調査研究部に所属して初めて迎える週末、初仕事ということで俺達は灯さんの車に乗り、県外の都会とも田舎とも言えないような地域へと向かっていた。
夏休みが終わり茜さんが学校に通い始めたので、平日はオムニスさんの研究に付き合ったり、電子書籍やアニメを消化したりしていた。
年齢的には俺も義務教育を受けるべきなんだろうけどまだ戸籍もないからね。
出会ってからずっと一緒にいた茜さんと、離れる時間が多くなってしまったのは少し寂しかった。
車での移動中、魔法少女の活動と、学業をどうやって両立しているのか気になって尋ねてみたが、出席日数や成績面で優遇措置があったり、希望すれば学習のサポートも受けられるなど制度がしっかりしているので両立できるらしい。
魔法少女専用の通信制学校などもあるみたいだけど、茜さんは普通の学校に通っているそうだ。
魔法少女には高い収入もあるし、元魔法少女には就職先の斡旋などもしているみたいなので、真面目に学業に取り組む必要もないらしいけれど、それでも真面目に勉強をしているのは茜さんらしいというかなんというか……。
そのまま茜さんから学校生活の話などを聞いていると、車が目的地へとたどり着いた。
「現地で合流する子が……居たわね、あの子には魔法少女や魔人じゃないけれど魔法が使える子ってことだけ説明しておいたわ、信用はできる子よ……そうは見えないかもしれないけれど」
車を降りると近くにやってきたのは、黒髪のボブカットで右目が隠れた高校生くらいの女性だった。
「星野さん……この2人が新しく入った子達ですか?」
話し方や立ち振る舞いから気弱そうな印象を受ける。
「そうよ、こっちが娘の茜、もう一人が……」
「ルナです、よろしくお願いします」
「茜です、お願いします!」
「アルバイトの黒井真那、元魔法少女です!よ、よろしくお願いします!」
90度に曲がった綺麗なお辞儀だ、俺達の方が後輩なんだよね?
「私はここに連れていけって言われただけで仕事の内容まで聞いてないから後のことは、黒井さんにお任せするわね、私は別の仕事があるから戻らなきゃいけないけれど帰りには迎えにくるから、それまで茜のことを頼んだわよルナさん」
「はい、お任せください」
俺に頼むの?普通黒井さんに頼まないか?ある程度信頼してくれている証なんだろうけど複雑な気持ちだなぁ……。
灯さんと別れて軽い世間話をしながら黒井さんの後をついて行く、すると黒井さんが急に立ち止まってこちらに振り向いてきた。
「あ、あれを忘れてた……十六夜部長からお二人に渡してほしいと言われてているものがあるんです」
黒井さんがマイクのついたイヤホン型の機械を渡してくる。
「調査研究部全員に配られている仕事用の端末です、任務中部員と連絡を取りたいときに使ってください」
「ありがとうございます!」
「あと、ルナちゃんにはこれも」
茜さんが仕事中に使っていたような端末を渡される。
「魔法協の魔法少女や職員用の端末です、ルナちゃんは持ってないらしいので……」
「ありがとうございます、大切に使わせていただきますね」
「えと……これから行う調査の内容なんですが、この地域付近で事前予測もできず異様な特性を持った魔獣が多く見られているみたいで、来栖さんが魔獣の発見された位置を分析したところ、この先の森が怪しいらしいんですけど……」
森に向かって歩きながら話を聞いていると、茜さんが突如変身をした。
「魔獣の魔力を感じます!」
森の方向から現われたのは猫の様な見た目の魔獣、ロゼさんが殴りかかろうとしたのを黒井さんが止める。
「ここは私に任せてください」
黒井さんが手を前にかざすと、その姿が変わる。
髪の毛が伸びてその黒髪に紫のグラデーションがかかり、隠れていた右目も露わになる、隠されていた右目は左目とは違い赤い瞳だ。
「全盛期ほどじゃないけど、私も戦えるんですっ!」
そう言って駆け出した黒井さんの手には一振りの大鎌が握られていた。
「あの大鎌はっ……!」
黒井さんが襲い掛かってくる魔獣の攻撃を最小限の動きで受け流し、大鎌で魔獣に斬りかかる、すると魔獣は血を流しながら真っ二つになった。
戦いが終わったのを確認して俺は黒井さんに駆け寄る。
「その大鎌!ブラッディエンペラーさんですよね!カッコ良いです!まさかアルバイトの先輩がブラッディエンペラーさんだったなんて!」
「カッコ良いって言ってくれるのは嬉しい……!でも、私はもう引退しているのでブラッディエンペラーじゃなくて本名で読んでほしいです!前みたいな力もありませんから……」
「ブラッディエンペラーさんだったんですか!?変身してなかったから分かりませんでした!雰囲気も全然違いますし」
「えっと……ブラッディエンペラーだった頃の話は恥ずかしいというかなんというか……じゃなくて、調査を進めないと!2人共この魔獣のどこがおかしいか、わかりますか?」
大鎌に興奮して話が逸れてしまってた、これは失敗だ、これからの仕事で取り返そう。
「魔獣が消滅せずに血を流しているところでしょうか、普通の魔獣は倒されると消滅するはずです」
「そうなんです、魔獣は基本肉体が魔力で構成されていて、相反する魔力を持った魔法少女の攻撃を受けると消滅するという性質があるんですけど、この魔獣はそうではないんです……死体を調べたらしいのですが、実在する生物の特徴が確認できたみたいで……」
動いているところは少ししか見れていないので確証はないけれど、この魔獣は異世界で何度も見かけたアレによく似ている気がする。
「次に魔獣を見かけた際に拘束していただくことは可能でしょうか?少し調べたいことがあるんです」
「拘束!?私じゃ直ぐに殴り飛ばして倒しちゃうかも……」
「わ、私がやります!出力は落ちているけどこれくらいの魔獣なら私でも拘束できるはずです!」
「すいません、よろしくお願いします」
森の中に入り周囲を捜索していると、犬のような魔獣が現れる。
黒井さんが服から血袋を取り出し破くと、血が糸のようになり、魔獣を拘束した。
「弱い魔獣で良かったです、これならしばらく持つと思います」
魔獣を近くで観察する、本物の大型犬のように見える。
「お二人は流れている魔力でこれが魔獣だと判断しているのでしょうか?」
「うん!魔獣や魔人からは嫌な魔力を感じるからね!」
「魔法少女の魔力と魔獣の魔力は相反するもので過剰に反応し合うんです、なのでこれは魔獣で間違いないかと……」
大体理解した。
結論を出す為に試したいことがあったので2人に許可をもらい魔法を使う、魔力の込められた光で魔獣を照らしていく。
「やはり予想通りでしたか」
拘束から抜け出そうと藻掻いていた魔獣は浄化の光を浴びると途端に大人しくなり、その動きを止めた。
「魔獣の魔力が消えました……」
「ルナちゃんって攻撃できる魔法は使えないんじゃなかったっけ!?」
俺に攻撃手段がないのは事実、しかし一部の敵は例外だ。
「今私が使ったのは浄化魔法、穢れを取り除く魔法です、浄化魔法で活動を止めるという事はこれは魔獣ではありません」
「魔獣じゃないならこれは一体何なんですか?」
「これは
「という事はさっきの猫も……」
「どうして死体が死霊になっちゃったの?」
浄化する時に何者かの力が絡みついているのを感じた、この死霊は自然発生した物じゃない。
「正確なことは言えませんし、まだ仮説に過ぎませんが、この異変の裏には恐らく……」
「
正確に言うなら異世界の
俺が異世界で対峙してきた死霊術師は、陰湿でいやらしい奴が多かった、厄介なことにならなければ良いんだけれど……。
魔法少女プロフィールNo.4
(元)魔法少女ブラッディエンペラー 本名:
固有魔法:『♰
戦闘スタイル:大鎌を使った近接戦闘や、血の槍を使った中距離戦闘が得意、血を鎖のように変えて拘束をすることもできるオールラウンダー。現役時代に培った戦闘経験を活かして戦う。
好物:パフェ、ペットのネコ
メモ:深淵より出でし闇の支配者を自称している。実力の高い魔法少女だったが年を重ねたことで、衰えを感じ引退した。今は調査研究部のアルバイト、現役時代にしていた痛々しい言動は黒歴史だと思っている。