜けてロゼさんが魔獣の本体を殴りつけ消滅させた。
「これで残りは貴方だけだね!前よりも強くなってるみたいだけど私達の方が強いから負けないよ!」
ロゼさんの言葉を聞いて魔人が急に笑い始める。
「無策で俺が出てくると思うか?」
ロゼさんが慌てたように自分の首元を叩く、と同時に俺の首元に痛みが走った……。
「ルナちゃん!」
ロゼさんが俺の近くに寄り、俺の首元を払う。
「小型の魔獣……こんな物を忍ばせていた……なんて……」
2人揃って毒を注入されたんだろう……これはまずい……。
奴は俺を生け捕りにすると言っていた、つまりこれは致死性の毒ではないだろう、おそらく麻痺か意識を奪う類の……。
ロゼさんの方が毒の回りが遅い、ロゼさんだけなら助けられる。
「後は任せました……」
ロゼさんに触れ回復魔法で毒を取り除く、毒を取り除き終えたのと同時に、俺の意識は遠のいていった。
ルナが強すぎると相方なんて誰でも良いのでは?とかルナだけいれば良いのでは?となりかねないのでバランス感覚が難しい……。
この戦いは次回で決着までつけたいとは思っています。