ルナちゃんと映画を観た翌日は家でアニメを見たりしながらゆっくり過ごした。
ルナちゃんは何故か昔のアニメを知っているし、買ったばかりのタブレットをすぐに使いこなしている、パソコンに関しては私よりも詳しそうだった。
これだけ重なれば偶然ではない、ルナちゃんは私と出会う前からこの世界のどこかで暮らしていたという予測は確信へと変わりつつある。
電子書籍を漁りながら「この漫画もう完結してたんだ!読まなきゃ……!」と言う姿を見たときは、ツッコむべきか悩んで数秒固まってしまった。
話を聞きたい気持ちももの凄くあるけれど、ルナちゃんの心の傷を抉りたくはない、だから頑張ってスルーすることにした、ツッコミたかったけど頑張って耐えた。
昔のことを気にせずに楽しく暮らせるのであればそれが一番だろうから。
そして映画を観てから3日後の今日、私がルナちゃんに見せたかった場所、数ヶ月前にオープンした魔法少女ミュージアムへとやってきた。
魔法少女に関連するものが展示されている施設で、既に引退している魔法少女のコーナーもある。
魔法少女のイメージ戦略の一環でもあり、法整備がされる前に活躍していた魔法少女への感謝と贖罪の意味もあるらしい。
ここにはルナちゃんにどうしても見せたい展示がある、あの魔法少女の事を知ってもらうならここの展示が一番だと思ったから。
入場料を払い中に入った私たちはパンフレットを見ながら回る場所を相談していた。
「色んなコーナがあるね、茜さんが見せたいものはどこにあるの?」
「この、5年前から4年前くらいに活躍してた魔法少女関係の所なんだけど、せっかくだから先に他のも見てみよう!何か気になる所とかある?」
「このコーナーが気になるかな、魔法少女の武器ってどんな感じだか気になるんだよね、茜さんは拳だし」
「このコーナーは武器以外にも魔法少女の衣装とかも見れるみたいだね、行こっか!」
案内通りに進んで目当てのコーナーに進む、するとそこにはクオリティの高い魔法少女の衣装や武器のレプリカが置いてあった。
「大鎌使いの魔法少女!?黒衣装に大鎌!?ブラッディエンペラー……カッコ良い」
「ブラッディエンペラーさんは3ヶ月くらい前に引退した先輩だね」
何度か会ったことがあるけど、独特な話し方をしていて理解するのが難しい人だったなぁ。
「引退しちゃってるんだ、残念だなぁ……」
「適齢期を過ぎたから引退を決意したみたいでね、でも長く戦ってた人だと思うよ」
「やっぱ魔法少女っていうくらいだから適齢期とかがあるんだね、大人になってても続けられるなら少女じゃないだろうし」
「12歳から15歳までが適齢期って言われてるね、それを過ぎると徐々に魔力が扱いづらくなるみたい、勿論個人差はあって早く衰える人もいれば高3でも活動してる人もいるけどね」
「ほとんどの魔法少女は中学生ってことかぁ……中学生が戦わなきゃいけないなんて大変な世界だよね」
「それはそうなんだけど、他に方法がないからね、それに私は戦う力があって良かったと思ってるよ!」
ルナちゃんは一瞬顔をしかめた後、再びブラッディエンペラーさんの衣装に目を向けた。
「ブラッディエンペラーは血を操る魔法を使えるんだ……凄いなぁ何から何までカッコ良い」
「強くてカッコ良いから魔法少女からも人気が高い先輩だったよ、強い魔獣が出るところに向かって*1色んな魔法少女を助けてたみたいだしね」
「行動までカッコ良いとか凄い……」
結構癖が強い先輩だったっていうのは黙っておこう、夢を壊しちゃうかもしれない。
「これは銃剣!?変形する武器もある!?魔法少女の武器想像以上に多種多様でカッコ良いなぁ」
その後もルナちゃんが楽しそうに、色んな魔法少女の武器を見ていた、カッコ良い武器に興奮してる姿は男の子みたいだ、見た目は華奢で可愛い女の子なんだけどね。
このコーナーを一通り見終わった後、私が見せたいコーナーへと向かう。
5年前から4年前あたりに活躍していた魔法少女の写真や、等身大パネルが展示されていて、当時の映像なども流れていた。
「これが一昔前に活躍してた魔法少女達かぁ、さっき武器や衣装を見た魔法少女達とはまた雰囲気が違うね、その時々のトレンドとかがあるのかな?」
「それもあると思うけど、この頃は魔法少女が少なかったから多様化してなかったのもあるんじゃないかな」
展示物からは暗い話は見えてこない、綺麗なところだけを展示している……でも。
「この頃の魔法少女は大変だったみたいなんだ、法も整備されてなくて報酬でも揉めていたし、一般人は魔法少女に助けてもらうのが当たり前だと思っていた、今みたいに事前に魔獣の発生を予測することもできなかったから……」
私は個人的にこの世代の魔法少女達を調べていたのである程度は事情を知っている。
当時はネットで魔法少女を叩くような人も多くて酷い環境だったらしく、この事態を重く見た政府の人達によって法が整備され、魔法協ができて今の環境になったようだ。
この世代の魔法少女達は良く言えば環境を変えるきっかけで、悪く言うなら環境を変えるための犠牲だった。
「魔法が無かった世界に魔獣や魔法少女という超常の存在が現れたとなると、そりゃ揉め事も起こるか……むしろ数年で今の形に纏められているのは凄いと思うけど」
「魔法協もイメージ戦略に力を入れたり色々と頑張ってるみたいだからね」
「歴史的な背景を考えるとそういう手段が必要なのも納得はできるかな……」
コーナーの奥へと進む、そこには私が見せたかった一人の魔法少女に関する展示があった。
「今日見せたかったのはこの魔法少女なんだ」
「スーパーノヴァインパクト……戦い方が茜さんに似てるね」
「私が憧れている魔法少女で、名前を決める時にこの人から取ったし、戦い方の参考にもしてるんだ」
「憧れたきっかけとかはあるの?」
「昔この人に助けて貰ったことがあるんだ、その時に憧れて、いつか魔法少女になって一緒に戦うって約束したんだ……けど」
「3年前から消息不明……ね」
当時は分かっていなかったことだけど、魔法少女に適齢期というものがあった。
消息不明になっていなかったとしても約束を果たせなかった可能性は高い、それでも魔法少女になった姿を見せて改めてお礼を言うくらいはしたかった……。
その後も展示を見ながらインパクトさんについて語った、ルナちゃんは茶化すことなく話を聞いてくれていた。
「皆の為に自分の魔法と拳で立ち向かうカッコ良い魔法少女なんだ、私はインパクトさんみたいな魔法少女になりたくて魔法少女になった、自分が人を助けたいから人を助けるっていう行動も、インパクトさんへの憧れから始めたことなんだよ」
「俺から見たら茜さんも十分カッコ良い魔法少女だけどね」
「そう思ってくれてるなら嬉しいな、でももっと強くなってもっと多くの人を助けられるようになりたいんだ」
「そっか、なら俺も茜さんと上手く連携できるようにならないと」
「私がやりたいだけだから無理して付き合わなくても良いんだよ?」
「無理なんてしてないよ、俺には茜さんは俺に色々な物を与えてくれた、だからそんな茜さんの力になりたいし支えたいんだ、それに俺が見てないところで無茶をして茜さんが居なくなったら俺は生きていけないからさ」
この子は幸せな人生を歩むのに私が必要とまで言ってくれるような子だからこういう反応になるのも理解できる、他にも頼れる人が居た方が健全だとは思うんだけど、この子の境遇を考えたらそれもすぐには難しいだろう。
それに支えたいと言ってくれるのは嬉しい、ルナちゃんの助けがあれば私ももっと強くなれる。
「支えてくれると言ってくれてありがとう、私ももっとうまく力を使えるように頑張るよ!」
インパクトさんについてルナちゃんに知ってもらうこともできたので今日はご飯を食べて帰った。
残りの休日は目立った出来事もなくゆっくり過ごし、休日明けの初日、ルナちゃんと共にお母さんに車に乗って、今後についての話を聞くことになった。