居場所をなくしたTS聖女は魔法少女と出会う   作:綺羅星瑠奈

4 / 18
勇者パーティの天才魔法使いミスティ視点のお話。


閑話『ワタシはキミの幸せを祈っている』

 この世界には彼女の居場所がない、ワタシ達では用意してあげることができなかった、彼女を守れるだけの力がなかったことが不甲斐なくて仕方がない。

 

 ワタシがした選択は正しかったのだろうか、無理やりにでも連れ出して匿うべきだったのではないだろうか。

 理解はしている、勇者パーティの仲間達がいくら強いとはいえ、聖教の象徴である聖女として世界中から敵視されている彼女を長期間匿い続けるのは難しいということは。

 

 未だに何か他にも方法があったのではないかと思わずにはいられない。

 

 

 

 

 

 勇者パーティに教会から派遣された聖女『ルナ』、月の女神の恩寵を強く受けているとされる彼女は、莫大な魔力を持った神聖魔法使いであると同時に、前世の記憶を持っているという稀有な存在だ。

 

 

 そんな彼女と共に魔王を討伐したワタシ達は、その後それぞれの道を歩んだ、ワタシは山奥の小屋に籠り魔法の研究に明け暮れていたし、エリオ*1とレイナ*2は辺境で新婚生活を満喫していたという、違う道を歩んでいたとしても平和な世界であれば再会の機会などいくらでもある、ワタシ達はそう思っていた。

 

 誰かが、ルナの傍に居れば、それができなくても教会の動向にもっと早く目を向けていれば、このような最悪の事態になる前に手が打てていたのではないか、この惨状に気付かず山奥に引きこもっていた事を後悔しない日はない。

 

 

 前世の記憶があるとはいえ12歳の少女が聖女という肩書を背負わされ、魔王との命を懸けた戦いに参加し、平和になった世界を見ることもなく軟禁された。

 ワタシが異世界へと送り出さなければ、このまま暴走した大人たちの罪を背負い断罪されていただろう、そんな悲しい運命があって良いのだろうか。

 

 魔王を倒し世界が平和になったら、外の世界を見て回り、自分の居場所を見つけたいと言っていたルナはもうこの世界にはいない。

 ルナともっと話したかった、ルナと笑いあいたかった、しかしそれはもう叶わない願いになってしまった、ワタシがそうしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 ルナが異世界へと旅立った事を知るのは勇者パーティの3人だけだ。

 対外的にはワタシがルナを殺したということになっている。

 

 ルナを除く勇者パーティの3人は教会を解体する為の戦いにおける功労者であり、聖教の象徴である聖女を打倒した英雄だとされている。

 ここまで嬉しくない評価というのも珍しい、しかしこの選択をした以上受け入れるしかないのだろう。

 

 ルナは悪くなかったと、肩書を利用されていただけだと主張したい、しかし彼女の友人であるワタシ達が言うだけでは世論は変わらない、それを主張してワタシ達の立場が悪くなることを、ルナは望まない。

 この件に関しては、3人で揉めたが、最終的にはルナのことを知り信じている人にだけこっそりと真実を告げ、世間には主張しないと決めた、その過程でエリオとは本気の決闘をすることになったが……。

 

 

 

 

 

 

 ルナが旅立ってから数ヶ月が経った今でも、彼女を送り出した日のことを毎日のように思い出す。

 

 

『…………その魔法を俺に教えてもらったとしても無理なのか?』

 悲しげな表情でルナがワタシに投げかけた問い、彼女は答えが理解できている上でダメもとで聞いてきた、この世界に未練があったんだろう、本当はこの世界で生きていたかったのかもしれない、ワタシ達と離れるのが嫌だった可能性もある。

 

 

『俺、元の世界に戻れるのが結構楽しみだったりするんだ、向こうに残していった人達にも会いたいし、久しぶりに食べたい料理や、続きが気になる娯楽小説だってある、戻れる機会をくれるミスティに感謝してるんだよ』

 

 ルナは別れ際に震えた声でそう言っていた、ワタシ達に心配をかけないようにそう言ったんだろう。

 娯楽小説が未だに残っている保証はない、残っていたとしてもルナが手に入れられるかはわからない。

 食べたい料理を食べれる保証はない、孤児として放り出された過去のように、食事にありつけず彷徨う日々を送るのかもしれない。

 

 向こうに残していった人達に会える保証はない……いや会えないほうが良いのかもしれない、ルナは前世とは姿が大きく変わってしまっているらしい、同一人物だと認識してくれる可能性は高くはない……元の家族や友人に再会し、別人として見られ信じてもらえず深く傷つくことになるかもしれない。

 

 ルナのことを考えると嫌な想像が止まらなくなってしまう。

 

 

 

『後悔するんじゃなくて、送り出して良かったと思って欲しい』

 ルナはそう願った。

 元の世界に帰す事で、ルナをより辛い環境に送ってしまったのではないか、そう思ってしまう自分もいる、けれど彼女の想いを無駄にしない為にもワタシ達は前を向かなきゃいけないだろう。

 きっと彼女は向こうの世界で幸せに暮らしている、あの日送り出すことができて良かったのだと……。

 

 

『今までありがとうミスティ、皆の仲間で居られて、ありのままの俺を受け入れてもらえて本当に嬉しかった 』

 

 ワタシもルナと出会えてよかった、もっとありのままのキミを見せてほしかった……。

 

 もうこの世界でワタシがルナのためにできることは残されていないのだろう。

 だからワタシは祈り続ける。

 

 彼女にこれ以上辛いことが起きないように。

 彼女が自分の身を犠牲にしてしまわないように。

 彼女が平穏な日々を過ごせるように。

 

 

 

 ルナを送り出したその日からワタシの想いは変わらない。

 

「これからのキミの人生が幸せであるように、良い人に巡り会い、新たな居場所を見つけられるように祈っている」

 

 

 

 

 

 

 さて、そろそろワタシも前を向いて魔法の研究をしなければならないな、魂の繋がりがない異世界への転移……は難しいにしても、観測くらいであれば…。

 

*1
勇者

*2
勇者パーティの女騎士




頑張れば世界渡ることができるかもしれないフラグは立てていますが、ルナ以外に異世界から現代に誰かが来る予定はないです。

幸せを祈られた言葉が頭をよぎって、生きているのが辛いのに死ぬ選択肢も取れないというのが好きなんですよね。
祝が呪になるっていう。
ルナにとってミスティが最後に残した言葉は間違いなくこの類ですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。