居場所をなくしたTS聖女は魔法少女と出会う   作:綺羅星瑠奈

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パワーバランスが難しい……。
主人公が強すぎてもなぁって気持ちもあるんですが、弱すぎてもそれはそれで違和感があるだろうしで悩ましい所です。
ちょっと長めかも。


16話『バレてしまった秘密』

 ロゼさんが魔人にトドメを刺そうとしていたがその場で固まっている、俺も動こうとするが体が動かない、金縛り!?

 回復魔法で体を治そうとするが、異常が感じられない。

 

「体が動かないっ……!」

 

 何かの魔法の効果を受けているのは間違いない、回復魔法で治せないという事は毒のような体に何かを仕込んで来る攻撃ではない、おそらく何らかの魔法をかけ続けることでこの状態を維持しているんだろう。

 結界魔法でロゼさんと自分を囲い、遮断できるものを可能な限り遮断していくと金縛りが解け体が動かせるようになった。

 これを仕掛けた相手はどこにいる……?

 それを知る前に結界を解除したらまた金縛りにあう可能性があるが……。

 周囲を観察していると魔人が誰かと会話している様子が見えた、魔人が見ている先は床……。

 

 何をしているか理解できた俺は結界魔法を解除し魔人に向けて光を放つ、光が収まると魔人の横には黒いフードを被った人物が現われた。

 

「最悪……相性が悪すぎる……ボスの命令が無かったらわざわざこんなところに出てこないんだけどな……」

 

 意識がしっかりしているあたり死霊ではない、魔人か?声は少女の声に聞こえるが……。

 

「ロゼさん!おそらくフードを被っている魔人は影に関する魔法を持っています!動きが止められたのもそのせいでしょう」

「そいつは魔人じゃなさそうだけど……とりあえず影に気を付けながら戦えば良いんだね!」

 

 魔人じゃなさそう?気になる発言ではあるが今は考えるのは後にして魔人を仕留めることにする。

 ロゼさんは魔人へと接近し、俺も黒井さんの邪魔をしない程度に光を放って援護する、ロゼさんの拳が当たり、魔人の頭以外を消滅させたその時だった。

 

 激しい振動が起こり、俺の目の前に全身血まみれで手足があらぬ方向へと曲がっている黒井さんが転がりこんできた。

 

「黒井さん!?」

「メイデンに角が……力が増して……耐えきれなくてごめ……んなさ……い」

 

 意識を失った黒井さんへと回復魔法をかける、ここまでボロボロだと全快するまでは少しだけ時間がかかるだろうか。

 

 角の生えたメイデンがロゼさんに攻撃をしかけるが、ロゼさんが上手く回避して当たることはない。

 しかし攻撃によって起こる衝撃波だけでもロゼさんがダメージを受けている。

 

「絶対当たったら不味いよ!というかこのままだと洞窟も危ないかもしれない!」

「ロゼさん一度こちらへ!」

 

 ルナさんが俺達の近くまで退いてきたところで結界を張る、メイデンの攻撃はかなり強力だが異世界でも殆ど破られなかった魔法だ、この程度では壊れない。

 しかし、地形へのダメージは避けられず徐々に洞窟が崩れていく。

 

「早くここを抜けないといけませんね、魔人達にはもう逃げられてしまったかもしれませんが」

「私が前回魔人を倒した時の力を制御しきれれば互角に戦えると思うんだけど……」

「私の魔法をロゼさんの魔法で増幅したんですよね……そうだ、その魔法で私の浄化魔法も効果を増幅できますか?」

「どうだろう、上手くイメージできればできるかもしれないけど……」

「黒井さんの回復も終えたことですし試してみましょう」

 

 浄化魔法の術式を組み、ロゼさんがイメージしやすいように浄化の光を銀のロザリオへと集めていく。

 魔力を練るのに集中しているとロゼさんが後ろから抱き着き、銀のロザリオを握りしめている俺の手に手を絡ませてきた。

 

「ロゼさん!?」

「私の魔法を使うには対象に触れる必要があるの、私に掛けられている魔法とかなら話は別なんだけど……」

「そ、そういうことでしたか……」

 

 ロゼさんと触れている場所から何かが流れ込んでくる感触がある、これが魔法少女の魔力だろうか。

 ロゼさんが魔力が流れ込んでくるにつれて、ロザリオに集めていた浄化の光が輝きを増していく。

 

「いきます」

 

 増幅された浄化の光をメイデンに向けて放つ、魔人が弱り制御が甘くなったのか力は強いものの動きは単調で光を当てるのは容易だった。

 

 メイデンを浄化の光が包み込むが、魔法少女の衣装がダメージを軽減しているのか浄化しきるには至らない、しかしメイデンの動きは鈍り攻撃の威力もかなり落ちている。

 

「これなら倒せそう!」

「リスクを取る必要はありません、もう一発浄化魔法を放って倒しきりましょう」

 

 もう一度浄化の光を集めようとしたところでメイデンの動きが急に止まり、変身が解除されて倒れこんだ。

 

「終わった……?」

「時間差で浄化されたのでしょうか、それとも術師の命が尽きた……?」

 

 魔人を追いかけたい気持ちもあるが、影という移動手段を持っている相手を今から追いかけても追いつくのは厳しい、それにさっきまでの戦闘でこの地下がいつ崩れてもおかしくないくらいには不安定になっているということで結界の中で待機して一度外と連絡を取ることにした。

 

 通信機で部長の十六夜さんに連絡して状況を伝えると、洞窟が崩落する可能性がありこのまま帰るのは危険ということで転移系の魔法を持った魔法少女を派遣してくれるそうで、それまで結界を張ったまま待機を続けて欲しいと指示された。

 魔人に関しては今から追っても無駄だという事で今回は諦めることになった。

 

 

 

 十六夜さんとの通話が終わると、倒れていた黒井さんが目を覚ます。

 

「私……死んで……うぇ!?生きてる!?というかこれどういう状況で……」

 

 大まかな状況を黒井さんに伝える。

 

「奴らを逃がしてしまったのは失態でした……」

「私もメイデンを抑えきれなかったから仕方ないですよ……」

 

 黒井さんがメイデンの遺体を複雑そうな表情で見つめている。

 俺はメイデンに寄り、角を回収した。

 

「前回は欠片だけでしたが今回は全部残っていますね、オムニスさんに調べてもらいましょう」 

 

 

 

 

 しばらく待機していると、十六夜さんから連絡が来て、俺達の目の前に巨大な門が現れた。

 巨大な門の中から水色の大きな帽子を被り大きな杖を持った少女が現れる。

 

「は~い、特殊派遣部*1のゲートリンカーです~、そちらの上司に依頼されてやってきました~、うわ、酷いですねこれ」

「結構派手に戦闘しましたからね……」

「ま、いいです、門を維持するのにも膨大な魔力を使うので、早く入っちゃってください~」

 

 

 ロゼさんと姉妹が混ざり合った遺体を回収しメイデンの遺体を抱えた黒井さんに続き門を潜る、するとそこは体育館くらいの大きさで、普通のオフィスのような壁や床をした空間だった。

 全員こちらに出てきたところで、リンカーさんが杖を上に掲げくるりと回す、すると門が徐々に薄れて消滅した。

 

「ふう、疲れました、アンカーがない所へ門を繋ぐのは苦労しますね」

「助かりました、ありがとうございます」

「いえ、これも仕事なので~」

 

 リンカーさんと別れ、この場所にも慣れていそうな黒井さんに着いて行く。

 ここは特殊派遣部の職場らしく、部屋の外に出ると働いている職員や魔法少女達の姿が見られた。

 道中で黒井さんの知り合いらしき女性にメイデン達の遺体を引き渡してから建物を離れた。

 その後少し歩くと調査研究部のある建物へとたどり着いた、さっきまでいた建物が本棟、調査研究部があるのが別棟らしい。

 体に異常がないかチェックされた後、細かい報告は後日という事で今日は解散となった。

 

 

 家に帰り今日のことについて話していると茜さんが1つの疑問を口にした。

 

「魔人がルナちゃんの正体が分かったって言っていたけど、異世界から来たことがバレちゃったのかな?それとも生き残るための嘘なのかな?」

「俺の正体……」

 

 異世界から来たことがバレたとは考えにくい、けれど相手は死者の魂を操る魔人だ、まだ茜さんに話していない、あれがバレた可能性がある……俺はこのまま隠し続けていて良いのだろうか?元男だという事を黙って接し続けているのは騙しているのと変わらないのではないか?それに苗字の話もある、ちゃんと過去と向き合うべきなのではないか?どうするべきか分からない。

 

 

 

 

 

 

 メイデンが倒れこむ少し前、洋館から少し離れた森の奥に魔人の頭を抱えた少女とスーツを着た男の姿があった。

 

「ボス、頭だけだけど回収してきた」

「ご苦労様です、頭だけですか、相手も手強かったようですね」

「相性が悪かった……魔人は影の中に入れられないし……」

「おい!こんな力を与えられるお前なら僕を助けることくらいできるだろう!?」

「その前に、あの魔人の正体とは?」

「先に助け……」

「早く話さないとこのまま消滅してしまいますよ?」

「わかった!話す!俺は魔法の特性上、死の匂いや魂に対して敏感なんだ!近くで見てわかったよ!あの女は僕のコレクション達と同じで既に一度死んでいる存在だ!」

「ほう、それだけですか?」

「あぁ!一度死んだ存在が何故あのような形で現世にいるのかは分からないが、これも貴重な情報だろう!?」

「それもそうですね」

「話したんだから早く助けてくれよ!」

「残念ながら、その状態から助かる方法はありませんよ」

「は?」

「貴方は私達の目的の為に使えそうな駒だったのですが……残念です」

「残念ですじゃな……」

 

 頭だけだった魔人は徐々に体が薄れていき、そのまま消滅した。

 

「これを駒にできなかったのは痛いですが、面白い情報を聞けました、やはりあの魔人は興味深い」

「ボスあの女は魔人じゃない……」

「おや、それは予想外でした」

「あれだけ近づいても何も感じなかったから……」

「まぁ魔人じゃなくても構いません、強力な回復魔法を含む複数の魔法に加えて、一度死んだ経験を持つ存在、彼女を手に入れれば私達の目標も達成へと近づくことでしょう」

 

*1:
他部署から連絡を受けて特殊な人材を派遣する部署、希少な回復系魔法や転移系魔法を持つ魔法少女も所属している




魔法少女プロフィールNO.7

魔法少女ゲートリンカー 本名:花咲(はなさき) 立華(りっか)

固有魔法:『転移門』……空間と空間を繋ぐ門を作り出すことができる、魔力を大量に使うので長時間の維持が難しく、複雑な演算が必要。

普段の仕事: 他部署から依頼を受けて、必要な人材を転移魔法で送り出す、基本的には魔法協の施設間を転移させることが多い。
 全国にある魔法協の施設には技術開発部がゲートリンカーの為に製作したアンカーが設置してあり、演算補助や消費魔力軽減の効果がある。

メモ:特殊派遣部所属の魔法少女、貴重な転移魔法持ちで、その中でも比較的扱いやすい部類である。
 仕事はそこそこ多いが、室内待機して門を繋ぐだけでかなりの額を稼げるので、美味しい仕事だと思っている。
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