俺の過去、元男であり転生したという事実を話すかどうかはずっと悩んでいる。
本当に今更な話ではあるが、元男であるという事を隠したままお風呂だなんだを共に過ごし続けているのは良いこととは言えない、まぁ異世界でもこのような経験は多かったので割り切っている部分ではあるけれど……。
元の自分への向き合い方がわからなかったから話していなかったというのは事実ではある、茜さんと出会ったばかりの俺は、
けれど今話すことを躊躇してしまう理由はそれだけじゃない、せっかく築いてきた関係が壊れてしまうんじゃないか、拒絶されてしまうんじゃないかと考えると、話すのが怖くなる。
茜さんなら信じてくれるだろうし受け入れてくれる可能性が高いと思う……。
怖い気持ちもあって悩みに悩んではいたが、最終的には茜さんに話したいと思った。
これは、話して楽になりたいという自己満足な部分もあるかもしれない……でも。
「ルナちゃん……?」
「俺さ、まだ茜さんに話していないことがあるんだ、聞いてくれるかな?」
「う、うん」
「実は俺……男なんだ」
「え!?嘘!?だって一緒にお風呂に!?え!?もしかして魔法で……?実は男の娘だったり?心の性別って奴?」
「あ、いや……えっと、違くてぇ……」
焦って、色々端折って話してしまったので、転生したということについて丁寧に説明する。
「あの魔人が言っていた俺の正体は、ハッタリじゃなければ多分転生のことだと思うんだ、異世界にいた死霊術師は死の匂いを感じ取ったり、魂を観測するのに長けている奴らが多かったから……」
「確かに死んだ人の魂を使ってるんだもんね、あり得るかも、それにしても転生って、アニメみたいなことが本当にあるんだね……」
「俺からしたら魔法少女もアニメみたいな物なんだけどね」
「そうだ、元が男の人ならルナちゃんじゃなくてルナさんって呼んだ方が良いのかな、それとも元の名前で……?」
「いや、茜さんの好きに呼んでくれて良いよ、今となってはルナって名前の方が馴染んでるし」
「じゃあルナちゃんで!ところどころ違和感はあったんだよね、異世界から来たにしてはこの世界のことを良く知ってるし、男の子っぽい所も多かったから」
「まぁ、あまり隠せてなかったかもしれないけど……でも隠してたことを怒ったり、男だったことを嫌ったりはしないの?」
「驚きはしたけど、嫌ったりはしないよ、ルナちゃんを助けたいと思ったのも、一緒に居たいと思っているのも、男女とか性別は関係ないし!それに体はちゃんと女の子みたいだしね」
「そっか……うん、ありがとう」
隠していたことを話したことで心が楽になった気がする、異世界で仲間に打ち明けた時もこんな気持ちだっただろうか……やっぱり自己満足な面はあるかもしれない、けど隠し事をしないで接することができるのはとても嬉しかった。
甘えてしまっているようで情けないけれど、ずっと頭の中の残っている事を吐き出したい、聞いてほしいと思ってしまった。
「ちょっと、暗い話なんだけど聞いてくれるかな……?」
「うん、いいよ」
「俺の妹、元妹って言った方が正しいかな、美咲って言うんだけれど、こっちに来てから会いに行ったんだ、でもこんな姿で魔法を使ったからか魔人と勘違いされちゃってね、その時は魔法少女や魔人がいるなんて知らなかったからさ……」
「魔法少女と関わりのない人からしたらそう見えちゃうね、魔法少女と魔人はお互いの魔力が反応するから、目の前にいたら分かるんだけど、そうじゃなかったら勘違いするのも仕方がないかも……」
やっぱそうなんだろうなぁ、コスプレ姿ならまだしも当時はローブを着ただけだったし。
むしろ魔法少女と魔人はお互いが見分けられるようで良かったというか、そうじゃなかったら茜さんとの関係もなかったかもしれないし……。
「私が一緒に行けば信じて貰えるんじゃないかな!魔法少女の言葉なら信憑性も増すと思うし!」
それは考えたことがあった、でも美咲の怯えと怒りが混ざったような表情を思い出すと……。
「迷惑だと思うし良いよ、美咲をこれ以上怖がらせたくないしさ……」
「そ、そっか……」
「今日は色々聞いてくれてありがとう、本当にいつも茜さんに助けられてるよ」
「全然話くらいならいつでも聞くよ!」
茜さんは俺のことをいつも気にかけてくれて、本当に良い人だ、俺も魔法でも何でも使えるものは使って茜さんに恩を返したい。
「本当にありがとう、俺の助けが必要なことがあれば茜さんも遠慮せず言ってね」
「うん!頼らせてもらうね!」
美咲か……もう会うことはないだろう、美咲の事を怯えさせて、あんな表情にしてしまった俺には会う資格なんてないだろうから……。
そんな話をした翌日、俺達は今回の戦いで得た情報を整理する為、調査研究部へとやってきていた。
「おはようございます、黒井さん体調の問題はありませんか?回復魔法で治したので大丈夫だとは思うのですが」
「大丈夫です、むしろ調子が良すぎるくらいかも……」
メンバー全員が揃ったところで、十六夜さんが話をし始める。
「今回の調査で得た情報を整理したい、まず掛け合わされていた2人の魔法少女だが数ヶ月前、行方不明になった魔法少女とDNAが一致していた」
「今回魔人が拠点にしてた洋館とは距離が離れてるね、死体を集めながら移動して最終的にあそこに住み着いたと考えるのが自然かな」
「おそらくな……洋館に残っていた他の死体も調べようとしているが、地形が崩れていてまだ時間がかかるだろう」
「次に魔人を手助けした影を操る少女だが、茜そいつは魔人じゃなかったんだな?」
「間違いないです!多分ルナちゃんと同じかもしくは……」
「魔法少女ですかね……メイデンの遺体が使われている時点で怪しいと思ってたんです」
「怪しいとは?」
「当時メイデンを倒した魔人に勝ったのは私です、私はメイデンの遺体を回収しました、それを魔法協の職員に渡したんです……」
「それは、内通者がいる可能性があるという事でしょうか」
その発言で全体の空気が重くなる、特に十六夜さんや灯さんは険しい表情をしているように見えた。
「魔法協側も覚醒した全ての魔法少女を把握しているわけではない、魔法少女が敵対していたというだけなら、野良の魔法少女という可能性もあったんだが……」
「アタシも内通者がいる可能性は高い思うな、前回茜ちゃん達が廃工場で魔人と戦闘した時も通信妨害を含んだ罠を事前に張っていたりと不可解な点は多かったからね、まぁそれだけなら事前の避難指示からある程度の予測はできたかもしれないけど」
「でも……何の目的があって魔人に協力なんて……」
「魔人が言っていたあの男、そして推定魔法少女が言っていたボス、何かを企んでいるとしたらその人物でしょうか」
「現状分かってるのは、魔人に何らかの力を与えていることと、魔法少女らしき協力者がいるってことくらいですね……」
「今わかることはこれくらいか……こちらでも内部を調べておく」
「私も、メイデンに関して当時の情報を洗ってみるわ」
「アタシはこの角の解析をしてみるよ、何か面白いことがわかるかもしれないし」
その後、死霊術師の魔人に関する情報も共有して今日は解散することになった。
現在は調査する必要のある事象もなく、魔人達との戦いで消耗したという事で、俺や茜さん、黒井さんはしばらく休むことになった、茜さんは休みの間も魔獣を倒したいと言っていたが、そこは回りが色々と理由をつけて止めていた。
「それにしても何が狙いなのかな、ルナちゃんのことも狙っているみたいだし」
「俺の力はこの世界からしたら異常だからね、それだけでも手に入れたくなる理由としては十分かもしれないけど」
「確かにそうだね、魔人と魔法少女の協力者が居るってことは、ルナちゃんがそのどちらでもないのに魔法が使えるってことはバレててもおかしくないし……」
しかし厄介な奴らに目を付けられた……また戦うことになる可能性は高い、次こそは出し抜かれないように対策を練らないと。
魔法少女協会の部署をいくつか、これで全てというわけではないですし必要があれば生えるかもしれません。
・調査研究部
魔法に関する研究、原因不明なイレギュラーの調査などを行っている。
魔法少女オムニスアイの特殊な魔法を活かす為に作られた。
・特殊派遣部
他部署から要請を受けて特殊な人材を派遣する。
回復系や転移系、幻覚など希少な魔法を持つ非戦闘員の魔法少女などが所属している。
・技術開発部
魔法少女や魔法協を支える技術を開発する。
物質生成系や解析系の魔法を持つ非戦闘員の魔法少女などが所属している。
・メディア戦略部
魔法少女や魔法協のイメージアップの為、広報活動を含めた施策を行っている。
一部のメディア露出の多い魔法少女や広報向きの魔法少女などが所属している。
・魔女狩部隊
噂は流れているが実在しているかは不明の部隊。
魔法を悪用してしまった魔法少女を捕獲、または処分するらしいが……。