前半は
今回の事件で回収された水晶をアタシの魔法『アカシック・アイ』で調べた結果、魔人の魔力を溜め込む性質があるという事が判明した、影使いの魔法少女達はおそらくこれで魔力を集めていたんだろう、しかし現場に残されていた水晶は一つだけだった、一つでは大した魔力を集めることはできないし意味があるとは思えない、これを量産していて複数個存在し既に回収されていると考えるのが自然だ、この素材であれば量産は可能だろうしね。
裏にいる人物や、魔力の貯められた水晶のありかを知られないよう、口封じをしようと魔人を討伐した、そう考えるのが自然だろう。
フロストエンプレスはどこまで状況を把握しているのかはわからないけれど。
おそらくアタシが調査の為にコンパスを作成していたのを相手は知っていて、アタシ達が魔人にたどり着く前に処理をしようとしたんだろう、それを知っている人物は調査研究部のメンバーと技術開発部の知り合い2人だけ、この中に内通者が潜んでいる可能性が高い。
そしてアタシの魔法で水晶に使われている素材も解析できている、この素材を生み出せる魔法少女をアタシは一人しか知らない、他にもいる可能性は高いけれど、一人目の内通者は彼女に違いない……。
素材だけであれば、他の人物に横領された可能性もあったけれど、水晶に使われている技術も含めて考えると十中八九黒だと思う、昔から知っている仲だからそうだと思いたくはなかったけれど……。
今日調査研究部に出てきているのは黒井さんと部長だけ、灯さんは休暇を取っていて、茜ちゃんは学校、手が空いていたルナちゃんは特殊派遣部のホーリーベルに依頼されて治療の手伝いに*1行っていたはずだ。
とりあえず今いる部長と黒井さんに事情を話すことにした。
「スピカアルケミストさん……ですか?私は関りがないので知らない魔法少女ですね」
「スピカアルケミストは技術開発部に所属する魔法少女で、物質を変換できる魔法を持っている」
「そしてアタシの幼馴染だよ」
「幼馴染ですか……」
信じたくはないが、アタシが得た情報がどれも彼女の事を示している。
「とはいえ内通者はそいつだけじゃないだろうな、そいつの立場じゃバーサクメイデンの死体を入手できない、おそらく上層部にいる魔法少女以外の大人も関わっているだろう、フロストエンプレスに今回の指示を出した奴が怪しいと思って調べていたんだが……」
「どうだった?」
「ダメだな、アルバイトとしての許可は正式に出ているが、どこの管轄かは情報が秘匿されていてわからなかった」
「秘匿ですか……十六夜さんの立場でも調べられないなんて組織の体制として問題はないんですかね……?」
「……まぁこういうのはややこしいんだよ、もっと上へ掛け合おうとも考えているが、灯に頼まれてルナをここに所属させた時に俺も色々とやってるから人の事を言える立場ではなくてな……」
全てを聞いているわけではないけれど伝えられている情報だけでもルナちゃんが特殊な存在であるというのはわかる。
戸籍を持たず、流暢に日本語を話すことのできる外国人*2であり、魔法少女や魔人とは全く違う仕組みで動く魔法を使う特異な存在、その上アタシの魔法で解析しても情報がほとんど得られない。
そんな人物を秘密裏にこの調査研究部へと所属させ戸籍まで用意するというのは、引退した魔法少女を情報を秘匿しながらアルバイトとして雇うよりも難易度が高いだろう。
部長がそれを通せるという事は、部長と同等以上の権限がある人物であればフロストエンプレスを隠れて雇うぐらいなら簡単にできるという事になる。
「逆に聞きたいんですけど、どれくらいの立場なら隠れてエンプレスさんを雇うことができるんですか?」
「俺と同じくらいの立場は必要だろうな、要するに部署のトップを任されるくらいの権限は必要ってことだ」
そのレベルとなると数は絞られるが迂闊に手を出し辛いのは厄介だ、ある程度の証拠を揃える必要が出てくる。
「現状怪しいのは、部長以上の上層部とフロストエンプレス、ほぼほぼ黒なのがスピカ……かぁ」
「技術開発部にあまり情報を流さないようにしたいところだが、関わりを断つということもできないしな、スピカアルケミストを捕らえるのも考えたが上層部の内通者が誰かわかるまでは手が出しにくい……もう少し直接的な証拠を得たいところだ」
アタシの魔法だと客観的な証拠としては弱いのが欠点だなぁ、他人に証明する手段がない、魔法少女を悪であると告発する為にはある程度の証拠がないと難しいだろう。
「まぁ今回は相手がボロを出してくれたおかげで内通者の正体が見えてきた、後は証拠を見つけるだけってことだな!今日いない奴らにも後で共有しておく」
「そ、そうですね!」
「ん、よろしく」
K県M市H山付近の地下、魔力を遮断する特殊な建材で囲われた施設の中に黒いスーツの男と、影使いの魔法少女、フロストエンプレスを含めた4人の魔法少女が集まっている、そこには氷漬けにされた少女の遺体がいくつか並べられていた。
一人の魔法少女はいびきをかきながら眠っているが、それを無視してフロストエンプレスが話を始める。
「……最近派手に動きすぎですわよ、今回ももう少し対処が遅れていたらここにたどり着かれていましたわ」
「私に……いえ私達に残された時間は残り僅かです、リスクを承知で動かなければならない段階だということは貴女自身が一番わかっているのではないですか?」
「それは……そうですが……」
二人の会話を聞いていた、灰色のショートヘアで水色のロングコートのような衣装を着た少女、魔法少女スピカアルケミストが口を挟む。
「今回の件で未来やあそこの部長は何か勘づいていると思うよ、少なくともボクは間違いなく疑われているだろうね……あの二人は優秀だから」
「ですがあちらにも後ろめたい事がありますからね、決定的な証拠でもなければ強気に動くことはできないでしょう」
「まぁボクとしてはあいつらと戦うことになっても構わないんだけど……」
「私達の目的に魔法少女との敵対は必須ではありませんから出来る限り無駄な争いは避けるべきでしょう、今回もあちらと敵対した結果大事な駒を失う事になってしまいましたからね」
「まぁボクはボスの方針に従うよ、好き放題させてもらってるわけだしね」
「ええ、それでは実験を次の段階に進めるとしましょうか」
「……」
「実験台に使うのは……彼女が良いでしょう、お願いできますね?フロストエンプレスさん」
そう言いながら男は懐から注射器を取り出した。
「……わかりましたわ」
フロストエンプレスは男から注射器を受け取り、そのまま腕へと打ち込む、ふらついて倒れそうになるものの、氷の壁を作り出し支えにすることで耐えたようだ。
「やっぱり体への負担が凄いね、ボクがもっと優秀なら負担も完璧に取り除けたんだろうけど……」
「いえ、スピカさんは良くやってくれていますわ、元の薬を使った時は3日ほど寝込む必要がありましたから……」
そう言ったフロストエンプレスはとても苦しそうで、肩で息をしながらその場で立ち続けている。
しばらくして、動けるようになったフロストエンプレスは氷漬けにされた少女の遺体に魔法をかけ直した後、一つの遺体に触れ魔法を解除した。
魔法少女プロフィールNo.11
魔法少女スピカアルケミスト 本名:
固有魔法:『錬金』……物質の変換や多少であれば生成も可能な能力、技術開発部の作り出した物の中にはこの能力を使って生み出した素材を使っている物が複数存在する。
普段の仕事:技術開発部で素材の生成や、研究開発を行っている。
休日の過ごし方:読書や勉強をしている。
メモ:技術開発部所属の、技術開発部内では魔法少女アルテマクリエイターに次いで優秀だと言われている魔法少女。
努力家で優秀。
来栖未来とは幼馴染で、共に研究や開発に携わっていたこともある。
この章はこれでラストです!
閑話や挟めそうなら掲示板回とかを挟んで次章『転校生のTS聖女は魔法少女の憧れと対峙する』(タイトルは予定)に入ろうと思っています!