俺達は灯さんに対して俺が茜さんの魔法少女としての活動を手伝えないか交渉していた。
「それで、ルナさんが茜の手伝いをしたいってことなのね?」
「はい、私は回復魔法を含め幾つかの魔法を使えるので茜さんの助けになれるはずです」
「私からもお願い!」
「茜は良く怪我をして帰ってくるから、ルナさんのような回復魔法が使える子が手伝ってくれるのは嬉しいんだけれど……」
やっぱり制度の問題や俺の特異性があるから難しいんだろうな……。
「他の魔法少女と鉢合わせた時が大変なのよね、貴女の存在は広く知られるわけにはいかないから……」
「でも、私の担当地区で他の魔法少女と出会う事なんて滅多にないよ?」
「茜の担当地区周辺は魔法少女が少ないからね……それも心配ではあるんだけれど……」
死にかけていたことを伝えれば考えてくれるかもしれない、けれどそれは親に心配をなるべくかけたくないという茜さんの意思に反する……そうだ、この提案ならいけるかもしれない。
「コスプレならどうでしょうか」
「コスプレ……?」
「はい、私が魔法を使える女の子である事を活かして魔法少女風の衣装に身を包むことで……」
「……ルナちゃんの魔力は私達の魔力とは違うからバレちゃうよ、ルナちゃんの魔法を受けたら魔法少女なら気付くと思う」
「けれど魔法少女でも直接魔法を受けなければ気付かないというのであれば、他の魔法少女に魔法をかけなければ問題はないのでは?」
灯さんがしばらくの間悩んでから結論を出した。
「まぁ見つかった時の対策としては及第点ね、しばらくはそれでいきましょう」
「自分で言ったことではあるんですが……これで良いんですか?」
「しばらくの間はね、でも魔法少女との接触や茜以外に魔法を使うのは控える様にしてね、バレたら問題になるから」
「はい」
「後、これは一時的な手段に過ぎないわ、今後のことは考えておくしその方法次第では貴女に協力してもらうこともあると思うけれどそれでも良い?」
「構いません」
「わかったわ、茜……これからルナさんと2人で話をしたいからしばらくの間自分の部屋に戻っていてくれる?」
「お母さんと2人で……ルナちゃん平気?」
経歴からして人間不信になっていてもおかしくない俺を心配してくれているんだろう、けれど無茶を言っているんだからこれくらいの要望には応えるべきだ、それに茜さんも灯さんのことを信頼している様に見えるしね。
「大丈夫ですよ、灯さんは悪い方には見えませんし」
「そう……わかった!お母さん、あまりルナちゃんを怖がらせないであげてね?」
「わかってるわよ、変なことは言わないから安心して」
茜さんが自分の部屋に戻ったことを確認できたところで灯さんが話し始めた。
「さて、少しお話ししましょうかルナさん」
「はい……」
灯さんは魔法少女協会という魔法少女を管理し支援する団体の職員らしい、色々聞きたい事や話しておきたいことがあるのも仕方ないと思う。
「今朝説明してくれたことが全部じゃないのはなんとなくわかっているし、魔法協の職員としては色々と聞きたいこともあるんだけれど……茜にも怖がらせないように頼まれたばかりだし、それは一旦置いておきましょうか」
置いておくんだ、それが一番大事な話では?何を話す気なんだ?
「娘を、茜を助けてくれて本当にありがとう……茜はなるべく隠そうとしているみたいだけれど危険な目に逢っているのも死にかけていたのも察しているわ、取り返しがつかなくなる前に助けてくれてありがとう」
親としての感謝が先にくる所から考えても悪い人ではないように見える、と同時に疑問に思うことがあった。
「その件に関しては、私はできることをしただけなので……ですが感謝は受け取っておきます……その上で一つ疑問に思ったことがあるのですが聞いてもよろしいですか?」
「ええ、いいわよ」
「灯さんは茜さんの事を大切にしているように感じます、しかしそんな貴女が魔法少女として死にかけているのを黙認していることに違和感を感じるんです……何か理由があるんでしょうか」
一歩間違えたら死ぬような所へ嬉々として娘を送り出す親は多くないだろう、少なくとも灯さんはそんな人ではないように見える。
まぁ……そもそも魔法少女という幼い女の子が前線にでて魔獣を討伐しなきゃいけないこの世界がおかしいという話ではあるんだけれど。
「それは……私としても娘を危険な目に合わせたいわけじゃないのよ……」
やはり不本意だったのだろう、灯さんは苦しげな表情をしながらも茜さんを送り出している理由を丁寧に話してくれた。
まず大前提として魔法少女の数が全く足りていないらしい。
魔法協も事前に魔獣の出現を予測できる装置を開発し、担当地区を分けて効率良く処理できるように工夫はしているし、多額の報酬も用意してはいるようだ。
けれど魔法少女は限られた人物しかなれないのに加えて魔獣との戦いは命の危険がある、この状況で多くの人材を集めるというのは難しいらしい。
これはこの世界自体が抱える問題といえるだろう。
次に茜さん個人の問題だ。
魔法少女の人材難があるとはいえ、それでも茜さんが戦う事には反対だと灯さんも主張したらしいが、茜さん本人が戦うと言って言う事を聞かず大喧嘩になったようだ。
茜さんがどうしても折れないという事を察して条件を付けて許可することになったらしいけれど、灯さんとしても完全に納得できたとは言い難いようだ。
茜さんが頑なに意見を変えようとしなかったことには理由があるらしいが、灯さんは本人が居ない場で勝手に語ることはしなかった。
「すいませんでした、灯さんを疑うような聞き方をしてしまって」
「いいのよ真っ当な心配だと思うから、むしろ茜のことを考えてくれていて嬉しかったわ」
「茜さんは私を拾ってくれた恩人ですから、私も茜さんには傷付いて欲しくはないんです」
「そうね……貴女になら……貴女に一人の親としてお願いしたいことがあるの」
「何でしょうか」
「茜を近くで支えてあげてほしい、私は裏から支えてあげることしかできないから」
灯さんとしても茜さんが傷ついているのを知っていながら送り出すのは辛かったんだろう、その言葉には複雑な感情が込められているように感じられた。
「わかりました、彼女を守ってみせると聖女の名に誓いましょう」
「そういう堅苦しい感じじゃなくて、友達としてや共に戦う仲間として茜の事を支えてくれれば良いのよ」
「それもそうですね……ですが茜さんを守りたいという意思があるのは変わりません」
「私としては貴女もまだ守られるべき子供ではあると思うんだけれど……魔法少女に守ってもらっている立場で言えることじゃないわね……」
「それを理解して、魔法少女を支える職に付いているだけでも灯さんは立派だと思いますよ」
「……娘と同じ年頃の子と話しているとは思えないわ」
まぁ中身は見た目以上の年齢だしね……それに仮面を被ることには慣れているから。
「これでも元とはいえ聖女と呼ばれる身でしたから……」
「これで重い話は終わりにして茜を呼んできましょうか、ルナさんも疲れたでしょう?」
「そうですけれど……灯さんも聞いておきたいこととかあるんじゃないですか?」
「勿論聞きたいこともあるし、立場を考えたら聞かないといけないんでしょうけどね、それは貴女の扱いを考えてからにするわ、今の貴女は娘の友人で命の恩人それで十分でしょう?」
「……ありがとうございます」
深いことを聞かずに家に置いてくれるのはとてもありがたい……今後の扱いについては気になるところではあるけれど。
「悪い扱いにはならないようにするわ、安心して……と言われてもすぐに信じることは難しいでしょうけれど」
「いえ、灯さんは信頼しても良い大人だとは思っていますよ」
「そう思ってもらえたなら嬉しいわ、じゃあ私は茜に声をかけてくるわね」
その後戻ってきた茜さんと灯さんから使って良い部屋の案内など暮らすにあたって必要なことの説明や、体のサイズや食事の得意不得意など俺個人のことも色々と尋ねられて今日という一日は終わった。
新たに住む居場所を得れたと感じられて嬉しかった。
まだ申し訳ない気持ちはあるけれど、魔法少女としての戦いを手伝ったり、日頃の手伝いをしてできる限り恩を返していきたいと思う。
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初心者なものでそういった反応貰えるだけで嬉しい気持ちです。