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中学に入ってからしばらくの時が経った、ここ最近は調査研究部の仕事が殆ど無い。
オムニスさんや十六夜さんから見てもここまで仕事が無いというのは珍しい事らしい。
たまにオムニスさんの研究を手伝うことはあるけれど、最近は調査研究部にいる時間よりホーリーベルさんの手伝いとして治療をする時間の方が長くなっているくらいだ。
治療に関しても特殊派遣部に直接所属している人と比べると忙しくはないので、休みは多いが学校にも通えている。
積極的に話しかけてくれる上にホーリーベルさんという共通の話題*1がある金森さんとは自然に仲良くなり、そこに茜さんと篠宮さんを加えた4人で過ごす時間が増えた。
今度4人で遊びに行く約束もしていて、友人として健全な関係を築けていると思う。
対等な友人を作ることができたのは想像していたよりも嬉しくて、流される形ではあったけれど茜さんと同じ中学校に通うことにして良かったと今では思っている。
今日は珍しく茜さんだけが仕事の為、俺一人で学校へとやってきた。
茜さんの固有魔法である『増幅』をオムニスさんが研究に使いたいらしく、俺も行くと言ったけれど、今日は俺の協力が必要な研究はしないと断られた。
俺もホーリーベルさんの治療を手伝う時に付いてくると言った茜さんを、学校を優先して欲しいと言って断った事がある為、無理を言って付いて行く事はできなかった。
「小鳥遊さん!ごきげんようですわ!」
「おはよ、茜だけ居ないなんて珍しいね」
「おはようございます、今日の仕事は私に出来ることがないようでしたので……」
そのまま授業を受けているんだけれど……前の席が空いてるってだけで寂しく感じる物なんだね。
学校に一緒に通うようになって今まで以上に長く一緒に居るからそう感じるのだろうか、自分が仕事をしている時なら割り切れるんだけど……。
そのまま授業を終えた昼休み、金森さん達と話しているとクラスメイトの御影さんが俺に話しかけてきた。
俺が仕事で欠席しがちなのに加えて、御影さんも体調不良による欠席が多いので、顔を合わせることだけでも珍しい。
こうやって直接話すのは初めてだろうか。
「小鳥遊ルナ、ちょっと聞きたいことがある……付いてきて」
「え……?」
「…………」
御影さんが扉の前に立って黙ってこちらを見つめている、付いてこいってことなんだろうけど……。
「……すいません何やら私に用があるみたいなので御影さんに付いて行きますね」
「う、うん、気を付けてね」
「いってらっしゃいませ」
黙々と歩き続ける御影さんの後ろを付いて行っているけれど……。
「何処に……?」
「……あまり他人には聞かれたくない場所」
怖いよ!なんなの?他人に聞かれたくない場所ってどこよ!?
最終的にたどり着いた先は屋上だった、辺りには誰もいない。
そりゃそうだよね、扉に立ち入り禁止って書いてあったもんね、そもそも立ち入り禁止なのに鍵が開いているのは不用心じゃないか?
「あの……立ち入り禁止らしいのですが……」
「だから、人が少なくて良い……」
「……そ、そうですか」
何なんだこの子、何が聞きたくてここに呼んだんだ?
「聞きたいことなんだけど……星野茜とはどういう関係……?」
「……え?」
「……小鳥遊ルナは昔の私に似ている……気がする、そして星野茜は……」
声はふざけているようには聞こえない、雰囲気からして真面目な話だろうか。
それなら俺も真剣に答える必要がありそうだな。
「茜さんとの関係ですか……私から見た茜さんは私の事を救ってくれた人であると同時に、私を引っ張ってくれる人でしょうか、彼女が居なければ今の私はなかったと言っても過言ではないでしょう、それくらいには大切な存在です、この関係を言葉で表すなら……何なんでしょうね?」
恩人?ただの恩人で済ませられる関係か?友人……も軽過ぎる気がする、一緒に住んでこそいるが家族も違う気がする……。
「引っ張ってくれる人……大丈夫、星野茜が大事な人だというのは伝わってきた」
これが聞きたかったからここまで呼んだのか?雰囲気的に真面目な話では合ったんだろうが……。
「もし星野茜が、死んでしまったらどうする……?」
「は?」
何を言ってるんだ?冗談にしても質が悪い ぞ。
「大切な人が死んで……その人を蘇らせることができるかもしれないとしたら……どうする?」
難しい質問を投げかけてきたな、これが本題なんだろうか。
俺が回復魔法を使えることを知ってこの質問をしてきたのかな?でも俺の回復魔法では死者蘇生まではできないしなぁ……。
「人を蘇らせることは、不可能に近いです、出来たとしても方法によっては、不完全な物であったり、見た目だけ同じな別人になってしまったりする可能性もあるでしょう」
少なくとも異世界においては完全な死者蘇生というのは不可能に近い。
似たような物であれば
俺が本気で神聖魔法を使えば体だけは何とかなる、けれど体が死んだ時点で魂が体から離れてしまうから意味がない。
死霊術と神聖魔法を組み合わせれば可能に思えるかもしれないが、この2つは相性が悪く共存することはほぼ不可能だからな……。
一つだけ方法はあるが、時間が経過するにつれて魂の形が崩れてしまう為、死後一時間以内に使わなければ蘇生は不可能というのがミスティが出した結論だ。
逆に言えば一時間以内なら蘇生は可能なんだけど……この世界では使えないからなぁ……。
この世界の魔法であれば出来るという可能性はゼロではない、しかし魔法少女が持つ回復魔法の平均的なスペックから考えても、そこまで強力な魔法が生まれるとは思い難い。
「……その方法があるかもしれない、それを実現する為には見ず知らずの誰かを巻き込み犠牲にしなければいけない……そう言われたらどうする?」
……その状況であれば俺はどうするんだろうか。
俺は大切な人との別れであれば経験してきたが、大切な人の死は経験が無い。
視点を変えよう、俺は一度死んだことがある、美咲や両親、友人達が誰かを犠牲にして俺を蘇らせたとして、俺は嬉しいだろうか……嬉しくはない。
家族や友人にそのような事に手を染めてほしくはなかった、そう思うだろう、本人を責めたりはしないけれども。
それを踏まえたうえで自分はどうするか……。
「即決はしませんが、実行に移すかどうか検討はするでしょうね、その手段が現実的であれば手を出すかもしれません」
「理性的だね」
「実際に親しい人を失ったわけではありませんからね、現実でそのような出来事が起きた場合はまた違った回答をするかもしれません」
むしろ現実で起こったわけでもないのに、この答えを出している時点で理性的かどうかは怪しいと思う。
茜さんや美咲が死んでしまったら俺は間違いなく冷静ではいられない。
そんな状況で蘇生の可能性を提示されたら食いつかずにいられるだろうか、まぁ無理だ。
俺は茜さんがいなくなった孤独に耐えられる気がしないし、美咲が死んでしまった現実に向き合える気もしない。
本当に蘇生が出来るのなら他人を犠牲にするとしても縋ってしまうだろう。
「私は……同じ状況なら……他人を犠牲にしてでも蘇らせる」
「私は貴女の考えを否定も肯定もしませんよ、一般的に見れば褒められたことではないでしょうけれど」
「そう……」
長話しすぎたな。
「そろそろ昼休みも終わってしまいますし、他に話が無いようであれば教室に戻りましょうか」
「うん、もうない……付き合ってもらって悪かった」
「いえ、これくらいであれば構いませんよ」
「不可能に近い……不可能だと断定はしなかった」
ちょっと色々考えて疲れたなぁ、まぁ後ちょっと授業受ければ今日は終わりだし、頑張りますかぁ……。
などと呑気に考えていた俺の耳に、御影さんが呟いた言葉は届かなかった。
一応ミスティとルナの魔法を組み合わせることで死後一時間以内なら蘇生は理論上可能、しかし実際に行う機会は無かったという感じですね。
ルナ単体ではどう頑張っても蘇生はできないといった感じですね。
死んだ事によって体から抜けてしまった魂を再び体に入れることがルナの力ではできないみたいなイメージです。